企業と生活者懇談会
2008年5月15日 山形
出席企業:日本電気
見学施設:NECパーソナルプロダクツ米沢事業場

「日本のものづくりについて考える」

5月15日、山形県米沢市のNECパーソナルプロダクツの米沢事業場にて、「企業と生活者懇談会」を開催しました。10名の生活者が参加し、NECグループの概要、米沢事業場について説明を受け、実際の開発現場、生産ラインを見学した後、CSR(企業の社会的責任)の取り組みについて聞き、質疑懇談を行いました。
NECパーソナルプロダクツからは、神尾潔執行役員常務、中土井一光PC事業本部開発生産事業部長、若月新一プロセス改革推進部統括マネージャー、大竹雅彦総務部米沢事業支援部長、日本電気より福地研コーポレートコミュニケーション部広報統括マネージャーが出席しました。
日本電気からの説明
■NECのエピソード■
 NECは、1899年(明治32年)7月にアメリカのウェスタン・エレクトリック社との合弁により日本初の外資系企業として設立されました。創業者である岩垂邦彦は、単身でニューヨークのエジソン・マシン・ワークス社に留学し、発明王エジソンの下で働きました。NECの「NE式写真電送装置」が日本最初のファクシミリであること、また、1972年(昭和47年)、日中国交正常化交渉のため訪中した田中角栄首相と中国の周恩来首相との会談の模様を全世界に中継・放映したのは、NECの衛星通信装置であることなど、創業からこれまで、イノベーションで100年以上の歴史を刻んできたといえます。

■NECグループの概要■
 「NECはC&Cをとおして、世界の人々が相互に理解を深め、人間性を十分に発揮する豊かな社会の実現に貢献します。」が企業理念です。「C&C(Computers & Communications)」は、コンピューター技術と通信技術の融合をうたったもので、小林宏治元会長が、提唱した言葉です。現在の主な事業は、通信・コンピューターのシステムインテグレーション事業、携帯電話、PC(パソコン)、半導体などとなっており、お客さま及びプロダクツ単位の「ビジネスユニット」で、組織が構成されています。PCについては、米沢事業場が主力工場となっています。

■NECパーソナルプロダクツ米沢事業場について■
 NECは、1970年代後半からPC事業を開始し、1980年代には、PC-9800シリーズで、国内シェア5割を確保しました。現在も国内トップシェアを確保し、2007年度は267万台を出荷しています。NECパーソナルプロダクツはパソコン、プリンタの商品企画・開発・生産・販売のほか、磁気テープ装置などの開発・生産をしており、この米沢事業場は、NECパーソナルプロダクツのマザーファクトリーとして位置付けられています。
 「米沢のABC」として、Aはアップル(りんご)、Bはビーフ(米沢牛)、そしてCはカープ(鯉)と紹介されますが、Cは「コンピューター」という意味でも、地域に密着して活動しています。
 1997年(平成9年)から生産革新活動に取り組んでいます。特に、これまでのBTO生産セル生産の導入に加えて、2000年(平成12年)から「トヨタ生産方式」の導入に積極的に取り組んできました。この取り組みにより、これまでの、大量生産型のコンベア式の組立ラインから、先進ITで武装化されたセル生産方式への生産革新を果たし、2000年度比で、生産性は7倍以上、納入は業界最短を実現しました。特に、2004年(平成16年)に業界初のRFIDシステムを導入し、生産指示書をバーコードを印刷した紙からRFIDに置き換え、オンライン化を実現。これにより、1日10万回ものバーコード読み取り作業が排除され、生産性が10%以上改善し、コスト削減と品質向上を実現しました。
 2005年(平成17年)には、国内で初めて、部材調達領域に「RFID付き電子かんばん」を導入し、進ちょく管理のリアルタイム化により、生産リードタイムを半減しました。これらの取り組みは「第2回ものづくり日本大賞『東北経済産業局長賞』」を受賞しました。
 また、CSR活動についても積極的に取り組んでいます。環境技術では、1999年(平成11年)10月より、「無鉛はんだ」を業界で初めて、モバイルノートPCに採用、2004年9月には、「ケナフ繊維強化バイオプラスチック」を使用したPCを発売しました。また、オフィス・工場においても、温暖化の防止に向けて、天井灯の間引きなど、様々な取り組みをしています。また、アルミ缶の回収・リサイクル活動で交換した車椅子を、社会福祉施設に寄贈することで、社会貢献と従業員の環境意識の向上につなげています。

※BTO(Build to Order)
顧客の注文を受けてから商品を生産する受注生産のこと。
※セル生産
流れ作業で商品を製造するのではなく、1人もしくは1チーム(セル)ですべての工程をこなす生産方式のこと。
※RFID(Radio Frequency IDentification)
小さいチップに様々な情報を埋め込んだタグを使用して識別する仕組みのこと。
※生産リードタイム
受注決定から納品されるまでの期間のこと。


■生産ラインの見学■
 開発体制、PCの監査現場、組立ラインについて詳しく説明を受けながら、生産現場を見学しました。特にノート、デスクトップのPC組立ラインで「YOZANライン」「KENSHINライン」とネーミングし、効率的なラインは「スーパー~ライン」に格上げされるなど、従業員のやる気の向上に取り組んでいる様子も、見ることができました。
日本電気への質問と回答
社会広聴会員:
生産現場の効率化の推進と、雇用の関係はどのようになっていますか。
日本電気:
効率化を進めていくと、人員が不要になる、とはとらえていません。これにより生まれた人員によって、新たに付加価値を取り込む活動をしており、これを当社では「活人」と称しています。一例として、これまでLCD(液晶ディスプレイ)は、中国が生産拠点でしたが、米沢事業場に取り込みました。このような取り組みは、新たな雇用効果を生み出していると考えています。
 
社会広聴会員:
5名の組立ラインは「YOZANライン」、3名だと「スーパーYOZANライン」へ格上げされるという取り組みを、興味深く思いました。この場合、昇格などの処遇は異なっているのでしょうか。
日本電気:
処遇において格差を設けてはいません。モラルアップの一助になっている、と考えています。
 
社会広聴会員:
各セルの作業について、多くの知識や高いスキルが要求されると思いました。どのように教育をしているのでしょうか。
日本電気:
見学していただいたラインは、3名や5名のラインでしたが、7名以上のラインもあります。新人は、講習を受けた後、実際の作業を行います。その場合も始めは「トレーニングセル」という別ラインで作業した後、スキルに合ったラインで作業していきます。
 
社会広聴会員:
従業員のスキルについて、どのように把握し、どのように組立ラインに生かしているのですか。
日本電気:
個人ごとに「スキルマップ」を作成し、自分ができることを“マッピング”します。当社では、約2万種類ものPCを組み立てています。スキルは、商品の種類ごとに管理されており、組立ラインに反映しています。
 
社会広聴会員:
地域との結び付きについて教えてください。
日本電気:
上杉鷹山公の時代より、米沢は織物が盛んな土地です。科学的な裏付けはありませんが、いわゆる「からくり」について、なじみが深い土地柄ではないかと思います。技術者についても、地元の山形大学工学部の出身者が核となって活躍しています。また、地域とのふれあいとして、地元の雪灯篭まつりにあわせ、事業場としても「雪祭り」を今年初めて開催し、近隣の住民の方300名ほどに参加していただきました。
 
社会広聴会員:
従業員の意見をどのように吸い上げているのでしょうか。
日本電気:
RFIDといった、先進的な工程管理システムを取り入れる一方、「現場が最初のお客さまである」という理念のもと、お客様の声「VOC(Voice of the Customer)」を社内で共有し、活用する地道な取り組みもしています。 具体的には、現場従業員が気付いたことは、すぐポストイットに書いて、工場内の掲示板に貼り付けます。ポストイットという気軽に取り組める媒体にしていることも重要だと考えています。週一回、開発の部長クラスが、巡回時にこの掲示板を必ず確認し、可能なことから、すぐに取り組みます。年間約300の提案があり、約50%は生かされています。
 
社会広聴会員:
今後のマーケット戦略について、教えてください。
日本電気:
NECのDNAはイノベーション(革新)であります。何よりも、常にフロンティア精神を持って、技術をベースとした魅力ある商品を提供し、お客さまからの支持を得たいと考えています。2008年(平成20年)4月に発売した、新コンセプト商品ブランド「Lui」もそういった観点の商品です。
 
参加者の感想から
●かんばん方式がIT技術と組み合わされることによってさらに進化する姿を目の当たりにしました。米沢の地域性が元々「カイゼン」に対するDNAを持っていたのではないかというお話に心から納得しました。

●大企業であっても世界との戦いや改善に終わりはないと感じました。

●改善によって生み出した労働力で、別の仕事をしてもらうということを伺い、人を大切にしている企業だと思いました。

●CSR、環境などへの取り組みすべてにこまやかな心遣いをされ、素晴らしいと思いました。

●合理的で無駄のない組み立てラインのチームの一つひとつにユーモラスな名称が付けられていることなど、企業のゆとりと暖かさが感じられました。

●「ものづくり」こそが、日本の強みだといわれますが、技術者のプライドと崇高な志に支えられていることを実感しました。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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