企業と生活者懇談会
2006年6月4日 神奈川
出席企業:テルモ
見学施設:テルモメディカルプラネックス

「医療と生活にかかわる企業を考える」

6月4日、神奈川県足柄上郡にあるテルモメディカ ルプラネックスで、「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員17名が参加し、同施設を見学した後、質疑懇談を行いました。
テルモからは、君島邦雄広報室長、古賀智志広報室室長代理、人事部兼研究開発センター管理部総務課の竹田敬治課長、広報室の小川貴子主任部員、桑田恵美子主任、原口和也主任が出席しました。
テルモからの説明
■テルモの歩み■
 テルモは、1921年(大正10年)に北里柴三郎博士をはじめとする医学者らが発起人となり、優秀な体温計の国産化を目指して設立されました。以後、体温計の普及に大きく貢献し、1955年(昭和30年)には、国内生産量の30%を占めて、シェア第1位になりました。
 1963年(昭和38年)に使い切り医療機器の分野に進出し、国産初のディスポーザブル(使い切り)注射筒を発売しました。1982年(昭和57年)には世界初の人工肺を発売するなど、事業領域を拡大しながら日本の医療の発展に貢献してきました。
 また、設立以来「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念を掲げるテルモは、優れた製品を開発し、安定的に供給しています。さらに医療を取り巻く社会的課題に積極的に取り組むという企業活動を通じて、CSR(企業の社会的責任)を果たす努力をしてきました。1984年(昭和59年)には環境に配慮して水銀体温計の生産を中止するなど、「人にやさしい医療」の実現を進めています。

■テルモメディカルプラネックスの見学■
 高度化する医療機器・医療技術に対応し、テルモメディカルプラネックス(以下TMPと略)は、2002年(平成14年)6月に設立されました。
 TMPは、医療従事者の手術や最新医療機器の操作などの「トレーニングの場」、医師とテルモが医療の現場で協力して先端医療機器や技術の開発を行う「ベッドサイド開発の場」、そして様々な学会や研究会に利用される「医療の交流の場」という3つの役割を担っています。
 懇談会の当日は、シンガポール・青森・和歌山など内外の医療関係者が何チームも、手術室やカテーテル室で先端医療機器の操作や手術の実習を行っていました。休憩コーナーは、心身共に大きなストレスがかかる実習者が気分転換を図れるよう、ゆったりとしたスペースになっていました。また、看護師の練習用に設置された注射シミュレーターのコーナーでは、画面上で注射の練習する体験をしました。
 展示コーナーでは、医療機器やテルモの製品の歴史や変遷、および今後の医療機器発展の展望などを学ぶことができました。
テルモへの質問と回答
社会広聴会員:
医師にとって使いやすい医療機器を使うことが、患者にとって希望しない治療方法であるなど、必ずしも患者と医師の要望が一致しない場合、医療機器メーカーとしてはどのように考えているのでしょうか。
テルモ:
過去の製品の中には、医師の意見や要望を中心に開発されたものもあったと思いますが、現在では患者さんのニーズに基づいた製品開発の重要性がますます高まっています。
時代の流れは、患者さんの傷口をできるだけ小さくする「低侵襲治療」に向かっています。患者さんの痛みが少ない、早く退院できる、結果として治療費が安くなる、など多くの点でメリットがある治療方法です。私たちテルモも、その切実なニーズの実現に向けて製品開発に取り組んでいます。
患者さんと医師のニーズの両立という点で、身近な例でご説明しましょう。糖尿病の患者さんは、血糖値を測るために採血をする必要がありますが、患者さんは少ない採血量で済ませたい、医師は正確な測定のため必要な採血量を確保したい、と考えます。その場合、私たち医療機器メーカーは双方のニーズに応えるため、できるだけ少量の採血で正確な血糖値を測定できる、あるいはもっと先をいって、採血せずに測れる技術や製品を開発しようと努力します。患者さんにもやさしく、医療レベルも向上できるような医療機器の開発を目指しています。
 
社会広聴会員:
過疎地のみならず、東京近辺の県でも人口当たりの医師の数は決して多くないと聞きました。こうした課題に対して、テルモは医療機器メーカーの立場から何か対応ができるのでしょうか。
テルモ:
一企業が直接的に解決することは難しいですが、医療従事者の身体的負担を軽減したり、より効率的に治療や検査ができるような医療機器やサービスを開発することで、医療現場の人手不足に何らかのお役に立てるのではないかと考えています。
例えば、狭心症などの検査をする際に、細いチューブ(カテーテル)を血管の中に挿入し、エックス線で血管を映し出しますが、いくつもの細いチューブや小さな部品が必要で、準備に相当な時間がかかります。テルモは、その準備時間を何とか短縮したいと思い「ソリューションパック」という製品を開発しました。
これは検査に必要な器材をワンパッケージにまとめ、使用する順に器材を入れたものです。ただでさえ忙しい医療現場ですから、人手不足はそれに拍車を掛ける大きな要因だと思います。今後は、このような医療の効率化に貢献できる製品をもっと増やして、医療従事者の忙しさを少しでも和らげ、患者さんのケアに注力できる環境づくりに役立ちたいと考えています。
 
社会広聴会員:
医療の中心は患者であり、その周りに医師・看護師・薬剤師・医療機器メーカー・製薬会社などが連携して医療に携わる、というのが理想的な在り方ではないかと思います。医療機器メーカーとしてテルモと製薬会社との連携の事例などありましたら、教えてください。
テルモ:
現在、テルモでは新薬の開発は行っていませんが、製薬会社と一緒になって医療ニーズの実現に取り組んでいる分野もあります。
例えば、薬剤の取り違えを防ぐため、薬液をあらかじめ充填した注射器「プレフィルドシリンジ」という製品があります。これは製薬会社と提携し、既に販売しているものや、現在開発中のものがあります。
また、抗がん剤を小さなカプセルで包んだ製品も製薬会社と共同開発を進めています。これは※リポソームというナノサイズ(1センチメートルの一千万分の1の長さ)のカプセルを作り、その中に抗がん剤を封入するもので、患部に集中的に薬剤を集められることから、薬の投与量を少なくでき、副作用を最小限に抑えることができるのではないかと期待されています。
 
※リポソーム
生体膜の主成分であるリン脂質でできた二重層膜の小胞。
必ず閉じた形状で存在するため、ナノサイズの薬品カプセルの材料などとして、注目されている。
http://bunshi3.bio.nagoya-u.ac.jp/bunshi3/study/talin_Japanese.html 参照

 
社会広聴会員:
『社会・環境報告書2005』を見ますと、「良き企業市民」を目指すという項目がありました。その取り組み事例を教えてください。
テルモ:
「良き企業市民」を目指す活動のひとつとして、地域社会への貢献が挙げられると思います。このTMPがある神奈川県内の看護学校の課外授業や、小学生の体験学習にTMPをご利用いただいています。
また、クリスマスシーズンにはTMPに隣接している研究開発センターの照明を利用してクリスマスツリーやベルなどのイルミネーションをしています。これはTMPの向かい側にあるホスピスに入院している方々に、テルモとして何かできることはないか、との思いから始めたものでもうすぐ10年になります。クリスマス当日には花火も上げているのですが、このような経験はテルモの社員にとっても大変貴重です。毎年一人でも多くの社員が参加できるよう意識しながら、実施しています。
 
参加者の感想から

●医学の進歩に合わせて、技術を習得するための施設を見学できて感銘を受けました。医師だけではなく、誰もが使える医療機器の開発を進める企業の方向性に、我々患者になり得る側としては大変心強く感じました。さらに研究開発が進むことを期待しています。

●TMPで、シミュレーションによる医療技術体験を通じて先進医療の一端を見学できたことは、忘れられません。対応してくださった方々の分かりやすい解説、お話にはとても好感が持てました。

●医療機器だけでなく、わが国やアメリカを中心とする世界の医療状況や課題にまで問題意識を広げることができて、大きな収穫がありました。このような素晴らしい施設を一般の人たちも見学できれば、と思いました。

●医療を取り巻く社会的課題に積極的に取り組むという強い使命感で施設を設立したと伺い、感銘を受けました。よりよい医療のためには、医療関係者、患者などが連携することが重要だと再認識しました。休日開催だったので、参加しやすかったです。

●シンガポール・青森・和歌山などの医師たちが休日を使って手術のトレーニングを行っている光景を目の当たりにして、この施設は実際に機能を果たしている 施設であることに感心しました。病院職員の研修の一環として、このような施設を見学して最先端の医療テクノロジーに触れる機会が必要だと感じました。

●一般に見る機会の少ない研修現場や医療機器、また、企業の方との懇談を通じて、テルモに対する理解を深めることができただけでなく、現代社会の医療制度 の実情やこれからの課題、消費者と企業の関係や環境問題など、非常に多岐にわたるテーマについて見聞することができました。テルモの方々にとっても、病院 や大学などの医療従事者の視点とは違った生活者からの意見を聞く良い機会ととらえていただけたら幸いです。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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