企業と生活者懇談会
2005年1月17日 東京
出席企業:カシオ計算機
見学施設:本社

「生活に身近な企業を考える」

1月17日、東京都渋谷区にあるカシオ計算機本社で、「企業と生活者懇談会」を実施しました。生活者20名が参加し、本社2階のショールーム見学と質疑懇談を行いました。
カシオ計算機からは、総務部の幡谷雅則部長ほか2名が出席し、午後の懇談会には関係部署の役職者の方々3名も同席しました。
カシオ計算機から説明
■カシオ計算機の歩み■
 カシオ計算機は、樫尾4兄弟(忠雄、俊雄、和雄、幸雄)が1957年(昭和32年)に世界初の純電気式小型計算機を商品化し、創業しました。その後、 1972年(昭和47年)に世界初のパーソナル電卓「カシオミニ」を発売し、電卓の個人需要を発掘しました。
 また、1980年代に入ると、電卓以外の商品開発も積極的に行い、電子楽器「カシオトーン」や衝撃に強い腕時計「G-SHOCK」、世界初の液晶モニター付きデジタルカメラ「QV-10」を発売しました。このようにカシオ計算機は、「小型・軽量・薄型・ローパワー」をコア・コンピタンスに、独創的な機能やデザインを持つ商品を次々と世に送り出し、全世界で多くの人の生活を楽しく便利にし、新しい文化を生み出しています。

※コア・コンピタンス
他社には提供できないような利益を顧客にもたらすことができる、企業内部に秘められた独自のスキルや技術の集合体。


■ショールーム■
 本社2階にあるショールームには、デジタルカメラや電子辞書、腕時計など、最新商品を数多く展示しています。また、携帯電話の液晶画面などに使用されているTFT液晶の構造についても、詳しく説明されています。

■経営理念の「創造貢献」■
 カシオ計算機の経営理念は、「創造貢献」です。これは、それまでにない斬新な働きを持った製品を提供することで、社会貢献を実現するという意味を持っています。新しい働きを持った製品は、多くの人の生活を助け、社会を進歩させます。新しい製品が普及すれば、そこには新しい市場が生まれ、様々な周辺産業が育ちます。カシオ計算機はこのように、製品やサービスの提供を通じて、様々な側面から社会に貢献しています。
 また、経営理念の「創造貢献」を社員一人ひとりが実践し、社会に対して責任ある言動を取るための規範となる「カシオ創造憲章」を2003年(平成15 年)6月に制定。その後、社員全員がより理解・実践しやすい具体的な行動基準を記した「カシオ行動指針」も制定しています。

■戦略事業の展開■
 カシオ計算機が発表した2004年度の中間決算は、売上高・利益とも前年度実績を大きく上回るものでした。電波・ソーラー時計、デジタルカメラ、電子辞書、携帯電話、TFT液晶といった戦略事業で、今後とも製品の高付加価値化と差別化を強力に推進・展開するとともに、利益率の改善、資本効率の向上など経営効率化に一層の注力を図っています。
 一方、数々の新製品を投入し各事業を支えるのは、企画力と高い技術力です。例えば「G-SHOCK」は、「寿命10年、防水10気圧、10mの高さから落としても壊れない」という「トリプル10」をコンセプトに開発されました。10mの高さから落としても壊れないものにすることは非常に難しいことでしたが、時計内部の重要部品に衝撃を伝わらなくすればよいと考えました。そして、部品があたかも空中に浮いているかのような構造を開発したのです。こういった発想と技術により、革新的な製品を作り出しているのです。
カシオ計算機への質問と回答
社会広聴会員:
高齢化社会への取り組みは、どのようなことをしていますか。
カシオ計算機:
今後、本格的な高齢化社会を迎えることは、当社にとっても大変大きな外部要因だと考えています。そこで、ことさら高齢化対応ということでなく、例えば、電子辞書に文字拡大機能を搭載するなど様々な工夫や配慮を行い、製品のユニバーサルデザイン化に取り組んでいます。
電卓を例にしますと、見やすく使いやすいキー(ボタン)にするため、キーを大きくしたり、キーとキーの間(ピッチ)を広げたりしています。また、キーの素材にプラスチックを採用し、キーを色分けするとともにキーの配列をシンプルにすることで、見やすさと使いやすさを実現しています。
さらに、手にフィットする形状にし、持ちやすさと安定性を追求したデザインにしています。画面も文字表示を大きくし、ノングレア加工を施し、光の反射を抑え、目にやさしい設計を取り入れています。

※ノングレア
照明などの映り込み(グレア)を少なくすることによって表示を見やすくして眼の疲れを軽減する。表面に凹凸をつけて反射光を散乱させるシリカコーティングや、光の干渉を利用するARコーティングなどの方式がある。
 
社会広聴会員:
社名に「計算機」とありますが、現在の事業内容と懸け離れていませんか。
カシオ計算機:
皆さんは当社の社名にある「計算機」という言葉の響きに多少違和感があるようですが、当社の会長は「社名の『計算機』は単なる電卓を表しているのではなく、今ではすべての電子機器に含まれているマイクロコンピュータを指している」と考えています。その意味では、「計算機」という名称は汎用的なものであり、未来にも通じるものだと考えています。
初心を忘れないという意味でも、現在の社名を今後も大事にしていきたいと考えています。
 
社会広聴会員:
どのように市場ニーズをとらえているのか教えてください。
カシオ計算機:
当社の会長の語録に「発明は必要の母」というものがあります。一般的にいわれているのは「必要は発明の母」ですが、会長はそれを昔の言葉だと考えています。「真の発明とは、まだユーザーが必要だと感じていないものを提示して、必要性を呼び起こさせるような発明のことだ」と言っています。ユーザーのニーズをとらえて、ただそれを作るのではなく、もっと先を見ることが重要だということです。
さらに会長は、「ユーザーの先を行くのはちょっとだけでいい。2歩も3歩も先に進んでしまうと、買ってもらえるまで時間がかかってしまう。だから、ちょっと先を行く製品を発明して、皆さんにこういう使い方があるんだよ、こういう文化があるんだよ、ということを伝えることが重要だ」と言っています。
 
参加者の感想から
 ●創業当初からの企業理念が脈々と流れている企業であると感じるとともに、「軽・薄・短・小・ローパワー」を独創的な技術でクリアされていると感じました。また、特定有望分野に経営資本を投入して、優良製品を次々と開発されている状況がよく理解できました。
 製造現場の一端なりとも見学できれば、もっと懇談会が充実したものになったと思います。

●企業の幹部に会って、直接お話を聞くことは貴重な機会です。外からでは分からない様々なことが分かり、大変勉強になりました。これからもさらに頻度を増やし、様々な企業とこのような機会をつくってくださることを期待します。

●これからは、企業の社会的責任が企業評価の基準になってくる時代です。男性中心で動いてきた従来の社会を女性が市場を通じて変えていく、そんな時代になっていくのではないかと想像します。カシオの技術が人と人をつなぎ、心を潤し、豊かさを実感できる、そんな社会を担う企業として、ますます発展されることを願います。

●社名のカシオが名字だということを、恥ずかしながら今回初めて知りました。樫尾4兄弟の結束の下、「創造貢献」「毎日改善」をモットーとして今日に至る経緯には、ただただ驚かされます。

●生活者が企業の真の姿を理解し、また、企業は生活者の生の声を直接聴くことができ、企業と社会を結ぶプログラムはうまくいったと思います。
 私は、企業で働く一員として、また、地域の生活者として、両方の立場からの視点でこの機会に臨むことができ、参考になりました。

●事前に郵送していただいた会社案内、環境経営報告書で製品などが把握できていて、見学させていただいたショールームがより身近に感じられました。また、開発途中の商品に社員の活気が感じられて、今後の発展に期待が持てる企業、と印象づけられました。
 懇談会の中で、ユニバーサルデザインの高齢者向け製品として電卓を見せていただきましたが、操作が簡単なデジタルカメラと携帯電話を目下物色中ですので、新製品を待っています。

●カシオの企業理念や技術重視の企業風土など、会社として主張するところはよく理解できるが、もう少し突っ込んだ説明が欲しいと思いました。

● 昭和32年に設立された、いわゆる戦後の会社が世界的企業にまで発展された背景というか、秘密が理解できたように思いました。
貢献・創造・挑戦、それらを束ねるチームワーク、そして、創業者4兄弟の信念、人柄、"人を大切にし、信頼する"会社であるからこそ、今日があるのでしょう。
 見習い、そして、もっともっと勉強させてほしい対象の企業のひとつです。今後もこういう機会を与えていただきたいと思います。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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