企業と生活者懇談会
2003年2月24日 大阪
出席企業:関西電力
見学施設:南港発電所

「私たちの生活を支えるインフラ」


関西電力からの説明
■関西電力の概要■
 日本には沖縄電力を含めて10の電力会社があります。北海道、東北、関東、関西といった各地域に、それぞれ一つの電力会社があることが、日本の電力供給体制の大きな特徴となっています。
 関西電力は、大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、滋賀県、和歌山県と三重県、岐阜県および福井県の一部を供給エリアとしています。関西電力の平成13年度一年間の総発電力量は1,222億kwhになります。電源の内訳をみると、水力11%、火力30%、原子力が59%となっており、原子力の割合が高いことが特徴といえます。平成13年度の南港発電所の総発電力量は79億kwhになり、これは関西電力全体の発電量の6%に相当します。
 また、関西電力では3、559万kwの発電設備を有しており、電源構成別の内訳では、火力が全体の50%を占め、原子力が27%、そして水力が23%となっており、火力の割合が高い点が特徴です。ここ南港発電所では一日あたり最大180万kwの電力を作る設備容量をもち、関西電力全体の5%の発電を賄っています。180万kwは大阪市の必要とする電力の30%に相当し、電車や都市部への供給電源として、南港発電所は重要な位置付けにあります。

■幅のある電力需要■
 電力需要は、一日の時間帯ごと、曜日ごと、そして季節ごとに大きく変動します。季節ごとの需要では、夏のピーク時は3,300万
kw、冬のピーク時は2,300万kwと、実に1,000万kwの需要の差が生じます。また、冬季の電気の使われ方を一日の時間帯別で見ると朝6時頃は少なく、お昼頃にかけてだんだんと需要が増え、15時頃から17時頃にピークを迎えます。
 発電方式には、原子力、水力、火力、油火力、揚水発電など複数の方式があり、これらを組み合わせて必要な電力を作り出しています。このうち、原子力発電と水力発電が一日に必要な電力を作るにあたりベースとなります。一日の中で時間帯により、電力需要が大きく変動するとお話しましたが、この変動部分に対応するのが火力発電です。昼間は多くの需要に対応するために稼動していますが、夜は需要が減るために止めるか、負荷を少なくした運転をしています。

■周囲との調和を大切にした発電所を目指して■
 南港発電所は、最初の発電機が平成2年11月に稼動し、設置から約12年が経過しました。60万kwの発電機を3基、計180万kw
の発電能力をもつ、関西電力で4番目の大きさをほこる火力発電所です。敷地面積は約50万平方メートルあり、甲子園球場の約12.5個分にあたります。法律では、工場などの緑地面積を敷地面積の25%以上にすることを定めていますが、南港発電所は敷地の35%が緑地になっています。年間約18万人が、発電所を訪れます。
 この発電所の特徴の一つは、燃料に天然ガスを使用していることです。燃料は大阪ガスの泉北第二工場から、長さ8kmのパイプラインを通して送ってもらっています。パイプラインでガスを送ってもらっているので、発電所の中にはガスを貯蔵しておくタンクはありません。現在のところ、大阪ガスさんのLNG基地を利用していますが、エネルギー業界で進む自由化や燃料調達のセキュリティを背景に、14万キロリットルのタンクを3つ保有する当社独自のLNG受入基地「堺LNGセンター」を建設しています。平成17年に完成する予定です。
 もう一つの特徴は、発電所の構内に送電線がないことです。この発電所で作った電力は7km離れた敷津の変電所に送っていますが、ここから敷津まで送るための送電線の半分を、地下に埋設しています。緑化などとあわせて、大阪港の玄関口に相応しい美しい景観の発電所を目指しています。
関西電力への質問と回答
レポーター:
地球温暖化が問題になっています。電力会社として環境への取り組み、特にCO2(二酸化炭素)排出の削減にどのように対処さ
れていますか。
関西電力:
当社は設備産業であり、発電所から電柱、電線にいたるまで、たくさんの施設を皆様方のお住まいの近くや公共の地に建てさせて
いただいています。火力発電所では煙が出ますし、原子力や火力発電所では蒸気を冷やした海水を海に戻しています。そのため、環境への影響をまったくゼロにすることはできません。けれども、なるべく環境への影響が少ないように、建設の段階から配慮して事業を進めています。
特に南港発電所は、周りの環境に配慮して緑化区域も大きく取り、地域の皆様方に親しんでいただけるような施設も用意しています。火力発電所というと、高度成長時代の公害のイメージがあるかもしれませんが、火力発電所から出る煙は、現在ほとんどが水蒸気で、クリーンなものです。CO2排出の問題は課題として残っていますが、それ以外はほとんど問題がありません。
CO2排出の問題は、地球規模での取り組みが必要とされています。日本でも地球温暖化防止に向けた京都議定書が昨年6月の国会で批准されました。国際的に、CO2削減に努力しますと、いわば実印を押したわけです。当社としても、発電時にはCO2を排出しない原子力を発電の供給力のベースにおき、石炭・石油・天然ガスの中でも、燃焼時のCO2発生量が最も少ない天然ガスを火力発電燃料の主力にするなどしています。その努力の結果、他の電力会社と比較しても、最低レベルのCO2の排出レベルに抑えております。
 
レポーター:
エネルギーの自由化が進んでいますが、今後はどのような点に重点をおいて事業を展開していく予定ですか。
関西電力:
昭和26年に電力再編成が行われ、日本の電力供給は全国9ブロック、9電力体制となり(後に沖縄電力が加わり10電力体制となる)、それぞれのブロックで、地域に根ざした地域独占企業として事業を運営してきました。しかしここ数年、規制緩和がエネルギー分野でも進み、自由化が始まっています。現在のところ、いわゆる大工場や大きなビルが自由化の対象となっています。自由化ということですから、大口の工場のお客様たちは、関西電力から電気を買ってもいいし、大阪ガスさんや鉄鋼会社が作っている電
気でも、どこからでも買えるような状況になっています。
自由化の議論は年々進んでおり、自由化される範囲がさらに広がっていく状況にあります。ただ、一般家庭まで自由化の範囲を広げるかどうかという議論は、先延ばしになっています。一昨年、自由化が先行しているアメリカのカリフォルニア州で、大停電が起きたり、電気料金が高騰したりしました。自由化が進んでいる諸外国の状況も見ながら、今後も国を中心に審議されていくこととなっています。
自由化の範囲は拡大されており、電力会社も地域独占企業ではなくなってきています。競争市場の中で勝ち抜いていかなければならなくなっています。当社としては、これまで長年にわたって地域の皆様にご愛顧いただき、その過程で築いてきた信頼をベースに、今後はどういったことをお客様に提供していけるのかを考えながら、事業を進めていきたいと思っています。具体的には、オー
ル電化住宅等に対応した様々な料金メニューやサービスメニューの提供を考えています。また、当社はNTTさんに負けないくらい光ファイバーを関西の域内に張り巡らしています。そうした通信ネットワークを利用した事業も始めています。電気を中心に、当社の持っているインフラ設備を利用して何が提供できるかを考えながら、皆さんの生活がより豊かになるようなご提案をさせていただきたいと考えています。
 
レポーター:
発電方法の一つに風力発電がありますが、将来どの程度の規模、発電能力をもつようになるのでしょうか。
関西電力:
風力や太陽光などは、日本では新エネルギー、国際的には再生可能エネルギーと呼ばれています。このエネルギーの中では、風力が最も効率性、経済性に優れています。ドイツやヨーロッパの一部ではかなり導入が進んでいるので、皆様もテレビや新聞でご覧になったことがあると思います。
風の環境のことを「風況」といいます。日本ではこの「風況」があまり良くない。一定の強さの風が24時間、365日ほとんど変化なく、吹き続けるのが理想的なのですが、日本では北海道または東北の一部を除いて、風況が良くありません。関西は特に悪い。関西地区では山間地や岬でないと、一定の強さの風が吹きません。そのため、風力発電では安定した電力を供給することができないのです。安定した電力を供給できないと、発電量の変動をバックアップする電源が、他に必要になります。結局、このために火力発電など別の設備が新たに必要になってしまう。発電量のデコボコをならすために、たくさんの施設を過剰に持たなければならなく、結果的に効率が悪くなってしまうのです。
こうした状況から判断して、将来的に太陽光を含めて、これら自然エネルギーが日本の主力エネルギーにはなりえません。ヨーロッパで可能なのは、風況がいい地域が北ドイツ一帯などにあり、そこにたくさんの風力発電機を建ててネットワーク化することによって、一定量の電力が生み出せるようになっているからです。「オフショア」といって、海の中に風車を建てる方式がヨーロッパでは最近始まっているようですが、日本の場合には漁業権の問題があります。このほか、国立・国定公園との関係で景観の問題もあり、どこにでも建てられるものでもありません。このように制約も非常に多く、主力電源として考えるのは日本では無理があります。
しかしながらCO2削減の観点から、わが国でもできるだけ導入を進めようという動きは進んでいます。全国の風力発電設備は2000年度末で14万4千kwになりました。南港発電所の発電機が1機あたり60万kwなので、およそ4分の1の発電容量になります。それを2010年には300万kwにすることを目標としています。
 
レポーター:
東京電力で原子力発電所の点検に関する問題が発生しました。関西電力では原子力発電所の点検において、どのように取り組んでいますか。
関西電力:
昨年、東京電力など複数の原子力発電所で、電力会社の自主点検データに改ざんや報告漏れがあることが判明しました。この結果、東京電力管内では17基のうち13基の原子力発電所が現在止まっています。残りについても、3月末から4月にすべて止まる予定になっています。
電気はその性質上、使う量と発電する量の割合を常に合わせていくのですが、送電の際のエネルギーロスや、発電所のトラブルなどを加味して、5~10%多めに電気を作っています。3月になると、東京電力管内での予備率は、机上の計算では0%になってしまいます。大寒波が襲ってくるようなことになると、大規模な停電が起こるのではないかと言われています。関西にいるとなかなかわからないのですが、東京地域では新聞広告やテレビCMで節電を呼びかけています。
現在関西電力を含めて他の電力会社でも、過去の自主点検データのチェックを進めています。3月の中ごろには国に最終結果を報告し、社会にも公表します。幸い現在のところ、問題は見つかっていません。
これは電力会社だけの問題ではありません。いろいろな業界や企業で不祥事が続いており、企業に対する社会の信頼感が極めて悪い状況になっています。当社では、法令順守のための社員向けのマニュアルを策定して、社内に再度周知徹底をしたところです。法律を守るということは当然ですが、社会人として、あるいは地域の住民として当然守るべき規則、道徳があります。特に原子力発電所については、発電所の近隣の皆様に大変なご協力をいただいて運営しています。火力発電所も同じです。皆様の信頼を裏切ることのないよう、そしてまたこれからも信頼を受けられるように、安全を最優先に取り組んでいきたいと考えています。
 
レポーター:
省エネに関心があります。家庭では、どのような点に注意して取り組んだら良いのでしょうか。
関西電力:
日本は2度のオイルショックを経験し、産業界では工場を中心に様々な省エネが進み、エネルギー効率が向上しました。2001年度と1973年度と比較してみても、電気・ガス・石油すべてを含めた産業用エネルギー消費量は、ほとんど増えていません。一方、家庭用、業務用といった民生部門の伸びは顕著です。デパートや病院、ビルでの需要は1973年度と2001年度を比較すると、2.30倍にもなっています。運輸部門では2.16倍になっており、日本のエネルギー消費量を引き上げています。家庭用については、昭和40年代から欧米先進国並みの快適さを求めるようになり、エネルギー消費量が増大しています。今後は高齢化、情報化の進展に伴い、一人当たりの消費量、特に電気へのエネルギー転換が増えてくると予想されます。また、自由化を迎え、単価は下がる方向にありますので、消費量の伸びはますます加速する可能性はあると考えています。
家庭において省エネを進めるためには、効率的な家電製品を選択することがポイントのひとつです。日本には省エネ法というものがあり、その中でトップランナー方式の採用が義務付けられています。これはその時点で一番効率が良いものに、他のメーカーが合わせていかなければいけないというもので、そうしないメーカーに対して、ペナルティーを課す方式です。量販店などに行くと、エアコン等にシールが貼ってあるのをご覧になるかと思いますが、それらの製品は、省エネ性能がトップクラスであることを表しているのです。効率の良い製品を選択するだけで、同じ使い方をしていても、省エネになるのです。エアコンなどは数年前のものと比べると、電気使用量は半分近くになったと言われており、無理なく省エネができるのです。ただし、省エネ性能の高い製品は値段も少々高いところがあり、その辺は今後の課題と言えます。
また、待機電力の削減も省エネの取り組みとしては重要です。待機電力とは、電気製品や電子機器を利用する時に即座に動作状態に入れるように、微小電流を流していますが、その際に消費するムダな電力のことです。ビデオのタイマーなどが代表的なものです。一時期、家庭内で使う電気の15%が待機電力だと言われた時期もあって、大変な量の電気を無駄にしていたことになります。昨今ではメーカーさんの努力で、待機電力の少ない製品が出てきています。電源カットができる延長コードもありますし、カタログには待機電力についての記載もありますので、家電製品などをご購入の際には参考にしていただきたいと思います。
しかし、あまりケチケチするのもどうかと思います。我慢の省エネは長続きしないといわれています。全体のエネルギー効率をよく見ながら、自分は何が我慢できて、何ができないのかを見極めてもらいたいと思います。テレビ、冷蔵庫は小さくても、車は大きなものに乗りたという方もいますし、いろいろあると思います。冬は電気だけでなく、ガスや石油も暖房に使っていらっしゃると思います。全体のバランスを見ながら、省エネを考えて実行することが大事なのではないでしょうか。
 
出席者の感想から
●私たちの毎日の生活に欠かせない電力を確実に発電、送電して、毎日安心して過ごせるように発電所で働いている姿を目の前にして、感動しました。消費者の一人として、家庭やオフィスで節電に努めねばと、再認識しました。

●テロ行為に対して、警察とも連携して十分な策が講じられているとのことで大変安心しました。

●これまで大きなタービンの側に寄ったことがないので、比較ができないのですが、巨大なタービンが予想したほど喧しくないのに驚きました。

●終戦直後は停電がたびたび起こり、ロウソクによる生活を余儀なくされましたが、今はこのような生活は考えられません。電気があるのが当たりまえの世の中になっていますが、電力を無駄使いしていないか、改めて生活を見直すべき時がきているのではないかと思っています。

●価格や環境面をはじめ、消費者の要求もますます厳しくなると思われます。生活者も企業の努力だけに頼らず、節電や効率的
な利用を心がけていかなければと思いました。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
pagetop