企業と生活者懇談会
2005年7月25日 滋賀
出席企業:ダイキン工業
見学施設:滋賀製作所

「生活の基盤を支える企業を考える」

7月25日、滋賀県草津市にあるダイキン工業滋賀製作所で「企業と生活者懇談会」を実施し、社会広聴会員16名が参加しました。
午前中は、家庭用ルームエアコンの需要変化に素早く対応できる「変種変量生産ライン方式」を見学しました。午後の懇談会では、フロンと環境・エネルギー問題、海外生産(中国・欧州)の実情、地域社会との交流などについて質疑懇談を行いました。
ダイキン工業からは、鳥越邦和滋賀製作所長、水野克之空調生産本部長、上野史人開発管理グループ参与、木村茂滋賀製造部長、村田昇品質管理部長、渋谷健三 地球環境室、舩田聡空調営業本部営業部企画部住宅空調担当部長、芝道雄広報部長、飯田敏之総務担当部長、松山政隆顧客関連情報管理担当課長、湯口善輝生産 環境担当課長、浅井長美安全・環境担当課長、山田稔幸総務・地域社会担当課長の13名が出席されました。
ダイキン工業からの説明
■ダイキン工業の歩み■
 ダイキン工業は1934年(昭和9年)、国産飛行機のエンジン冷却に使うラジエーターチューブなどを製造する大阪金属工業として創業しました。翌年、日本初の冷媒用フロンの開発に成功し、フロン式冷凍機メーカーとして発展しました。1951年には日本初の業務用エアコンを開発し、それ以降、業務用エアコンでは常にトップメーカーの地位を保っています。
 滋賀製作所は、1970年に設立された家庭用エアコンの主力工場です。1999年に生産改革に着手し、独自の商品開発と、需要に素早く対応できる変種変量生産方式を導入し、2003年には家庭用エアコンでも国内シェアトップとなりました。「モノをつくるだけの工場ではなく、誰もが心地よく働き過ごせる空間」を目指しています。

■ムダをつくらず、環境にもやさしく■
 ダイキン工業は、変種変量生産ラインという独自のシステムを構築し、稼働させています。これは、これまでのような長いコンベアラインに多くの作業者を配置する方式でなく、「屋台」と呼ばれる作業台で、一人ひとりの作業者が多くの工程を受け持ち、組み立てていく生産方式です。ITシステムを駆使し、最新の市場情報と在庫、部品、人材供給を連動させたもので、「ダイキン流セル生産ライン」と呼ばれています。
 働く人に合わせて作業台の高さや角度をコンピューターで自動調節し、作業手順をコンピューターが適切に指示することで、作業の手を止めずに効率よく次工程に進めることができます。また、早くから「冷媒による環境負荷の低減」と「エアコンの省エネルギー化」にも取り組むなど、まさにムダをつくらず、人と環境にやさしい工場といえます。
ダイキン工業への質問と回答
社会広聴会員:
空調は現時点で環境にどんな影響をもたらし、またどんな対策をとっていますか?
ダイキン工業:
日本におけるエアコンの普及台数は家庭用が約1億台、業務用が700万台です。これらが環境に及ぼす影響は、「冷媒による環境負荷」と「エネルギー消費に伴う地球温暖化」です。
冷媒の対策としては、既にオゾン層を破壊しない冷媒(HFC)への転換を終えていますが、引き続き地球温暖化係数の低い新冷媒の開発を進めています。また、廃棄されたエアコンからのフロン回収破壊事業にも責任を持って取り組んでいます。
さらに、エネルギー消費では省エネ化を図り、電気代は10年前の約2分の1になっています。日本の家庭で1年間に使う電力のおよそ25%がエアコン使用によるものですから、家庭用エアコンの省エネを進めることが、二酸化炭素排出の低減につながります。
ただし、地球規模ではエネルギー効率の良くないエアコンが発展途上国の中国やインドで増えつつありますので、先進国はその技術を発展途上国に伝えていくことが重要ではないかと考えます。
 
社会広聴会員:
ものづくりの技術の継承をどう考えていますか?
ダイキン工業:
製品を作り込む技術の継承には、海外の生産拠点を含めて全社的な取り組みをしています。配管同士を接合する溶接やロウ付け、モノをつくり出す旋盤、商品化のための樹脂成型、板金や熱鋼板の成型、金型の技能などたくさんあります。これをマイスター制度で各戦略技能ごとに、国内だけでなく海外拠点も含めて伝承していくといった仕組みで現在運用しています。
さらに、今後、まだ我々に足りない部分を、どんどん範囲を広げながら継承していきたいと考えています。
 
社会広聴会員:
中国市場の開拓についてお聞かせください。
ダイキン工業:
――中国進出の方法
当社の中国進出は1997年で、上海に工場(上海大金空調有限公司)を建設しスタートしました。しかし当時、既に家庭用ルームエアコンは5百数十社ほどがひしめく過当競争状態にあったため、中国では業務用エアコンに絞り、新型商品で進出しました。
すなわち、中国には今まで無かった天井に埋め込んで四方から風を吹き出す方式のエアコンで市場参入しました。それまで、中国には床に置く業務用エアコンはありましたが、場所をとらない天井埋込式という商品は無く、このニーズをうまくつかんだことが売り上げ向上に寄与したものと考えます。進出当初は数百億円の売り上げでしたが、2002年、2003年には倍々と増え2005年度には売り上げ1千億円が達成できそうです。

――進出に当たって特に配慮した点
先ほど申し上げたように、中国にはエアコンを天井に据え付けるという技術は無いわけです。そこで上海工場の中に据え付け技術習得の研修所をつくり、施工技術の教育に力を入れました。またセールスエンジニアの養成にも力を注ぎ、その結果ダイキンは「世界最先端の商品を高品質で提供する会社」として認められ知名度も向上しブランド価値が上がってきたものと思われます。

――中国の業務用エアコン市場の今後
中国は2008年の北京オリンピック、2010年の(上海)万国博覧会などビッグイベントを控え、たくさんの高層ビル、マンション、病院、レストランなどの建設が進んでいます。これらはすべて業務用エアコンを必要としますので市場は拡大途上と考えます。
今後は生産体制増強や提案営業力の強化で、現地生産販売を加速する計画です。
 
社会広聴会員:
地域社会との交流や貢献活動についてお聞かせください。
ダイキン工業:
地域に愛され信頼されるため、地域住民の方々に対して工場見学会や盆踊り大会(納涼祭)を実施しています。花火をメーンにした滋賀製作所の納涼祭には約 6000~8000人の方々がお集まりになります。淀川製作所(摂津市)や堺製作所(堺市)でも地域ぐるみの盆踊り大会を開催し、交流の輪を広げています。
また、障害者の方々の雇用を促進するため、1993年にダイキンサンライズ摂津を設立し、油圧・空調機器の部品工場として運営しています。
さらに、芸術文化スポーツ振興では、創業70年を機にダイキン工業現代美術振興財団を設立し、国立国際美術館の事業をバックアップしています。
 
参加者の感想から
●今回の懇談会にはダイキン工業から滋賀製作所長をはじめ、各部門の責任者が出席され、真摯な態度で質疑に対応されていました。また、映像を駆使して、分かりやすく説明されるなど、CSRを重視する社風がうかがえました。日本のトップ企業の姿を垣間見て、日本の将来に希望が持てました。

●滋賀製作所を訪れて、玄関先の庭の美しさと手入れの行き届いた植木を見て、心が和みました。見学では、女性が手際良く作業をしている様子が印象的でした。作業台の上には必要な工具が手を伸ばせば使える、作業が終われば手を離すと元の位置に戻るといった、効率の良いシステムが採用されていて、とてもスカッとした仕事振りです。省エネルギーの製品づくりに前向きに取り組み、冷媒による環境への配慮もうかがえます。化学物質の排出削減への取り組みなども環境に重きを置いた製品づくりの滋賀製作所に感銘を受けました。

●空調のトップメーカーであっても、少し前までは地味な会社だと思い込んでいましたが、今や“ぴちょんくん”人気と共に急成長し、業務用、家庭用共にトップシェアを誇る大企業だということを知りました。見学を通じ、若い女性が製造現場で多く活躍されていることを知り、大変うれしかったです。
 さらに、カタログだけではよく理解できなかった「再熱除湿」「光触媒」についても、ご担当の方からの説明を受け、納得いたしました。“ぴちょんくん”のふるさとは、やはり「いやしの素」になる工夫がいっぱいありました。

●ダイキン工業の業績の好調さに驚きました。機器を売り込む際、顧客の立場に立った課題解決型商法が成功の要因に思えました。この商法は、近江商人の「三方よし(売り手よし!買い手よし!世間よし!)」の考えが生かされているように思いました。以前から知っているダイキン工業のイメージどおり、働く人を大切にする企業であると思いました。

●世界を舞台に飛躍されるのは悪いことではありませんが、いつかは飽和状態になることを頭に入れ、「三方一両損」の精神を忘れないでほしいです。また、素晴らしい製品もメンテナンスが大切であり、いかなる製品も「シンプルが一番」ではないかと思います。

●日ごろ目にすることのできないエアコンの製造工程を見学し、従業員の皆さん一人ひとりが、安心して働ける職場環境を従業員自らの手でつくり上げているように思われました。

●家庭用エアコンの省エネ化は、予想以上に進んでいるようでした。企業姿勢として、環境負荷を減らす努力をしている点は好感が持てました。空調の普及が今後も続くと思われますが、いつまでこのような快適な生活ができるか若干懸念を持ちました。

●今、私たち高齢者が集うと話題になるのは、室外機から排出された温かい空気が、道を行く私たちをまともに直撃してくるということです。技術者は、売上増加やデザインも大切でしょうが、温風対策にも力を入れてほしいと願うのは、私たち高齢者だけなのでしょうか。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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