企業と生活者懇談会
2002年10月4日 香川
出席企業:穴吹工務店
見学施設:穴吹住宅環境デザイン研究所

「住まいは人を育てる『命の器』~快適な住まいづくりを目指して」


穴吹工務店からの説明
■会社概要の説明■
 当社は1905年に穴吹喜作が創業し、今年で創業97年を迎えます。
 香川県の高松市に本社を置き、現在は全国42の都府県に合計75の事業所を構えています。
 当社はデペロッパーとして、分譲マンション事業を中心に事業を展開しています。当社の総売上の8割を占めるマンション事業の特徴の1つは、ニーズが読みやすく、市場変動の少ない地方都市地方での販売の割合が高いことです。マンション売上の実に8割が地方都市で、残り2割が政令指定都市などの大都市となっています。
 事業の大きな柱のもう1つは、建設の請負事業です。高水準の施工技術を持ち、一般の請負工事を担うゼネコンとして、瀬戸大橋記念館、香川県民ホール、香川県立図書館など多数の施工実績を誇っています。この他にも、土地活用の視点から賃貸マンションやテナントビル、店舗経営など、建築とともに経営というソフト面での事業も請け負っています。また、累計着工戸数が6500を数えるミサワホーム事業部など、総合デベロッパー企業として、幅広く事業を展開しています。

■経理理念と住まいづくりの特徴■
 ここで当社の経営理念について、お話をしたいと思います。マンション事業を中心とする当社は「住まい」に対する考え方を最も大事にしています。この考え方の基本は、建物を単に生活する空間と考えるのではなく、人を、暮らしを、人生を育む「命の器」と考えるところにあります。この考えに基づき、当社は「住まいは人を育む命の器」を経営理念に、モノづくりに対して真摯な姿勢を持ち、より快適な住まいを皆様に提供しています。
 続いて、当社の住まいづくりについて、特徴を2点ご紹介したいと思います。
 初めにご紹介するのは「ATDシステム」です。ATDシステムとは「穴吹トータルデベロップメント」(Anabuki Total Development)の頭文字をとったもので、当社の住まいづくりのベースとなるシステムです。このシステムは、お客様に高品質の住まいを提供できるよう、用地取得、企画・設計、施工、販売、アフターサービスまでを自社一貫体制で行うものです。人々が暮らす「まち」選びから、住まいのアフターサービスまで、住まいづくりをトータルに手がけています。建設に携わるゼネコンとしての設計・施工技術と、広い視野で住まいづくりを企画・推進するデベロッパーのスタンスを持って、このシステムを運営しています。
 第2の特徴は、お客様の入居後の満足にこだわる「アフターサービス工務店」宣言です。マンションなど購入前のお付き合いは1年程度です。当社はこの期間のお付き合いももちろん大切にしていますが、マンションを購入いただいた後の20~30年をもっと大事にしたいと考えています。長期修繕計画はもちろん、個別のメンテナンスから災害時などの復旧作業まで、きめ細かく柔軟に対応し、入居後の快適な暮らしをサポートします。また、入居後のご意見も「これから」の住まいづくりに反映し、住む人の立場で考えた、より良い商品開発に役立てています。
  このアフターサービス工務店の考えのおかげで、お客様から新しいお客様をご紹介いただくケースも多く、その数は新規契約数の約40%までになっています。
 住まいの提供で皆様の快適な暮らしづくりに役立つと同時に、毎日の暮らしに楽しさや嬉しさを提供する社会貢献活動も行っています。プロ野球オリックス・ブルーウエーブのファームチーム「サーパス神戸」や、劇団四季のスポンサー活動、また香川大学との共同研究や寄付講座など、数多くの社会貢献活動に取り組んでいます。
  これからも住まいづくりを通して、暮らすことの喜びや感動を皆様とともに、作り上げていきたいと考えています。
穴吹工務店への質問と回答
レポーター:
新しく家を建て、8年が経ちます。家を建てる際、流し台やユニットバスをはじめとする住宅設備はデザイン性を重視して取り付けました。しかし、このところ強く感じるのは、家庭内の設備はデザイン性もさることながら、実用性が一番だということです。本日見学をさせていただいて、展示してある各種住宅設備が非常にコンパクトにまとまり、実用性が高いように感じました。住宅設備について、どのようなお考えをお持ちですか。
穴吹工務店:
戸建住宅と集合住宅では、住宅設備に関して基本的な違いがあります。戸建住宅は、カタログに載っているもの、いわゆるルート商品と呼ばれる既製品の中から、流し台やユニットバスなどを決めていきます。一方、集合住宅は、建物全体の寸法や高さなどの問題から、既製品を取り付けることができません。そこで、各集合住宅に合った住宅設備を、1つ1つ図面を書いて取り付けていくことになります。この点が、戸建住宅と集合住宅の大きな違いです。
住宅設備メーカーさんには、2通りのお客様があります。1つは、設備の採用に大きな決定権を持つ大工さんや設備業者さん。もうひとつは、その設備を実際に使ってくださるエンドユーザーであるお客様です。住宅設備メーカーさんはこれまで、ともすれば大工さんや設備業者さんに目が行っていました。しかし、最近は実際にお使いくださるエンドユーザーのお客様に喜んでいただくことが一番ということで、エンドユーザーのお客様の視点に立った開発を進めています。
当社も実際にお住まいになられたお客様からたくさんのクレームやご意見をいただきます。これらを実際にマンション内の設計に直接反映させることができる点が、当社の強みでもあります。今後もお客様の声を反映した商品作りを、住宅設備業者さんと一緒に進めていきたいと考えております。
 
レポーター:
最近、お客様からどのようなクレームや意見を多くいただいていますか。
穴吹工務店:
最近いただくご意見で多いのは、生活時間帯の違いや小さな子供が室内を走り回ることなどに起因した、「音」に関するものです。
昔の日本人の代表的な住まいは、「横」に各世帯が生活する長屋でした。「人の上に人が住む」集合住宅の形態は戦後出てきたもので、歴史としてはごく浅いものです。歴史が浅いので、「縦」に各世帯が生活するマナーがまだまだ定着していません。
また、結露に関するお問合せも多く承っています。集合住宅の特性である「すきまが少なく、機密性が高い」ことが原因だと考えています。
本日ご見学いただいた「穴吹住環境デザイン研究所」では、床衝撃音に配慮したコンクリートスラブ厚とフローリング素材の組み合わせの検証、玄関ドアや外壁の結露試験などをはじめ数多くのテストを、当社の「サーパス」マンションの住戸内環境を想定して実施しています。膨大なサンプルの中から、満足のいくデータを残すものだけを「サーパス」マンションに採用しています。
 
レポーター:
デフレで物価が下がり、マンションに関しても2000万円前後の格安マンションが多く売られています。格安マンションの動向について、教えてください。
穴吹工務店:
ご指摘の通り、マンション市場では最近、格安のマンションが売り出されています。なぜ従来の物件に比べて格安マンションが提供できるのかというと、次の3つの要因が考えられます。第1に、懸命な企業努力で経費圧縮を行っていることです。2つ目は住戸の面積を小さくしているためです。従来は21坪で販売していたものを、19坪にして販売する。同じ単価だったら、安く提供できるわけです。3つ目としては、品質を落とす方法があります。例えば、コンクリートの質を最低限のレベルにしてしまうやり方などがあります。
当社としては、お客様が望んでいる広くて安いマンションを品質を落とすことなく提供するために、部材調達をはじめ更なるコスト削減努力をしています。同時に、普段ほとんど使うことのない設備は取り付けないようにし、各住戸にとって必要な機能を改めて見直しています。これらの努力によって、今後もお客様にとって本当に満足いただけるマンションを見極め、よりより物件を提供していきたいと考えています。
レポーター:
犬が大好きで、マンションでも飼えるところを探しています。マンションでペットを飼うことについて、穴吹工務店はどのような対応をしていますか。
穴吹工務店:
ペットには人の心を癒す効果があり、家族同然に扱っている方も多いので、その共生は重要なテーマだと考えています。一方で、ペットを無断で室内で飼っている人がいて、非常に困っているというお申し出も多く寄せられています。
マンションでペットを飼うには、集合住宅のルールである管理規約のペットに関する項目について、住民の3分の2以上の同意を得て内容を変更すれば、マンション内でペットを飼うことができるようになります。
穴吹工務店はペットとの共生に関して、管理規約で対応するほかに、建設当初よりペットを飼いたい方とそうでない方、双方に配慮したマンションづくりをしています。当社の「サーパス後楽園第二」というマンションで、既に実施しています。
このマンションでは、ペットの毛を手入れする専用の部屋「グルーミング・ルーム」や散歩の後の足洗い場を設置しています。この他にも、エレベーターにペットを連れた人が乗っているかどうかをモニターで確認できる設備を各階に設置するなど、ペット好きの人とそうでない人が上手に暮らせる仕組みを作り、大変好評を得ています。
 
レポーター:
いまバリアフリーへの取り組みの重要性が各方面から出ていますが、この点についてはどのようなお考えをお持ちですか。
穴吹工務店:
家屋内の段差や仕切りなどをなくして、障害者や高齢者に配慮した環境を提供することをバリアフリーと呼んでいますが、現在では、主に床のフラット化のことを指すようになっています。家の中には、玄関の上がりかまちをはじめ、お風呂のまたぎ段差やバルコニーの段差など、数多くの段差があります。ご購入される方も、車イスでも通れるようにしてほしいなどのご希望を寄せられるので、できる限り対応をしていきたいと考えています。 私どもがバリアフリーとともに注目しているのが、「ユニバーサルデザイン」という考え方です。これは、性別、世代、障害など人々が持っているそれぞれの違いを超えて、誰もが平等に使いやすい商品を作っていこうというものです。 当社のマンション購入者の6割が30代~40代のお客様で、2割が50代以上のお客様です。このデータが示すとおり、幅広い年代の方にご購入いただいて、長年住んでいただくものです。したがって、単に段差をなくすのではなく、将来を見据えて壁などに手すりが付けられる下地にしたりするなど、ユニバーサルデザインを意識したマンションづくりに取り組んでいきたいと考えています。
 
レポーター:
「アフターサービス工務店」について、もう少し詳しく説明してください。
穴吹工務店:
当社がアフターサービス工務店を宣言したのは5年前になります。この宣言は、お引渡ししてから、お客様との本当のお付き合いが始まるということを基本的考え方としています。 先ほども申し上げましたが、弊社のマンション販売の特徴はATDシステム(穴吹トータルデベロップメントシステム)で、用地の取得から企画・設計、アフターサービスまでをすべて自社一貫体制で行っています。 すべての工程を自社で行っているので、事業に関するすべての責任は自社で取ることができます。これが一部分でも業務を外部に委託していると、なかなかできません。お客様に対して言い逃れしませんという宣言、これが当社のビジネスモデルの最大の特徴です。
自社一貫業務とすることにより、お客様の声がしっかりと社内に入ってきます。これらをきちんとフィードバックし、数多くの情報を社内に蓄積することで、今までにも増してお客様にご満足いただける質の高いマンションをご提供できると考えています。
 
出席者の感想から
●ペットとの共生を大切に考えて猫の出入口トイレの設置は猫大好きの私の思いをくすぐるものでした。

●顧客を裏切らない姿勢、アフターサービスを大切にしているお話には、一生活者としてホッとする気持ちでした。

●マンションに住む方のマナーについての心得をお客様にお伝えするのが、自分たちの務めと話しておられたことがとても印象的でした。

●私自身としましては、マンションのイメージは規格品の住宅であるとの思いがありましたが、企業の努力で個性的で、快適性が追求されていることを知りました。

●バリアフリーを超えてユニバーサルデザインの思想で取組まれていること、鍵を渡してから本当のお付き合いが始まるアフターサービスマンション宣言など正にこれこそCSの本質を見た。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
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TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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