企業と生活者懇談会
2006年8月8日 愛知
出席企業:日本ガイシ
見学施設:AC工場

「社会環境に資する製品と技術」

8月8日、愛知県名古屋市にある日本ガイシAC工場で、「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員21名が参加し、同工場を見学した後、質疑懇談を行いました。
日本ガイシからは、大鷹昌司AC工場長と上岡崇広報部長、広報部の内田陽子氏が出席しました。
日本ガイシからの説明
■日本ガイシの歩み■
 1919年(大正8年)に日本ガイシは「がいしの国産化」を目的に日本陶器(現ノリタケカンパニーリミテド)から分離して設立されました。がいしは、送電などにおいて電気を絶縁するために用いられる器具です。野外で長期に設置するため、耐性や機械的な強度が求められることから、多くはセラミックス(陶磁器)を素材としています。
 そこで培われたセラミック技術をコアテクノロジーとして、事業を多角化しています。現在、日本ガイシでは、エコロジー(Ecology)、エネルギー(Energy)、エレクトロニクス(Electronics)の3つの領域で製品を開発し、電力、セラミックス、エレクトロニクス、環境装置の4つの事業を展開しています。電力事業としては創業以来の基幹事業である「がいし」を中心に電力の安定供給を支えています。セラミックス事業としては、 1970年代から事業拡大を目指して「ハニセラム(排ガス浄化用セラミックス)」の生産を開始し、現在では事業の中核を担っています。エレクトロニクス事業としては、電子機器や半導体製造装置に各種製品を提供しています。環境装置事業としては、上下水の浄化など、環境保全に役立つセラミック技術を提供しています。

■社会環境に資する製品■
 「日本ガイシはより良い社会環境に資する商品を提供し、新しい価値を創造する」という企業理念のもと、製品を開発しています。
例えば電力事業では、NAS電池を世界で初めて実用化しています。これは、困難とされていた電力の貯蔵を実現したシステムで、必要なときに放電して電力を供給できる技術です。
 また、セラミックス事業では自動車排ガスの浄化に欠かせないハニセラムやディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)を生産しています。これは、セラミックスの耐熱性(融点の高さ、温度上昇による膨張率の低さ)や吸水率の良さ(触媒機能の長命化)を生かしています。また環境装置事業では、セラミック技術を応用した下水処理システムや浄水システムを供給し、環境貢献を踏まえた高品質な製品を世界に提供し続けています。

※NAS電池
正極(+)の硫黄、負極(-)のナトリウム、両極を分離する固体電解質(ベータアルミナセラミックス)からなる電池で、固体電解質のナトリウムイオン伝導性を利用して充放電する電池。電力の負荷平準やバックアップ電源として普及しつつあるクリーンな電池のこと。


※DPF
ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる黒煙微粒子を除去するフィルター。欧米でのディーゼル車の普及や排ガス規制に伴い、需要が拡大している。


■AC工場の見学■
 1970年代の大気汚染に対する世界的な懸念の広がりから、米国で「マスキー法」が成立し、追随する形で日本や欧州なども独自の自動車排ガス規制を導入しました。その規制は年々厳しくなり、対象地域も拡大しています。
 自動車排ガス規制への対応は、エンジンの開発・改良だけではなく、排ガスの浄化装置の開発・改良も進められてきました。
この世界的な規制に応えるべく、1976年(昭和51年)から排ガス浄化用触媒担体としてハニカム(蜂の巣)形状のセラミックスであるハニセラムを生産しています。
 AC工場で製造されたハニセラムはフォード社への供給を皮切りに世界中の自動車メーカーで、欠くことのできない部品として採用され、世界シェアは4割を占めています。現在では中国、ヨーロッパ、アメリカ、インドネシア、南アフリカの工場で年間5000万個以上生産しています。
 また、排ガス規制の強化に合わせてハニセラムの技術も向上し、生産開始時には12ミルだったハニカムを構成する隔壁の厚さは、年々改良され1999年(平成11年)には、2ミルにまで技術開発されました。隔壁をより薄くすることで、触媒の作業温度に達する時間が短くなるだけではなく、セル密度を大きくして排ガスとの接触面積を増やすことができ、より環境に適し製品の生産が可能になりました。

※ミル
1ミルは、1000分の1インチ(約0.025mm)を示す。2ミル(約0.05mm)は、ほぼティッシュペーパー1枚分の厚さに相当。


■環境への取り組み■
 日本ガイシは、「社会環境に資する」という企業理念、エコロジーの事業領域、そしてグリーン経営を経営計画の行動指針に掲げており、これらを上位概念に環境マネジメントを進めています。
 セラミック製品の生産では炭素を含む化石燃料を燃やす焼成工程が不可欠であり、二酸化炭素の排出をまぬがれることができません。地球温暖化防止の観点から、日本ガイシでは炉材の改善や燃焼システムの開発により焼成技術を一層向上させ、生産量を増やしながらも環境への負荷を抑制しています。
 また、セラミック製品を生産した際に発生する副産物の再資源化にも力を入れています。セラミック製品の生産で発生する原料や切削屑、陶磁器屑の再資源率を90%以上にしています。再資源化できない外部処分量を1000トン以下にすることを日本ガイシではゼロエミッションと定義し、2005年度に達成しています。
 生産においてだけでなく、製品開発や設計段階においても環境負荷の低減を推進し、前述の通り水や空気を浄化する環境貢献製品を製造しています。これは企業理念の「より良い社会環境に資する」という文言に則しています。
 このほか、社員全員が事業所の環境目標や各自の環境宣言を記した「環境カード」を携帯するなどして、社員の環境意識を高めています。
日本ガイシへの質問と回答
社会広聴会員:
ハニセラムによって排ガスが浄化されることがよく分かりましたが、今後のセラミックス事業の展開について、どのように考えていますか。
日本ガイシ:
ガソリンエンジンの自動車については、ハニセラムの浄化効率を上げることと、生産の際のコストダウンを求めていきたいと思っています。ディーゼルエンジンの自動車は今後排ガス規制が進むこと、および欧米でディーゼル車が普及していることを踏まえて、中心となる事業の一つであると思っています。
また、会社全体としては、セラミックス事業をコア事業として、産官学が連携した研究開発や、コア事業の周辺事業をM&Aなどで補完、強化することを考えています。
 
社会広聴会員:
社内での環境への取り組みはどうなっていますか。
日本ガイシ:
1972 年に全社環境委員会と専門部門である環境保全室(現:環境品質部)を発足させ、現在に至ります。本社、知多、小牧の3事業所別の環境管理体制と電力、セラミックス、エレクトロニクス、環境装置の4事業別の環境経営管理体制を構築し、国内外のグループ会社や協力会社を含めた環境課題への対応に取り組んでいます。
 
社会広聴会員:
海外に生産拠点があり、また海外市場にも広く進出しています。国も文化も異なる中では、同じ品質の製品を作ることは困難ではありませんか。
日本ガイシ:
同じ製品である限り、厳しい品質管理のもと、同じものを供給し続けます。もちろん使用環境によって異なった仕様が求められることはあり、お客さまに最適な製品を選んでいただけるよう、様々な種類を取りそろえています。
 
社会広聴会員:
ハニセラムなど、日本ガイシの製品を見ると社会に資する活動をしていることがよく分かります。
この内容を多くの人に、特に若い人たちに知ってもらいたいと思いますが、そのための活動を行っていますか。
日本ガイシ:
科学雑誌の『Newton』に「NGKサイエンスサイト」と銘打って、子ども向けの科学実験を連載しています。これは日本ガイシの科学技術を大切にする姿勢を知ってもらいたいために1997年から始めたシリーズ企画です。
また、最近は小中学校の総合学習の時間を利用しての工場見学の受け入れも増えています。「愛・地球博」の開催前には出展の告知を兼ねて、出前授業も5カ所で行いました。PRの仕方は今後も考えていきたいと思います。
 
参加者の感想から

●企業として、セラミック技術から逸脱せずに進んでいることがよく分かりました。もう少し時間があれば、セラミック技術の今後の可能性などを深く掘り下げて伺いたかったです。

●子ども向けの科学実験についての資料は良いものが多く、学校で教材として使いたいと思いました。また、懇談会では担当者の方が一つひとつの質問に誠実な対応をされていて、心を打たれました。

●AC工場内はよく整頓されており、従業員のモラルも高いと感じました。今後もがいしの技術をベースにした製品で企業を拡大していくことが肝要であると思いました。

●ハニセラムを通して地球環境を守るということは驚きでした。地球環境を守る観点から、中高生、大学生に見て、知ってもらう機会を作ってあげてください。「百聞は一見にしかず」です。

●会社の名前は聞いたことがありましたが、何を作っている会社なのか、全く知りませんでした。今回の懇談会を通して、地味で黒衣のようですがハニセラムなど、環境のために必要な製品について、興味を持つようになりました。

●会社案内などの資料を前もって送付していただいたことは、こちらの事前準備として、非常に良かったです。そのおかげで、大変有意義な懇談会になりました。

●工場内を実際に見学させていただき、ハニセラムの製造工程がよく分かりました。また、実際に製造途中の、やわらかい粘土の状態であるハニセラムに触れることができて、大変興味深かったです。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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