企業と生活者懇談会
2026年3月6日 神奈川県横浜市
出席企業:東洋電機製造
見学施設:横浜製作所

「鉄道を支える最先端モータドライブ技術の現場を見学しよう!」

3月6日、横浜製作所(神奈川県横浜市)で「企 業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員11 名が参加しました。はじめに、東洋電機製造から 会社概要と同施設について説明を受けた後、展示 室で実際に製造している製品を見学しました。そ の後工場棟に入り、歯車装置や主電動機(モータ)、 集電装置(パンタグラフ)や制御装置の製造現場 を見学し、鉄道車両用電機品の製造工程や技術へ の理解を深めました。 質疑懇談の場では、製品の品質向上への取り組み や今後の事業展開などについて意見交換を行いま した。
東洋電機製造からは、常務執行役員横浜製作所長 中西俊人氏、執行役員交通事業部交通工場長 飯 田哲史氏、横浜製作所管理部長 森岡功氏、交通 事業企画部品質管理課長 北野慎治氏、経営企画 部広報・IR課長 林智氏が出席しました。

東洋電機製造からの説明

■東洋電機製造の概要
 東洋電機製造は、1918年に鉄道車両用電機品の国産メーカーとして設立し、100年以上にわたり日本や世界の鉄道、そして社会・産業の発展に貢献してきた企業です。創業当時から、国内だけでなく広く東洋各国へ製品を届け、社会の発展に役立ちたいという思いが社名に込められています。その理念は現在まで受け継がれ、「技術の東洋」として多くのお客さまから信頼を得てきました。
 同社は、現在、「交通」「産業」「ICTソリューション」の3つの事業を展開しています。※ 特に鉄道分野では、長年培ってきたモータドライブ技術を活かし、パンタグラフ、推進制御装置、補助電源装置、モータ、歯車装置、列車情報装置など、鉄道車両に欠かせない様々な電気機器を開発・製造しています。
 これらの製品は、高速鉄道や地下鉄、路面電車、新交通システムなど、国内外の多くの鉄道で使用されており、安全で快適な鉄道輸送を支えています。
 また、電車がブレーキ時に生み出す電力を再利用する鉄道用電力貯蔵装置「E³ソリューションシステム」など、省エネルギーに貢献する技術の開発にも力を入れています。他にも、ICカードに対応した定期券発行機や車掌用携帯端末など、駅や鉄道運行を支える情報システムの開発に取り組んでいます。
 鉄道事業以外では、生産設備向けのモータ・インバータなどの駆動システムで構成された試験システムで自動車開発を支援しています。防災用・非常用発電システムや小水力発電などの再生可能エネルギーを活用した電源ソリューションにも取り組み、環境への配慮と安定したエネルギー供給に貢献しています。

■東洋電機製造「横浜製作所」の概要
 横浜製作所は、創業とともに歩んできた主力の生産拠点です。1919年、横浜市保土ヶ谷区で操業を開始し、鉄道車両用電機品や一般産業用電気機器の製造を続けてきました。1985年には現在の横浜市金沢区に移転し、設備や生産システムを一新した新しい工場として生まれ変わりました。2010年に研究開発・設計拠点となる「エンジニアリングセンター」が完成し、開発体制の強化が図られています。敷地面積は約5万5千平方メートル、2026年1月末時点で約600名が働いています。
 横浜製作所では、主に「交通」と「ICTソリューション」の2つの事業に取り組んでいます。
交通事業では、モータや制御装置、歯車装置など、 鉄道の安全で安定した運行を支える重要な機器の開 発・製造を行っています。
 ICTソリューション事業では、駅や鉄道現場で活用される機器・システムの開発を行っており、ICカード対応の車掌用携帯端末や運賃管理機器、クラウドを活用して設備や車両の状態を遠隔監視するIoTシステムなどを提供しています。
 東洋電機製造は、こうしたものづくりを通じて、鉄道や産業インフラの発展と持続可能な社会の実現を支えています。
※6月1日付で「ICTソリューション」は「交通」に統合され、「交通」と「産業」の2事業体制へ変更

見学の様子

■1階 展示室
 参加者は、展示室にて横浜製作所で製造している主な製品について説明を受けました。

N700系新幹線向け 三相かご型誘導電動機―東海道・山陽新幹線の「のぞみ」「ひかり」「こだま」号で活躍するN700系車両用のモータです。1編成16両の車両に56台が搭載されており、営業最高速度300キロメートル毎時での運転を支えています。大出力でありながら小型・軽量で、保守の負担が少ないことが特長で、車両用交流モータの代表的な技術の一つとされています。また、直流モータに比べて使用電圧が高いため、小型化が可能です。出力は305キロワットで、新幹線の高速走行を支える重要な装置となっています。

直流主電動機―国鉄時代末期から生産された標準形モータです。同社が原設計を担当し、国内の電機メー カー5社で生産されました。通勤電車から特急電車まで対応できるオールマイティーな性能を備えており、現 在もJR各社で使用されています。

高速鉄道向け駆動装置―高速鉄道用の駆動装置です。 駆動装置は継手と歯車装置で構成され、モータの回転を 継手を通じて歯車に伝え、減速機(歯車装置)で回転数を落として車輪を回す仕組みになっています。現代の 電車における標準的な駆動方式である「平行カルダン軸駆動方式」を採用しており、高速鉄道の安定した走行を支える重要な装置となっています。

■1階 工場棟
   次に工場棟に移動し、鉄道車両用の「モータ」や「歯車装置」の製造工程を見学しました。
主電動機の形状は円筒形で、構成部品は大きく回転子と固定子に分かれています。推進制御装置(VVVFインバータ)から送られた電気によって回転子が回転し、その力を歯車装置を通じて車輪に伝えることで電車を走らせます。
 歯車装置は、大きな円盤状の形をしています。モータの回転力を車輪へ伝える役割があり、内部にある大小2枚の歯車の組み合わせによって、力の大きさや回転速度を調整します。装置の外側にある「ギアケース」と呼ばれる箱状の部品には歯車を滑らかに動かすための潤滑油が入っています。モータ、歯車装置は電車の床下に取り付けられています。
 歯車装置に使用される大小の歯車は同社で機械加工が行われます。工場では、車軸に大きな歯車をはめ込む作業を行い、その後、車輪を圧入して取り付けます。
 「車輪圧入」の工程では「車輪圧入装置」を用いて、車軸に車輪を取り付ける作業が行われています。車軸に硬い金属製の車輪をはめ込むため、作業には高い精度が求められます。その後、歯車装置は回転試験機により、最高速度や定格速度での回転試験が行われます。問題がないことを確認した後、塗装を施して出荷されます。
 最後に、「リアクトル製造職場」を見学しました。ここでは電気に含まれるノイズを抑え、電力を安定させる役割を持つ「フィルタリアクトル」を製作しています。
 工場内には、協力会社で製作された車両の床下機器箱や点検カバーなどの部品が並び、同社で受け入れ検査が行われます。品質に問題がないことを確認した後、塗装工程へ送られ、製品の組み立てに使用されます。

■3階工場棟
 続いて、「パンタグラフ」の職場を見学しました。パンタグラフは電車の屋根上に取り付けられ、架線から電気を受け入れる装置です。機械部品のため他の機器類ほど高価ではありませんが、架線と接触する部分は摩耗するため、定期的な交換が必要となります。この職場では、協力会社で製作されたパンタグラフの部品を受け入れ、新品部品と補修部品の検査を行っています。補修部品は検査後そのまま出荷され、新品部品は組み立て工程に回され、パンタグラフとして完成させます。また、小さなトンネルに対応するミニパンタグラフや、海外の高速鉄道向けのパンタグラフなど、用途や車両の特性に応じた様々な種類のパンタグラフが紹介されました。  次に、鉄道車両の走行を支える「推進制御装置」について説明を受けました。受け取った電気の「種類を変える」コンバータ装置、種類を変えた電力の「頻度を変える」インバータ装置が連携することで電車はスムーズに加速・減速することができます。
 内部の構造は、フィルターやパワー半導体、冷却装置などが組み合わさった複雑な構造になっています。 同社は、将来的にもパンタグラフは残ると考える一方、地方のローカル線では地上側の電化設備が減っていく可能性も見据え、電気式ディーゼル車両向けの技術開発も進めています。

■屋外:電気機関車展示
 最後に、屋外に展示されている日本セメント(現 太平洋セメント)上磯工場第2号電気機関車を見学しました。本電気機関車は大正11年(1922年)に同社の横浜工場で誕生し(車体は汽車製造が製作)、国産の電気機関車としては最も古いものの一つです。
 北海道の上磯工場で63年間にわたり、セメントの原料となる石灰石や粘土を運ぶ機関車として活躍しまし た。自重は16トンで、45キロワットの主電動機を2台搭載しています。急な坂を安全に走行するため、電 磁吸着ブレーキも備えています。
 1985年に日本セメントのご厚意により、生まれ故郷の横浜へ戻り、現在は東洋電機製造の歴史を伝える機関車として保存されています。

東洋電機製造への質問と回答

社会広聴会員
AIの導入やロボットの活用など、業務や経営の効率化に向けた取り組みについて教えてください。
東洋電機製造:
東洋電機製造の工場では「少量多品種」の生産が中心であるため、ロボット導入によるコスト回収や効率化の効果が出にくい面があります。ロボッ トは大量生産の工程では有効ですが、製造数量が少ない工程では、稼働率や導入コストの観点から採算が合いにくい場合があります。
 一方で、溶接などの危険を伴う作業や、品質の 安定化に寄与する工程では、ロボットを一部導入しており、安全性の向上や省力化に役立っています。今後は、工程ごとに採算性を見極めながら、段階的に導入を進めていく方針です。

社会広聴会員技術の継承はどのように行われていますか。
東洋電機製造:高校卒で工場スタッフとして入社した社員は、入社後最初の1年間、社内にある技術教育の学校で基礎的な技術を学びます。1年間の研修を経た後、初めて現場へ配属される仕組みとなっています。
 また、当社には技能マイスター制度があり、優 れた技術や知識を持つ社員を「技能マイスター」として認定しています。こうした社員が中心とな り、若手社員の指導や技術の継承に取り組んでい ます。

社会広聴会員鉄道関連製品の今後の技術課題や方向性はどのようなものでしょうか。
東洋電機製造:鉄道製品において最も重要なのは、安全性と信頼性です。当社としても、お客さまを乗せて走る製品であることから、信頼性と安全性を最優先に考えています。
 その上で、品質管理の徹底や各種試験(現車試験、不具合対応の仕組み)の強化に取り組んでい ます。また、製品の小型化・軽量化や省エネルギー 化、メンテナンス負担の低減なども重要な課題で す。
 さらに、近年はGX(グリーントランスフォー メーション)やDX(デジタルトランスフォーメー ション)といった考え方が広がっています。当社としては、特にGXの観点から、環境負荷の低減を重要な技術課題の一つと捉えています。

参加者からの感想

●「手造り感」が満載の製造現場で技術者のこだわり を体感しました。また快適で安全な鉄道輸送を陰で 支える交通事業に取り組んでいる姿勢に感動しま した。
●『頭(パンタグラフ)から足元(歯車装置)まで一 貫生産』というキャッチフレーズは分かりやすくていいと思いました。BtoBビジネスですので普段毎日のように利用している鉄道であっても機器の製 造メーカーまでは認識していませんでした。今回の工場訪問をきっかけにあらためて注意を払ってみたいと思いました。 ●東洋電機製造の「ものづくり」への誠実さが心に沁み入りました。懇談会で説明いただいた「設計にお いて仮想空間のシミュレーションだけに頼らず、必 ず試作品を作ってテストを行う」という姿勢は素晴 らしいと感じました。コストダウンも大切ですが、 必要なものにはしっかりと手をかける。鉄道に安心 して乗れる日常を支えてくださっている、堅実な企 業姿勢を心強く感じました。

東洋電機製造 ご担当者より

このたびは当社工場をご紹介いただき、誠にありが とうございました。広聴会員の皆さまとの懇談会では 貴重なご意見を賜り、心より御礼申し上げます。 
100 年以上にわたり鉄道用製品を製作してきた当社 の取り組みや想いの一端を、工場見学を通じてお伝え できておりましたら幸いです。
今後も末永く当社活動にご支援を賜りますようお願 い申し上げます。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021
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