企業と生活者懇談会
2007年10月18日 兵庫県
出席企業:キッコーマン
見学施設:高砂工場

「食について考える」

2007年10月18日、兵庫県高砂市のキッコーマン高砂工場で「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴会員19名が参加し、同社の企業概要と高砂工場の説明を受け、工場内を見学した後、質疑懇談を行いました。
キッコーマンからは、二村宏執行役員高砂工場長、同工場の飯田武工場次長、小塚太設備グループ長、佐藤潤一品質管理グループ長、福田明総務グループ主事および東京本社の大坂葉子広報・IR部社会活動推進担当部長が出席しました。
キッコーマンからの説明
■キッコーマンの歩み■
 キッコーマンの源流は、江戸時代初期に現在の千葉県野田市で始まったしょうゆ造りにさかのぼります。1917年(大正6年)に野田・流山の醸造家8家が合同して設立した野田醤油株式会社が同社の前身です。
 設立当時200以上あったしょうゆの商標は1940年(昭和15年)までに「亀甲萬」に統一され、1964年(昭和39年)に社名を商標と同じキッコーマン醤油株式会社に変えました。
 キッコーマンは国内で事業を拡大する一方、1957年(昭和32年)に米国で本格的なマーケティング活動を開始して以来、積極的に海外展開を進めてきました。また、しょうゆ以外の調味料や食品、飲料、バイオ事業などに進出し、1980年(昭和55年)にはキッコーマン株式会社に社名を変更しました。
 同社は企業の社会的責任への取り組みや、近年では食育活動にも力を注いでいます。

■しょうゆのルーツ■
 しょうゆのルーツは、食物を塩漬けにして発酵させた中国の「醤(ひしお)」といわれます。鎌倉時代には径山寺(金山寺)みそから溜しょうゆのようなものが得られることが発見されました。今日のしょうゆに近いものが造られるようになったのは室町時代で、中期以降にようやく庶民に普及するようになりました。
 江戸時代には気候がしょうゆ造りに適し、原料の入手が容易で大消費地の江戸への舟運の便が良い野田でしょうゆが盛んに生産されるようになりました。

■高砂工場について■
 関東発祥のキッコーマンが高砂に工場を完成したのは1931年(昭和6年)です。甲子園球場が6個も入る約8万坪の敷地でしょうゆを生産しています。
 高砂工場はキッコーマンの国内しょうゆ生産の約3割を担い、単一のしょうゆ工場としては世界最大級で、製品を名古屋から九州に至る地域に出荷しています。

■しょうゆの製造工程■
 はじめに、蒸した大豆と炒って砕いた小麦と麹菌を混ぜて、温度と湿度を管理した製せい麹きく室しつで3日かけてしょうゆ麹を造ります。
 このしょうゆ麹に食塩水を混ぜてもろみにし、巨大なタンクに移して約6カ月間発酵・熟成させます。熟成を終えたもろみは幅3メートル、長さ1800メートルの長大な布で包みます。布は何度も折りたたまれて3階建てのビルほどの高さになり、その自重でもろみからしょうゆをにじみ出させます。その後、さらに布をプレスしてしょうゆを搾ります。
 もろみから搾った生しょうゆは、3~4日間タンクに置いて油や澱を分離させてから加熱殺菌して色・味・香りを整え、酵素の働きを止めます。これを高度に自動化された詰め工程で容器に充てんし、最後に厳しい検査を受けて合格した製品だけを各地に出荷します。
キッコーマンへの質問と回答
社会広聴会員:
キッコーマンは全国的なブランドですが、各地域のしょうゆ会社も多くあるのでしょうか。
キッコーマン:
しょうゆは地域性の強い商品で、一昔前は日本全国に約3000のしょうゆ醸造会社があったといわれています。現在、会社数は減少しましたが、それでも 2004年(平成16年)現在で1400を超えるしょうゆ会社が存在します。その中でキッコーマン・グループのシェアは2005年度(平成17年度)で 30%強です。
社会広聴会員:
国内市場の動向は、どのようになっていますか。
キッコーマン:
国内のしょうゆの売上高は微減傾向です。これは、人口が減少している上に、高齢化が進み、加えて食の多様化などで需要が減少しているためです。一方、女性の社会進出などによってしょうゆ関連調味料へのニーズが高まり、つゆやたれの売り上げが増えています。
 
社会広聴会員:
市場動向を踏まえて、キッコーマンではどのような経営戦略を考えているのでしょうか。
キッコーマン:
キッコーマン・グループでは、海外におけるしょうゆの販売量の拡大に伴い、しょうゆの生産体制の強化に努めてきました。現在では、米国、欧州、アジアにおいて6生産拠点があり、出荷は順調に推移しています。  今年(2007年)はキッコーマンがアメリカで本格的なマーケティングを開始して50周年になり、今日、アメリカではキッコーマンはしょうゆの代名詞となるまで定着しました。  また、国内では、高付加価値商品の売り上げ増を目指しています。
 
社会広聴会員:
海外事業は企業風土にどのように影響しましたか。
キッコーマン:
海外では、「共に働き、助け合う」ことをモットーに現地採用の社員との平等に心掛け、日本人同士で固まらないよう意識的に努力しました。その成果が社員の自信につながっていると思います。
 
社会広聴会員:
具体的にはどのような商品開発を行っていますか。
キッコーマン:
市場のニーズに対応し、しょうゆでは高級品や、塩分を減らしたり、GABAを含む付加価値の高い商品などを開発し、好評です。しょうゆの周辺商品としては、つゆ類・たれ類の開発に注力しています。また、しょうゆ造りを通じて蓄積された技術を生かし、トマトの皮やブドウの種からも健康食品を開発しました。

※GABA(ギャバ)
γ(ガンマ)-アミノ酪酸gamma-aminobutyric acidの頭文字。発芽玄米や米ぬかなどに多く含まれ、健康に良い成分として注目されている。
 
社会広聴会員:
「丸大豆しょうゆ」と普通のしょうゆの違いは何ですか。
キッコーマン:
大豆を丸のまま使ってしょうゆを造る製法に対し、戦後は製油会社で油を搾った後の脱脂加工大豆を原料としたしょうゆ造りが主流になりました。 しかし、大豆の油脂成分が醸造中にグリセリンなどに分解され、まろやかさが増すことが分かり、丸大豆しょうゆの生産を再開しました。
 
社会広聴会員:
高砂工場では、製品の品質や安全・衛生管理にどのように取り組まれていますか。
キッコーマン:
原料は生産地および国内で農薬について残留が無いかチェックしています。遺伝子組み換え作物は一切使用していません。  製麹・仕込みなど、製造の各段階で品質を検査し、最終チェックを受けた上で出荷されます。なお、高砂工場は1998年(平成10年)にISO14001(環境マネジメント)、1999年(平成11年)にISO9001(品質管理)の認証を取得しています。
 
社会広聴会員:
環境やリサイクルへの取り組みを教えてください。
キッコーマン:
社会と調和の取れた企業活動の一環として、廃棄物や副産物の再利用と、環境配慮型の容器や包装資材の積極的な推進に取り組んでいます。副産物の再利用としては、もろみを搾った後のしょうゆ粕の飼料化を進めています。また、もろみから搾られた生しょうゆの表面に浮いてくる油は、重油の代わりにボイラーの燃料や魚の餌にし、工場全体では副産物の100%がリサイクルされています。容器については軽量化のほか、卓上壜のリユース(再利用)促進、キャップを簡単に外してリサイクルしやすくするエコキャップ化などを進め、工場の作業着もリサイクル製品を採用しています。
 
社会広聴会員:
食育活動の内容はどのようなものでしょうか。
キッコーマン:
キッコーマンは2004年に食育の理念と方針を定め、翌年から活動を開始しました。高砂工場の社員も2005年から小学校を対象に出前授業「キッコーマンしょうゆ塾」を実施し、子どもたちに食の大切さを伝えています。また、毎年約1万人の方が工場見学に来ますが、その半数が小学生です。地元の教育委員会や山陽電鉄と連携して親子を工場に招き、食体験をするプログラムなども行っています。
参加者の感想から
●食文化の維持向上や、共生の理念を大切にしてグローバル経営に取り組む姿勢について知りました。

●キッコーマンについては知っていたつもりですが、実際に工場を見ることで、多角的に知ることができました。

●海外の事業所では現地に溶け込み、日本人従業員同士で固まらないよう意識的に努力したというグローバル企業成功の秘訣を知りました。

●世界各地で日本食の普及に努められていると聞き、「キッコーマン」の世界の広がりを感じました。

●従業員支援制度で、「働きやすい環境」を設けていらっしゃることを知り、うらやましく感じました。

●社員の方が自社に誇りを持って働いている姿に感銘を受けました。

●毎日使っているしょうゆについて、あまりにも知らなかったと痛感しました。大変参考になりました。

●しょうゆの多様さに今更ながら驚き、恵まれた食生活ができることに感謝しました。

●品質管理の方からの、自社製品に対する愛情が感じられる説明が大変良かったです。

●製麹室は圧巻でした。日本人の健康を支える発酵食品を大切にしたいと思いました。

●食の大切さ、キッコーマンの方々の熱意、商品を愛する心が伝わりました。

●しょうゆにも賞味期限があることを知りました。今後は栓を開けたら冷蔵庫に入れることにします。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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