企業と生活者懇談会
2006年10月7日 大分
出席企業:九州石油
見学施設:大分製油所

「暮らしを支える石油を考える」

2006年10月7日、大分県大分市にある九州石油の大分製油所で「企業と生活者懇談会」を開催しました。
16名の生活者が参加し、九州石油や大分製油所の概要および石油を取り巻く動向などについて説明を受け、製油所の施設や接岸していたタンカーなどを見学した後、質疑懇談を行いました。
九州石油からは、松井裕取締役総務部長、金崎高士大分製油所総務部総務グループ長、塩川正教総務部総務グループ長が、また石油連盟からは浜林郁郎総務部広報グループ長が出席しました。
九州石油からの説明
■九州石油の歩み■
 昭和30年代、大分県は国の新産業都市指定を受け、大規模な工場誘致を行いました。その結果、新日本製鐵・昭和電工・九州電力など、国内有数の企業が大分臨海工業地帯に進出することとなり、1960年(昭和35年)に九州石油は進出企業の第一号として、これらの企業に石油製品を供給する狙いで設立され、本社を東京に置きました。
 1962年(昭和37年)、大分県から用地を譲り受けて製油所を起工し、翌年に大分製油所が竣工しました。1964年(昭和39年)には、原油船が初入港し、コンビナート向けに石油製品の販売を開始しました。一方、一般消費者向けに販売ルートを構築するため、九州と関東に地区を限定して、特約店の開拓やサービスステーション(SS)約60カ所の展開をスタートしました。
 その後、大分製油所は設備装置の増設・改造を重ねて生産能力を増強する一方、石油精製・石油製品販売事業に加えて1990年代に石油化学品事業に進出しました。さらに1995年(平成7年)の電気事業法改正を受けて、1999年(平成11年)には石油業界のトップを切って卸供給電力事業(IPP)に参入し、また、SSも現在は約700カ所を九州、関東に展開しています。

■大分製油所■
 大分製油所は別府湾に面した大分臨海工業地帯の1号埋立地に立地する九州唯一の製油所です。高度にオートメーション化され、約500人の従業員で15万5000バーレル、約2万4000キロリットルの原油を1日で処理する能力があります。
 原油は中東の産油国から30万トン級のタンカー3隻が交互に約20日を掛けて運び、原油タンクに一時的に貯蔵します。原油タンクは13基あり、最大のもので10万キロリットルの容量があります。いったん蓄えた原油は常圧蒸留装置にかけられ、約350度に加熱して全部気化させた後、沸点の違いを利用して順次LPG・ナフサ・灯油・軽油・残渣油(ざんさゆ)を取り出します。蒸留された成分は、洗浄したり硫黄分を取り除いたりして精製し、製品にします。こうして、自動車用燃料のガソリン、灯油、航空機のジェット燃料や重油などの石油製品ができます。このほかにアスファルトなども製造・販売しています。
 一方、大分製油所では石油製品のナフサを原料に、ベンゼン、キシレン、パラキシレンの3種類の石油化学製品も製造しています。ベンゼンは自動車のタイヤやナイロンの原料などに、キシレンはパラキシレンの材料になるほか、接着剤やインキなどの溶剤などに、パラキシレンはペットボトルやポリエステル繊維・樹脂の原料になります。
 こうした石油製品・石油化学製品は、陸上・海上・パイプラインの3つのルートを組み合わせ、効率的に出荷されます。

■地域との共生の取り組み■
 地域との共生は九州石油の大きなテーマです。大分製油所では構内見学の受け入れや大分川周辺はじめ近隣の清掃活動、地元の「本場鶴崎踊り」への参加や、「大分国際車いすマラソン」、小学生による「30人31脚大分大会」などを協賛しています。
 また、九州石油全社としては、「九州石油ドーム」のネーミングライツを取得したほか、J1プロサッカーチームの「大分トリニータ」の公式スポンサーとなっています。また、九州石油のシンボルマークは「ストーク」すなわちコウノトリであることから、兵庫県豊岡市が取り組む「コウノトリ野生復帰事業」を積極的に応援しています。

■石油を取り巻く動向■
 世界の原油価格は、この3年余りで2倍以上になりました。その原因として、中国をはじめとするアジア地域での需要の伸びによる世界の石油需給の行き詰まりや、主な産油国が内政面や国際関係面で不安定であることがよく挙げられますが、それ以上に石油商品市場への投機資金の流入が大きく影響しています。今や世界の原油価格は、ニューヨーク商品取引市場の原油先物価格(WTI)の動向に大きく左右される仕組みとなっています。現在、投機資金がこの原油の先物商品市場に流入しているため、実際の需給バランス以上に原油価格が高騰している状況です。
 一方、日本ではいくつもの石油製品に多段階・多重で税金が課税されています。ガソリンを例にとると、原油を輸入するときに石油石炭税が1リットル当たり2円4銭掛かり、SSで購入するときにはガソリン税が1リットル当たり53円80銭掛かります。さらに、消費税はガソリン自体の価格に石油石炭税とガソリン税を加えた全体の価格に対して5%掛かるため、完全な二重課税となっています。例えば皆さんが1リットル144円でガソリンを購入するとき、価格の43.5%、約62円7銭は税金です。
 ガソリン税は税収のすべてを道路の建設と整備に使うことが法律で決められた「道路特定財源」です。九州石油の松井取締役総務部長によると、ガソリン税などの「道路特定財源」は、近年の公共事業抑制によって多額の余剰金が生じており、その分税率を引き下げるべきところ、政府は逆にこの「道路特定財源」を、使途を定めない「一般財源化」することを検討しているとのことです。生活者の皆さんには、ぜひ知っておいていただきたい問題です。
九州石油への質問と回答
社会広聴会員:
大分製油所の環境対策について教えてください。
九州石油:
大分製油所では、大分県や大分市と協定を結び、大気や水質について法律で定められた数値よりもはるかに厳しい自主基準で管理を実施し、定期的にその結果を報告しています。具体的には脱硫による硫黄酸化物の発生量を最小限に減らしたり、水の循環使用によって排水を極力少なくした上で、オイルセパレーターなどで排水に含まれる油分などを除去して水質汚濁を防いだり、騒音や異臭防止に努めたりしています。
これら環境対策について、所内はもちろん所外にも環境モニターを置いて連絡体制をとっています。
 
社会広聴会員:
製油所での環境対策について理解できましたが、環境面でより広く貢献できる見通しがありますか。
九州石油:
最近の例として、日本の石油業界は2005年(平成17年)1月から「サルファーフリー」化、すなわち硫黄分10ppm以下のガソリン、軽油の供給を世界に先駆けて開始しました。これは自動車の排ガス中の有害物質を削減するとともに、自動車エンジンの燃費向上に役立ち、結果として二酸化炭素の排出量を減らし、地球温暖化防止にも有効です。
脱硫装置の開発や設置に石油業界として約3000億円を投じていますが、その費用は各社のコスト削減努力の中で吸収し、製品価格は上げていません。
 
社会広聴会員:
原油価格高騰で石油会社は史上最高の利益を得ていると聞きましたが、石油会社として利益の還元策はないのでしょうか。
九州石油:
原油価格の高騰を受けて売上高も上昇していますが、値上がりした原油を購入するための借入金の増加や、安全操業や環境対策などのための設備投資や研究開発費の出費により、最高益を記録したといっても石油会社の売上高経常利益率は2%台です。これは同じエネルギー産業のガスや電力会社の約9%や、製造業の平均5%台に比べるとかなり低い水準にあります。
先ほど説明しました脱硫装置による環境対策をはじめ、安全対策や安定供給の基盤整備に収益を投じている点をお考えいただければ、様々な利益還元がされているといって差し支えないかと思います。
 
社会広聴会員:
石油製品の小売価格はどのように決まりますか。
九州石油:
ガソリンを例にしますと、九州石油のような石油元売会社がSSに売る卸価格に、製油所からSSにガソリンを運ぶための流通コストや、各SSが決める利益分が若干上乗せされ、小売価格になります。
卸価格には、精製コストが含まれていますが、それはごくわずかで、9割は原油の価格です。従って、原油価格が上昇するとその分は卸価格に転嫁せざるを得ません。卸価格は月ごとに上下します。当社では1月に原油価格が4円上がると2月の卸価格が4円上がり、2月に原油が2円下がると3月に2円卸価格が下がる、というように連動させています。
 
社会広聴会員:
大分製油所のIPPはどのようなものですか。
九州石油:
原油を蒸留して最後に残った残渣油から重油やアスファルトを取り出した後に残る商品価値の低い油を燃やして発電し、販売しています。
供給電力量は最大13万7000キロワットで、九州電力と15年の長期契約を結んで、年間約6億キロワットアワーの電力を卸売りしています。これは大分市の世帯の約5分の1、約4万世帯をカバーできる発電量になります。
 
社会広聴会員:
大分製油所の安全対策について教えてください。
九州石油:
大分製油所は、「安全は凡てに優先する」をモットーに、自前で火災に対する大容量泡放射砲や8台の消防自動車・消防艇1隻のほか、油漏れに対するオイルフェンスなどを配備しています。また24時間の防災体制をとり、日ごろから自衛消防隊を組織して訓練を行い、災害に備えています。
 
参加者の感想から
●現代の豊かな生活が石油製品に支えられていることを実感しました。今後もストークマークを見ると、この懇談会を思い出すことでしょう。

●日ごろ、ガソリン・灯油を使っているのに、どのように製造されているのか、また、ガソリン価格の半分近くが税金ということを知りませんでした。

●石油元売会社での懇談会は初めてと聞きました。今回の懇談会は、九州石油だけでなく石油業界全体の理解にもつながったと思います。

●製油所見学は初めてのことでしたので、勉強になりました。原料を無駄にすることなく、産業廃棄物も出さないという姿勢に感心しました。

●「安全は凡てに優先する」基本を大切にしていることを知り、安心しました。九州の地域力を高めるためにも、お手本となる企業として成長を祈ります。

●地域住民が良い意味での監視を恒常的に行うことが、企業にとっても従業員にとっても、日本経済にとっても発展につながると思います。

●今、なぜガソリンが高いのかなど、石油に関することを詳しく分かりやすく解説してくださり、なぞが解けたようなすっきりした思いでした。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
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