高齢者の下着は作っているのか。作っているならサイズはあるのか。また、遠赤外線の下着は、毎日の洗濯に耐えられるものか。
ワコール:
もちろん作っている。サイズも一般の年齢層対象と一緒でフルにそろえている。ブランド名はグランディール・ピュールという。高齢者の方の身体的な特徴―筋肉の力が弱くなり姿勢が悪くなる。皮膚感覚が衰えてくる。呼吸機能が衰え下着の圧迫感が気になってくる―を考慮し、それをカバーできるような商品にしている。ただ、お客様の「幾つになっても美しくありたい」という気持ちを裏切らないように、下着の外見はできるだけ若い人たちのものと同じようにし、内側を工夫している。
遠赤外線の下着については、当社では、”15分間の攪拌を100回以上繰り返す“という製品の洗濯テストを行なっている。それでも何ら異常のないものを商品化しているので、通常のご使用であれば耐えられる。ただし、当社以外のたとえば東南アジアからの輸入商品の中には、そうした品質基準を満たしていないものがあるので、値段との兼ね合いもあると思うが注意が必要だ。
高齢化社会になってきており、体型や姿勢が悪くなる人も多くなる。医療機関と提携したりして、おしゃれっぽくて医療効果もあるような高齢者向けのものを考えていただきたい。どうしても若い人だけを対象にしている印象を受けるが。
ワコール:
先ほど申し上げた高齢者用の下着開発では病院や医学部の指導を受けている。
たとえば外見は普通の商品と同じだが、裏側の生地を2重にして、緩みやすくなる股関節を自然に締めるように圧力がかかるようになっているものがある。このような商品は理学療法士などの協力のもと、多くの方にご紹介していただくよう努力はしている。医療機関が紹介してくれれば、もっと広まるのだろうが、医療用具としての認定を受けていないこともあり、そういうことをしてもらうことはできない。したがって専ら店頭で販売している。
高齢者用の方に対して、機能や効用など適切な説明をする必要があるので、婦人肌着売場内に、専門のコーナーを設置して対応している。新宿の京王百貨店など全国の主要百貨店で紹介しており、ワコールの通信販売でもお求めいただける。
女性の下着に比べ男性用は普及が遅れているようだが、これからの展望は。
ワコール:当社は、女性に美しくなっていただくことを会社の目標にしており、あくまで女性のお客様向けの商品が中心で、これまでは、男性用といえばペアのパジャマ程度だった。しかし、最近力を入れているCW-X(Conditioning Wear X)というウェアには男性用もある。これは、そもそも筋力の弱い女性のために、筋肉の動きを無駄がないようにするためのサポート用のウェアとして商品化したものだった。ところが、その効果を整形外科の先生が認めご紹介をしていただいたりしたことで、男性用の要望も出てきたため作り始めたものだ。例えば大リーグに行った有名な選手をはじめ、多くのプロ野球選手がトレーニングで使用している。このように、男性用についても徐々にフォローしていく考えだ。
昨今、環境ホルモンが問題になっているが、その点については十分にチェックしているのか。
ワコール:
直接肌に触れる商品が多いので、天然繊維、合成繊維にかかわらず材料の安全性チェックは重要だと考えている。素材メーカーや染色業者がいろいろな薬品を使っているので、これら全製作工程でトータルにチェックしなければならない。具体的には、皮膚刺激性の面からホルマリンなどのテストを行い、有害物質をはじめ法律・行政指導のあった化学物質などを排除している。チェックも、パッチテストといって、実際に人間の上腕に貼り付けて、薬品類が反応するかどうかの検査をしている。したがって商品化されているということは安全であるということだ。
現段階では、化学繊維が人体に影響を与えるかどうかということについては、まだ明確になっていない。しかし当社では、「疑わしき素材は使用せず」ということを原則にしており、ショーツの股布などは、コットン以外使用していないのでご安心いただきたい。
パッチテストは全製品やっているのか。それとも新素材だけか。
ワコール:私どもの商品ブランドに、「イアス」というものがある。これは「いいアース」という意味で、地球に優しく人間にも優しい、つまり肌に刺激性のない素材で構成された商品だけに付けたブランドだ。このブランドを付けた商品については、皮膚科の先生方にご指導をいただき、全品パッチテストをしている。それ以外の商品では、すでに評価済みの素材を使用しているものは別として、新素材を採用するものについて、パッチテストを行なう。
下着、衣類は焼却処分される。燃やした時の大気汚染に関してはどう考えているのか。
ワコール:直接肌に触れた下着だから、衛生面も考慮して、消費者の皆さんは焼却ゴミとして出されていると思う。私どもの縫製会社でも、製作途上で出た裁断くずは焼却処理をするが、自社での焼却は、今では全面禁止にしているため、公的に認可を受けた設備を持っている業者に処理をお願いしている。したがって、焼却した時に有毒ガスを出すような素材を使わないよう徹底している。ただし、廃棄物そのものを減らす努力も不可欠だ。材料の再利用やリサイクルも検討しながら、廃棄物を減らす努力を続けていきたいと考えている。
海外とくに中国での縫製が非常に増加している。御社の現状および技術指導などについて伺いたい。
ワコール:海外縫製商品は今、ユニクロに代表されるようにかなり日本に入ってきている。当社でも現地で生産したものは現地で販売することを基本的な考え方にして海外生産を行なっており、中国、韓国、台湾、タイ、ベトナム、インドネシアなどに生産拠点がある。中でも韓国・台湾・タイは30年近くの実績があり、現在最も生産量が多くなっているのは、やはり中国だ。当社の海外縫製をブラジャーの数量で言うと、ワコールブランドで15%から20%ぐらい、ウィングブランドで50%弱程度だ。私どもの商品はまさしく手作業による固有技術、労働集約の最たるものだ。現地の人たちが技術を習得し、現在の国内生産品クラスの商品を作れるようになるのには、非常に時間がかかる。今後、中国での生産は増えてくると思うが、品質を落とさずに生産量を増やしていかなければならないので、そのスピードは緩やかなものになると思う。したがって、まだまだ国内が中心になると考えている。
アウトソーシングが進む中、技術指導はどうしているのか。
ワコール:私ども本社部門がやっていることは、素材条件・デザイン・試作での製品仕様の決定までだ。実際の縫製は、静岡県や新潟県、福島県といった全国にある工場で行なっているので、当社の技術要員が、縫製の規格書どおりに縫えているかどうかを全品チェックしている。
レポーター:
最近環境会計が叫ばれている。全国的な統一基準がなく、自主的な取り組みとは思うが、どんな取り組みをしているのか。
ワコール:
私どもでは、環境会計を実施する前に、環境報告書を早く出せるようにしたいと思っている。環境会計については、その重要性も理解しており、勉強もしているが、まず、環境活動の報告書を作成してからと考えている。
「紫外線応用機器」とはどういうものか。また、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池は何に使用するのか。
日本電池:
私どもでは電池のほかに照明関係の事業もしている。紫外線応用機器は、「ひかり」を従来の「灯かり」から「働くひかり」として利用したものである。たとえば半導体は、微量の不純物が混じってもいけない。そのための洗浄にこれまではフロンが使用されていたが、現在は、環境上の問題から廃止されている。その代替の洗浄方法として紫外線を使用している。環境に優しい技術と言える。また、インクや塗料の乾燥にも使っているが、非常に速く乾かすことができるので生産性があがり、乾燥に要するエネルギーの消費量が非常に少なく済み、広い意味で環境に貢献していると言えると思う。
次に、小型のリチウムイオン電池は、非常に小型で軽いという特徴を活かして携帯電話やノートパソコンなどの電源などに使われている。例えばNTTドコモの携帯電話であれば、その約50%に当社製が使われている。また大型のリチウムイオン電池は、ガソリンと電池とを組み合わせたハイブリッドカーや、今後重要性が高まる衛星通信などに使われている。ニッケル水素電池は、ヘッドホンステレオやメーカーによっては電気自動車への用途が拡がっているが、当社では現在は作っていない。
子供用のおもちゃに使う電池の消耗が激しい。もう少し長持ちする電池はできないのか。
日本電池:私どもの電池は、先ほどご説明したとおりおもちゃに使われることはほとんどない。従って適切な回答が出来ない。
今後成長が期待されるIT(情報技術)分野での電池の役割と今後の展望について教えてほしい。
日本電池:現在、携帯電話の需要が著しく伸びており、またそれを利用するために通信基地局が必要である。それらの電源として私どもの電池が使用されている。今後もますます伸びていくと思う。また先ほど説明したとおり、衛星通信用の電源も必要になってきており、現在取り組みを強化している。
扱っている製品に、水素ガス発生装置とあるが、爆発防止など、安全管理は大丈夫か。
日本電池:非常に小型のものだが、水素発生装置を作っている。水を分解すると酸素と水素が発生し、それらの混合ガスに火種が関与すると爆発が起こる。当社の水素発生装置は、原理的に水素のみを分離して取出すようにしている。当然のことながら万が一の異常事態に備えて、ガス感知のセンサーや装置内温度、周辺の水素濃度を検出する機能など二重、三重に制御する仕組みにしており、センサーが働くと装置がストップする、いわゆるフェールセーフという考え方で、安全側に装置が作動するので、ご心配のような事故はないと言える。
燃料電池の開発は、どの自動車メーカーと提携していつ頃から開発しているのか。世界の状況と今後の見通しは。
日本電池:
燃料電池の開発については、企業秘密にしている会社が多い。結論だけ申しあげると、自動車メーカーとは現在提携はしておらず、独自で開発に取り組んでいる。
燃料電池にはたくさんの種類があるが、現在、燃料電池といわれているのは一般的に固体高分子電解質型燃料電池を指すことが多い。これは比較的低温で作動でき、非常にエネルギー効率が高いなどの特徴がある。私どもは、1983年からこの燃料電池の研究開発を行なっており、現在は実用化に向けての課題解決に取り組んでいる。実用化に向けては、特にコスト面が大きな課題で、電極の触媒に使う高価な白金を一般に言われている必要量の10分の1程度に抑える技術を開発している。
世界の状況については、自動車以外の用途、例えば定置発電用としても研究されている。自動車関係では、例を挙げればカナダの燃料電池メーカーが大手の自動車メーカーなどと共同開発をしており、2003年から2004年に実用化するという話も聞いている。
燃料電池を搭載した電気自動車は、見通しとしては2003年から2005年ごろに試験的な車が完成し、本格的に実用化されるのは2010年以降になると思われる。ただ自動車メーカーの開発意欲が高く、課題の克服状況によっては実用化の時期が早まる可能性もあると思う。
製造業のアウトソーシングが進む中、技術指導はどうしているのか。
日本電池:これまでは品質保証本部が、製品の品質管理教育を担当してきたが、これからのアウトソーシングを考えた場合、委託先の方たちの教育をどうするのかということが大きな課題になってくる。品質の低下などを招かないよう、4月からの新年度の1つの課題として取り組んでいきたいと考えている。
工場を拝見して、電池の単純な構造を目の当たりにし、参入企業がたくさん出てきてもおかしくない業種だということを感じた。しかし、日本電池はシェアが3割以上ある。シェアを保たれている秘訣を教えてほしい。
日本電池:電池は見た目には非常に単純だが、高度なノウハウが詰まっている。特に鉛蓄電池については、蓄電池5社以外は参入してこないと思う。ただし、リチウムイオン電池については、従来の鉛電池とは全く状況が異なる。先ほど市場規模の拡大の可能性についてご説明したが、新規参入が非常に多くなっている。将来的にリチウム電池の需要がどんなに伸びても、現存する会社全部が生き残れるとは思えない。数年のうちに淘汰が始まるのではないか。
電池の回収、リサイクルシステムの現状について教えてほしい。
日本電池:
鉛電池に関しては冒頭、会社概要の説明のところで申し上げたとおりである。リチウムイオン電池やボタン電池も含めた小型電池についても、カーバッテリーのような回収ルートを作っているが、残念ながらあまり回収率は良くない。これは、一般家庭で広く使われていることや誰でも容易に交換が出来ることなどから、買い替えられるとポイ捨てされたりごみ箱に捨てられたりするためだ。
いかにこれらの回収率を上げていくかが、今後の大きな課題だ。
工場の臭気対策はどのようにしているか。周辺住民から苦情はないのか。
日本電池:私どもは、近隣から苦情があった場合、全て記録をしている。工場においては、バッテリーに充電する際、水素と酸素の気体のほか、酸霧という硫酸が気化したものが発生する。これは刺激臭があるので、回収装置を備えている。これまで1度、臭気に関して苦情をいただいたことがあり、早急に対処した。それ以降苦情は出ていない。
有害物資といわれる鉛や希硫酸を扱っていると思うが、ISO14001を取得するために工場の整備、例えば土壌汚染対策などにどのくらいの投資をしているのか。
日本電池:ISOの取得と関係なく、創業以来、工場で働く従業員の健康管理や排水対策には取り組んでいるので、ISO取得の前と後では、そんなに大きな差はない。ISOを取得してからの環境対策投資は、年に1億円から1億5000万円程度だ。
日本電池の社屋は、夜電気が煌々と点いていてすごく明るい。周辺住民の方に対して迷惑でないのか。また、省エネに逆行しているのではないか。
日本電池:冒頭ご説明したとおり、私どもでは照明関係の事業もしている。その試験のため、夜間でも消すわけにいかない事情がある。もちろん、周辺の皆様から夜中に明かりは困るという苦情をいただけば、それらの処置を考える。しかし、新幹線線路沿いで周辺に住宅があまりないということもあり、これまで苦情はない。
新製品が出た際の環境アセスメントは非常に重要だと思うが、どのように考えているのか。
日本電池:もちろん、やっている。特に鉛を使用するため、人体に有害であるというイメージが非常に強い。したがって徹底的に環境アセスメントを実施している。リチウムイオン電池についても同様に実施している。基本的には環境への悪弊はないと考えている。
レポーター:
最近環境会計が叫ばれている。全国的な統一基準がなく、自主的な取り組みとは思うが、どんな取り組みをしているのか。
日本電池:
当社では今年から本格的に実施する予定だ。環境会計とは、環境対策に対する投資額(分母)とその効果(分子)を数値で表し、企業の自 主的な努力度を示すものだ。分母の部分、つまり投資にはどういうものが含まれるのについては、環境省からガイドラインが出されたが、分子の部分、つまりそ の投資による環境効果については、環境省からのガイドラインが未だに出されていない。とは言っても、この環境会計の数字を公表することで、他企業と比較さ れるわけであり、当社としても困っていた。そこで、自発的に基準を作成し公表している企業が増えていることから、私どもでも、今年度中(平成14年3月まで)に分子の部分の基準を“日本電池流”に作り、環境会計を公表したいと思っている。
以 上