企業と生活者懇談会
2008年12月8日 東京
出席企業:野村総合研究所
見学施設:丸の内総合センター

「未来を創発する野村総合研究所のビジネスとは」

2008年12月8日、野村総合研究所(NRI)の丸の内総合センター(東京都千代田区)にて、「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員20名が参加し、NRI のビジネス概要やCSR(企業の社会的責任)の取り組みについて説明を受けた後、コンサルティング事業本部の吉川尚宏情報通信・金融戦略担当部長が「2015年の日本」というテーマで講演しました。その後、質疑懇談を行い、NRIのコンサルティングやシステム開発などの業務の進め方、顧客との関係など、幅広い話題をテーマに活発な意見交換を行いました。
NRIからは、CSR推進室の小原愛室長、都甲晋平氏、竹内美恵子氏、柏村百合子氏、安居三智子氏、コンサルティング事業本部業務管理室の戸田重郎氏、広報部IR室の志賀圭氏が出席しました。
野村総合研究所からの説明
■野村総合研究所(NRI)の源流■
 NRIは、1965年(昭和40年)に野村證券の調査部を母体として生まれた、日本初の民間シンクタンクである旧野村総合研究所と、日本初の商用コンピュータのシステム開発を行った野村コンピュータシステムの2つの会社が1988年(昭和63年)に合併し、誕生しました。旧野村総合研究所の源流は、野村證券の創業者野村徳七が100年以上も前に創設した野村商店の調査部にまでさかのぼります。

■企業理念「未来創発」とは■
 NRIは企業理念に「未来創発」を掲げています。これは、未来社会の枠組みを洞察し、世の中にない新しいビジネスモデルを創出していくという考え方です。変化の激しいこの時代に、社会を見据えて確かな未来を切り拓いていくために、NRIグループは新しい価値を創造することで世の中に貢献していくことを目指しています。

■NRIの事業概要■
 NRIは、「コンサルティング」と「ITソリューション」の2つのサービスを相乗的に機能させた「トータルソリューション」を提供しています。
 「コンサルティング」は、社会や産業の未来予測、市場や業務の分析を通して、社会や顧客の問題を発見し、解決策を導いていくサービスです。その内容は、企業の経営戦略・IT戦略の立案や政府・官公庁に向けた政策提言など、多岐にわたっています。
 「ITソリューション」は、コンピュータ・システムを開発・運用するサービスです。セブン-イレブン・ジャパンのPOS(販売時点情報管理)システムや電子マネー「nanaco」のシステム構築・運用は、NRIの代表的なITソリューションです。NRIでは、こうしたITソリューションの売り上げが全体の 9割を占めています。
 NRIでは、顧客の要望にこたえる受け身のサービスだけではなく、未来社会の枠組みを調査・研究しながら社会や顧客のニーズを先取りした解決策やサービスを提案することを目指しており、そこがNRIの強みになっています。

■「2015年の日本」に関する提言■
 NRIでは、2015年を一つの節目と考え、「2015年の日本」の姿を展望し、そこで予測される課題を日本がどう乗り越えるべきかを提言しています。

【2015年の日本の姿】
 2015年にNRIが着目した理由の一つに、同年に日本の世帯数がピークを迎えることがあります。人口についても、2004年(平成16年)をピークにすでに減少が始まっていますが、2010年以降はこれが本格化し、毎年約50万人のペースで減少すると予測されています。人口と世帯数は内需を押し上げる重要な要因であるため、これらが減少すると、モノやサービスが売れなくなることが懸念されます。
 単独世帯の増加も2015年頃の日本の大きな特徴の一つです。中でも70歳以上の単独世帯が増加し、2020年には10世帯に1つが70歳以上の単独世帯になると予測されています。そのほか、30歳代・50歳代の男女を対象に実施したアンケート調査では、両世代とも親世代、子世代との隣居・近居志向が高まっているとの結果が出ました。このように、高齢者の単独世帯や複数世代の隣居・近居が増加すると、住居費や交通・通信費をはじめとした、家計当たりの支出が減退することが予測されます。
 このように、2015年の日本社会では、閉塞感が高まることが予想されます。それに加えて、国外では、グローバルな経済連携が一層加速することもNRI は予測しています。

【「ガラパゴス化」する日本からの脱却】
 そのような2015年の日本の姿を念頭におきつつ、NRIは、現在、日本の「ガラパゴス化」が進行していると指摘しています。ガラパゴス諸島は、南米エクアドルの沖合にある島で、島外との交流が閉ざされた結果、生物は独自の進化を遂げ、その島の生態環境でしか適応できなくなっています。現在の日本は、生活、産業・企業、地域のあらゆる側面で、それと似た兆候が出ていると、NRIは指摘しているのです。
 携帯電話がその代表例で、日本の携帯電話サービスの内容や技術は世界トップ水準であるにもかかわらず、世界シェアは、日本の有力メーカー10社を合わせてもわずか10%しかありません。これは品質が良くても、世界的な視野に立った企画・営業戦略が伴わなければ、海外では勝ち残れないことを意味しています。
 NRIでは、今後の日本は海外との自由な行き来を実現し、非製造業のグローバル化を強化するとともに、地方からのグローバル化を推進していくことで、明治維新(第一の開国)、戦後復興(第二の開国)に次ぐ、「第三の開国」を行うことが必要であると提言しています。
野村総合研究所への質問と回答
社会広聴会員:
「2015年の日本」のほかに、どのような研究・提言を行っているのか、具体的な内容を教えてください。
野村総合研究所:
日本全体だけでなく、「流通」「金融」や「アジア」など、個別の業界や地域に関する提言も行っています。これらは、出版物やセミナーなどで発表しています。また、官公庁から受注する調査・研究の中でも、日本社会がどうあるべきか、また、それを実現するための施策などを提言しています。
 
社会広聴会員:
コンサルティング業務の具体的な進め方について教えてください。
野村総合研究所:
まずは、どのようにしてお客さまの要望にこたえるかを検討するところから始めます。その際は、お客さまの要望に対して、「なぜ」を繰り返すことを大事にしています。例えば、事業拡大を求めるお客さまには、なぜ事業拡大が必要かを突き詰めて聞き、お客さまの抱える課題の本質が何かを明らかにします。その後、解決に向けての仮説を立て、実現方法を具体的に検証するというプロセスを踏んでいます。このようなプロセスを積み重ねることによって、業務を進めています。
 
社会広聴会員:
顧客との関係では、どういった点を大切にしていますか。
野村総合研究所:
当社の顧客は法人である場合が多いのですが、問題の解決に向けて一緒に取り組んでいくためには、顧客企業には、良い情報も悪い情報も示していただくことが重要です。「なぜ」ということを繰り返し尋ねながら、問題の本質に近づいていくため、お客さまとの間では、考えていることを正直に話していただけるような信頼関係を築くことを大切にしています。
 
社会広聴会員:
他のコンサルティング会社やシンクタンクとの違いはどこにありますか。
野村総合研究所:
主に外資系のコンサルティング会社では、業務の型が決まっていることが多いのに対して、当社では、お客さまとの信頼関係を築きながら、それぞれのお客さまにとって最適な解を見つけることに注力しています。また、他のシンクタンクは官公庁から受注する仕事が多いのに対し、当社は民間企業からの受注が多いことが特徴です。
 
社会広聴会員:
報酬はどのようにして算定されるのでしょうか。成功報酬はあるのでしょうか。
野村総合研究所:
算定にあたっては、人日(ニンニチ)といいまして、どれだけの数の人員がどれだけの期間必要かを見積り、それぞれの人員の 1日当たりの単価に日数を掛けて人日算定します。成功報酬はなく、契約を結んだ段階で報酬額が決まります。
 
社会広聴会員:
事業の重点分野について教えてください。
野村総合研究所:
これまでは、個別のお客さま向けのサービスの割合が高かったのですが、今後は社会や各業界全体に利益となるような ITソリューションやシステム基盤の提案、構築をもっと積極的に行っていきたいと考えています。また、そうすることによって、当社の社会的な存在価値も高めていきたいと思っています。
 
参加者の感想から
●日常接しているセブン‐イレブンのPOSシステムや、JALの予約サイト、ネット証券のシステムなどをNRIが提供していることが分かり、とても興味を持ちました。

●未来への提言は、ともすると学生や現役の社会人を視野に入れて発信されがちですが、高齢者人口の増加を考えると、今後は高齢者を含めての提言が求められてくると思います。

●企業の競争力の向上や、交通システムの構築など、企業や官公庁、ひいては社会全体の黒子として、幅広い分野で力を発揮されていることを知りました。

●初めてシンクタンクに伺いましたが、今までのものづくり企業とは全く印象が異なり、大変興味深く勉強させていただきました。

●講演「2015年の日本」はとても面白かったです。普段はすぐ足元のことや、せいぜい来年のことぐらいしか考えないので、7年先の社会について考える貴重な機会になりました。

お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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