企業と生活者懇談会
2004年6月4日 京都
出席企業:オムロン京都太陽
見学施設:オムロン京都太陽 工場

「生活の基盤を支える企業を考える」

オムロン京都太陽は、「世に心身障害者(児)はあっても、仕事の障害はあり得ない。身障者に保護よりも働く機会を」を理念とする社会福祉法人「太陽の家」と、「われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」を社憲とするオムロンが共同出資し、1985年に設立されました。企業と福祉の両面をつなぐ役割を果たすことで、障害者の雇用就労の機会をつくり、仕事の安定供給と事業経営の安定を図っています。そして障害者が、自ら働くことにより生きがいを見い出せる環境づくりに努めています。
今回は、関西地区の社会広聴会員19 名が参加しました。
オムロン京都太陽からの説明
■オムロン京都太陽の歩み■
 「太陽の家」は、障害者が社会の一市民として働き、生活する場として、1965年に設立されました。設立以来、「保護より機会を」をモットーに障害者の働く場づくりを進め、障害者が安心して楽しく暮らせるように努めてきました。一方、オムロンはほとんどの企業が生産性や効率性を求め、売り上げと利益の拡大にのみ力を注いでいた時代に、「社会との共生」「企業の社会的責任」といった、  「企業の公器性」をうたったきわめて先進的な企業です。
 両者の関係は、「太陽の家」設立者の故中村裕氏がオムロン創業者の故立石一真氏に、重度身体障害者の社会復帰のための専門工場建設、運営の援助を依頼したことから始まりました。お互いの理念に共鳴した二人は、1972年にわが国初の福祉工場である「オムロン太陽電機(のちのオムロン太陽)」を大分県別府市に設立しました。
 その後も「太陽の家」は、ソニーやホンダなどの大手企業の協力により、障害者を雇用する共同出資会社を設立しました。そして、1985年にオムロンの本社がある京都に「京都オムロン太陽電機(のちのオムロン京都太陽)」を設立しました。

■工場内は知恵と工夫の山■
 オムロン京都太陽の工場は、誰もが無理なく快適に働ける職場環境を目指してつくられています。例えば、段差のない出入口、通常よりも広い通路やエレベーター、車いすでもスムーズにアプローチできる作業台など、あらゆるところに工夫を凝らしています。また、生産工程においては障害者の身体的欠損機能を機械で補い、残存能力を最大限に生かすという考えをもとに運営しています。作業環境の改善や治工具・自助具の導入を進め、知恵を結集して独創的なものづくりの方法を生み出しています。さらに、外部コンサルタントからのさまざまな指導やアドバイスを受けることにより、広い視野と柔軟な考えを持ち、新しい情報も取り入れています。今後も改善を続け、障害者が働きやすい環境を整え、さらに高品質・高生産性の工場を目指しています。

■オムロンデー・クリーンデー■
 オムロンは、創業記念日である5月10 日を「オムロンデー」と名付け、全社一斉に社会貢献活動を行っています。
 オムロン京都太陽も「オムロンデー」に合わせ、車いす介助セミナーや公園の草刈り、清掃などを実施しています。また、毎月1回の「クリーンデー」を定め、事業所周辺の清掃活動を実施しています。自分たちでできる身近な活動が、よりよい社会づくりの一歩になればと考え、企業市民としての役割をまっとうするための努力を続けています。
オムロン京都太陽への質問と回答
社会広聴会員:
作業中のケアレスミス対策を教えてください。
オムロン京都太陽:
まず第一に、人と機械のマッチングを考えます。それは、機械でできることは機械に任せるということです。作業の正確さにおいて、人間は機械にかないません。ただ、作業における改善は繰り返し行っています。
以前、部品の重さを量るラインで、部品を計量器に載せ、良品かどうかの判断をする際に音を出し、人間の耳で聞き分けていたことがありました。しかし、その作業を繰り返し行っていると、やはりケアレスミスをしてしまうこともありました。そこで、ラインの途中にシャッターを作り、良品の時だけシャッターが開くように変更しました。もし、部品を置いてもシャッターが開かなければ、不良品の可能性がありますので、取り出して不良箱や懸案箱に入れるというようにしました。このような工夫を重ね、できるだけポカミスをなくすように努力しています。
 
社会広聴会員:
さまざまな障害を持っている方をどのように適材適所に配置するのですか?
オムロン京都太陽:
適材適所の配置を行うために、入所する際にテストをします。これは単に、能力面で当社の基準に到達するかどうかだけを見るものです。採用時に特に重要なのは、「本人のやる気があるかどうか」です。この工場では、自分のことは自分でできる、身の回りのことは自分でやることが前提になります。
採用した場合は、1週間ぐらいかけてオリエンテーションを行い、その人の持っている能力を確認します。そういった活動を通して、その人に適した、合うと思われるところに配置しますが、どうしても合わない場合は、やはり配置転換し、その人の合うところを探していくことが非常に大事だと思います。
 
社会広聴会員:
改善に対する表彰制度はありますか?
オムロン京都太陽:
1年間の改善活動に対して、毎年創業記念日に表彰式を行います。
やはり自分が改善・改良した事例が認められれば本人も気持ちがいいので、そういうところは楽しみになっていると思います。また、改善・改良内容が社内に貼り出されることで、やる気が起きたり、責任感が持てたりすることもあると思います。
 
社会広聴会員:
日本企業が海外の進出先で、オムロン京都太陽のような工場を作る計画はありますか?
オムロン京都太陽:
オムロンを例に出しますと、中国の大連などにも工場がありますので、そういった工場で健常者と同じように身障者も雇用しています。しかし、オムロン京都太陽のような工場を作るには、「太陽の家」との協力関係があればこそ、という部分もあります。オムロンの力だけで、海外でもすぐにできるものではないと思います。
一方で、発展途上国などでは、身障者の雇用を問題にする以前に、身障者が快適な暮らしがおくれるような状況ではありません。車いすや義足などもまだまだ普及していません。そこで、太陽の家に協力している企業で、「太陽の家企業会」というものをつくりまして、海外の身障者に対して車いすなどを寄付しています。また、現地の人々に車いすのつくり方を教えるという支援も行っています。
 
社会広聴会員:
オムロン京都太陽の社員の方々が、障害者に配慮した製品づくりに協力することはあるのですか?
オムロン京都太陽:
あります。ATM(現金自動預入払機)の開発の際に、当時こちらにいました目の不自由な社員が協力しました。工場内に設置しているATMと同じものです。まず、ATM の設計担当者が、たくさんの発泡スチロールを持ってきました。それをいろいろな形に切り刻み、車いすでもアプローチしやすく、見やすく、操作しやすくという視点で検討し、完成品ができ上がりました。
最近は、「誰でも使える」というユニバーサルデザインの考え方を進めています。例えば、血圧計や駅の券売機なども、文字を大きくするなどの工夫を凝らしています。
 
出席者の感想から
●心身障害者の方々が、立派な職場でいきいきと仕事をしている様子を信じられない気持ちで見学しました。
身体的不足を補うために利用する道具、機械、器具を自分たちの考えのもと、自分たちに合うように工夫改良されての利用など、それぞれに積極的に仕事をこなしておられるご様子、素晴らしいと思いました。

●企業市民として花丸マークをあげたいと思います。身障者運動の中で芽生えた「障害とは個性である」という考え方があります。老いに向き合う私たち全ての問題としても、多様な個性を受け入れる共生の社会づくりが必要であると思いました。

●「オムロン京都太陽」を見学させていただき、その会社理念に基づく経営方針に感動しました。まだまだ障害者の方々が就業できる場は限られています。このような会社が増えていってほしいと強く思いました。

●「障害者に優しい」とはオムロンさんのように生活の糧を得る場を提供し、社会に参加する気概をも得る場を提供することを言うのでしょう。
守るのではなく、対等に接する態度も素晴らしく思いました。

●身障者には働ける場所が非常に少なく、限定されていますが、この工場を見習ってどんどん身障者用の作業場ができれば、どんなに素晴らしいことだろうと思いました。

●この不況下、利潤追求を優先し、福祉を切り捨てる企業が多い中、オムロン京都太陽にはあたたかい時間と空気が流れていました。翻って、私自身はどうだろうか、心の底に意識的なバリアが潜んではいないだろうかと、自分を見つめ直すよい機会になりました。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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