6月9日、TODA BUILDING(東京都中央区)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員15名が参加しました。まず、戸田建設から会社概要および施設概要の説明を受けた後、オフィス・役員フロアを見学したほか、館内のミュージアムでは同社の歴史や建設技術、未来のまちづくりに関する取り組みについて理解を深めました。最後に質疑懇談を行い、資材供給の遅れやエネルギー価格の変動が建設事業に与える影響、建設資材のリサイクルや循環利用の取り組みなどについて活発な意見交換が行われました。
戸田建設からは、ミュージアム副館長 稲永英治氏、広報部長 清水洋克氏、広報部広報課長 溝手美陽子氏、広報部上級専任役 河東田豊昭氏、広報部上級専任役 佐藤洋人氏が出席しました。
■戸田建設の概要
戸田建設は1881年に創業した145年の歴史を持つ総合建設会社です。国内に14の事業拠点を置き、47のグループ会社を擁するほか、海外にも7拠点を設けるなど、国内外で幅広く事業を展開しています。
主力事業は建築事業と土木事業です。建築分野ではオフィスビルや教育施設、生産施設などの建設を手掛けており、土木分野ではトンネルやシールド工事、再生可能エネルギー関連施設など、社会インフラの整備を担っています。一方で、建設市場の縮小を見据え、近年は国内投資やGX事業といった戦略事業にも注力し、新たな事業領域の開拓を進めています。
2031年の創業150周年に向けて、「未来ビジョンCX150」を経営ビジョンに掲げています。自社の技術やネットワークを活用し、異業種や多様な企業・組織をつなぐことで、新たな価値や市場を創出する「ハブ」としての役割を果たし、「価値のゲートキーパー」として協創社会の実現を目指しています。
ビジョンの実現に向け、未来のまちづくりを目指すSECC(スマートエネルギーコンプレックスシティ)事業や、長崎県五島市沖で進める浮体式洋上風力発電をはじめとする再生可能エネルギー事業を推進しています。
浮体式洋上風力発電は、風車を搭載した浮体構造物を海上に浮かべる方式で、水深の深い日本近海でも導入しやすい次世代の環境にやさしいエネルギーとして期待されています。同社は、五島市沖における国内初の商用規模の浮体式洋上ウィンドファーム事業の開発・運営に携わっており、その先進的な取り組みが評価され、2026年には「第34回地球環境大賞」の大賞を受賞しました。地域の再生可能エネルギー供給拡大にも貢献するなど、脱炭素社会の実現に向けた挑戦を続けています。
また、東南アジアや北米を中心とした海外事業のさらなる推進や、多様多彩な人財の育成・確保、エンゲージメントを実感できる組織づくりにも取り組んでいます。
■TODA BUILDINGの概要
2024年秋に開業したTODA BUILDINGは、戸田建設が1898年に京橋へ拠点を移して以来、120年以上にわたり本拠地としてきた東京・京橋に誕生した新本社ビルです。今回の建て替えは「100年に一度の事業」と位置づけ、旧本社ビルの名称を受け継ぎながら、次の100年を見据えた大規模プロジェクトとして行われました。「まちに開かれた、芸術・文化拠点の形成」をコンセプトとした地下3階・地上28階建ての複合施設となっており、オフィスに加え、ミュージアムやホール、ギャラリー、カフェなどを備え、芸術文化とビジネスが融合した街に開かれた空間を創出しています。
また、長年お世話になった京橋への恩返しとして、防災機能の充実にも力を入れています。中央通りに面した広場「アートスクエア」は、災害時の帰宅困難者の一時滞留スペースとして活用されるほか、防災備蓄倉庫を整備するなど、地域の防災力強化に貢献しています。また、中圧ガスを利用したコージェネレーションシステムや非常用発電機の導入により、ビル共用部およびテナント専用部へ最大約72時間の電力供給が可能となっています。これらの主要設備を7階に配置することで浸水リスクにも備え、防災力を高めています。
加えて、独自の構造技術や制震・免震技術の採用により、高い耐震性能を実現しています。
特に注目されるのが、戸田建設独自の「コアウォール免震構造」です。建物中央に高さ約165メートルに及ぶ連層耐震壁(コアウォール)を配置し、1階床下に設けた免震層と組み合わせることで、国内トップレベルの耐震性能を実現しています。コアウォールが建物の“心棒”として機能し、アウトリガー梁や制振梁と連結することで、地震発生時の揺れや変形を大幅に抑制します。また、敷地の大部分を免震層の上に載せることで、建物内部だけでなく広場など周辺空間の安全性向上にも寄与し、BCP(事業継続計画)やDCP(地域継続計画)の強化にも貢献、災害発生後も迅速な事業継続を可能にする先進的な構造技術となっています。
■オフィスフロア
参加者はまず、9階のオフィスフロアを見学しました。
「人の個性やアイデアが活きる」イノベーションの創出を目指したオフィスは、社員の心身の健康や、働きやすさを重視した最先端のワークスペースとして整備されています。固定席を設けないフリーアドレスを採用し、社員は業務内容に応じて働く場所を選択します。執務スペースのほか、ソファ席や個室ブース、カフェのような空間も整備されており、多様な働き方を支えています。
健康性・快適性と生産性・創造性の両立を目指したオフィス環境が高く評価され、建物や空間が人々の健康とウェルビーイングにどの程度配慮しているかを評価する国際認証「WELL Building Standard v2」において、最高ランクの「プラチナ」認証を取得しています。
また、高い安全性と環境性能も兼ね備えており、地震に強い安全・安心な執務空間を実現し、省エネルギー性能の高い建築物に与えられる「ZEB Ready」認証を取得しています。
役員フロアやミュージアムには、戸田建設が包括連携協定を結ぶ北海道下川町産の木材がふんだんに使用され、木の温もりを感じられる空間を創出しています。
木材の産地を確認できる二次元コードも設置されており、木材のトレーサビリティ(生産履歴の追跡)への理解を深めるとともに、森林資源や地域とのつながりについて考える機会にもなっています。
■ミュージアム
ミュージアム「TODA CREATIVE LAB“ TODAtte?”」は「過去」「現在」「未来」の3つのゾーンで構成されており、戸田建設の歩みだけでなく、日本の建設業の歴史や技術の進化、そして未来のまちづくりについて学ぶことができます。木の温もりを感じられる館内の床にはポルトガル産ワインのコルク栓を再利用した再生材が採用されるなど、環境に配慮した施設づくりも特徴です。
「過去」のゾーンでは、1881年の創業から現在に至る140年以上の歴史をたどることができます。創業者の戸田利兵衛が東京で建築請負業を始めた頃のエピソードや、明治から昭和にかけて手掛けた建築物、関東大震災後の復興事業などを、写真や模型、実物資料で振り返ることができます。創業初期に実際に使用されていたパスポートや、100年近く前の建築資材なども展示されており、当時の建設技術や社会の様子を身近に感じることができました。
展示では、東京都庭園美術館や早稲田大学大隈講堂など、戸田建設が手掛けた代表的な建築物も紹介されています。また、関東大震災で被害を受けた鎌倉大仏の補強工事など、歴史的建造物の保存に携わった取り組みも展示されており、長年にわたり日本のまちづくりを支えてきた同社の歩みを知ることができました。
「現在」のゾーンでは、医療施設や都市開発、地域創生など、戸田建設が取り組む様々な事業やソリューションを学びました。参加者が見学しているTODA BUILDINGそのものも展示の一部となっており、建物を支える最新技術について理解を深めました。戸田建設独自の「コアウォール免震構造」に関する展示では、建物中央に設けられた厚さ1.2メートルの巨大な鉄筋コンクリート壁(コアウォール)が、人間でいう背骨のような役割を果たし、制振装置を組み合わせることで、震度7クラスの巨大地震にも耐えうる高い耐震性能を実現していることが説明されました。
また、館内中央の階段には、上部から吊り下げる「吊り階段」を採用しています。階段を壁から独立させることで、コアウォール免震構造を際立たせるとともに、開放感のある空間を実現しています。
実際に使用されている鉄筋やコンクリートのサンプルも展示されており、素材や強度による音の違いを聞き比べたり、モルタルとコンクリートの違いを学んだりと、建設技術を身近に感じながら子供から大人まで楽しめる体験型展示となっています。
■共用スペース
最後に1・2階の共用スペースを見学しました。
エントランスロビーは天井高約16メートルの開放的な吹き抜け空間となっており、空間を取り囲む回廊「アートコリドー」や広場「アートスクエア」には、戸田建設が取り組むパブリックアート・プログラムによる作品が展示されています。オフィス利用者だけでなく一般来館者も自由に鑑賞できる空間となっており、誰もが気軽にアートに触れられる場となっています。
見学時には、新進アーティストによる作品が展示されていました。作品には戸田建設の歴史や創業の地、企業ロゴなどをモチーフとして取り入れたものもあり、建物や企業の歴史とアートが融合した独創的な表現が印象的でした。
館内ギャラリーの展示内容は定期的に更新されるほか、共用スペースのパブリックアートもおおむね1年半ごとに入れ替えられます。
社会広聴会員:
資材の供給不足が建設事業に与える影響について教えてください。
戸田建設:
建設業界でも、資材供給の停滞やエネルギー価格の変動による影響が懸念されていますが、現時点(見学日当時)ではその影響を明確に見通すことは難しい状況です。建設工事は長期間にわたるため、受注後の早い段階で必要な資機材を確保し、計画的に調達を進めています。そのため、多くのプロジェクトでは一定量の資材を確保しており、直ちに工事が停止するような状況にはなっていません。
一方で、今後、資材供給のひっ迫やエネルギー価格の高騰が長期化した場合には、建設コストや工期に影響を及ぼす可能性もあることから、引き続き動向を注視しながら対応していく必要があると考えています。
社会広聴会員:
解体した建物のコンクリートは再利用されているのでしょうか。
戸田建設:
建物の解体で発生するコンクリートがらは、現在はほぼ100%再利用が可能な状態となっています。
実際に多くの現場で再利用が進められており、道路や駐車場などの舗装の下地材として利用されるほか、新たなコンクリートの原材料としても活用されています。今後、老朽化した建物の建て替えが増える中で、建設資材の循環利用はますます重要になると考えられています。
社会広聴会員:
アート・ギャラリー機能の導入目的を教えてください。
戸田建設:
京橋一丁目東地区の再開発は、隣接する「ミュージアムタワー京橋」と一体で進められました。東京都の都市再生特別地区制度の活用にあたり、両施設が連携して芸術・文化の拠点を形成することが求められたことが背景にあります。その中で、アーティゾン美術館を擁するミュージアムタワー京橋が本格的な美術館機能を担う一方、TODA BUILDINGでは現代アートやギャラリー、企画展示など、幅広い世代の人々が気軽に親しめる芸術・文化活動の場を提供することを目指しました。
また、新しい発想や価値観に触れられる現代アートには、人々の創造性を刺激する力があると考えています。そこで、新進アーティストの育成や情報発信の場としても機能する芸術文化エリアを整備し、アートを通じた新たな交流やにぎわいの創出に取り組んでいます。
●ビルの中にも緑があり、飲み物を届けたり容器を回収するロボットが動き回る、昔映画で見たような世
界、ハード面もソフト面も最先端と、驚くことばかりでした。
●幾多の苦難を乗り越えて、お客様や地元の社会からの信頼を獲得して成功された事実が大変よく分かる展示物を拝見できました。
●「コアウォール免震構造」という特殊な工法が使われていて、近くで発生した地震はもちろん遠方の地震による長周期振動で生ずる高層ビルの揺れも大幅に抑えられるとのことで驚きました。
● 浮体式洋上風力発電に注力されていることは全く知りませんでした。風力発電については大手が撤退するなど逆風が吹いておりますが、御社の新しい技術力でぜひ成功させていただきたいです。
当社のブランドメッセージ「Build the Culture.人がつくる。人でつくる。」が指しているのは、未来の様々
な人々の営みを支えるという姿勢。心身の健康と働きやすさに配慮したオフィス空間、国内トップレベルの
高い耐震性能、ミュージアムでは当社の創業から未来への挑戦までをご紹介いたしました。参加者の皆さま
との対話を通じて、建設業の役割や価値への理解を深めていただく機会となりましたら幸いです。