企業と生活者懇談会
2002年10月31日 福岡
出席企業:東陶機器
見学施設:小倉第一工場

「高齢者にやさしい生活は、みんなが楽しい生活だ」

東陶機器からの説明
■当社の沿革と概要■
 当社は、みなさんご存知の食器メーカー日本陶器(現:ノリタケカンパニーリミテッド)の製陶研究所に端を発し、後に分社して1917年(大正6年)に小倉の地に東洋陶器として設立されました。
 小倉の地に創業した理由は3つあります。第1に、朝鮮半島に近かったこと。朝鮮半島には陶器の原料である陶土が豊富にあります。2つ目は、焼成窯の燃料である石炭の産地、筑豊炭田に近かったこと。第3に、輸出・運輸の拠点に適していたことがあげられます。社名の「東洋」が示すとおり、当社はアジアをビジネスの対象と考えていました。当時、輸出港として栄えていた門司港に隣接していて、中国大陸や東南アジア向け輸出に非常に便利な土地だったのです。
 1969年(昭和44年)に商標を「TOTO」に変更したのを機に食器の製造を止め、衛生陶器の製造一本に事業内容を絞りました。また、1970年(昭和45年)には社名を「東陶機器」に変更しました。
 1980年(昭和55年)に、現在もお客様の好評をいただいているウォシュレットの発売を開始しました。アメリカンビデ社が開発した医療用器具「ウォッシュエアシート」という現在のウォシュレットの原型となる商品の将来性に着目し、当社がアメリカンビデ社から特許を取得し、独自に開発を重ねて「ウォシュレット」が誕生しました。
 1998年(平成10年)には、TOTOが世界で初めて「光触媒超親水性技術」、通称「ハイドロテクト」技術の開発に成功しました。これはタイルなどの表面に、光触媒と呼ばれる酸化チタンの薄い膜を焼きつける防汚技術です。水洗いだけで汚れが簡単に落ちて、高い抗菌・防臭・防汚の効果があります。現在、この技術を使った外壁のコーティング材やタイル、キッチンパネルなどを発売しています。今後幅広い用途の広がりが期待されています。
 現在、国内には小倉をはじめ、全部で9つの工場があります。営業物流拠点は、全国に120あり、全国を網羅しています。
海外はインドネシア、タイ、中国、アメリカに力を入れた活動をしています。生産は16の工場で行い、営業も16の拠点を設けています。現在は、発展目覚ましい中国に力を入れ、上海に新工場を建設しています。
 環境問題にも積極的に取り組んでいます。1991年に、全社的な観点から環境に取り組むため、社長をトップとする地球環境保全委員会を設置しました。 1999年(平成11年)に品質に関する国際規格であるISO9000を全社で取得、2000年(平成12年)には全工場で環境に関する国際規格ISO14001を取得しました。
 また、工場廃棄物のリサイクルや減量化を進めると同時に、古紙分別回収によるリサイクルを推進するなど、2002年には全工場でゴミゼロエミッションを達成するに至りました。

■生活環境企業を目指して■
 主な営業品目は、大便器や小便器などの衛生陶器、ウォシュレットやユニットバス、洗面化粧台、システムキッチン、そして水栓金具です。水まわりの設備企業から、水まわりの総合サービス企業へ進化するために、3つの計画をスタートさせました。
 1つ目は「クリーンタウン計画」です。「暮らしながら、環境を守る、全てをそんな商品に」という考えのもと、節水や省エネルギーを実現し、地球環境に配慮した商品を通じた美しい生活を提案していきます。
 2つ目はお客様とのきずなを大切にする「きずな計画」です。お客様相談室やショールームなどを設置し、お客様のあらゆる相談にのれる体制を整えています。お客様の"困った"を"よかった"に変えるための商品とサービスの確立を目指していきます。
 3つ目は「楽&楽計画」です。ユニバーサルデザインの採用や、高齢社会に向けた商品の開発を進めていきます。
現在、全国で65歳以上の高齢者人口は2272万人、人口の17.9%を占めています。5.8人に1人が65歳以上の高齢者になります。また、65歳以上の方が居住する高齢世帯率も31.5%と高い割合となり、住宅内の事故死者数の割合は、65歳以上が実に72.6%を占めるに至っています。
 バリアフリーを取り入れた住宅構造が必要となっていることを背景に、介護する人も楽、介護される人も楽という視点から、高齢者配慮商品への取組みを進めています。4月には、ユニバーサルデザイン研究所を新しく設置しました。多方面からの研究を進め、社会のニーズにより一層合ったものを提供することに努めていきたいと考えています。
 つくるだけのメーカーから、総合的な視点でお客様の声に応える「生活環境企業」を21世紀のTOTOは目指していきます。
東陶機器への質問と回答
レポーター:
お客様からさまざまな相談を受けると思います。受付けの体制はどのようになっていますか。
東陶機器:
お客様からのお申し出を受付ける体制は2拠点あり、それぞれ西日本地区と東日本地区を対応しています。各地区とも20名程度が電話で対応しています。この他にも、技術的な問題にもすぐ対応できるようにテクニカル人員も配置しています。商品に関する電話でのお問合せは、平日は9時から 18時、土・日・祝日は10時から18時まで受付けています(夏期休暇、年末年始を除く)。
お客様からのお申し出は、多岐にわたります。一番多いお問合せは、商品を購入する前の相談です。また、カタログの請求や水漏れなど修理に関するお問合せも多く受付けています。それぞれ電話での応対を基本としていますが、ケースによってはTOTOのショールームや工務店を紹介したりして、対応しています。
この他に、製品や当社のサービス体制などに関するクレームを受付けることもあります。これらの貴重なお申し出は、「お客様の声」として記録し、業務担当部署に連絡して、より良い商品開発やサービス体制の整備などに努めています。
 
レポーター:
毎日ウォシュレットを使い、非常に快適に過ごしています。先日、外国旅行をしたとき、日本のトイレと外国のトイレの快適さの違い、お風呂の文化の違いなどを深く感じました。水まわり全般に対する日本の取組みは、世界的に見て、どのようなレベルにあるのでしょうか。
東陶機器:
世界的に見て、日本ほど水まわりの器具に機能を持たせている国はありません。便器にウォシュレットのような機能を追加させて使うのは、欧米ではまだまだ常識として理解できないようです。これは文化などの違いが背景にあると思います。ヨーロッパでは中世から、トイレはそれほど進化していません。お風呂もバスタブのまま進化していません。ヨーロッパの一流ホテルは絨毯や絵画などは立派ですが、シャワーやお風呂などには価値を見出していません。例えていえば、500ドルあるならウォシュレットを買うより、ウォークマンを買ったほうがよいと考えるそうです。
このようなことを背景に、海外の優良メーカーの技術・開発スタッフは、当社の技術・開発スタッフの10分の1にすぎません。技術の進歩スピードも、開発時の人材投資も、日本のほうが優れています。今後も日本発の水まわり技術を世界に発信し、デファクトスタンダード(業界標準)になるよう、活動を展開していきたいと考えています。
 
レポーター:
トイレや洗面といった水まわりの商品から高齢者配慮商品まで、幅広い商品を取扱っていますが、消費者ニーズを把握するためにどのような取組みをしていますか。
東陶機器:
開発した商品は、お客様に支持していただいて、はじめてその価値が出るものです。
そのためにモニタリングシステムを導入し、現在では約200名のモニターにご協力いただいています。あらゆるタイプの商品に対応するため、幼児から高齢者までモニターになっていただいています。
モニターには2種類あります。1つは、でき上がった商品を実際に使ってもらい、使い勝手などのご意見をいただくモニター。もう1つは、実際に商品を開発する前に、どのような商品があったら良いか、さまざまな視点からご意見をいただくモニターです。
モニター制度の他にも、当社のホームページを通して、商品に関する要望などを承っています。ご希望などございましたら、ぜひHPにご意見をお寄せください。
 
レポーター:
ウォシュレットを使用しているのですが、ネジや部品が多く、隙間もせまいので掃除が大変です。掃除に関する何か良いアドバイスはありませんか。
東陶機器:
製品の機能を進化させることと併行して、水まわりの施工やお客様のお手入れをいかに楽にするか、取組みを進めています。ウォシュレットと陶器の隙間部分は、確かに掃除がしにくかったのですが、お客様からのご意見などをもとに製品の改良を重ね、今では掃除のたびにワンタッチで便座、便フタの取り外しが可能になりました。
製品の改良のほかに、掃除に関してもいろいろ情報を提供しています。当社のショールームでは、掃除に関する講習会を随時開催しています。また、ホームページ上にも掃除に関するアドバイスを掲載しています。
 
レポーター:
メーカーとして重要なことの1つに、新しい商品の開発があると思います。同時に、営業活動も重要なものです。それぞれが情報のやりとりをしないと、お客様に満足していただくことは難しいと思うのですが、この点に関してどのような取組みをしていますか。
東陶機器:
情報の共有化を重要なテーマと考え、活動を展開しています。そのために、製造部門と販売部門のリーダー全員が出席する「生販執行会議」を月に1~2回開催し、意見交換しています。
えてして、製造している部署は「自分たちは良い製品を作っているのに、販売が売らないから悪い」と思い、販売している部署は「製品が悪いから、売れない」と感じることが多いものです。このようなセクショナリズムの考えをなくすために、この製販執行会議で様々な視点・観点から意見を交換し、お客様に満足していただく商品作りを目指しています。
 
レポーター:
16年前に家を建てて以来、大便器を使っています。かなり年数も経過したので、取替えを検討しているのですが、一部便フタだけの取替えといったことは可能ですか。
東陶機器:
当社では補修部品の保存年限を7年に設定しており、16年前と全く同じ便フタは現在お取り扱いしていません。便フタには取替え用の穴があり、この穴に適合する代替商品で対応するという形になります。お問合せはTOTOパーツセンター(0120-8282-55)までご連絡をいただければと思います。  部品の保存年限についてですが、もう少し期間を延ばして欲しいというご意見をいただくことがあります。当社で現在取り扱っている商品数は約6万点にも上っているので、保存年限の過ぎたものに関しては、代替可能な商品を提供していくことで対応していきたいと考えています。
新商品の提供と既存商品のアフターケアのバランスをいかに取っていくか、今後とも追究していきたいと思います。
 
レポーター:
トイレで使う水の量を節約することも、環境対策上重要な課題だと思います。この点については、どのような取組みを進めていますか。東陶機器:
水も限りある資源なので、より少ない量で汚れを落とすことが重要だと考え、商品の改良に努めています。当社では1970年代の後半から、節水便器の開発を重ねてきました。当時の大便器は1回ごとに約20リットル、石油缶1本以上の水を使用していました。その後研究を重ね、現在は便器の給水系に工夫を施したり、便器ボールに溜まる水面の広さを確保して8リットルの水洗機能に最適な形状の開発をしたりしました。また、トラップ頂部の形状を以前よりも滑らかにして、従来の機種よりも水流の抵抗をなくすなどの努力により、1回に使う水の量は6リットルから8リットルまでと大きく減らすことができるようになりました。
 
出席者の感想から
●これから先年を重ねる上で、避けて通れないのが高齢化です。今回、自立して生活するための様々な商品を見て、体験できたことはとても有意義な一日でした。

●商品というものは、一定の品質を保って当り前との感覚を今まで無意識に持っていたが、今回の懇談会で品質保持のため、企業がいかに努力しているかを認識させられました。

●商品は数十年もつと自負されており、部品保有にも努力されていることがわかり、嬉しく思いました。

●普段何気なく使っている商品ですが、出来上がるまでそれぞれの工程で、まじめに仕事に取組んでいらっしゃる様子がよくわかりました。作っていらっしゃる現場を見ると商品にも愛着がわくものです。より一層きれいに、大事に使っていきたいと思います。

●陶器工場のため、工場内の温度・湿度が管理されているので、労働条件が厳しい中、働く方々に感謝したいと思います。手作業のところでは職人芸だなぁと思いました。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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