企業と生活者懇談会
2002年3月14日 岐阜
出席企業:エーザイ
見学施設:川島工園

「くすりの品質と環境保全活動」

エーザイからの説明
■会社概要の説明■
  私どもエーザイの設立は、1941年です。事業の概要は、病院で使われる医療用医薬品と「チョコラBB」や「ザーネクリーム」などの薬局・薬店で扱われる 一般用医薬品・医薬部外品の製造販売が中心ですが、それ以外にも食品や化学品、アニメイト事業、製薬用機械事業などに力を入れています。
私どもの企業理念を一言で申しますと、「hhc(ヒューマン・ヘルスケア)企業」です。このhhcのロゴは、戦場で傷ついた人々の看護に身をささげたナイ チンゲールの直筆の文字を使っています。治療する側からの発想だけでなく、治療される側の視線で医療を見つめるという思いが込められています。
現在、世界には4万種の病気があり、その3分の2は治療法がわかっていないと言われています。その治療法の解明に向けて、世界の医薬メーカーが、しのぎを削っているわけです。
そのような中で私どもは、筑波、ロンドン、ボストンに研究開発拠点をおき、研究開発に努めています。その成果として、世界的にも認められる医療用医薬品が開発されてきています。  
例えば、2002年2月現在世界55カ国で使われているアルツハイマー型痴呆治療剤の「アリセプト」や、同じく59カ国で使われているプロトポンプ阻害型抗潰瘍剤の「パリエット/アシフェックス」などです。
本日のテーマでもある「品質」につきましては、人命に関わる医薬品を扱っているだけに十分に留意して取り組んでいます。
この「川島工園」では、人間によるミスを防ぐために、ロボットの活用やコンピューターによる徹底した管理を行なっています。
それと同時に大切なことは、医療現場や患者さんが、誤った使い方をしないような医薬品づくりをすることです。例えば、注射剤個々にラベルを貼るとか、医薬品の名前、使用期限や薬効・服用方法をわかりやすい表示に替える、といった取り組みをしています。
最後に環境に対する取り組みですが、当工園は1999年にISO14001を取得しました。工場から出る排水・廃棄物対応や環境に害を与えない包装材の採用、リサイクルなどを積極的に推進しています。
またこの工園は、"緑豊かな公園工場"という創業者内藤豊次の理念を活かし、"木を1本切ったら、3本植えよ"を合言葉に環境保全活動に努めており、現在、敷地の56%が緑地となっています。
こうした努力に対し、平成12年に、岐阜県環境配慮事業所としてモデル工場に指定されました。
エーザイへの質問と回答
レポーター:
工場の排水処理について教えてほしい。
エーザイ:
工場で使用した冷却水や洗浄水は、排水処理施設で浄化し、工園内にある日本庭園の池に流します。池には鯉を放していますし、鴨や野鳥なども飛来してきます。つまり、この池で水質に異常がないことを確認しているわけです。その後、傍を流れる鉄砲川へ放水し、木曽川へと流れていきます。
 
レポーター:
病院をハシゴして、たくさんの薬を処方してもらっている老人をよく見かける。薬の内容を理解できているのか疑問だが、これについて対策はないのか。
エーザイ:
そのようなご指摘は、度たびあります。薬の処方というのは、患者さんの症状に合わせてお医者さんが決めるものですから、別のお医者さんで診てもらって処方された薬を併用した場合は、当然ですが副作用の危険があります。ですから、別のお医者さんに診てもらう時には、「こういう症状で他の病院からも薬をもらっている」と、相談されることをお薦めします。そうすれば、患者さんに合った薬を処方してくれます。また私ども製薬メーカーも、医療現場で誤った使用などがないよう、「適正使用情報」の提供を基本的な活動としています。
 
レポーター:
病院は、すべての薬を把握できているのか。また、新薬が開発されたあと、古い薬はどうしているのか。
エーザイ:
現在、薬は1万種以上あり、病院の先生方が知らない薬もあると思います。しかし、薬のデータベースが整備されていますので、大病院でも小規模の医院でもパソコンで調べることが可能です。
新しい薬が新聞などで紹介されて皆さんの目に触れる機会も多いかも知れませんが、古い薬でも、長期にわたって医療現場で使用されているものはあります。例えば私どもの「ワーファリン」や「ネオフィリン」という薬は、急性の心筋梗塞や喘息に欠かせないものです。古くから使われている薬であるため、今では利益が充分に出ていないのですが、製薬会社として社会的責任を果たすために、提供し続けています。
 
レポーター:
健康保険の自己負担額が上がると、病院でなく、市販薬で対処しようとする人が多くなると思う。しかし、その説明書はわかりにくい。これからは、高齢者が多くなるので、用途や効能、副作用などの説明書を、分かりやすいものにするべきではないか。
エーザイ:
仰るとおり、分かりやすい表示をしなければならないと考えています。私どもは、箱の外側では表示スペースが限られているので、イラストを使った分かりやすい説明書(添付文書)を箱の中に入れるなどの工夫をしています。  同時に、厚生労働省、専門医、製薬企業の集まりである「日本製薬工業協会」でも、医薬品情報の提供のあり方について検討し始めています。
 
レポーター:
エーザイの得意分野は何か。
エーザイ:
私どもの開発領域は、大きく分けて3つです。
1つ目は、神経領域です。アルツハイマー病だけでなくパーキンソン病や多発性硬化症など神経系疾患に対する治療薬です。2つ目は消化器領域です。中でも、潰瘍の治療薬は高い評価をいただいています。3つ目はガン分野です。現在、全く新しいタイプの治療薬を2種類開発中であり、早い時期に、新薬として世の中に出したいと考えています。
 
レポーター:
日本の製薬メーカーは売上・研究開発費ともに、欧米メーカーに比べて少ない。彼等と競争していくためには、研究開発費を増やさないといけないのではないか。
エーザイ:
仰るとおり、売上高や研究開発投資額では、欧米の大手にはかないません。しかし潤沢な資金だけで、優れた研究開発ができるものでもありません。大事なことは、限られた資金の中で最高の開発成果が出せるように、研究開発の領域を絞ったり、研究者のベンチャースピリットを育てたりすることです。
現在、年間約500億円を研究開発費に投じていますが、これを、先ほど申しあげました3つの分野に集中させています。総売上では世界25位あたりにいる私どもですが、神経領域、消化器領域で見ますと、4位くらいにいます。
同時に、売上規模の追求だけではいけないと考えます。医薬品メーカーの使命とは、治療法が解明されていない病気の治療薬を開発することと、先生や患者さんに対して、医薬品の正しい情報を提供し、誤った使われ方がなされないような情報提供を行なうことです。
私どもは、昨年から医薬情報担当者(MR)の売上目標設定をなくしました。現在の評価方法は、売上金額ではなく、先生や患者さんに対して適切な情報提供がなされているか、という観点で行なっています。
 
レポーター:
今後、環境会計システムを構築していきたいということだが。
エーザイ:
私どもは今年初めて、いわゆる『環境報告書』を作成しました。取り組みとしては、早いほうではありません。ただし内容は、単なる環境報告だけでなく、社会貢献活動なども盛り込み、さらに監査法人の監査を受けた『環境・社会報告書』として作成しました。 『環境報告書』で監査を受けている企業は、日本では40社ほどしかありませんが、私どもは、グローバルに通用する『環境・社会報告書』として、充実させていきたいと考えています。
 
出席者の感想から
●製薬会社はトップレベルの環境対策がなされていると思って見学したが、そのとおりだった。これからは顧客に見せられる企業でなければ繁栄はないと思う。その意味でエーザイの取り組みは評価できるものだった。

●利益なくして会社は成り立たないが、エーザイの「患者の視点で医療を見つめる」という企業理念に共感し、それを実践していることもわかった。他の企業もこうあってほしい。

●これまでドリンク剤や胃薬などにしか縁がなかったが、アルツハイマー症やガンなど、今後自分も世話になりかねない治療薬の開発に積極的に取り組んでいると知り、力強く感じた。

●工場排水は安全を確認した上で放流しているとの説明だったが、その放流先は、私たち名古屋市の飲み水となる木曽川である。事故がないよう細心の注意を払っていただくのはもちろん、事故が起こった時に隠蔽することがないようにお願いしたい。

●薬が開発から認可されるまでに10年かかり、しかも製品化される確率が1万分の1と聞いて、非常に驚いた。出来上がった製品を当然のように服用しているが、もっと感謝しなければと痛感した。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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