企業と生活者懇談会
2005年3月3日 兵庫
出席企業:新日本製鐵
見学施設:広畑製鐵所

「生活の基盤を支える企業を考える」

3月3日、兵庫県姫路市にある新日本製鐵広畑製鐵所で、「企業と生活者懇談会」を実施しました。社会広聴会員など19名が参加し、廃タイヤのリサイクル工場や鉄の加工工程を見学した後、質疑懇談を行いました。
新日本製鐵からは、広畑製鐵所の勝山憲夫副所長、総務部豊岡典保次長、松田浩マネジャーが出席しました。
新日本製鐵からの説明
■新日本製鐵の歩み■
 1901年(明治34年)に操業を開始した官営八幡製鐵所を母体として、1934年(昭和9年)に日本製鐵が創立されました。1950年(昭和25年)に「過度経済力集中排除法」によって、日本製鐵は八幡製鐵、富士製鐵の2社に分割され、1970年(昭和45年)に再び両社が合併して誕生したのが新日本製鐵です。
 新日本製鐵は、官営八幡製鐵所の操業以来100年あまりにわたり、高品質な鉄鋼を安定供給することで、日本の製造業の競争力を強化し、日本経済の高度化にも大きな役割を果たしてきました。また、発展途上国の産業基盤整備、先進国の生産性向上に貢献すべく、積極的な海外技術協力も進めています。
 さらに、エンジニアリング事業をはじめ、都市開発事業、成長が期待されるシステムソリューション事業、新素材事業、化学事業、そして電力事業など、多岐にわたる事業を行っています。

■広畑製鐵所■
 広畑製鐵所は、日本製鐵第4次拡張計画の一環として建設が計画され、1939年(昭和14年)に操業しました。1993年(平成5年)には高炉を休止し、冷鉄源を原料として溶銑を製造する「冷鉄源溶解設備」を稼働させました。現在は、21世紀の鉄づくりのモデル製鉄所を目指すとともに、兵庫県が推進する「ひょうごエコタウン構想」の中核事業である「使用済みタイヤガス化リサイクル事業」(後述)において、中心的役割を果たしています。
 また、工場独自の取り組みとして、地域社会に様々な形で貢献していて、「夢前川川まつり」などの祭事やスポーツ教室、地域の美化活動などに取り組んでいます。
 この日見学した施設のひとつである熱延工場では、スラブを加熱し、連続熱間圧延機で高速圧延しています。均質の厚みを持つ鉄板を造るための「ペアスクロール方式」を世界で初めて導入するなど、先端技術が取り入れられています。また、スラブの熱延工程はすべてコンピューター制御されていて、わずか4人の社員で運転管理されています。

※冷鉄源
鉄の原料のうち、空き缶やプレス屑などの鉄スクラップ、および粒銑、型銑など。

※スラブ
精錬して溶かした鉄を、冷却して板状に固めたもの。これを圧延することで、コイル状の鉄板(ホットコイル)が造られる。
新日本製鐵への質問と回答
社会広聴会員:
最近では世界的に鉄鋼需要が高まっているとのことですが、それに伴い私たちが購入する最終消費財の価格にも影響が出るのでしょうか。
新日本製鐵:
原料となる鉄鉱石の価格は、2005年度には70%以上上昇する見込みです。また、石炭価格は2.2倍に跳ね上がっています。さらに、輸入の際の船賃も上がっています。これらをトータルすると、鉄鋼業全体で1兆円のコストアップとなっています。
その一方で、鉄鋼メーカーとしてコストダウンを積み重ね、最終消費財への価格面での影響を抑制する努力を図っています。
 
社会広聴会員:
工業用水の入手方法と、排出方法を教えてください。
新日本製鐵:
広畑製鐵所は、製鐵所の西方約6kmのところにある揖保川水系から配管を引いて工業用水を取り込んでおり、企業としては兵庫県内最大の取水をしています。この工業用水を製鐵所内では可能な限り循環させて再利用しており、所内での使用量は120万トン程度となっています。そして利用した水は、最終的には適正に浄化して川や海に帰すようにしています。
排水については水質汚濁防止法上の基準よりもさらに厳しい基準を自治体と設けています。
 
社会広聴会員:
一般の方々が広畑製鐵所を見学する機会はありますか。
新日本製鐵:
兵庫県が実施している産業施設見学プログラム「ひょうごの産業ツーリズム」などを通じて、多くの方が見学に来られます。特に昨年は、「使用済みタイヤガス化リサイクル事業」が稼働したこともあり、2004年4月~2005年1月の間に、従来の年間見学者のほぼ倍にあたる1600名が見学に来られました。
また、毎年8月に、地域の社会貢献活動のひとつとして「緑の町スポーツ大会」という行事を実施しているのですが、この日に地域の方々に製鐵ラインの一般見学を実施しています。
最近では、海外、特に中国の民間、行政関係者の見学が増えています。製鐵所では、英語、中国語のビデオを用意して対応しています。
 
社会広聴会員:
障害者雇用への取り組みについて教えてください。
新日本製鐵:
まず、出入り口の段差解消や手すりなどを設置し、障害を持つ社員に対して働きやすい環境を整備して、主に技術・研究・事務の分野に従事いただいています。
また、障害者の自立を支援するための意見交換会「障害者の集い」に毎年参加し、障害者の雇用ネットワークを活用して採用を行っています。
現在、法定雇用率を上回る障害者が働いていますが、今後ともより多くの方を受け入れられるような体制づくりに取り組みたいと考えています。

※法定雇用率
「障害者の雇用の促進等に関する法律」によれば、国、地方公共団体、一般事業主は、その規模に応じて、社員数のうち定められた割合(=法定雇用率)に相当する数以上の身体障害者または知的障害者を雇用しなければならないとされている(新日本製鐵の法定雇用率は1.8%)。
 
参加者の感想から

 ●製鐵所の象徴であった高炉が撤去されてきれいに整地された跡地に案内された時は、時代の変化を感じ、感無量でした。その一方で、この12年間高炉なしで操業しているにもかかわらず、高炉が稼働していた時代の6 割の粗鋼を生産し、当時と変わらぬ量の鋼材を世に供給し続けているという事実を知り、鉄鋼業は今なお社会で重要な役割を担っていることも再認識しました。

●熱延工場では、真っ赤に焼けた鉄鋼が滑り出し、水に当てられて、水蒸気の立ち上る迫力ある光景を見せていただきました。この工程を管理するのが、わずか数名の若者であることに感心しました。機械化の進展により、省力化の進んでいることがよく分かりました。

●1993年(平成5年)に最後の高炉が止まり、それから新しい鉄づくりに取り組んだこと、廃タイヤやスチール缶自動販売機などのリサイクル……勉強になりました。遠かったですが本当に行って良かったです。

●女性が企業で重要なポストをどの程度占めているかは、女性が企業を評価するうえでひとつの重要な要素になります。女性管理職も消費者の目に触れるところでもっと大勢活躍してほしいと思います。

●SMP法は、初めて知りました。古タイヤが完全にリサイクルされているのには驚きました。高度な技術を開発され、「エコプロダクツ大賞」経済産業大臣賞を受賞されたとのことで、大変な努力のたまものだと思います。これを機に、タイヤリサイクルを皆さんにお知らせし、環境問題に関心を持ってもらいたいと思います。

●昼食前の時間に、従業員の方が工場周辺道路の清掃をしているのを見て、事業所の地域社会に対する理念、関わり方を推察しました。

●もはや鉄の時代はこれまでかと思っていましたが、広畑製鐵所の見学、そして担当者の各種説明・報告を聞いて、それが杞憂だったことを痛感しました。生産工程はより合理化、省エネ化され、製品の品質も格段に向上。韓国製、中国製の鉄には到底真似できないものとか。優秀な品質の材料、世界に誇る製品製造の技術で、日本の製品は今後も世界市場に受け入れられ続けると確信しました。
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