新川から取水しているとのことだが、この川に生活廃水は流れ込んでいないのか。また、新川の浄化に対して何か取り組みをしているのか。
ニッカウヰスキー:
新川から取水をしているのは、上流に人家がなく生活廃水が流れ込んでいないからです。
一方で工場からの排水は、条例で定められた水質基準以上の数値まで浄化して、新川と合流する広瀬川に流しています。来年度は更に水質基準を上げるため、大規模な投資を行なう計画です。
また、新川の清流を守る姿勢を表す意味において、近隣の子供たちと毎年、やまめの稚魚を放流していますが、これは21年間続けています。冒頭で申しあげました社員による工場周辺のゴミ拾いも功を奏し、年々投棄される量自体が減ってきています。これからも工場内だけでなく、地域の環境保全にも貢献していきたいと考えています。
ウイスキー製造の過程で出る副産物のリサイクル状況について説明して欲しい。
ニッカウヰスキー:
酵母の働きによって糖分からアルコールが生成される際には炭酸ガスも発生します。これを捕集して液体化し、液化ガスメーカーに売っています。収支的には大きく赤字ですが、捕集率を100%に近づけることと、捕集にかかるコストを引き下げることが課題です。
またモルトウイスキーやグレーンウイスキーを製造する過程で出る粕などは、近隣の牧場で飼料として利用されています。
製造工程以外から出る瓶・プラスチック・貯蔵樽の木片・レストランの生ゴミなどの廃棄物についても、リサイクル率100%をめざして鋭意取り組んできています。
カラー瓶のリサイクルが難しいことを考えると、すべて透明の瓶にしていくべきではないのか。
ニッカウヰスキー:
ウイスキーは、これまでカラー瓶や重い瓶が「高級感」があるとして好まれてきました。当社のロングラン商品「ブラックニッカ」は、その伝統もあり、まだ黒い瓶を使用していますが、平成9年に発売して、今当社で一番売れている「ブラックニッカクリアブレンド」は、透明瓶を使用しています。
カラー瓶は、リサイクルが難しいだけでなく、製品の出荷前の最終検査―これは目視でするのですが―の際、混入している異物などを発見しにくいと言う欠点もあります。
また重い瓶は、物流コストがかかりますし、効率が良くありません。順次切り替えの努力をしてきていますし、今後は透明・軽量瓶が主流になっていくと思います。
ただし、リキュールなどの酒類は、直射日光で品質が変わりやすいため、まだカラー瓶を使用しています。これをどのように解決していくかが今後の課題です。
日本酒には、紙パックで販売している商品もあるが、洋酒ではあまり見かけない。なぜか。
ニッカウヰスキー:当社でも「ハイニッカ」などを紙パックで販売していたことがあります。しかし、紙の内側に使用するコーティング剤がどうしてもウイスキーの香りを変えてしまいますし、封を切った後の保存方法の問題もあり結局、取扱を中止しました。
価格の高いウイスキーほど美味しいのか。
ニッカウヰスキー:
値段の高い "17年もの"とか"23年もの"といったウイスキーは確かに、香りも味も奥深いものを持っています。つまり熟成期間が長いということであり、それだけ手間暇(コスト)をかけて造っているわけです。
しかし一方で、熟成期間の短いあっさりしたものを好むお客様がいらっしゃるのも事実です。
つまり、ウイスキーは嗜好品です。美味しさというのも個人の主観です。グラスに注いで、まずその香りを楽しみ、次に水を加えて少し違った香りを楽しむ。これはお奨めの飲み方のひとつですが、要は価格だけでなく、自分に合ったウイスキーを選び、自分に合った飲み方で楽しむことが"一番"ということだと思います。
いただきもののウイスキーを何年も大事にしまっておいたら、「早く飲まなければまずくなってしまう」と言われた。本当か。
ニッカウヰスキー:
確かに、何かの記念日に購入された、あるいはプレゼントされたウイスキーを大事に保存される方はいらっしゃいます。
しかし、ウイスキーの場合、ワインと違って瓶詰めされた商品を長期間寝かせることで味が良くなることは決してありません。アルコール度数が高いので劣化は非常に緩やかではありますが、美味しく召し上がっていただくには、保存状態などにもよるものの、2~3年以内とお考え下さい。
瓶の中では、熟成しないと言うことか。
ニッカウヰスキー:そうです。ウイスキーの蒸留直後の原酒は、アルコール臭の強い無色透明の液体です。それを樽に入れて長期間貯蔵するわけです。その間、呼吸(酸化還元反応)をしながら熟成され、樽材のオークのエキスがにじみ出て色と香りが着いていくわけです。瓶詰めされたウイスキーが熟成することはありません。
モルトは、ここ仙台と北海道の余市で製造しているとのことだが、それぞれの役割とか特徴を教えて欲しい。
ニッカウヰスキー:
北海道工場と仙台工場では気候や風土はもちろん蒸留方法も異なるため、モルトのタイプも異なります。端的に申しあげますと、余市のものは力強く、仙台のものは、まろやかなモルトです。
因みに、両工場のモルトをブレンドしたものを"ピュアモルト"として発売しています。のちほど、マイブレンド教室で皆さんにその違いを体験していただきます。
ニッカは、本当にウイスキーが好きな人を対象にしたウイスキー造りをしているという印象が強い。しかし、"総合酒類提案企業"を標榜するのであれば、顧客層を広げて行く必要があるのではないか。
ニッカウヰスキー:
私どもの会社には品質をどこまでも追求するという、竹鶴政孝の創業精神が連綿と流れています。ですから、品質にはもちろん自信をもっています。
しかし、品質が良ければ黙っていても売れる時代ではないということも分かっています。
"総合酒類提案企業"として幅広い顧客層を対象にした商品ラインアップもそろえています。例えば、「ブラックニッカクリアブレンド」は、比較的軽い口当たりにすることで、若い人や女性、ウイスキーにあまり馴染みのない方にも飲んでいただけるようにしました。
品質の良さにおごることなく、お客様から本当に喜んでいただける商品のご提案をさらに推し進めてまいりたいと考えています。