企業と生活者懇談会
2002年3月5日 千葉
出席企業:宝酒造
見学施設:松戸工場

「環境配慮型商品について」

宝酒造からの説明
会社概要の説明
 私どもは、1842年から酒造りを始め、1925年に「寶酒造」という現在の社名になりました。
 事業の核になっているのは、焼酎、canチューハイ、本みりんです。中でも焼酎の甲類と本みりんの国内シェアは、トップです。
 私どもの事業は、水や穀物など自然そのものと、切っても切れない関係にあります。したがって、「自然を大切にし、それと調和していく」ことが、私どもの 務めでもあります。そのような自然との共生の具体的な取り組みが、「四万十川の清流」や「豊平川のサケ」を守る運動などです。
 また、事業そのものを行っていく中での環境に対する配慮も、当然のことですが、力を入れています。私どもの商品は、容器に入っているものが大半です。その容器の省資源化についての取り組みを3つご紹介します。
 1つ目は、店頭での「量り売り」です。販売店の手間は、かかりますが、大きな反響を呼んでおり、この販売方法は拡大していかなければならないと考えてい ます。2つ目が、瓶のリターナブルです。コストや、お客様の手間などから、業界全体としては減少傾向にありますが、私どもは、一升瓶に加えて720ml瓶 のリターナブル化を積極的に進めています。3つ目が、リサイクルです。例えばペットボトルは、ボトル本体とキャップや持ち手(大型のもの)の素材が別々 で、リサイクルしにくかったわけです。それを同一素材にしました。またラベルも、リサイクルしやすいように、素材や貼り方を改良しました。
 これら環境への取り組みを、数字で整理したものが、「緑字決算報告書」です。内容は、大きく分けて環境負荷削減緑字と社会貢献緑字の2つです。前者は、 製品づくりに使用した資源や生産時のエネルギー使用、CO2排出量などの増減率を、ECOという単位で表したものです。後者は、自然保護活動などへの支出 金額の増減率を、同じくECOという単位で表しています。
 「環境」に対する取り組みは、経営が悪くなると手を抜きがちになるものです。しかし、私どもは敢えて社会に公表することで、社内の緊張感を持続させるようにしています。
宝酒造への質問と回答
レポーター:
リターナブル瓶というが、瓶の回収率はどのくらいなのか。
宝酒造:
一升瓶はリターナブルが義務化されています。その回収率は、業界での平均も、最も一升瓶の商品を多く扱っている私どもでも約90%です。ただし全体として、一升瓶の販売量は減っています。  当社の720ml瓶では、年間で約800万本を回収し、リターナブルしています。回収率は約50%です。
リターナブル瓶は、専門の業者が酒販店から回収していますが、それは、飲食店などで使用されたものが大半です。一般家庭からのものはほとんどが自治体回収にまわり、カレット(ガラスの粒)として新しいガラス瓶に生まれ変わります。ただし、自治体によっては、ゴミの分別をする際に、リターナブル瓶として分けていただいているところもあります。
 
レポーター:
リターナブル瓶かどうか、わからない商品も多いので、表示をわかりやすくしてほしい。また「よかいち」は、リターナブルできないフロスト瓶を使っているが、どうしてか。
宝酒造:
焼酎・清酒・本みりんの一升瓶や「純」などに使用している720ml瓶は、リターナブル瓶です。ラベルの表示が小さいというご指摘もあり、表示の仕方を検討しています。  フロスト(くもりガラス)瓶についてですが、お酒は「目で楽しむ」ものでもあります。それだけに瓶のデザインは重要です。そこで「ZIPANG」については、化学薬品を使わず砂で加工した"エコフロスト瓶"を採用しました。ただし傷に弱いので、リターナブルをせず、ガラスメーカーに引き渡して、リサイクルしています。
 
レポーター:
黒・緑などの色つき瓶は、リターナブルできず、また瓶にもリサイクルしにくいと聞くが、どのようなものに再生しているのか。
宝酒造:
現状ではご指摘のとおりです。そこで私どもは、色つき瓶のカレットを90%以上含む「エコロジーボトル」を積極的に採用するなど、瓶へのリサイクルを進めています。
 
レポーター:
「量り売り」は、実際にどの程度、省資源につながっているのか。
宝酒造:
量り売りは、1998年7月に始めました。現在までの累計で、2.7Lペットボトルに換算して、約120万本分に相当します。これは、私どもで販売する焼酎全体の1%強です。
量り売りをする場合、専用コンテナを設置する場所が必要ですし、販売の手間もかかるため、酒販店の協力が不可欠です。そのようなことから、全国13万酒販店の中で、量り売りをしている店は、まだ120店です。しかし、地道に量り売りの店を増やし、少しでも省資源・省エネに貢献していきたいと考えています。
 
 
レポーター:
料理酒やみりんを、詰替え商品として販売する計画はないのか。環境にも優しいし、価格的にも安くなると思うが。
宝酒造:
料理酒やみりんではないのですが、梅酒などの果実酒をつくる時に使う焼酎を、容器を簡素化したパウチ詰め(900ml入り)で発売しています。しかし、同容量で他の容器にしたものと比べて、あまり売れていません。私どもとしては、消費者の環境意識の高まりや、用途からして高級感がなくても買っていただけるだろうと考えていたのですが、こういう状況です。環境に配慮し、かつお客様に魅力を持っていただける商品づくりという、二律背反的な課題をどのように解決していくかが、私どもの悩みです。
 
レポーター:
酒造りというと「水のいいところ」というイメージがあるが、この工場では地下水を使用していると聞いて驚いた。「松竹梅」もここの地下水を使っているのか。
宝酒造:
清酒「松竹梅」は、"竹中清水"という名水を使用し、京都伏見で醸造しています。瓶詰めは、最大需要地「東京」を控えている、この工場で行っています。
また、水にこだわった商品としては、焼酎「大自然」が、北海道の羊蹄山の湧き水を使っています。同業メーカーの中にも、水の源泉にこだわる会社があります。
しかし、大事なことは、商品に合った水を使うということだと思います。ご指摘のように、この工場で生産する商品に使用している水は、地下水です。もちろん汚染されていませんし、十分な水質分析・検査も行なっています。
私どもは、良い商品を作る要素は水だけではないと考えています。
 
レポーター:
焼酎の原材料が輸入品の場合、原材料の安全性は、どのようにチェックしているのか。
宝酒造:
私どもは、全国に8つの醸造工場を持っています。そこで使用する原材料は、全て本社の購買部で一括調達しています。食品衛生法やJAS法に合致していることはもちろんですが、私どもが要求した品質に合致しているか、場合によりその供給元まで遡って厳密に審査しています。
現在話題になっている遺伝子組換え穀物に関してですが、当社製品の主原料である米・麦について、一切使用していません。
また商品の安全性という点では、最終の製品検査の段階において、目視検査だけでなく、抜き取りによる詳細の成分検査も行っています。
 
レポーター:
この工場は、緑地部分が狭い印象を受けるが、実際は、どうなっているのか。
宝酒造:
工場を建設する場合、工場面積の20%を緑地に、また5%を環境関連施設にしなければならないなど、「工場立地法」で定められています。当然、この工場もその基準を順守しており、これまでも工場施設の増設の都度、対応をしてきております。
 
レポーター:
アルコール類の自販機による販売は、未成年者の飲酒を助長することになり、社会問題である。メーカー側の社会的責任として出来ることはないのか。
宝酒造:
かつて、各メーカーが酒販店に対して、自社商品の自販機の斡旋を競い合っていた時期がありました。しかし、未成年者の飲酒などが社会問題化していることから、私どもは数年前から自販機の斡旋を中止しています。一方で酒販店では、酒類自販機の深夜稼動の停止や、自販機そのものの設置を止める動きを始めました。そして一昨年5月には、全国小売酒販組合中央会の決定に基づいて、全国の酒販店店頭から酒類自販機がなくなることになっていました。しかし、現実にはまだ一部で残っているようです。私どもも未成年者の飲酒を阻止するために、これからも何らかの形で尽力していきたいと考えています。
 
出席者の感想から
●様々な製品を通じて家庭の台所に直結している割には、地味な企業という印象であった。商品の知名度は高いし、素晴らしい製品をたくさん世の中に出しているのだから、もっと宝酒造の顔が見えるように努力しても良いのではないか。

●ずっと昔に、醤油やお酒の量り売りを見たことがある。何でも使い捨ての世の中になったが、環境保全を考えるなら、容器が不要の量り売りなど、昔の知恵に学ぶ必要があると感じた。

●環境問題に熱心に取り組んでいる企業との印象を受けた。「緑字決算報告書」は、消費者にもわかりやすいものであってほしい。アイデア、内容ともに素晴らしいので、わかりやすく広報して消費者を啓蒙してほしい。

●酒類メーカーの社会責任とは、何をさしおいても未成年者の飲酒対策だと思います。自販機の問題だけでなく、ジュースと明確に区別できるデザインなど、業界を挙げて対策をとってほしい。

●「緑字決算報告書」やエコペット、量り売りなど、企業が努力している姿はニュースになりにくい。ホームページでの公開だけでなく、もっと宝酒造自らがPRして他社と差別化してはどうかと思う。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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