企業と生活者懇談会
2005年10月27日 岩手
出席企業:シャノン
見学施設:花巻工場

「生活に身近な企業を考える」

2005年10月27日、岩手県花巻市にあるシャノン花巻工場で、「企業と生活者懇談会」を実施しました。 生活者5名が参加し、花巻工場で樹脂サッシの製造ラインやモデルルームを見学した後、質疑懇談を行いました。
シャノンからは花巻工場の中倉靖司工場長、グループ会社の東北シャノンから伊藤昌彦製造部長と玉山健一総務グループ課長、シャノンが加盟している樹脂サッシ普及促進委員会から浅田健二事務局次長が出席しました。
シャノンからの説明
■シャノンの歩み■
 1976年(昭和51年)、サンアロー化学が日本初の樹脂サッシ「シャノン」の製造・販売を開始しました。その後、企業合併や事業再編を経て、2000年(平成12年)に現在のシャノンが設立されました。
 シャノンは住宅用樹脂サッシの製造・販売を行っています。主力商品の「シャノンウインド」は、高断熱性、高気密性、省エネルギー効果などを持つ高性能樹脂サッシです。
 今回訪問した花巻工場は、シャノンの主力工場のひとつであり、隣接する関連会社の東北シャノンとともに、樹脂サッシの製造・加工にあたっています。現在ではシャノンで成型された樹脂が、東北シャノンで樹脂サッシに組み立てられています。
 また、シャノンは樹脂サッシ普及促進委員会に加盟しています。「快適な住まい」「健康な住まい」「地球環境にやさしい住まい」を社会に提供するために、樹脂サッシ普及促進委員会とともに、様々なPR活動に積極的に取り組んでいます。

■世界の樹脂サッシの歴史■
 1955年、ドイツのヘキスト社が世界で初めて樹脂サッシを開発しました。その後西欧では、住宅の省エネルギー化が盛んになったことや、樹脂サッシの高級化やデザインの多様化などもあり、1980年代にはドイツでの樹脂サッシの普及率が50%を超え、オーストリアやイギリスでも40%を超えました。
 アメリカでは1970年代に樹脂サッシが開発され、省エネルギー施策を進めるための法律が整備されるにつれ普及率が高まり、2000年には普及率が46%に達しました。
 中国では、1980年代に森林枯渇が問題となり、省エネルギー対策として樹脂サッシの導入が活発になりました。2000年には中国北部での普及率が50%に達しています。
 日本では、1976年に製造・販売が開始され、北海道を中心に普及が進みましたが、2000年での普及率は8%となっています。

■住環境の快適性と省エネルギー■
 1980年に「省エネルギー法」(エネルギーの使用の合理化に関する法律)が施行され、住宅の断熱性の基準が強化されました。この基準に従えば、従来の住宅と同じ快適性を保つのに必要なエネルギーが40%程度削減されます。すなわち、住環境の快適性を追求することが省エネルギーにつながります。
 しかし、この基準に従ったとしても、冬の暖房時には、窓から逃げる熱の割合が48%、夏の冷房時には、窓から入る熱の割合が71%に上ります。従って、快適性や省エネルギーをさらに追求するためには、サッシの改善が必要不可欠といえます。
 サッシの断熱性は、8割がガラス、2割がフレームで決まるといわれています。ガラスは、2層にして間に乾燥空気を封入することで、断熱性がアップします(「ペアガラス」)。さらに、2枚のガラスのうち1枚に金属の薄い膜を張って熱を反射させたり(「Low-Eペアガラス」)、2枚のガラスの間に断熱性の高いアルゴンガスを封入する(「ArLow-Eペアガラス」)などという工夫がされています。
 窓全体としての熱貫流率を単純に比較してみると、シャノンの「ArLow-Eペアガラス」は、従来の住宅で用いられていた「アルミサッシ 単板ガラス」の4分の1以下となっています。
 断熱効果が高いことは、省エネルギーに役に立つだけでなく、結露を防いで室内の快適性を保つ効果もあります。サッシの室内側の温度が下がりにくいため、室内にこもった水分がサッシに付着しにくくなります。

※アルゴンガス
空気中にも含まれている無色透明の気体。空気より熱を伝えにくい。

※熱貫流率
建物の窓や壁などの断熱性能を表す指数。内側と外側の温度差があるとき、一定の時間・面積当たり、熱がどの程度出入りするかを表す。数値が小さいほど断熱性能が高い。


■樹脂サッシのリサイクル■
 樹脂サッシの主原料は、塩化ビニル(PVC)という樹脂です。ポリプロピレン、ポリエチレンなどといった樹脂が100%石油を原料にしている一方、PVCは40%が石油で、残りの60%が食塩でできています。そういった意味では、製造の段階から省エネルギーを意識した素材といえます。
 さらに、強度を増すために他の樹脂をブレンドして、サッシとしての性能を高めています。
 PVCは、熱を加えると加工しやすく、冷やすと固まりやすいため、リサイクルが比較的容易です。シャノンでは、加工の際に生じた端材のリサイクルを行っています。また将来に向けて、家屋の建替え時に回収された窓を工場内でいったん粉砕し、他の原料と混ぜて新たな部材に成型することを検討しています。
シャノンへの質問と回答
社会広聴会員:
日本での樹脂サッシの普及率が、他国と比べて低いのはなぜでしょうか。
シャノン:
住宅を建てる際に建築主がサッシを選ぶという習慣が、日本には根付いていないようです。ある住宅雑誌の調査によれば、住宅を建てる際に自分でサッシを選んだという建築主は7%しかいませんでした。
また、先述の「省エネルギー法」で定められている基準は、義務ではありません。従って、建築時の初期コストが比較的大きい樹脂サッシが敬遠されるケースも少なくないようです。
 
社会広聴会員:
地元採用の社員の割合はどのくらいでしょうか。
シャノン:
従業員については、設立当初からほぼ100%が地元採用者です。管理職は、以前はシャノンの親会社であるトクヤマからの出向者が多かったのですが、今では多くが地元採用者です。
 
社会広聴会員:
今後さらに「快適な住まい」を目指すために、現在どういった窓が開発されていますか。
シャノン:
断熱性をさらに高めるための取り組みのひとつとして、2層のガラスの間を真空にするなどといった技術が開発されています。また、ガラスを常に美しく保つため、ガラスの表面に光触媒をコーティングすることで、ガラスの汚れを分解する技術も研究が進められています。最近では、防犯性を高めるために、2層のガラスの間に樹脂フィルムを挟むことで、破られにくい窓が開発されています。今後コストが下がれば、こういった窓が増えていくものと思われます。
また、樹脂サッシを利用されている方々に対して満足度調査を実施しています。樹脂サッシをあらゆる面から良くするために、機能だけでなくデザインなどについてもご意見をいただいています。こうしたご意見を本社にフィードバックし、研究開発に生かしています。
 
参加者の感想から
 ●シャノンという会社名は、今回の見学で初めて知りました。地元でもテレビCMを見掛けません。せっかく優良製品を作っているのですから、もっともっと社会に情報を発信した方がいいのではないかと思いました。

●住宅建築素材は、部品や分野ごとに細分化されていますが、部屋の機密性や結露などの問題は、窓だけでなく壁、冷暖房の電気、換気……と様々な企業の連携が不可欠です。業種を越え

●岩手県内には、酒、水産加工品、乳製品、リンゴやラ・フランスのジュースなど、食品関連の工場も多くあります。また、今、岩手県はIT産業と自動車産業にも力を入れ、企業誘致に取り組んでいます。そういった企業でも「企業と生活者懇談会」が開催される機会があれば、ぜひ参加したいと思っています。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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