企業と生活者懇談会
2008年7月29日 愛知
出席企業:東邦ガス
見学施設:知多緑浜工場

「暮らしを支えるエネルギーについて考える」

7月29日、東邦ガス知多緑浜工場(愛知県知多市)で社会広聴会員18名が参加し、「企業と生活者懇談会」を開催しました。往路のバスの中で、会社案内の VTRを視聴し、到着後に映像を交えて工場の概要についての説明を受けました。続いて、天然ガスバスに乗車し、施設見学をした後、質疑懇談を行いました。
東邦ガスからは、木健次執行役員知多製造部長、加藤一男知多緑浜工場長、広報部の伊藤克彦部長、赤木紳一郎広報グループマネジャー、中神貴久広報グループ課長が出席しました。
東邦ガスからの説明
■東邦ガスの概要■
 東邦ガスは、1922年(大正11年)に前身である名古屋瓦斯を継承して設立され、80年以上にわたり都市ガス供給を通じて地域社会とともに発展してきました。現在、愛知・岐阜・三重の50市25町1村、約220万件のお客さまに都市ガスを供給し、地域の生活やビジネス、産業活動を支えています。

■クリーンエネルギー天然ガス■
 都市ガスは、ボンベで運ばれるLPガスと異なり、工場で製造したガスを、道路下に埋設したガス管を通じて供給します。都市ガスの原料は、かつては石炭や石油が中心でしたが、現在では、天然ガスが中心になっています。天然ガスは、中東以外に環太平洋地域など世界中に幅広く存在しており、安定した調達が可能です。東邦ガスでも、1978年(昭和53年)から天然ガスへ転換を開始、1993年(平成5年)に完了しており、現在はオーストラリア、マレーシア、インドネシア、カタールの4カ国から天然ガスを輸入しています。
 天然ガスは効率的に運ぶため、産地で-162℃に冷やして液化し、体積を約600分の1 にします。これが液化天然ガス(LNG)です。LNGは他の化石燃料に比べて燃やしたときの二酸化炭素(CO2)排出が少量です。また液化の過程で不純物が除かれているため窒素化合物(NOx)の排出も少なく、硫黄化合物(SOx)は全く出ないクリーンエネルギーです。
 このため天然ガスは、家庭用をはじめ、飲食店などの業務用、工場などの産業用、地域冷暖房や天然ガス自動車など幅広い分野で利用され、販売量も堅調に伸びています。

■知多緑浜工場■
 タンカーで運ばれたLNGを受け入れ、気体に戻して臭いを付け、導管を通じて送り出すのがLNG工場です。
知多緑浜工場は、増加する天然ガス需要に対応するため、知多LNG共同基地、四日市工場に続く東邦ガス3番目のLNG工場として2001年(平成13 年)11月に操業を開始しました。
 桟橋でタンカーからおろされたLNGは一旦タンクに受け入れます。同工場には現在、世界最大級の地下式LNGタンクが1基あり、約30万件のお客さまの1年間の使用量に匹敵する20万キロリットルのLNGを受け入れることができます。タンクの内径は74m、屋根までの高さは約61mあり、名古屋城の天守閣が丸ごと入る大きさです。LNGタンクは外からの入熱を抑えるため、厚さ約20cmのウレタンフォームで断熱されています。
 タンクのLNGは需要に応じてポンプでくみ出され、気化器で海水と熱交換することによって気体に戻されます。さらに天然ガスには本来臭いはありませんが、ガスが漏れてもすぐに分かるよう、臭いを付けて送り出します。知多緑浜工場は、周辺に自然の海岸や公園・緑地などが多いため、「周辺環境との調和」に配慮し、屋根しか見えない地下式のタンクとしました。
また、タンク建設の際に出た掘削土を敷地内に盛土して植樹をしたり、ビオトープも造っています。知多緑浜工場では、今後2009年夏完成予定で2基目のタンク建設を進めています。

■工場施設見学■
 説明を受けた後、工場長の案内により、知多緑浜工場施設を見学しました。工場の設備を24時間365日集中コントロールする中央監視室は、免震構造の建物にあり、地震発生時も操業継続に支障がないようになっています。
 その後、ビニールボールを使った冷熱実験や、燃やしてもすすが出ないという天然ガスの燃焼実験を見学しました。引き続き、バスで敷地内を巡り、世界最大級のLNGタンクや建設中の2基目のタンク、LNG気化器などを見学し、暮らしを支えるエネルギー製造工場を実感しました。
東邦ガスへの質問と回答
社会広聴会員:
都市ガスと電気の特質について教えてください。
東邦ガス:
ガスは、火力が強く、調理や給湯・暖房が得意なのに対して、電気は様々な用途に使いやすいエネルギーであると考えています。当社としては二者択一ではなく、ガス・電気双方の得意分野を生かし、両者の「いいとこどり」をして使っていただくことがお客さまのメリットにつながると考えています。
 
社会広聴会員:
都市ガスと電気の環境特性を比較するとどうなのでしょうか。
東邦ガス:
どのように電気をつくるか、またどのような機器を使うかによって、環境に与える影響も異なり、一概に比較できません。都市ガスについては、化石燃料の中では最も環境負荷が低く、また工場で生産したガスがほぼ100%の形でご家庭に届き、熱利用できるので、ロスが少ないエネルギーといえます。
 
社会広聴会員:
家庭用ガス発電の開発状況について教えてください。
東邦ガス:
すでに、ガスエンジンにより発電する「エコウィル」が実用化されています。技術開発に取り組んでいる家庭用燃料電池は、現在モニターによる実証試験を行っているところです。燃料電池は都市ガスに含まれる水素と空気中の酸素を反応させて電気と熱を取り出すコージェネレーションで、発電効率が高いのが特徴です。発電効率などの性能は要求する水準を満たしており、現在耐久性や信頼性などを中心に試験を行っています。 2010年の早い時期に本格普及を迎えられるよう、開発に取り組んでいます。
 
社会広聴会員:
都市ガスの将来像はどのようなものですか。
東邦ガス:
当社としては、天然ガスという化石燃料では最も環境負荷が低く、クリーンで貴重なエネルギーを取り扱っており、お客さまに最大限、効率的に使っていただけるよう努力する責務があると考えています。今後も最先端の天然ガス利用技術と高効率で安全・安心かつ快適なガス機器の提供を通じ、地域の発展と環境調和型社会の実現に向けて貢献 していけるよう努力していきます。
 
社会広聴会員:
天然ガスの可採年限はどのくらいですか。
東邦ガス:
一般的に可採年限は60年以上といわれています。 天然ガスは世界各地に豊富に存在し、新たなガス田も次々と発見されているため、さらに可採年限が延びる可能性もあります。  また将来の都市ガスの原料として期待される資源がメタンハイドレートです。メタンハイドレートは、氷状の物質の中にメタンが含まれたもので、日本近海にも豊富に存在していることが確認されています。現在国が中心となり、採掘に向けた調査、技術開発が進められています。
 
社会広聴会員:
地震対策について教えてください。
東邦ガス:
当社では、地震対策について、(1)設備対策、(2)緊急対策、(3)復旧対策の3点から取り組みを進めています。設備対策については地震に強いガス導管の普及を進めています。緊急対策は、管内150カ所に地震計を設置し、地震発生時には地震の大きさを数分以内に把握できるようにしています。地震による被害の大きさに応じて、ブロックに区分した供給エリアごとに供給停止・継続が行えるようになっており、災害対策本部の迅速な判断のもと被害の拡大を最小限にとどめる仕組みになっています。復旧対策については供給停止地域でガス供給を行う臨時供給の設備の準備や、復旧資機材の備蓄などを行っています。
 
社会広聴会員:
工場設備の地震対策について教えてください。
東邦ガス:
知多緑浜工場は阪神・淡路大震災以降に定められた耐震設備基準に基づいて建設されており、万全の対策をとっています。LNGタンクを含む設備全般は、地震で想定される液状化現象や、津波、長周期地震など、地震時に想定される状況を考慮して設計されています。また、工場の管理センターは、事務所棟を耐震構造、中央監視室のある制御室棟は免震構造で建てられていて、揺れに強い構造となっています。
 
社会広聴会員:
CSR(企業の社会的責任)の取り組みについて教えてください。
東邦ガス:
エネルギー産業を取り巻く環境が変わっても、公益事業の本分を忘れないことを経営の軸にしています。都市ガスの安定供給、保安確保、お客さまへのサービス向上などをおろそかにせず、ガス供給を通じて地域の発展に貢献していきたいと考えています。
 
社会広聴会員:
ステークホルダーとの双方向のコミュニケーションはどのように行っていますか。
東邦ガス:
CS(お客さま満足)推進体制を整え、活動に取り組んでいます。グループ会社全体で「お客さまの声」を大切な経営資源として共有化し、業務改善に役立てています。  小・中学生などの次世代層へのエネルギー・環境教育として、愛知県東海市にガスエネルギー館を開設するとともに、学校への出前授業の実施や、「親子クッキング講座」を実施しています。また地域社会とのかかわりにおいては、イベントへの参加、文化・スポーツを通した貢献などを行っています。株主の皆さまに向けては、適時・適切な情報開示や、施設見学会、株主総会後の懇談会などを実施しています。
 
参加者の感想から
●クリーンなエネルギー、天然ガスを有効活用していこうとする企業姿勢を肌で感じました。環境に配慮した企業努力を続けて、私たちがこれからもガスを使ったよりよい暮らしができるようにサポートしてくださるようお願いいたします。

◆将来の都市ガス原料の技術開発など、環境面からも今後のエネルギーをどう生み出していくのか、成果を期待しています。

●都市ガスの原料輸入から製造、そして、お客さままでどうやって届けられるかがよく理解できました。特に供給自動管理システムや巨大なタンクの耐震対策には素晴らしい技術力を感じました。

●阪神・淡路大震災を神戸で経験したので、地震対策について興味がありました。建物の耐震構造や供給システム設備、制御、管理など万全の対策が講じられていることが分かり、時代の進歩を強く感じました。同時に安全に対する設備投資の大きさも感じました。

お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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