企業と生活者懇談会
2002年6月20日 北海道
出席企業:キッコーマン
見学施設:千歳工場

「日本の味・しょうゆを世界の味へ」

キッコーマンからの説明
■会社概要の説明■
 私どもの会社は、野田醤油として大正6年に設立され、今年で創業86年目を迎えます。
 千葉県の野田市に本社を構え、国内5工場で生産を行い、日本全国の食卓にしょうゆをはじめとする様々な商品を提供しています。
 しょうゆは「日本の食文化の代表選手」という感じがすると思いますが、昭和48年に稼動を開始したアメリカの工場をはじめ、海外でも6工場が稼動し、世界100カ国余りに商品を出荷しています。
 本日お越し頂いた千歳工場は総面積88,822?、札幌ドーム1.5倍の敷地を有する大規模な工場です。豊かな大地に育まれた北海道産の小麦を100%使用した道産子しょうゆづくりをモットーに、北海道全域に商品の出荷を行っています。
 しょうゆの全国需要は年間100万klにもなります。キッコーマンは28万キロリットルを生産し、千歳工場はそのうちの2万キロリットルを作っています。
 キッコーマンではお客様に喜んで頂ける商品の提供だけでなく、地域との共生も大切なテーマとして取り組んでいます。千歳工場では毎年恒例となっている 「キッコーマン祭り」や「少年サッカー大会」の主催など企業市民としての役割を果たし、地域に貢献できる工場を目指しています。
 「総合食品メーカ」として「食」の新しい世界を広げる。これが私達の目指す企業像です。みなさんご存知の通り「しょうゆ」が当社の顔ですが、この他にも 皆様の食卓を彩るたくさんの商品を提供しています。洋風調味料としておなじみの「デリシャスソース」や「デルモンテ トマトケチャップ」。この他に焼酎の 「トライアングル」や「マンズワイン」など数々の商品をお届けしています。
 売上構成でみると「しょうゆ」が47%、本みりんや焼酎などの「酒類」が20%、デルモンテの「飲料・調味料」が17%、つゆや焼肉のたれなどの「食品」が13%となっています。
 当社は環境にもいち早く取り組みを開始しました。昭和45年に公害対策委員会を設置。昭和47年には環境管理部、平成4年には環境保護推進本部を設立し、公害防止から環境保護へとその歩みを進めてきました。
平成9年にISO14001の取得を開始し、現在では各工場・関連会社全てにおいて取得が完了しています。平成11年には環境会計を導入するなど、常に時代を見据えた取り組みを展開してきています。
 ここ千歳工場も平成11年にISO14001を取得。また資源再生化率は99.7%と非常に高い再生化率を達成するなど環境への取り組みの最先端工場として注目されています。
 『食の、あたらしい風』。これが私達の企業メッセージです。環境と調和させながら「食と健康」の分野で、地球家族の人々のお役に立ちたいと願うさわやかな風。常にお客様の立場にたった視点を大切にこの風を吹かせたいと考えています。
キッコーマンへの質問と回答
レポーター:
私たちは、毎日の食事で必ずといっていいほど、しょうゆを使います。生活に密着したしょうゆの原料について教えて欲しい。
キッコーマン:
しょうゆの原料は、大豆と小麦、それに食塩です。原料が単純だからこそ、良いものを厳選しないと、たちまち製品の味や香りに影響が出てしまいますので、私たちは最高の原料を使ったしょうゆ作りを目指しています。
ここでしょうゆの製造方法を簡単にお話します。まず、大豆と小麦に熱を加えて混ぜ合わせ、これに麹菌(こうじきん)を入れ、しょうゆ麹を作ります。この「しょうゆ麹」に食塩水を加えてできるのが「もろみ」。この「もろみ」はタンクの中で約6~8カ月間発酵・熟成されます。最後に発酵・熟成が終わった「もろみ」をしぼると、しょうゆの完成です。
しょうゆづくりに適した大豆は大粒でふっくらとしていて、黄色く光沢があって完熟したものです。小麦は窒素分が高く、品質の安定したものがふさわしいものです。ここ千歳工場では北海道産の小麦とアメリカなどから輸入した大豆を使ってしょうゆを作っています。
原料の農薬使用についてのチェック体制も確立しており、輸入品をはじめ原料の仕入先から農薬使用についての分析値を提出してもらい、基準以下のものしか原料として使用していません。
 
レポーター:
遺伝子組換え大豆は使用しているのか。
 キッコーマン:
しょうゆは長い醸造期間をへて製造されるので、大豆タンパクが分解されて製品から判断することはできません。当社の製品では、「丸大豆しょうゆ」や「有機しょうゆ」などは遺伝子組換え大豆を使用していないことを原料の段階から証明ができます。原料を輸入する過程で遺伝子組換えのものが混入していないものについては、原材料の表示にその旨を記載しています。
 
レポーター:
私たち消費者は食品を買うとき、添加物の使用の有無について敏感になっている。しょうゆにはどのような添加物が入っているのか。
キッコーマン:
当社のしょうゆは、「本醸造方式」という製造方式を採用しています。この方式で製造するしょうゆは色・味・香りが安定しており、添加物を加える必要がありません。
当社が製造している濃縮つゆである「めんみ」は、しょうゆをベースにしており、甘味料などの添加物を使用しています。この場合も製品ラベルに添加物を使用していることを記載しています。
 
レポーター:
本日、工場見学をさせていただいて、工場内が本当に清潔に保たれていると知りました。活動の指針みたいなものはありますか。
キッコーマン:
おいしいしょうゆ作りの原点は、清潔な環境、清潔な製造工程だと考えております。この考え方にもとづき、私たちは工場内をいつも清潔に保つことに務めています。
製造過程すべての点において取り組みを行なっていますが、例えばタンクについてお話をしますと、仕込みタンクなどは中身を出した後、その日のうちに洗浄するなど常に清潔な環境を保つよう努力をしています。
 
レポーター:
「うすくち」しょうゆの方が「こいくち」しょうゆより塩分が多いと聞いたのですが。
キッコーマン:
しょうゆには「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」の5つの種類があります。この中で一番消費が多いのが「こいくち」しょうゆで、全生産量の約8割を占めています。
ご質問にありました「うすくち」しょうゆですが、この"うすくち"は漢字で書くと"淡口"と標記されます。つまりしょうゆの色が「こいくち」より淡いということなのです。 もともと淡口しょうゆは京都料理で使うローカルなしょうゆでした。
それぞれの製法はほとんど変わらないのですが、「うすくち」は「こいくち」に比較して高い濃度の食塩水を加えることで発酵を抑え、色が濃くなることを防いでいます。
よって「うすくち」の方の塩分が1~2%高くなっているのです。 この点に関しては、お客様の理解が十分でないので、業界全体としてPRしていくことが重要であると考えています。
 
レポーター:
「しろしょうゆ」はどのようにあの色を出しているのか。
キッコーマン:
しょうゆの色は原料の配合によって決まります。「こいくち」「うすくち」「さいしこみ」しょうゆは、原料である大豆と小麦が1:1の配合で作られています。赤く透明な褐色は、大豆と小麦から作られるアミノ酸と糖分が混合して加熱されることによってできます。
「しろしょうゆ」は、小麦が主な原料で、少量の大豆を加えて麹をつくり、食塩水を加えるという方法で色が濃くなるのを抑えています。この製法によって、水あめのような色が作られているのです。
レポーター:
減塩しょうゆは普通のしょうゆに比べてあまりおいしくないと感じるのだが。
キッコーマン:
しょうゆの味は「甘味」「酸味」「塩辛味」「苦み」「うま味」の5つの味のバランスで成り立っています。減塩しょうゆの塩分は、通常のしょうゆの2分の1程度となっているので、しょうゆの味を構成する5つのバランスが崩れています。したがって、通常のしょうゆに比べて味として不利な状態にあります。今後、品質改良などによりお客様に満足していただける味作りを目指していきたいと思っています。
 
レポーター:
しょうゆの消費量が減少していると聞いたが、その対策は何か考えているか。
キッコーマン:
家族3人の家庭におけるしょうゆの消費量は、1カ月で約1リットル弱。1人あたりに換算すると1年間で約8リットルを消費していることになります。このうち、家庭で消費している量は約4割、外食などで約6割が消費されています。
市場全体としてここ10年間、売上はほとんど変わりません。しかし、いわゆる「しょうゆ」という形での消費量は減少傾向にあります。そのかわり、しょうゆをベースにした「つゆ」や「焼肉のたれ」が「しょうゆ」そのものに比べてだんだんと消費量を増やしています。ですので、トータルでの消費量は変わらないということになります。
今後の課題としては高齢化社会に対応した商品を提供していきたいと考えております。特に塩分を気にされる方への「おいしい」減塩しょうゆの提案は大きなテーマです。塩分を減らす事による味に対するデメリットをできるだけ少なくしたいと考えています。
また海外へも積極的に進出して、世界全体でのしょうゆの消費量を拡大していくことにも取り組んでいきたいと考えています。
レポーター:
粉末のしょうゆはあるのか。
キッコーマン:
日米共に生産をしております。例えば日本と同様アメリカでもカップラーメンは人気食品です。これらの製品に粉末のしょうゆが使われています。アメリカでの総生産量の約10%が粉末しょうゆになっています。
 
レポーター:
しょうゆの最適な保存について教えて欲しい。
キッコーマン:
しょうゆは、長い間保存しても腐敗するものではありません。ペット容器なら、直射日光の当たらない低温の場所に置いておけば、1~1年半は全く問題ありません。ただし、1度栓をあけたしょうゆは1カ月くらいで使っていただきたいものです。賞味期限が過ぎたら使えないのかというお問合せをよく頂きますが、賞味期限というのは「本来の美味しさを味わっていただける期間」の目安ですので、期間を過ぎたらただちに食用には適さないとは言えません。それではいつまで食べられるかというと、保存の状態などによっても変化の仕方は大きく変わるので一律の期限は設定できません。基本的には賞味期限内に召し上がっていただくのが良いようです。
 
レポーター:
環境への取り組みとして容器の面ではどのようなことに取り組んでいますか。
キッコーマン:
弊社の容器ではその多くがペットボトルになっています。リユースの観点から1升ビンをもっとお客様に使っていただきたいのですが、年々その使用量が減ってきています。
一方ペットボトルのリサイクルですが、地道な取り組みの成果としてリサイクル率がここ数年増加してきています。 ビンを再利用するということは、とてもよい事なのですが、同時に短所も持ち合わせています。たとえば、ビンの洗浄に大量の水を使うということです。過去に雨があまり降らず水不足になったとき、某ビールメーカーには行政からビンの使用を控えるようにという話があったそうです。
 ペットボトル、ビンの両方とも長所・短所があると思うので、環境にとって何が最適なのかを常に考えて、使用する容器を選択していきたいと思っています。
 
レポーター:
しょうゆの効能にはどのようなものがあるか。
キッコーマン:
しょうゆには、料理のおいしさを引き立たせ、食欲を増進させ、胃液の分泌を活発にし、消化を助ける働きがあります。この他にもしょうゆには強い殺菌力があります。大腸菌や赤痢菌などを短時間で死滅させることがわかっています。しょうゆは私たちの食生活を支える縁の下の力持ちといえるのではないでしょうか。
 
出席者の感想から
一般の工場見学では体験できない担当の方々との懇談会に参加することが出来、直接日頃感じていることを申し上げることが出来てよかったです。
食に対する安全性等の関心が高い昨今、実にタイムリーな場でありました。

健康、食の安全などに対する意識が高くなっている現在、企業の方たちの御努力も並大抵ではないと思いますが、消費者の立場に立った商品開発をこれからもしていただきたいと思います。

毎日欠かさず使っているにもかかわらず、知らないことが多く、思いがけず歴史的な知識もわかり、懇切丁寧に説明してくださった方々に感謝しています。

環境報告書がホームページのみで紙での印刷は残さない。従って環境にやさしい対応をしていると言う事で感心した。今後、各企業が取組んでいく内容か。
日本の景気が悪い時にこそ、一流と名の付く企業の淡々とした歩みが頼もしく感じられます。
千歳工場の工場長さんの笑顔と質問に答えていただいた方々の誠実で丁寧な受け答えに感謝しております。

今まで、北海道の消費者モニターや札幌市の生活者モニターなどで、あちこちの工場見学に参加しましたが、今回キッコーマン(株)千歳工場が今までで一番工場の隅々まで清掃が行き届いていてすごいと思いました。
自動販売機の横には、燃えるゴミ、燃えないゴミ、アルミ缶、スチール缶入れと4つの分別箱が設置されていたのにも感心しました。
以 上
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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