企業と生活者懇談会
2025年12月8日 福岡
出席企業:日本製鉄
見学施設:九州製鉄所八幡地区

「世界最大級の製鉄所で、鉄づくりの魅力を学ぼう!」

12月8日、九州製鉄所八幡地区(福岡県北九州市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員7名が参加しました。日本製鉄から会社概要および施設概要、同施設で製造している製品についての説明を受けました。
その後、実際に銑鉄をつくる高炉工場や、鋼片を薄く延ばす熱延工場を見学し、鉄鋼がどのような工程でつくられるのか理解を深めました。最後に質疑懇談を行い、カーボンニュートラルへの取り組みや八幡地区の高炉プロセスから電炉プロセスへの転換(以下、電炉化)に関する意見交換を行いました。
日本製鉄からは、人事総務室長真柄友輔氏、同室課長小平雄太氏、同室野依晃子氏、生産技術室主幹井本琢也氏、広報サービスセンター持永萌氏が出席しました。

日本製鉄からの説明

日本製鉄の概要
 日本製鉄は、日本最大手で、世界でもトップクラスの生産量を誇る鉄鋼メーカーです。日本国内および世界15カ国以上に製造拠点を展開し、自動車、建設、エネルギー、造船など、幅広い産業分野に鉄鋼製品を供給しています。日本製鉄グループとしては、鉄鋼事業を中心に「エンジニアリング事業」「ケミカル&マテリアル事業」「システムソリューション事業」の四つの分野を展開しています。
 近年、注力している施策の一つが、海外市場への成長投資です。アメリカの需要拡大に対応するための企業買収に加え、欧州、インド、タイなど、鉄鋼需要の拡大が見込まれる地域での事業展開を進めており、長期的な成長基盤を確保するための重点地域として位置付けています。
 もう一つの大きな柱が、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みです。同社は全社横断でCO₂排出量削減に取り組んでおり、その中でも電炉化は主要施策の一つとなっています。高炉は高品質かつ大量生産に適した設備である一方、CO₂排出量が大きいという課題があります。このため、電炉への転換を段階的に進めています。
 当社は、グローバルでの成長と環境対応という二つの軸を柱に、鉄鋼産業の将来を見据えた事業構造の変革を着実に進めています。

 

九州製鉄所八幡地区の概要
 九州製鉄所八幡地区は、1901年に官営八幡製鐵所を起源として操業を開始しました。1918年には小倉エリアで浅野小倉製鋼所が創立しています。また、1950年、八幡製鐵が設立し、同社八幡製鉄所となりました。1971年には大分地区に大分製鐵所を発足するなど、日本の産業発展を支えてきました。創業期の施設の一部は現在も保存され、世界文化遺産として登録されています。
 現在の八幡地区は、小倉・戸畑・八幡・豊前のエリアで構成され、原料の受け入れから製銑・製鋼・圧延・出荷までを一貫して行う大規模な製鉄所です。日本で唯一、製鉄所の構外まで運行する専用鉄道「くろがね線」があり、戸畑エリアから八幡エリアへ半製品(製造途中の製品)を運ぶ重要な役割を担っています。運行時間は片道約30分で、上下約6000メートルの距離を、24時間休むことなく走行しています。線路の一部は住宅地を通過するため、騒音や振動に配慮し、ディーゼル機関車と電気機関車の両方を使用して運行しています。
 環境保全にも積極的に取り組んでおり、製鉄所内で使用する水の約90%を循環再利用(10%は蒸発)しています。また、高炉やコークス炉などで発生する副生ガスは100%所内のエネルギー源として活用しており、排熱や副生ガスを利用した自家発電により、所内電力需要の約70%を賄っています。八幡地区では電炉化の計画が進められており、大規模な投資が予定されています。これにより、国内鉄鋼生産の脱炭素化に向けた重要な転換点を迎えています。
 官営八幡製鐵所の操業開始から製鉄所として120年以上の歴史が続く九州製鉄所八幡地区は、環境保全に取り組みながら、現在も多様な鋼材を国内外に供給し、日本の産業と暮らしを支え続ける重要な製造拠点となっています。

見学の様子

八幡地区で製造される製品
 参加者は、展示コーナーにて同地区で製造している主な製品について説明を受けました。
自動車用鋼材―自動車のボディやエンジンをはじめ、ハイブリッド車のモーターに至るまで、様々な部位に使用されています。近年は、軽量化と衝突安全性を両立させるため、異なる強度の鋼板を溶接して一体化した「テーラードブランク」の利用が進んでいます。Bピラー(前部座席と後部座席の間にある車体の柱)では、衝撃吸収部には柔らかい鋼板、乗員スペースを守る部位には高強度鋼板を使用するなど、最適配置によって安全性を高めています。こうした自動車部品向けの高度加工にも対応しています。
電磁鋼板―モーターや変圧器の鉄心に用いられる鋼板で、鉄にシリコンを加えることで電気エネルギーの損失を抑える特性を持っています。磁気が流れやすい方向がそろえられた「方向性電磁鋼板」は、主に変圧器の鉄心に使用され、あらゆる方向に良好な磁気特性を持つ「無方向性電磁鋼板」は、モーターなどの回転機の鉄心に用いられます。いずれも1ミリメートルより薄い鋼板を何十枚も積層して鉄心をつくり、その外側にコイルを巻いて使用します。
形鋼・スパイラル鋼管(土木建築建材)―スパイラル鋼管は、鋼板を螺旋状に巻いて、継目を溶接して製造するもので、建物の基礎などに使用されます。鋼矢板は、両端の爪状の継ぎ手をかみ合わせて連結でき、直線や円形など必要な形状に組み立てられる構造です。これらは、地盤改良や擁壁の施工など、社会インフラを支える重要な建材として広く利用されています。
ステンレス厚板(船舶・産業機械・プラント向け)―腐食環境の厳しい場面でも優れた耐食性を発揮するステンレス厚板は、船舶、産業機械、石油化学プラントなど、幅広い分野で使用されています。1枚の鋼板をそのまま圧延してつくる厚板のほか、異なる種類の鋼板を重ね合わせて一体化させたタイプもあります。また、表面を細かく研磨した厚板は汚れが付着しにくく、落としやすい性質を持つことから、食品タンクなど衛生管理が求められる設備で使用されています。
レール(鉄道)―一般旅客用をはじめ、高速鉄道や重荷重鉄道など、幅広い用途向けに製造されています。鉄道レールは1メートルあたりの重さによって分類され、数字が大きいほど断面が大きく、強度も高くなります。現在の在来線では主に50キログラムレール、新幹線など交通量の多い路線では60キログラムレールが使用されています。最大150メートルという非常に長いレールを製造・出荷しており、これは鉄道車両約7両分の長さに相当します。継ぎ目が少ないロングレールは、走行時の振動を減らし、乗り心地や安全性の向上に寄与しています。
容器用鋼板(スチール缶)―飲料缶や食缶などに使用され、外観が美しく耐食性に優れたブリキと、比較的安価で用途が広がっているティンフリースチールをベースに製造しています。いずれも鋼板にめっきを施した素材で、鋼を原料としているため磁石で容易に分別でき、リサイクル性が高く、現在では90%以上のリサイクル率を実現しています。

 

工場見学
 次に参加者は、バスで高炉工場へ向かいました。高炉工場では、鉄鉱石から銑鉄(溶けた鉄)を製造します。まず紹介されたのは、鉄づくりの出発点である原料の受け入れです。
 戸畑エリアでは、鉄鉱石・石炭・石灰石の三つの主原料を取り扱っています。鉄鉱石と石炭は100%輸入しており、鉄鉱石はオーストラリア産が中心です。20万トン級の大型船が接岸できる岸壁で荷揚げされた原料は、ヤードに山積みされ、粉じん対策として散水しながら保管されます。その後、ベルトコンベヤーで焼結工場やコークス工場へ運ばれます。
 焼結工場では鉄鉱石に石灰石を混ぜて焼き固めた焼結鉱を、コークス工場では石炭を無酸素状態で蒸し焼きにしたコークスを生産します。これらが高炉へ送られる主要原料です。
 見学した第4高炉は、高さ約106メートル、内容積約5000立方メートルを誇る巨大な設備で、1日に約1万トンの銑鉄を生産しています。外観は塔のようですが、内部は高温に耐えるため3重の耐火構造が施されており、かつては5〜6年ごとに休止・改修が必要だった高炉も、現在は技術の進歩により20年以上の連続操業が可能になっているとのことです。
 高炉内の様子はモニター映像を通じて確認でき、自動制御されながら銑鉄がつくられていく様子を見学しました。高炉には2000カ所以上のセンサーが設置され、温度やガス圧力などを24時間体制で監視しています。当日は、高炉で使用される主原料や副産物を実際に手に取り、質感や重さの違いを確かめながら、それぞれの役割について理解を深めました。
 そして、炉の下部から取り出された真っ赤な銑鉄が、トーピードカーと呼ばれる大型の耐火輸送車に受け止められる様子を見学し、その迫力ある光景に参加者から驚きの声が上がりました。銑鉄はその後、製鋼工程へ送られます。
 製鋼工程では、転炉で酸素を吹き込み、不純物を除去した後、二次精錬で成分調整が行われます。溶けた鋼は、連続鋳造設備で鋼片へと固められます。
 こうしてつくられた鋼片は、幅約1メートル、長さ約10メートル、厚さ約25センチメートルの「スラブ」と呼ばれ、次に見学した熱延工場へ送られます。熱延工場では、1100〜1300℃に加熱し柔らかくなったスラブを、複数台の圧延機で一気に薄く伸ばしていきます。粗圧延スタンドと仕上げスタンドで数回ずつ圧延を重ね、厚さが25センチメートルあったスラブは、最終的に約1.2ミリメートルの薄い鋼板へと加工されます。
 圧延された鋼板は、ラインの最後でトイレットペーパーのように巻き取られた「コイル」と呼ばれる状態で仕上がります。工場内は、圧延機が稼働する重厚な音と熱気に包まれており、大型設備によってスラブの状態がリアルタイムで測定されながら、薄い鋼板へと加工されていく様子を間近で体感することができました。
 こうして圧延された鋼板は、用途に応じて冷延や表面処理などの後工程へ進み、自動車、家電、産業機械、建材など、幅広い分野で使用される製品へと加工されていきます。

日本製鉄への質問と回答

社会広聴会員:
カーボンニュートラルに向けた取り組みについてお聞かせください。
日本製鉄:
日本製鉄では2050年のカーボンニュートラル実現に向けた重要な施策の一つとして、高炉プロセスから電炉プロセスへの転換を進めています。CO2排出量の少ない電炉の比率を高めることで、まずは2030年の排出削減目標を達成し、八幡地区では、2029年度下期までに電炉化を実現、大型電炉で高級鋼を安定的に生産する体制の構築を目指しています。電炉化に伴い、原料は鉄鉱石や石炭からスクラップ(鉄くず)中心へと切り替わるため、スクラップの保管・投入に対応した設備整備や、製鉄所内レイアウトの見直し、関連設備の改造なども進められています。
また、日本製鉄では高炉による製鉄工程で、従来の石炭に代え水素を用いることで、CO2の発生を大幅に抑えることが可能になるとされており、研究開発や実証試験を通じて実用化に向けた検討が進められています。電炉化や水素技術の検討と並行して、CO2削減の価値を製品として可視化するGXスチール(グリーン鋼)の普及も進められています。会社全体で排出したCO2削減量を一元的に管理し、その削減効果をGXスチールとして提供する製品に反映させる「マスバランス方式」を採用しています。さらに、第三者機関による削減証書を通じて、その価値を明確にしています。
八幡地区の製品にゆかりのあるGXスチールの活用事例として、門司港レトロビールのスチール缶に採用されました。また、北九州市のふるさと納税の返礼品としても採用され、GⅩスチールの価値を生活者に身近な形で伝える取り組みとして進めています。

参加者からの感想

●日頃なかなか知ることができない地元企業を見学することができ、大変貴重な機会でした。見学や説明を通じて、CMでよく目にしていた「世界は鉄でできている」というメッセージの意味がよく分かりました。素晴らしい仕事をされている会社だという印象を持ちました。
●製品や工場の規模が非常に大きく、普段、消費者として鉄鋼製品を購入することもないため、どうしても身近に感じにくいものでした。しかし、実は日々利用している自動車や鉄道など、なくては困るものをつくっていることを改めて実感し、身近な存在として捉えることができました。また、従業員の方々の安全に対する行動規範の徹底はさすがだと思いました。
●巨大な溶鉱炉や圧延設備、ヤードを目の前にして、生産技術、保守管理、原料の荷受け、製品の搬出まで、全てが一つの循環になって、24時間体制で鉄をつくり出していることを実感しました。いずれの工程でも、たゆまぬ企業努力によって技術革新が行われていることを感じました。また、発生する副生ガスは発電などに活用されていること、鉄鉱石の鉄分以外の成分でできるスラグは道路などで使用されていること、さらには自治体のプラスチックごみのリサイクルにも貢献していること、大量に使用する冷却水も循環させているとのことで、鉄鋼製造プロセスの無駄のなさに感心しました。
●環境対応を目的に高炉から電炉への転換が予定されている中、投資規模が約6000億円に上るとの説明を聞いた上で施設内の工事状況も拝見し、昭和期における石炭から石油へのエネルギー転換にも匹敵するような動きが、すでに顕在化していることを改めて認識しました。一方で、水素還元鉄の製造手法など、今後の技術進歩に依存する取り組みも残されており、脱炭素への対応が長期に及ぶことを理解する機会となりました。

日本製鉄 ご担当者より

 今回の懇談会では、皆さまに当社の鉄づくりの現場をご覧いただき、製造工程での取り組みや、社会へお届けしている製品の役割について理解を深めていただく機会となりました。「世界は鉄でできている」というメッセージの背景にある想いや、鉄が皆さまの暮らしを支えていることを実感していただけたのであれば、大変うれしく思います。
 また、当社が進めるカーボンニュートラルへの挑戦についても、多くのご関心とご質問を頂戴しました。高炉から電炉プロセスへの転換をはじめ、技術革新や設備投資は容易な道ではありませんが、地域の皆さまと共に歩む姿勢を大切にしながら取り組んでまいります。
 今回の懇談会を通じて寄せられたご意見や気付きを、今後の事業運営や環境対応のさらなる改善に生かしていきます。ご参加いただき、誠にありがとうございました。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
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