企業と生活者懇談会
2007年10月4日 神奈川
出席企業:第一三共
見学施設:平塚工場

「健康を支える医薬品について考える」

2007年10月4日、神奈川県平塚市の第一三共の生産部門である第一三共プロファーマの平塚工場にて、「企業と生活者懇談会」を開催しました。社会広聴 会員16名が参加し、同社の企業戦略と平塚工場の概要について説明を受け、所内を見学した後、質疑懇談を行いました。
第一三共プロファーマ平塚工場からは、朝田克彦取締役平塚工場長、佐藤良治管理部スタッフグループ主査(環境担当)、小櫛東吾総務課主査、総務課渡辺裕子 氏、菱田純取締役管理部長、坂本真美管理部総務人事グループ主任が出席しました。また、第一三共から伊澤広純サプライチェーン本部サプライチェーン企画部 スタッフグループ長、同部の峰岸俊也主査、コーポレートコミュニケーション部広報グループの熊巳弘一主査、CSR部CSR・環境経営グループの本村健治課 長代理が出席しました。
第一三共からの説明
■第一三共の概要■
 第一三共は、三共と第一製薬が2007年(平成19年)4月に経営統合してスタートし、あわせて、第一三共の生産機能を第一三共プロファーマとして分社化し、7つの工場で約1500人の従業員が働いています。
 第一三共グループは「つくっているのは、希望です。」を企業のスローガンにしています。医薬品づくりは人間の命にかかわる仕事であり、医薬品をつくると同時にすべての命を照らす希望をつくることを目指しています。その取り組みは「革新的医薬品を継続的に創出し、提供することで、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する。」という企業理念を見ても分かります。

■平塚工場の概要■
 平塚工場は1966年(昭和41年)に三共が同地区に工場を設立したのが始まりです。現在、平塚工場では約470人の従業員が在籍し、第一三共プロファーマの7工場中、最大の規模を誇り、生産部門の中心である旗艦工場として位置付けられています。主要な製造品目としては、固形製剤、注射剤、アンプルなどです。

■平塚工場の特長■
 平塚工場では製造承認を受けて生産している品目は87に上ります。それらを製造する同工場の特長は、以下の4つです。

   1. ファクトリーオートメーション(効率化・機械化)
   2. Closed System (可能な限り異物混入を防ぐ製造方法)
   3. 第一三共プロファーマの生産技術拠点の役割
   4. S( Safety:安全)、H( Hygiene:衛生)、E(Environment:環境にやさしい)に配慮した工場

 特に、 1. で可能な限りの効率化と機械化を図り、人間の介在する部分を減らすことで、2.のClosed System を実現し、異物混入や衛生面での限りない安全性を実現しています。
 また、平塚工場での環境面の取り組みとしては、開発段階から化学物質を減らすことを念頭に置いた「グリーン・ケミストリー」です。化学物質の削減や、二酸化炭素削減やゼロエミッション達成など、循環型社会への取り組みを進めています。あわせて、ISO 14001の認証を2000年(平成12年)に取得して以来、継続的に維持・更新審査を受け、環境に関する内部監査を工場内で実施し、全職場で環境マネジメントシステムを実施しています。
 排水の処理については、工場全体の水のバランスシートを作成しています。工場に入ってきた水と、出て行く水の量を管理し、排水については市の規制値より厳しい自主規制値を作成し、継続して遵守しています。

■工場内の見学■
 平塚工場の概要について映像などで紹介を受けた後、広大な工場敷地内の一画にある見学施設にて、実際の製造工程を、原料の秤量→無人車での搬送→混合および造粒というように、順を追って説明を受けながら見学しました。説明を受けた各工程での安全、衛生管理の厳しさや、工場の特長であるファクトリーオートメーションを目の当たりにできた、大変貴重な機会でした。
第一三共への質問と回答
社会広聴会員:
新薬開発には莫大な費用が掛かると聞いていますが、実際はどうなのでしょうか。
第一三共:
日本で一つの新薬を開発するための費用は約500億円といわれています。近年、新薬の研究開発費は増大傾向にあります。一方、長い年月と低い成功確率も新薬開発の特徴です。そのため、規模が小さくても、「知恵で勝つ」ことができる分野といえます。高齢化社会が進行している現在、薬の貢献度を上げることのできる領域への進出など、製薬会社として今後も病気との闘いを続けていきます。
 
社会広聴会員:
世界的に新薬開発競争が激化している今日、ますます研究開発費の増大が懸念されます。製薬会社は大規模化しないと生き残れないのでしょうか。
第一三共:
当社は、売上規模の拡大ではなく、新薬の創製により将来性、収益性を高める戦略に主眼を置いています。確かに、世界の医薬品の中心市場である北米で販売することが可能な、ある程度の規模は必要です。しかし、世界最大手の製薬会社で現在、新薬が創製されなくなっている現状をかんがみると、規模の追求だけが重要ではないと考えています。
 
社会広聴会員:
平塚工場でつくられている医薬品の原材料の調達、管理はどのようにされているのでしょうか。
第一三共:
第一三共プロファーマの7工場のうち、秋田、小名浜、小田原では医薬品のもととなる原薬を製造し、静岡、高槻、大阪、そしてここ平塚工場で製剤を製造しています。原薬生産は基本的に自社で行い、それ以外に使用する化学薬品などの副原料および材料は、他のメーカーから調達しています。
 
社会広聴会員:
医薬品の安全性確保のため、平塚工場のような製造工場でどのように品質管理を行っていますか。
第一三共:
薬事法に基づき医薬品製造管理者を設置し、製造工場が医薬品の製造・保管・出荷の各段階において、適正な品質管理を行う基準(省令)であるGMP(Good Manufacturing Practice:医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理に関する基準)を遵守し、定期的に自己点検・査察を行っています。
 
社会広聴会員:
医薬品の副作用情報の収集など、製造販売後の対応はどのようにされていますか。
第一三共:
製薬会社として、医薬品の製造販売後も品質、安全性、有効性、適正な使用法などのための情報を、医療機関に提供する医薬情報担当者(MR)が医療機関を通じて収集し、必要な情報を伝達する役割を担っています。制度的にも、医薬品などの製造販売後の安全管理、調査および試験を実施し、安全性を担保する体制を構築しています。
 
社会広聴会員:
ジェネリック医薬品(特許権存続期間が満了した後発医薬品)については、どのようにお考えでしょうか。
第一三共:
ジェネリック医薬品の日本の普及率は16~18%であり、欧米の普及率(40~50%前後)と大きな差があります。これは、薬の値段である薬価に関する制度の違いが大きな理由だと思われます。欧米では特許が切れるまでは薬価を上げること、維持することができ、特許期間終了後、結果的にジェネリック医薬品のような安い薬が市場で普及します。一方日本では、2年に1度の薬価改定で特許期間中の医薬品も値段が下げられるため、欧米とは市場の様相が異なります。故に、一概に比べられないのが現状です。  しかし、日本の医療制度の中でジェネリック医薬品の使用促進は、時代のすう勢と思われます。  当社としては、「革新的医薬品を継続的に創出し、提供することで、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する。」という企業理念から新薬開発で成長性、収益性を高める事業戦略を採っています。
 
社会広聴会員:
薬の上手な服用の仕方を教えてください。また、市販されている医薬品と、薬局で処方される医薬品の違いを教えてください。
第一三共:
医薬品は、それぞれの用法、用量をお守りいただき、決められた通りに服用するのが基本です。また、市販されている「一般用医薬品」は、薬剤師と相談の上、消費者の判断で購入、使用できるため、特に安全性を重視しています。一方、医療機関で医師の診察を受けた後に薬局で受け取る「医療用医薬品」は、医師が患者の症状に応じ、診断して作成した処方箋に基づき、薬局の薬剤師が調剤します。従って、薬の有効性は一般医薬品より強く、用法、用量をよく守って服用していただきたいと思います。
 
参加者の感想から
●医療品の製造工程で、人間が介在する機会を極力排除していることは、異物混入やバイオハザードへの対策として合理的だと思いました。

●原薬の秤量から包装・梱包まで、徹底した自動化による衛生・品質管理が行われていることに驚きました。

●「つくっているのは、希望です。」というメッセージはとても良いと思いました。

●MRの増強のような施策を打っている第一三共は、社会の動きに対応していると思いました。

●医薬品を購入する機会が多いだけに、信頼感を持って医薬品と付き合うことができると思えた良い機会でした。

●製薬業界全体の動向や、経営統合の話題、得意とする研究分野について、専門的な説明も、もう少ししてほしかったです。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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