企業と生活者懇談会
2005年2月18日 熊本
出席企業:サントリー
見学施設:九州熊本工場

「生活に身近な企業を考える」

サントリーは創業以来100年あまりの歴史を持ち、現在では、酒類、食品事業などを中心に、日本国内だけでなく、世界各国でも幅広く事業を展開していま す。2月18日、熊本県上益城郡にあるサントリー九州熊本工場で、「企業と生活者懇談会」を実施しました。生活者18名が参加し、ビールや清涼飲料の製造 工程を見学した後、質疑懇談を行いました。サントリーからは、大阪広報部の内貴研二部長、お客様コミュニケーション部の大森幸子課長、九州熊本工場の森田 哲夫工場長が出席しました。
サントリーからの説明
■サントリーの歩み■
 サントリーは1899年(明治32年)、創業者の鳥井信治郎が、ぶどう酒の製造販売を行ったのがその始まりです。その後1907年(明治40年)に、従来のぶどう酒より甘味を多くして飲みやすくした「赤玉ポートワイン」を発売し、1929年(昭和4年)には日本最初の本格ウイスキー「サントリーウイスキー白札」を発売するなど、サントリーの礎となる商品を世に出しました。
 1963年(昭和38年)には社名を「株式会社寿屋」から「サントリー株式会社」に変更し、その後もビールや清涼飲料など、日常生活に潤いをもたらす商品を次々に開発するとともに、1989年(平成元年)には花事業、1993年(平成5年)には健康食品事業など、新規分野にも取り組んでいます。
 海外においても、世界的な酒類メーカーとのネットワークを活用して、蒸溜所やワイナリーの経営に携わり、生産・物流を行っています。
 また、社会活動にも力を注いでいて、商品のユニバーサルデザイン化や、「イッキ飲み」や飲酒運転の防止などといった適正飲酒の啓発活動を実施しています。

※ユニバーサルデザイン
年齢、性別、身体、国籍などが異なる様々な人が利用できるように配慮されたデザイン。例えば、目の見えない人が中身を識別できるように、点字が印刷されたワインボトルや、手の小さい人が持ちやすいペットボトルなどがこれに当たる。


■九州熊本工場■
 ※名水の地・熊本にある九州熊本工場は、業界初の本格的ハイブリッド工場(ビール・発泡酒および清涼飲料の総合工場)として2003年(平成15年)に竣工しました。阿蘇の良質な天然水を使って、ビール・発泡酒4品種、清涼飲料21品種を製造しています。
 また、環境保全活動にも積極的に取り組んでいて、南阿蘇外輪山の102ha(東京ドーム約21個分の広さ) にわたる地域での水源涵養活動とともに、工場敷地の緑地化、太陽光発電、水のリサイクル、廃棄物の再資源化などを行っています。
 工場には年間15~20万人の見学者が訪れます。製造ラインが見学者に分かりやすいように、ライン全体がガラス張りになっています。また、解説用のパネルや映像がふんだんに使われるなど、見学者が一層理解を深めることができます。

※名水の地・熊本
1985年(昭和60年)、環境省は全国各地の湧水や河川の中から「名水百選」を選定した。熊本県からは4カ所が選定され、都道府県別でみると富山県と並び全国最多。また、熊本市の水道はすべて地下水で賄われている。

※水源涵養
森林の植物や土壌を保護することで、雨水を取り込ませ、洪水を緩和して森を守ったり、天然水を貯蔵しはぐくむこと。


■利益三分主義■
 「事業による利益の3分の1は社会に還元し、3分の1は顧客へのサービス、そして残り3分の1を事業拡大の資金とする」。近年、CSR(企業の社会的責任)が注目を集めていますが、創業者の鳥井信治郎は、創業当初よりこの「利益三分主義」を唱えていました。サントリーはこの信念を受け継ぎ、1921年(大正10年)に、社会福祉活動を行う「邦寿会」を設立しました。現在でも特別養護老人ホームや、保育園の経営を行っています。
 また、鳥が環境の変化に敏感なことに着目し、野鳥を通じて自然の大切さを訴える「愛鳥キャンペーン」を1973年(昭和48年)から実施し、鳥類保護活動への資金助成などを行ってきました。
 このほかにも、美術、音楽、スポーツなど幅広い社会文化活動に取り組んでいます。
サントリーへの質問と回答
社会広聴会員:
美術を通じた社会文化活動として、具体的にどういったものがありますか。
サントリー:
東京に「サントリー美術館」を開設しています。私たちの事業分野である酒やお茶にまつわる美術品・工芸品を主に収集しています。
現在、2007年(平成19年)にオープンする新美術館建設の準備のため、美術館施設としての活動を休止していますので、全国各地を巡回して様々な展覧会を開催しています。
大阪には「サントリーミュージアム」があります。サントリーはかつて、時代を先取りした商品ポスターを製作するなど、宣伝広告の分野にも強い関心を抱いていることもあり、世界の秀作ポスターを収集しています。
 
社会広聴会員:
消費者対応への取り組みの歴史、現状、基本姿勢について、詳しく教えてください。
サントリー:
1976年(昭和51年)に「消費者室」を立ち上げたのがはじまりです。1998年(平成10年)には全商品にお問い合わせ窓口のフリーダイヤルを記載し、2003年(平成15年)にはお問い合わせ窓口の受付時間を夜間延長するなど、態勢の強化に積極的に取り組んでおり、現在は年間約12万件のお問い合わせをいただいています。
お問い合わせの中には、いわゆる「クレーム」というものもありますが、私たちはこれらを「ご指摘」と呼んでいます。お客さまは商品を気に入って購入し、気に入っているからこそ時間や労力をかけて問い合わせをされているので、貴重な声だと考えているからです。
ご指摘に対しては、調べた結果をきちんとお客さまにフィードバックします。電話や手紙ではどうしても限界があることもあり、全国各地の営業担当者が直接お客さまをお伺いしてご説明することを基本の対応としております。
「消費者基本法」でもうたわれているように、昨今では「消費者の自立」が必要とされています。そのためには、企業がお客さまにとって必要な情報をできる限り提示すること、ご相談にきちんと対応することが大切だと考えています。今後も、お客さまに長い間ご愛顧いただくこと(カスタマーズロイヤリティ)を意識していきたいと思います。
 
社会広聴会員:
「水のリサイクル」ではどのようなことをされていますか。
サントリー:
工場でくみ上げた水のうち、缶やタンクの洗浄に使用した水などを中心に、48.5%を回収して再利用しています。回収した水は、3段階の温度別に分け、原材料の保温や冷却に使用しています。
このほか、雨水を倉庫の屋根の貯水槽にため、冷却水の補給や散水に活用しています。
 
社会広聴会員:
研究開発体制について教えてください。
サントリー:
 2004年(平成16年)9月に、「商品開発センター」を神奈川県川崎市に設立しました。ここでは清涼飲料、ビール・発泡酒、RTD(缶酎ハイなど、ふたを開けてすぐ飲める飲料)の研究を進めています。これらの商品は競争が激しく、いち早く市場の声をつかんで開発に活かすために、首都圏に位置しているのが特徴です。
また、大阪の研究所では、主に基礎研究(バイオテクノロジー、健康科学など)を行っています。
 
参加者の感想から
 ●ピカピカのタンク、休憩中かと思われるほど人影の少ない工場、これぞ最新式の工場というのを見せていただき、これほどまでに……と昔の工場との違いを感じました。
 また、水資源保護のため、森林保護に力を入れているとのことで、そのノウハウを国内外に広く知らしめて、地球全体の幸せに貢献していただきたいと思います。

●サントリーの企業姿勢がよく分かりました。工場での説明、テレビ画面、ホームページを利用した分かりやすい説明、誰にでも理解できるように構成されている工場内、ディスプレー……。よくできていて脱帽しました。

●サントリーの経営姿勢のすべては、日本の企業の中で著しく抜きん出ています。森を大切にする、資源の循環などすべて理にかなっています。見事といっていいでしょう。
 しかし翻って考えると、これらの活動は、企業が永続するための利益活動にすぎないと見ることもできます。こうした企業行動が、何か特別に「いいこと」をしているかのごとく受け取られることにこそ、問題を感じなければならない時代になっていると思います。

●広くて美しいサントリーの工場、森の中で静かにモノ作りをしている空間は、私にとってたくさんのことを考える良い経験になりました。
 余裕を感じるサントリーの方々の会社説明から、サントリーの力と夢を知りました。学生さんたちが「こんな会社で働きたい」と思う気持ちが理解できたように思います。

●熊本に住み、阿蘇の伏流水に触れることで、本当に水のありがたさを感じます。この土地に工場を造られた貴社の方々に経営方針の素晴らしさを感じております

●駅前からバスに乗り、車窓からすっかり変わった景色を右・左と眺めながら楽しんでいるうちに、九州熊本工場の素晴らしい建物と、取り巻く環境の素晴らしさが目に入りました。工場の中に入り、説明を聞きながら、環境保全に力を入れられているところが見学の中でよく分かりました。
 説明された社員の方々も、なかなか要点をつかんだ説明でよく分かりました。各々の部門で優れた会社だと納得しました。

●初めて「企業と生活者懇談会」に参加しましたが、工場の見学通路の広いこと、とても丁寧な説明、あらゆる場所にちり一つ落ちていない清潔さ……。消費者として安心してサントリーの商品を選ぶことができると確信しました。
 たくさんのことを学び、ますますサントリーを応援したくなり、ファンになりました。せっかくこんな素晴らしい工場が地元・熊本にあるのですから、もっともっと多くの県民に知ってもらい、県民の誇りにしてもらいたいと思います。私の周りの人たちにアピールして、もっと応援していきたいと思います。

●折しも「京都議定書」が発効し、ますます私たち市民も含めて環境問題に取り組んでいかねばならない時になっています。企業の取り組みを家庭でも学んで、自分たちでできるエコ生活を日々実行しなければいけないなあ、と強く思いました。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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