企業と生活者懇談会
2007年1月17日 東京
出席企業:日本航空
見学施設:機体整備工場

「空の安全と環境について」

1月17日、東京都大田区にある日本航空のJAL M1ビルにおいて、「企業と生活者懇談会」を開催しました。
社会広聴会員20名が参加し、機体整備工場の見学、日本航空の環境・安全への取り組みについての講演の後、質疑懇談を行いました。
日本航空からは、小林宏之広報部付(B747-400)機長、湯浅多喜広報担当役員付部長、地球環境部の大佐古晃マネージャー、広報部の西尾秀樹マネージャー、中村邦彦マネージャー、加藤昭夫氏が出席しました。
日本航空からの説明
■日本航空の歩み■
 2002年(平成14年)10月2日、旧日本航空と日本エアシステムの統合により、新生日本航空(JAL)が誕生しました。JALは、航空輸送事業やこれに関連する事業などを行っています。
 航空輸送事業において、安全運航が何よりも重要と考えるJALは、2006年(平成18年)4月1日に、安全推進本部を新設しました。安全推進本部は、運航・整備・客室・空港・貨物など、全JALグループ会社各部門の安全管理を総括、徹底する組織として設置、運営しています。
 また、情報開示の徹底など、透明性のある組織を強化するために、あらゆるステークホルダーと対話する機会を設けて、双方向のコミュニケーションを実践し、さらなる信頼の構築に努めています。
 JALは、航空輸送事業がお客さまに、より密接な存在であり続けるために、常時航空教室を開催しています。飛行機が飛ぶ仕組みや、エンジンがどのような構造になっているのかなどを、模型を利用して説明しています。

■安全への取り組み(整備)■
 羽田メンテナンスセンターは、文字通り、飛行機(機材)をメンテナンスする整備場です。羽田空港に隣接し、広さは東京ドーム約2個分で、同時に3機まで機体の重整備ができます。
 メンテナンスを行う整備士は、国家資格の一等航空整備士や一等航空運航整備士、機体・エンジン・計器などの専門分野ごとの資格である航空工場整備士の資格が必須です。JALでは、国家資格以外にも社内資格を設定しています。例えば、機材整備の最終チェックといった総合的で高度な技術を要する整備士になるには、平均8~10年のキャリアが必要です。
 また、「団塊の世代」の退職による労働人口低下、いわゆる2007年問題への対応を実施しています。キャリアの浅い整備士とベテランの整備士がお互いの疑問や課題を共有する取り組みをしています。
 通常、ベテラン整備士のみで整備をしている工程において、キャリアの浅い整備士と2名体制にすることで、人材育成だけではなく、安全に対する考え方や高等な技術の伝承を実施しています。

■安全への取り組み(運航)■
 JALは、安全運航を重視する上で、安全文化を土壌とする経営方針を打ち出しています。整備士、パイロットなどの直接運航にかかわる者だけではなく、組織としてのリスクマネジメント、教育訓練システムの拡充、安全情報ネットワークの構築など、運航の安全を確保する多重防護をしき、万全の体制で快適な空間を提供するために、様々な取り組みを実施しています。
 安全運航の最終責任者は、機長です。機長の資格維持には、6カ月ごとの航空身体検査や知識、技量審査、1年ごとの路線における実地審査および定期的な教育と訓練が実施されています。
 安全運航には、機長と整備士のコミュニケーションが不可欠です。運航中に鳥などの障害物がエンジンに混入したり、落雷などがある場合、通信機器を利用して、タイムリーに情報を整備士に伝達しています。また、着陸後、整備士はパイロットの報告書に基づいて、飛行中に起きた様子などを直接パイロットから聞き取り、漏れのないチェックをしています。
 整備・運航における安全への取り組みについての情報公開もしています。ホームページに関連サイトを作成し、過去に起きたトラブル、安全対策などを掲載しています。(JALホームページ:http://www.jal.co.jp/

■環境への取り組み■
 JALグループの環境への取り組みは、化石燃料の消費削減や騒音対策を重要課題としています。
 1950年(昭和25年)と2000年(平成12年)を比較して、機材の技術進歩によって二酸化炭素は75%削減しました。何よりも最新鋭の機材を購入することが環境問題への対応になります。パイロットの訓練は、実機訓練が主ですが、高性能のフライトシミュレーターが開発されており、訓練でのシミュレーターの利用を推進し、燃料の消費を抑えています。
 また、貨物専用機などの窓のない機材においては、無塗装機を採用しています。無塗装にすることで従来1機当たりに使用している塗装量の約150kgが軽減され、機材の軽量化により、燃料の消費量も削減されます。また、塗装作業とそのはくり作業時の化学物質による大気汚染の防止に努めています。
 JALでは、航空産業という利点も生かした活動もしています。1993年(平成5年)から気象庁と日航財団などと共同で、大気観測プロジェクトを発足しました。JALが運航する国際線に二酸化炭素濃度測定器を搭載し、上空の二酸化炭素濃度を定点観測し、確実に上昇している二酸化炭素濃度を長期的に観測しています。
日本航空への質問と回答
社会広聴会員:
航空機材は、どのような視点で、購入するようにしているのでしょうか。
日本航空:
環境対策や経済効率も考慮して購入していますが、大前提として、安全に飛ばせるのかどうか、それから、お客さまに快適に乗っていただけるのかどうかという点を重視しています。この点に最もかなう飛行機は何かという観点で、選んでいます。
航空機材は、大変高い買い物です。パイロットや整備士などを訓練して資格を取り、機材を整備していくことは、時間とお金が掛かります。それに加えて、機種の選定は非常に重要です。10年、20年の単位で物事を考えていかなければいけないので、非常に難しいところです。
ただ、昨今の航空業界全体を見ていますと、大型化から、中型、小型に飛行機の大きさをシフトしています。お客さまのニーズに合った形で、その頻度を上げて効率的に飛行機を飛ばしていくという流れになっています。
 
社会広聴会員:
環境や安全は、経営の安定がなければ集中して取り組めないように思うのですが。
日本航空:
確かに、いろいろ報道されました。ただ、私たちは、社長の西松のもとで一致団結して、課題解決に向けて取り組むように社員一同、非常に燃えていますので、ご安心し、ご利用いただければと思っております。
 
社会広聴会員:
航空会社同士のアライアンス(企業連合)がありますが、JALは加盟しないのでしょうか。また、共同運航上の安全について、どのような取り決めがなされているのでしょうか。
日本航空:
JALグループは、4月に「ワンワールド」というアライアンスに加盟いたします。ネットワークを広げてより利便性を高め、たくさんの方に満足してご利用いただきたいというのが根本的な考え方です。
「ワンワールド」には品質を非常に重視する航空会社が集まっています。また、最近は、監査(オーディット)という、相手の会社を自分の会社がチェックする、これが日常的に頻繁に行われます。JALグループも共同運航の航空会社に対して、オーディットを実施しています。JAL便という名前を付けて、お客さまに安心してご利用いただけるかどうかを監査します。
 
参加者の感想から
●JALは、親方日の丸のイメージが強かったですが、実際に話を伺ってみると、大変好感が持てました。しかし、採算性の面での心配は残りました。

●JALの安全運航、整備面でのその後の取り組みのプレゼンテーションは大変インフォーマティブであり、かつ説得力があったと思います。日本経済の高度成長期を支えたナショナルフラッグとしての誇りをぜひ取り戻してほしいです。

●より多くのユーザーに積極的に発信してほしいと思います。今回配布いただいた『ようこそJALへ』 『CSR報告書』を、機内誌が入れてある場所に置き、乗客が目にする機会を増やすというのは、いかがでしょうか。

●真剣に安全性に取り組んでいることは理解できましたが、まだ一般的に不安だと思っている人もいるのではないでしょうか。もっとアピールすべきだと思います。

●ニュースなどでJALの整備不備を何度か耳にしてきました。今日の説明を聞いていると、これからは安心できると思いました。

●旅客機の整備がいかにコストの掛かるものかを実感しました。営々と積み上げられたJALのノウハウは、いまや日本の国力の一部であり、何が何でも存続されなければならない企業であると思いました。

●忌憚ない意見に対する回答やパンフレットなどから安全に対する取り組みが理解できました。それでもなお、求められる空の安全性、かつてJALが誇りとした全幅の信頼、安心して利用できる空の旅をつくる会社であってほしいとの思いを強くしました。

●命を預かる会社として文字や映像による建前論でなく、従業員も含め真の意味の「人を大切にする」会社であってほしいと思いました。

●機長自ら発した、「機長たるものは誰よりも安全ということに対しては強い信念を持って行動しており、これぞプロ(職人魂)である」という言葉は私にとってこの上ない収穫でした。これが航空界、強いてはJALの使命=経営理念ではないかと思いました。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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