企業と生活者懇談会
2007年11月29日 大阪
出席企業:アサヒビール
見学施設:吹田工場

「アサヒビールの信頼される製品づくりとは」

2007年11月29日、アサヒビールの吹田工場(大阪府吹田市)で「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員22名が参加し、同社の事業概要、工場の概要について説明を受けた後、吹田工場を見学しました。その後、同社のCSRについて報告を受け、質疑懇談を行いました。
アサヒビールからは、吹田工場の秀島教文執行役員統括工場長、総務部の後藤暢之チーフプロデューサー、品質管理部の岡崎善三部長、本社の社会環境推進部の小沼克年エグゼクティブプロデューサー、広報部の大橋竜之チーフプロデューサー、淺輪紀雄プロデューサーが出席しました。
アサヒビールからの説明
■アサヒビールの歩み■
 1889年(明治22年)に設立された大阪麦酒会社がアサヒビールの始まりです。その後、大阪麦酒と日本麦酒、札幌麦酒の3社合同により、大日本麦酒株式会社が誕生しました。終戦後の1949年(昭和24年)、過度経済力集中排除法の適用により同社が分割し、現在のアサヒビールにあたる朝日麦酒株式会社が設立されました。
 アサヒビールの歴史を語る上で重要なターニングポイントは、1987年(昭和62年)の辛口生ビール「アサヒスーパードライ」の発売です。この製品の発売により、「ドライビール」が社会現象になりました。昨今、商品サイクルが短くなる中、徹底した鮮度管理へのこだわりが、社会から高い評価を受けて、現在でもトップブランドとしての地位を構築しています。
 アサヒビールの経営理念は、「アサヒビールグループは、最高の品質と心のこもった行動を通じて、お客様の満足を追求し、世界の人々の健康で豊かな社会の実現に貢献します。」です。
 お客様の視点に立って企業活動を進めることと、新しいことに挑戦する精神を「アサヒらしさ」として、社内外のコミュニケーションを強化しています。
  「アサヒらしさ」は、1958年(昭和33年)の日本初の缶入りビールの発売や1971年(昭和46年)の日本初のアルミ缶入りビールの発売などに表れ、お客様の視点と新しいことに挑戦する精神を具現化し続けています。

■アサヒビールグループの事業概要■
 アサヒビールグループは、「アサヒスーパードライ」を中心とした酒類事業会社(アサヒビール)、コーヒーの「ワンダ」や炭酸飲料の「三ツ矢サイダー」などを展開する飲料事業会社(アサヒ飲料)、ベビーフードの大手である和光堂を加えた食品・薬品事業会社などがあります。グループの2006年度(平成18年度)の連結売上高は、1兆4464億円です。グループ会社数は79社(関連会社含む)、従業員数は1万5280人です。
 アサヒビールは、グループ売上高の69.7%のシェアを占める総合酒類事業会社です。ビールや発泡酒、新ジャンルなどのビール類の生産拠点を国内に9つ有し、ビール業界の熾烈なシェア争いをしています。2006年には、国内ビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)市場で6年連続トップシェアを獲得しています。
 アサヒビールとそのグループは、国内の成人人口が減少傾向にあることと、「アサヒスーパードライ」に依存する体制からの脱却に向けた成長戦略を基軸としています。今年(2007年)、カゴメとの包括的業務提携を締結するなど、「食と健康」の2本を経営戦略の柱にし、積極的な事業展開を進めています。中期経営計画では2009年度に、売上高1兆6000億円(2006年度比11%増)を目標に掲げています。また、グローバル企業として、成長著しい中国を含むアジア、欧州、米州などで事業展開を進め、着々と事業地盤を強固なものにするグローバル戦略を打ち出しています。

■アサヒビールのCSRへの取り組み■
 アサヒビールは、消費者、株主、従業員、地域社会などのステークホルダーが同社を叱咤激励する存在という意味を込めて、すべての方を「お客様」と呼んでいます。このステークホルダーと満足できる交流を進めるという意味を持たせたコミュニケーションとして、お客様満足(Customer Satisfaction)とステークホルダーと交流(Relation)を追求するという意味合いの「CS+(プラス)R」によって、企業の社会的責任を果たそうとしています。
 アサヒビールは、本業に通じるCSRを「経済・社会・環境」の3つに分け、おのおのに「優先取り組みテーマ」を定めています。その一例として、「品質の追求(経済)」「適正飲酒の啓発活動(社会)」「環境保全活動(環境)」などがあります。
 「品質の追求」は、商品開発から原材料調達、生産、物流、流通・販売、表示・広告といった全プロセスにおいて徹底した安全性の確立と品質管理の徹底を実施するシステムをそれぞれの部門に構築し、安心・安全・高品質な商品を提供しています。
  「適正飲酒の啓発活動」は、お酒が世界各地で有用なコミュニケーション・ツールとして生活に深く浸透している反面、アルコール飲料の不適切な飲用によって起きている様々な社会問題の解決に向けて取り組んでいる活動です。飲酒運転を注意喚起するためのテレビコマーシャルや広告で飲酒運転撲滅キャンペーンを強化するのと同時に、アルコール依存症や急性アルコール中毒の原因のひとつである「イッキ飲み」などの予防を目的としたフォーラムやセミナー、冊子、Webサイト、商品そのものへの注意喚起表示などを通じて「適正飲酒」を啓発しています。
  「環境保全活動」は、二酸化炭素削減や廃棄物、副産物の再資源化などの取り組みとともに、独立行政法人九州沖縄農業研究センターと共同でサトウキビを原料としたバイオマスエタノール生産の共同研究なども行い、その活動は、第16回地球環境大賞「環境大臣賞」を受賞するなど、評価されています。

■吹田工場について■
  1891年(明治24年)10月に操業を始めた吹田工場は、100年を越える最も歴史のある工場です。敷地面積は、甲子園球場の約4倍に当たる14万 6000㎡です。吹田工場では、清涼飲料水などを製造していた時期もありましたが、1987年(昭和62年)以降はビール関連商品の生産に特化しています。現在では、ビール、発泡酒、その他の醸造酒といったビール類約10品などを年間約35万リットル生産しています。
 この場所に工場がつくられた理由のひとつは「水」です。そもそも吹田の地は万葉集に歌われた滝の名所があり、工場に隣接する「泉殿宮」には泉の跡があるように、水が良質で豊富でした。工場の建設地選定の際に、吹田の水をビールの本場、ドイツに送って鑑定してもらったところ、ビールに適しているとの評価を得たことから、この場所での工場建設が決まりました。もうひとつの理由は、この場所は大都市である大阪から近かったことです。
 吹田工場をはじめとするアサヒビールのすべての工場では、独自の「太鼓判システム」を導入しています。「醸造」「パッケージング」「エンジニアリング」「品質管理」などの各部門に責任者を配置し、その責任者による「お墨付き」がなければ出荷できないシステムです。
 また、地域社会と工場が互いに理解と協力の信頼関係を構築することに努めています。主な活動として、吹田市内全域の小学生を対象に工場見学を実施しています。これは、製造過程や製品管理について見聞を深めるだけではなく、未成年者の飲酒による弊害などの啓発活動も実施しています。
アサヒビールへの質問と回答
社会広聴会員:
ビールの原料調達の仕組みについて教えてください。
アサヒビール:
現在の原料調達は、ほとんど海外からの輸入です。品質は、日本の原料も海外のものと遜色はありませんが、生産規模を維持し、品質のばらつきを抑えるという観点から、国産を増やすことができません。ビールの主原料である大麦の調達には、国税庁に生産量を報告した上で、農林水産省の許可を得て原料を調達するのが、ひとつの流れです。昨今の傾向としては、穀物市場が高騰しており、調達コストが大きな課題になっています。
 
社会広聴会員:
海外ではペットボトルのリユースが行われているようですが、その予定はないのですか。
アサヒビール:
アサヒビールは、焼酎などでペットボトルを使用しています。リユースは、容器包装の研究部門が進めていますが、食品ですので、衛生面と安全面の確認ができないと踏み切れません。ビールの場合は、瓶をリユースしています。ペットボトルのリユースが、すぐにできるかどうかはお答えできませんが、衛生面と安全面、環境面を意識しなければならないと思っています。
 
社会広聴会員:
グローバル展開で注力している地域などはありますか。
アサヒビール:
ビール事業に関しては、中国です。拠点の工場も多く、日本のビールメーカーは中国市場に注目しています。中国以外のアジアでは、東南アジアのタイに合弁企業があります。
 
社会広聴会員:
工場によってビールの味は異なるのでしょうか。
アサヒビール:
どこでつくられても同じ味が出せる処方で製造していますので、工場によって異なることはありません。各工場に、官能検査官を配置しています。本来の味がすべてのお客様においしい状態でお届けできるように専門家が常にチェックをしています。

※官能検査
官能検査は、機械だけに頼ることなく、人間の感覚を総動員して行う品質検査です。
 

参加者の感想から
●水を大切にする取り組み、また、環境への取り組みがよく分かりました。

●工場見学の見やすさも含め、工場への訪問者、消費者の方を向いた企業であるという認識を強めました。参加者全員で交流できたことも大変良かったです。

●生産ラインの切り替えで9種のビールが生産できることに驚きました。リサイクルが徹底されている印象を受けました。ゴミ排出ゼロ(廃棄物再資源化 100%)にはコストが掛かると思いますが、真剣に取り組んでいらっしゃる姿勢に感銘を受けました。

●激しいメーカー間競争に打ち勝つべく、新種ビールの開発や、薬品をはじめ経営の多角化をも目指す姿勢がうかがえました。メーカーとしてCSRに積極的に取り組まれていることにも好感が持てました。

●工場見学をして、いろいろなご説明を聞き、企業の姿が見えてきました。アサヒビールの挑戦する姿勢、明るさがよく伝わりました。

●アサヒビールの方の丁寧な説明で理解を深めることができました。主婦としては食の安全性、品質管理が一番気になっていましたが、衛生管理をきっちりされていると聞き、安心しました。

お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
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