企業と生活者懇談会
2006年9月15日 京都
出席企業:グンゼ
見学施設:グンゼ博物苑、ストッキング工場

「地域社会と共存する企業」

2006年9月15日、京都府綾部市にある綾部本社で、「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員15名が参加し、本社に併設しているグンゼ博物苑およびストッキング工場を見学した後、質疑懇談を行いました。
グンゼからは、加藤進三CSR推進室長、広報IR室の横山渉室長、レディス&レッグカンパニー本工場の長田逸夫工場長、経営戦略部財務経理統括室総務グ ループ(綾部)の樽井敏雄マネージャー、人財開発部グンゼ博物苑担当の川本義博氏、メンズ&キッズカンパニー技術統括課の石川賢三開発課長が出席しまし た。
グンゼからの説明
■グンゼの歩み■
 グンゼは1896年(明治29年)に、何鹿郡(いかるがぐん(現・京都府綾部市))の地場産業である蚕糸業のさんしぎょう振興を会社設立の趣旨として、創業者・波多野鶴吉によって設立されました。
 社名もこの趣旨を反映させて「郡の方針」を意味する「郡是」と定め、地域社会はもちろん、会社をめぐるすべての関係者と共存共栄を目指す会社として、郡是製絲株式会社(現・グンゼ株式会社)がスタートしました。
 創業以来の経営理念である「人間尊重」「優良品の提供」「共存共栄」を通じて、ステークホルダーの信頼にこたえる公正で誠実な企業活動の推進を目指しています。
 2006年(平成18年)は、創立110周年の節目として「不易流行」をキーワードに、経営方針や創業の精神を堅持する「不易」と、事業環境の変化に即応する改革を大胆に推進する「流行」を同時進行しながら企業活動を進めています。

■グンゼの事業展開■
 アパレル事業は、創業当時の技術を継承した事業です。メンズインナーやキッズウェア、レディスインナー、レッグウェア、ホームウェアといった最終消費財を基盤とした事業で、全体の売り上げの61%を占めています。
 機能ソリューション事業は、生産財の部門として、ペットボトルフィルムなどのプラスチックフィルムを生産しているプラスチックフィルム事業と高機能プラスチックを加工してプリンターなどのOA機器の部品を生産するエンジニアリングプラスチック事業、タッチパネルなどを生産する電子部品事業があります。
 また、メディカル部門では、ポリグリコール酸を材料とした国内生産初の体内で分解吸収される縫合糸、やけどや広範囲のアザなどの従来の医療用被覆材だけでは治療できなかった真皮組織の再生を可能にした人工皮膚の真皮欠損用グラフト「ペルナック」などを生産しています。
 これらの機能ソリューション事業の売り上げ規模はアパレル事業に続き、全体の30%を占めている事業となっています。
 ライフクリエイト事業は、スポーツクラブの運営や商業デベロッパーを展開し、地域密着型のタウンセンターや商業複合施設、緑化開発を運営しています。

■グンゼのSR(社会的責任)■
 グンゼの創業以来の経営方針は、SRの基本概念に通じており、積極的に取り組みを実施しています。
 環境問題への取り組みも早く、1970年(昭和45年)に、「公害予防委員会」を設置し、1997年(平成9年)には、「グンゼ環境憲章」を制定しています。
 また、企業倫理強化として、構成員に対しCSRアンケート調査を実施し、「部門CSR委員会」において、企業内で抱えている課題に対して、積極的な改善に努めています。

■グンゼ博物苑・グンゼ記念館の見学■
  「グンゼ博物苑」は、1996年(平成8年)の創立100周年を記念して、発祥の地である京都府綾部市に建てられた蔵を改造し、創業当時の機械・資料を一堂に集めた産業技術史的な資料館です。
 110周年記念事業の一環として、展示内容を以前の「絹蔵、靴下蔵、莫大小蔵」から「歴史蔵、ファッション蔵、新機能蔵」にリニューアルし、創業から現在に至る事業変遷をその当時の時代背景と共に振り返り、最新の事業動向の見学もできる施設に生まれ変わりました。体験コーナーでは、洗剤なしで皮脂汚れが落ちる肌着「エコマジック」の機能に直接触れることができます。
 また、「グンゼ記念館」は、1917年(大正6年)に本社事務所として建造されました。1950年(昭和25年)からは、記念館として創業以来のグンゼの経営姿勢や歩みを中心に、歴史資料を展示しています。主展示室、創業者室、蚕糸室、錦絵ギャラリーなどで構成されています。この記念館は、隣接する建物とともに日本建築学会から保存指定を受けています。

■ストッキング工場の見学■
 グンゼのストッキングは、綾部の本工場と九州グンゼ(宮崎県小林市)、中国山東省済南で生産をしています。
 綾部本工場は、1951年(昭和26年)に生産を開始し、現在では112名体制で、1 日当たり2万8000足を生産しています。
 製品が完成するまでには、原糸という強度に優れたナイロンと伸縮性に富んだポリウレタンを主体に加工し、約400本の針の編み機を使用し、編立しています。
 縫製後は、生地の風合いや伸縮性を損なわない独自の技術で染色され、仕上げとして、金属製の足型に入れ、形成します。製品は全数検査を実施し、ほつれや編みのゆがみなどがないかをチェックし、出荷します。
 ストッキング市場の全メーカー国内販売実績は、1992年度の12億足を境に、2005年度は3億4000万足に減少しています。
1992年度比で 70%強の落ち込みがあり、グンゼでは市場の縮小に合わせて製品生産の内容を変更し、スタイリッシュパンツなどの付加価値の高い商品群に軸足を移し、同工場の生産体制の変革を実施しています。
グンゼへの質問と回答
社会広聴会員:
コスト戦略などで、生産拠点を海外に移されることが多い中で、本工場の目指す姿について、教え てください。
グンゼ:
ストッキング事業は、労働集約型の産業です。競合他社に太刀打ちするには、海外へ生産拠点を移動し、価格競争力を強化する必要があります。
つまり、綾部本工場において、従来と同じようにストッキング生産だけで維持するのは難しいことです。最近のストッキング購買は、ボリューム商品と上質な商品に二極化しています。
ボリューム商品とは、海外生産の値ごろ感のある商品を指しています。上質な商品とは、タイツ、インナーウェア、スタイリッシュパンツなど高付加価値商品を指しています。国内生産については、高付加価値商品を生産することで産業の空洞化に歯止めを掛けようとしています。
アパレル事業以外に、プラスチック事業、メディカル材料などあり、そのような分野は、国内で生産する体制をとっています。地域とともに育ってきた企業として、事業変化に即応できる生産体制を構築し、綾部本工場を稼動していきたいと思っています。
 
社会広聴会員:
地域社会との共生など社会貢献活動をされていますが、具体的な内容を教えてください。
グンゼ:
綾部本工場においては、毎月15日に「クリーン作戦」と称して、工場の周りを清掃するようにしています。休憩の時間を利用しての活動ですが、地域に貢献できればと思い、実施しています。
また、全社的には110周年を記念した社会貢献活動として「グンゼラブアース倶楽部」を発足させました。この活動は、グンゼグループ社員および退職者の有志からなる組織で、毎月100円を一口として任意で拠出するものです。
寄付先は会員に対して事前にアンケート調査を実施し、その結果を参考にした上で決定しています。2006年度は10月に17団体に対して支援を行う予定です。
 
社会広聴会員:
海外における外国人社員の教育制度はどのようにしていますか。
グンゼ:
現地に技術者を派遣して、技能向上を目指す企業が多い中で、当社では、現地のリーダーとなる方を各事業分野ごとに受け入れて、日本と同じ技術とマネジメントを習得するようにしています。そして、現地に戻りリーダーとして活躍してもらうようにしています。
 
参加者の感想から
●モノづくり環境を大きく転換した現在、日本企業は「CSRを念頭に置いたグローバル化」を目指さなければならないと思いました。

●「不易流行」を掲げ、環境の変化には柔軟に対応し、改革にチャレンジする「流行」の追求を巧みに経営に取り入れていることに感服しました。

●品質第一としているグンゼなので、海外生産においても技術指導などしっかりされて、高品質の製品を作っていかれることを確信しました。

●社会的責任について積極的に取り組んでいらっしゃる様子を知ることができ、心から敬意を表したいと思いました。

●グンゼの下着はあまり特売はしませんが、品質に自信があるからだということが今回よく分かりました。

●ストッキングが、いかに人手を経て、ていねいに大切に製造されているかを知り、粗末に扱えないと再認識しました。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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