企業と生活者懇談会
2008年8月29日 静岡
出席企業:中日本高速道路
見学施設:新東名高速道路工事現場

「世界をリードする高速道路システム」

2008年8月29日、中日本高速道路(NEXCO中日本)の協力で、「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員18名が参加し、NEXCO中日本の会社概要や新東名高速道路の概要についての説明を受けた後、現在工事を進めている新東名高速道路の現場を見学しました。質疑懇談では、高速道路の料金や高速道路建設において苦労する点など、幅広い話題をテーマに活発な意見交換を行いました。
NEXCO中日本からは、富士工事事務所の脇広之進副所長、大岩春仁工務課長、建設事業本部の源島良一企画統括チームリーダー、企画本部渉外・広報部の長谷川周三広報担当部長、今井智満広報室室長代理、藤原由康氏が出席しました。

中日本高速道路からの説明
■NEXCO中日本の歩み■
 NEXCO中日本は、2005年(平成17年)10月1日に日本道路公団が分割民営化したことに伴い、同公団の業務のうち、主に中部地方を中心とする高速道路ネットワークの管理運営や建設を行う事業主体として発足しました。
 発足後、同社は、民営化の目的である着実な債務返済を行うとともに、コスト削減や事業のスピードアップを進め、効率的な業務運営を展開してきました。 2008年度(平成20年度)は、同社が掲げる5カ年計画「新経営計画2008」がスタートする年であり、「良い会社で強い会社」を目指してグループ一体となった経営基盤の強化に取り組んでいます。

■NEXCO 中日本グループの事業展開■
 NEXCO中日本グループは、「お客さま第一主義」を合言葉に、高速道路を軸にしてお客さまの利便性を高め、地域と連携を図る多彩な事業を展開しています。
 基盤事業である高速道路事業では、2008年7月に東海地方と北陸地方を結ぶ東海北陸道を全線開通させるなど、高速道路ネットワークの整備を進めるとともに、道路構造物の老朽化対策や橋梁の耐震補強工事など、安心・安全を第一にした高速道路の保全とサービスの充実に努めています。
 関連事業の展開においても、どのサービスエリア、パーキングエリアでも質の良いサービスを提供できる「標準化」を進める一方、新鮮な産直野菜や地域特産物などの生鮮品を販売する「やさい村」の出店、地場の旬の素材を生かしたサービスエリア限定のお弁当スタイルの提案「速弁(はやべん)」など、「個性化」に取り組み、地域色を取り入れながら快適で便利なサービスエリアづくりに力を入れています。このほかにも、ETCカードを活用した新しいカードサービス事業への進出、高速道路を活用した独自の旅行スタイルの提案「速旅はやたび」など、これまでの高速道路にはなかった楽しさや便利さを追求した事業に積極的に挑戦しています。

■新東名・新名神高速道路の概要■
 首都圏・中部圏・近畿圏の三大都市圏を結ぶ大動脈である東名・名神高速道路は、日本経済の発展とともに交通量が大きく伸び、交通集中による慢性的な渋滞や混雑が生じています。これを解消し、交通の適正配分を実現させるために、新東名・新名神高速道路の建設が求められています。
 新東名・新名神高速道路は、全長が504kmで、三大都市圏間を最短ルートで結ぶため、移動時間を大幅に短縮できます(海老名・神戸間が全通すると、約1時間の短縮が見込まれます)。また、新東名・新名神高速道路は、従来の東名・名神高速道路に比べ、急カーブや急坂が少なく、路肩が広く造られているため、これまで以上に安全で快適な走行が可能になります。
 また、新東名・新名神高速道路の建設は、事故や地震などの非常事態発生時にも、互いを補うことで交通の安定性を確保します。特に、新東名高速道路は、東名高速道路の通過するルートよりも山側を通過するため、近い将来に発生が予想されている東海地震に対して、被害を受けにくいという特徴があり、大規模地震発生時には緊急輸送路として、被害拡大の抑制や早期復旧への活用が期待できます。

■新東名高速道路の工事現場を見学■
 NEXCO中日本の企業概要や新東名・新名神高速道路の概要について説明を受けた後、新東名高速道路の工事現場として、富士高架橋、富士川橋をそれぞれ見学しました。富士高架橋では、高架橋のつなぎ部分に設置された鉄製の伸縮装置(ジョイント)を間近で見ながら、温度変化による橋の伸縮を吸収する効果や、道路面を平たんにして段差が出ないようにし、橋梁の揺れを吸収する効果について説明を受けました。このほかにも、工事で発生した大量の砂利を廃棄せず、道路の舗装工事を行う際の路盤材として再利用するために一時仮置きしていることや、高速道路建設に伴い発生した枝葉や根株をリサイクルプラントでたい肥化・チップ化し、高速道路のり面に吹き付けて、樹林化用資材として再利用していることなどについて説明を受け、環境保全に努力しているNEXCO中日本の姿勢を改めて感じました。
中日本高速道路への質問と回答
社会広聴会員:
民営化により、仕事のやり方は変わりましたか。
中日本高速道路:
日本道路公団時代は、料金の変更を行う場合も、当時の運輸省・建設省への申請にかなりの時間がかかるなど、スムーズに事業が進まない面がありました。民営化後は、発議をすれば短期間に認可されるようになったため、スピーディーな事業展開が可能になっています。また、従前は財政投融資資金を借りて事業を運営してきましたが、これもあと3年で自主調達できるようになり、今後は資金調達の面でもますます柔軟な事業展開が可能になります。
 
社会広聴会員:
日本の高速道路の料金は、欧米など諸外国と比べてどうして高いのでしょうか。
中日本高速道路:
大きく分けて、2つの理由があります。1つは、建設コストが高いという理由です。日本の高速道路は、諸外国と比べてトンネルと橋が非常に多いのですが、これらは通常の道路に比べ、建設コストが約3倍掛かるといわれています。また、日本は地震大国であるため、耐震設計を徹底しており、それも建設コストを押し上げています。2つ目の理由は、日本では高速道路の維持・管理費用を、通行料金を財源にしているという点です。諸外国ではこれらをすべて税金で賄っており、その分だけ利用料金に差が出ています。
 
社会広聴会員:
サービスエリアの在り方について、どのようにお考えでしょうか。
中日本高速道路:
今から10年程前のサービスエリアの運営は「どこも同じ」サービスを提供することを基本にしていたために、エリアごとの特色がなく、「高い、まずい、トイレが汚い」と言われていました。しかし、民営化後は、NEXCO中日本が直接運営する形になり、サービスエリアを旅の目的地にすることを目指して、積極的な開発に取り組んでいます。コンビニエンスストアやカフェショップの増設、清潔なトイレの整備など、利便性や快適性を高めるとともに、サービスエリア限定のお弁当「速弁」の発売や、NEXCO中日本グループ社員が直接運営する“手打ちうどん店”(中井PA(上り線))の出店など、様々なアイデアを取り入れ、開発を進めています。
 
社会広聴会員:
建設現場では、古代の遺跡が発掘されるというお話を時々耳にしますが、新東名高速道路の工事現場でもそうしたことはありましたか。
中日本高速道路:
新東名高速道路の工事現場では、天竜川の東側で、かなり価値の高い銅鐸が見つかっています。基本的には、そうした遺跡がある可能性が高いと思われるルートは避けて工事を進めるのですが、こうした価値の高い遺跡が見つかった場合には、そのままの状態で保存するために、道路の構造を変更するといった対応をとる事例もあります。
 
社会広聴会員:
高速道路建設において、苦労する点、大切にしている点などを教えてください。
中日本高速道路:
高速道路の建設に当たっては、建設予定地に土地を持っている地権者の方から用地の提供を受ける必要があります。また、地権者の方だけでなく、その周辺にお住まいの方や土地を所有されている方からご理解をいただかなければなりません。高速道路の建設方針などについての説明会やそうした方々との協議に力を入れています。また、工事中の作業員の安全確保にも注意しています。作業員に事故やけががないようにすることは発注者としての責務であり、安全管理には非常に心を砕いています。最後は、品質への配慮です。お客さまに安心して使っていただくためには施工ミスは決して許されず、工事中の品質管理、施工管理は徹底して行っています。
 
社会広聴会員:
高速道路建設に携わるやりがいを教えてください。
中日本高速道路:
新東名高速道路は、完成すれば日本を支える交通の大動脈になります。そうした社会資本整備に参加・貢献できることは大きなやりがいであり、誇りです。また、地図に残る仕事、形として残る仕事という点でもやりがいに感じています。
 
参加者の感想から
●NEXCO中日本の方々の仕事の大変さややりがいを伺えたこと、高速道路建設は大量生産ではなくオーダーメードだということが分かったこと、環境への取り組みを一つひとつ丁寧に工夫されていることが分かったことがとても有意義でした。

●日ごろ、東名高速道路を利用していて、交通量の多さ、トラックの多さに限界を感じていただけに、新東名高速道路の必要性に対する説明がよく理解できました。また、大規模災害時には、緊急用として建設中の新東名高速道路を一時的に利用できる協定があることを知り、とても意義深いと思いました。

●用地の買収、騒音や環境に配慮した設計、コストダウンなど、建設に携わるご担当者のお話を聞くにつけ、道路建設の大変さや苦労がよく分かりました。


●一般的に旧道路公団に対して抱いていた尊大なイメージが、地道な活動をされている現場の方のお話を聞き、現場を見ることで大きく変わるのを実感しました。やはり対面による直接コミュニケーションはとても大切だと思いました。

お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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