企業と生活者懇談会
2006年3月10日 静岡
出席企業:協和発酵工業
見学施設:富士工場

「生活に身近な企業を考える」

3月10日、静岡県駿東郡にある協和発酵富士工場で、「企業と生活者懇談会」を実施しました。22名の社会広聴会員が参加し、医薬品などの製造工程を見学した後、質疑懇談を行いました。協和発酵からは富士工場の斉藤博満工場長、村井信夫製造部長、清水正彦環境安全室長、松井右近総務部長、遠矢泰士総務課長、総務課の芹沢和夫課長補佐、医薬研究センターの真部治彦マネジャー、ヘルスケア研究所の木崎美穂主任研究員補佐、コーポレートコミュニケーション部の花井哲郎部長が出席しました。
協和発酵工業からの説明
■協和発酵工業の歩み■
 1949年(昭和24年)、日本で初めて糖蜜からアセトン・ブタノールの量産を行った協和産業の第二会社として、協和発酵工業はスタートしました。 1951年(昭和26年)には米国メルク社から製造技術を導入し、わが国で初めてストレプトマイシンを量産して結核の撲滅に貢献しました。また、1956 年(昭和31年)に世界で初めて発酵法によるL-グルタミン酸の生産技術を発明して、調味料の姿を現在のように安価で手軽に使えるものへと一変させました。この発明は後に内閣総理大臣発明賞や学士院賞を受賞しています。このストレプトマイシン製造とL-グルタミン酸製造を介して医薬品事業、食品事業へ進出しました。その後も発酵技術を中核として、医薬品原料や農畜水産事業などに業容を拡大していきました。
 一方、1977年(昭和52年)には発酵廃液の再資源化と水質改善の成果に対して、わが国初の環境庁長官賞を受賞するなど、環境についても早くから取り組み、1998年(平成10年)には焼酎粕の再資源化システムを確立しました。
 現在、事業の選択と集中を進め、医薬事業と発酵法による有用物質の製造販売を手掛けるバイオケミカル事業をコア事業に、ユニークで魅力あるライフサイエンス企業として、持続的な成長と発展を目指しています。

■富士工場の概要■
 富士工場は宇部工場(山口県)とともに協和発酵の医薬品生産を担う拠点で、抗悪性腫瘍剤・抗アレルギー剤など、47品目の医薬品を作っています。薬の剤型は多岐にわたり、錠剤・カプセル・顆粒・注射剤・座剤・シロップ・点鼻薬・軟膏など様々な剤型の医薬を生産し、包装形態別に332種類の製剤化を行っています。粒度を揃えるための篩分・粉砕・計量・混合・コーティング・検査・包装といった工程を、4階建ての富士工場の上の階から順に下の階へと流しています。
 8万2000平方メートル(東京ドームの約1.7倍)の敷地内には、富士工場と医薬研究センターが併設されていて、合計で約800名が働く協和発酵の最大の事業となっています。
協和発酵工業への質問と回答
社会広聴会員:
御社の主要製品にアレルギー性疾患治療剤があります。花粉症をはじめ、最近アレルギー症状を持つ人が増えていますが、アレルギーの効果的な治療薬にはどのようなものがあるのでしょうか。
協和発酵工業:
現在のところ、アレルギー疾患を根本的に治癒させる薬はありませんので、症状を抑えて緩和するしかありません。症状が強く出ている場合には、日本でも欧米でもステロイドを用いるのが、アレルギー疾患治療における基本です。他の薬でも症状は軽くなりますが、やはりステロイドにはかないません。ただしステロイドには副作用があり、使い方を誤ると使用以前よりも症状が悪化する場合がありますので、医師の指示に基づいて使用することが大切です。症状が良くなったからといって急に使用を止めると急激に悪化したり、処置以前よりも悪くなるケースもありますので、要注意です。
また、ステロイドを含めたアレルギー治療剤は、患者さんそれぞれの症状に対し、合う、合わないがありますので、自分の症状・体質に合う薬剤を医師とよく相談していただくのが良いでしょう。
 
社会広聴会員:
アレルギー治療剤を服用する際には、どのようなことに気を付ければよいでしょうか。
協和発酵工業:
神奈川県での調査では、花粉症で病院に行かれる方は全体の半数で、残りの半数は市販薬でシーズンを過ごされるようです。しかし、市販薬は症状のきめ細かいコントロールまではなかなかできません。医師は個人の特性に応じて様々な種類の薬の中から選んで処方してくれますので、症状が軽くても一度病院に行かれた方がよろしいかと思います。
また、運転手のように人命を預かる職業の場合には、眠気や倦怠感などの副作用が出ない薬を、逆に多少眠気は出ても症状をしっかり抑制したいという方に対してはそのような薬を、といったそれぞれのご要望に応じた薬の調整も可能です。
 
社会広聴会員:
富士工場ではどのような環境対策をとっているのでしょうか。
協和発酵工業:
富士工場ではISO14001の認証を2000年に取得し、これに沿って環境活動を推進しております。まず「著しい環境側面」については、(1)ボイラー燃焼時に排出される二酸化炭素(2)ボイラー燃焼時に排出される硫黄酸化物(3)ボイラーで燃焼するLNG(液化天然ガス)の3つがあります。地球温暖化の一因である二酸化炭素については、昨年ボイラーの燃料を重油からLNGに切り替えることによって、2006年度は前年度比で 15%減らせる見通しです。硫黄酸化物排出量は2006年度にはゼロになる予定です。
廃棄物は年間900トン発生していましたが、2005年度は260トン減り、640トンになっています。10年前は廃棄物のうち250トンを埋め立てていましたが、2002年度にゼロエミッションを達成しました。逆に、10年前に100トンだったリサイクル量は現在370トンになっています。
その他、地域貢献を兼ねて月1回工場周辺の清掃を行うほか、6月の環境月間には近くの黄瀬川にある鮎壷の滝の清掃を行っています。

※著しい環境側面
事業活動において環境に多大な影響を及ぼしている、と組織が判断した要素を指すISO用語。

※ゼロエミッション
国連大学が提唱する、産業界における生産活動の結果排出される廃棄物をゼロにして、循環型産業システムを構築する構想。協和発酵の定義では、廃棄物発生量の0.1%以内の埋め立てを指す。
 
社会広聴会員:
環境負荷データについて、エネルギー消費の原単位して製品出荷額や生産量ではなく、工場の床面積当たりで算出していますが、これはなぜですか。
協和発酵工業:
環境活動の成果を定量的に表現するため、どのような指標を選ぶかについては大変苦心してきました。当初、生産量をエネルギーの原単位にしようとしましたが、生産量とエネルギー消費の間には相関が薄いことが分かりました。さらに分析すると、エネルギー消費の60~65%が空調用でした。そこでエネルギー消費と一番関係が深い床面積を原単位とすると、最も環境負荷低減の成果がとらえやすいので、床面積の比率で算出しています。
  
社会広聴会員:
富士工場の防災対策はどのようなものでしょうか。
協和発酵工業:
工場が東海大地震の発生想定地域に立地することから、従業員の安全を第一に、20数年前から対策をとってきました。まず工場の建物の耐震化や機器の固定を実施し、食料・飲料水・宿泊用品などは、工場に待機する保安要員及び帰宅困難者用に1週間分強(1200食)を準備しています。また、工場内に自衛防災団を組織し、防災教育や訓練を実施しています。
従業員の家庭の安全確保も大切な要素です。従業員には複数の安否連絡方法を確保するほか、『家庭内防災ガイド』を全従業員に配布しています。「企業と地域は共存共栄」ですから、自治体からの支援要請には最大限協力を行うスタンスです。また、工場にとって早期の操業再開が重要な使命と考えます。設備や製品の復旧順位を予め定め、早期の生産再開が可能な用意をしています。
 
社会広聴会員:
御社の社会貢献の取り組みを教えてください。
協和発酵工業:
複数の活動を展開していますが、特色ある取り組みは理科・科学教育の普及への貢献です。年に2回、春休みや夏休みに地域の小・中学生を事業所に招いて行う実験教室や科学教室を10年近く続けています。
また、町田のバイオフロンティア研究所では、スタッフが土日にワゴン車に実験機材や顕微鏡を積み込んで、近隣の小・中学校を回り、微生物や遺伝子に関する実験や講義をする、という活動を過去5年間で約50回続けて行っています。
 
参加者の感想から
●床がぴかぴかしてよく清掃され、また工場内に薬品類の匂いが全く無く、衛生的な職場環境でした。庭の河津桜が印象的でした。

●工場内に人が少ないことに驚きました。製品への異物混入を防ぐ観点からも有効ではないかと思いました。

●品質を重視した工程管理に感心しました。以前に他社の工場を見学したことがありますが、それと比較しても相当の差を感じました。

●遺伝子組み換えに関しては、単に食品として口に入らないようにすればよいというだけでなく、遺伝子を組み換えられた品種が、種が飛ぶなどして通常の生態系に影響を及ぼすことの方が大きな問題であると考えています。その意味で、遺伝子を組み換えられた生物を原料として用いる場合は、慎重にご検討いただきたいと思います。

●従業員の40%が女性であり、かつ常時約25名が出産または育児でお休みをとられていると伺い、女性にとって大変恵まれた環境であると感じました。女性にとって働きやすい職場は男性にも働きやすい職場であり、企業価値を高めていると思います。

●『サスティナビリティレポート2005』は充実した内容ですが、外来語が多く、少々読みづらいと感じました。より簡明であればよいと思います。

●質疑の時間が短く感じられるほど、熱心なご説明をいただき、感謝します。特に、研究部門の担当者の応答には開発に対する真面目な姿勢が感じられ、好感が持てました。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
pagetop