企業と生活者懇談会
2010年11月15日 福島
出席企業:住友ゴム工業
見学施設:白河工場

「住友ゴムグループの環境保全への取り組みを学ぶ」

2010年11月15日、福島県白河市の住友ゴム工業で、「企業と生活者懇談会」を開催しました。参加した5名の生活者は、同社グループと白河工場の概要、環境保全に向けた取り組みに関する説明を受けた後、タイヤ製造工場と併設の安全体感道場、製造研修センターを見学し、続いて質疑懇談を行いました。 
住友ゴム工業から、高見昌文執行役員白河工場長、丸山邦英白河工場総務課長、井尻正明白河工場工務課主査、大槻正美安全環境管理部課長、長谷川孝夫製造研修センター所長、吉田貞雄白河工場安全環境管理課長代理、平賀澄夫CSR推進室長、中道順彦CSR推進室課長が出席しました。
住友ゴム工業からの説明
■住友ゴム工業について■
 住友ゴム工業は、1909年(明治42年)、英国ダンロップ社による、日本で初めてのタイヤ工場として創業以来、ゴム技術を軸に業容を拡大してきました。 
 現在、住友ゴムグループは、「タイヤ事業」、OA機器用精密ゴム部品、制振ダンパーなどの「産業品・その他事業」、ゴルフ用品などの「スポーツ事業」の3つの事業をグローバルに展開しています。グループ売上の約8割を占める主力のタイヤ事業では、乗り心地や安全性に加えて、環境性能の追求に力を入れています。 
 
■白河工場について■
 国内には4つのタイヤ製造拠点がありますが、白河工場が、他社を含め生産規模日本一の工場です。併設の製造研修センターとともに海外工場の従業員や海外駐在予定の国内従業員の実習を受け入れて、海外タイヤ工場のマザーファクトリーとしての役割も担います。 
 年間347日24時間稼働で、従業員1800人弱が勤務し、一日約5万本のタイヤを製造しています。出荷先は、新車用、市販用(店頭販売用)、輸出用で、中近東宛を中心に伸びる輸出タイヤの海上輸送に際しては、環境配慮のため極力最寄りの小名浜港を利用するよう努めています。 
 
■環境保全について■
 CSR活動のキーワードは「GENKI」です。5つの文字それぞれが行動ガイドラインを表し、Greenは緑化活動、Ecologyは事業活動の環境負荷低減、Nextは次世代型技術・製品の開発、Kindnessは人にやさしい諸施策、Integrityはステークホルダーへの誠実さを意味します。 
 このうち環境にかかわるGreen、Ecology、Nextの3分野での代表的な取り組みですが、まずGreenでは、世界各地の事業所や周辺地域で2029年度までに100万本の木を植えるという「100万本の郷土の森づくり」プロジェクトです。その中核が国内各工場が中心となり事業所や周辺地域に40万本を植樹する「どんぐりプロジェクト」で、白河工場も展開中です。 
 次にEcologyですが、環境省認定の「エコ・ファースト企業」として環境保全に関する先進的な活動の実践を約束し推進しています。例えば、循環型社会の形成に向けた取り組みとして、2010年(平成22年)3月に国内外すべての生産拠点で埋め立て廃棄物をゼロにする完全ゼロエミッションを達成しています。 
 最後にNextは、低燃費タイヤ、石油外天然資源タイヤの開発・普及です。2006年(平成18年)発売のENASAVEシリーズはゴム材の改良やタイヤの溝の設計上の工夫で燃費を抑えるタイヤです。石油系材料の比率を3%にまで改善した石油外天然資源タイヤも販売中です。 
見学の様子
■タイヤ工場■
 工場に入ると少し薄暗く感じました。紫外線が材料に悪影響を及ぼさないよう遮光しているためです。 
 タイヤの製造は、まず天然ゴム、合成ゴム、ゴムに強度を与えるカーボン、劣化防止剤などを練り合わせる混練工程から始まります。タイヤ表面、中間部、内側それぞれに求められる性質が異なるため、ひとつのタイヤには12、13種類ほどのゴムが使われています。 
 次に、タイヤを構成する3つの部材である表面のトレッド、骨格となるカーカス、ビードのそれぞれを加工し、続く成形工程で3つの部材を高精度で張り合わせ、筒状に丸めてタイヤの原型をつくります。 
 まだ表面がつるつるのタイヤの原型は、次の加硫工程で金型に入れられて加熱・加圧され、トレッドパターンなどが刻まれます。たこ焼きをイメージさせるようなこの工程では、硫黄の化学反応により弾力性も生まれ、強靱なタイヤが完成します。 
 工場を出ると、緑化活動の一環として同社が手入れをしている里山を望むことができました。 
 
■安全体感道場■
 工場併設の安全体感道場は、従業員の危険感受性の向上のためには「加減を知らない」「見た目を裏切る」機械の恐ろしさを擬似的に体感することが必要との考えから設けられ、日常的に安全研修に利用されています。参加者も機械への巻き込まれや衝撃などを体感しました。わずかな油の付着が機械への巻き込まれの原因になることなどを体感するともに、住友ゴムグループの労働災害ゼロを目指す強い姿勢も実感しました。 

 ■製造研修センター白河研修所■
 見学の最後は、製造研修センターです。食堂・宿泊施設を備えた座学用の研修棟と、実際の製造設備・工具を備えた実習棟から構成されます。ここでは国内外の工場から選ばれたチームがタイヤ製造技能を競う「技能オリンピック」を半年に一度のペースで開催し、「ものづくり」の技能伝承を推進しています。 
住友ゴム工業への質問と回答
社会広聴会員:
環境配慮型の製品の開発にかかるコストをどのように吸収していますか。また、環境保全活動と企業の収益性の兼ね合いをどのようにお考えですか。
住友ゴム工業:
環境配慮型商品である低燃費タイヤについては、各社ばらばらだった定義や性能評価基準を業界で統一し、2010年1月より「タイヤラベリング制度」として運用を始めたことから、ユーザーは各社タイヤの低燃費性能を容易に比較できるようになりました。日本自動車タイヤ協会を中心に同制度や低燃費タイヤを積極的にPRしているので、今後販売が一層拡大しコストは吸収されるのではないでしょうか。 
環境保全活動については、様々な投資が必要になり短期的には収益を少し圧迫する要因にもなりましょうが、一方で省エネルギー効果というコストダウンや環境配慮型商品の開発を通じた技術・ノウハウの蓄積というリターンも期待できますので、長期的には事業運営や収益に寄与すると考えています。 
 
社会広聴会員:
最近の学生の国際化離れ・内向き傾向をどのように考え、対応していきますか。
住友ゴム工業:
グループ全体で現在約120名が海外に駐在していますが、今後ますます増加すると予想しています。グローバルに活躍できる人材の育成は急務で、海外要員育成プログラムを一層充実させた上で、できるだけ若いうちから海外勤務を体験させたいと考えています。 
なお、新卒社員の募集に際しては海外赴任の可能性を伝えていますので、当社としては、社会一般でいわれているほどは若い層の内向き傾向を感じていません。
 
社会広聴会員:
地域社会との交流・融和に向けた取り組みを教えてください。
住友ゴム工業:
積極的に地域社会に出て行き、交流することを心掛けています。工場を活用した取り組みとして、飼育した蛍の鑑賞会やじゃがいもの収穫祭で地域の皆さまを招いて交流を図ったり、体育館・グラウンドの市民開放などを行っています。 
工場外での活動としては、身障者施設への訪問、公園の掃除、労働基準法等に関する講師派遣、学校への出前授業などがあります。これらの活動に、年間延べ5658人が、講師、ボランティアなどとして取り組んでいます。
 
社会広聴会員:
製造現場の作業環境の整備・維持に向けた取り組みを教えてください。
住友ゴム工業:
作業環境は、月々のパトロール、安全衛生委員会の運営などにより常時チェックしています。最も注意を払っているのが、加硫工程の暑熱対策です。水分補給ができる涼しい休憩場所を設けた上で、作業の仕組みや担当者の交代に工夫を加え、常に改善を図っています。
 
社会広聴会員:
女性従業員が働く姿をあまり見掛けませんでした。新鮮な発想を取り入れるためにも、女性の採用を拡大するべきではないでしょうか。
住友ゴム工業:
ご指摘のとおり、女性の採用・活用を推進しているところです。最近できたタイの工場は、女性従業員が6割を占めています。施設面の対応が必要であることから、新しい工場から順に進めています。なお、白河工場では、交代勤務に入っている女性従業員は15名おり、今後も徐々に増やす考えです。
 
参加者の感想から
●地域社会との交流活動にも拡大した形で緑化への取り組みが行われ、大きな実績を上げていることに感銘を受けました。 
 
●「どんぐりプロジェクト」やタイヤに占める石油系材料の割合を減らす工夫など、環境保全に対する数多くの取り組みに感動しました。 
 
●工場は想像以上に人が少なく機械化が進んでいましたが、細かな作業には人が直接携わっていることが印象に残りました。また、完成品としてのタイヤからはどのようなゴム素材をどのように加工しているのかは分からないという、タイヤの開発・製造における技術研究の難しさを知ることもできました。 
 
●工場内がごみひとつなく清掃が行き届いていること、タイヤに刻まれた溝にはいろいろな設計の考え方が込められていることに、感心しました。 
 
●工場の方々が、見学者に対して会釈したり「こんにちは」と声を掛けてくれたり、それぞれ独自の対応をされていました。マニュアル化されていない本物のホスピタリティーが浸透しているのだと思いました。 
 
住友ゴム工業ご担当者より
 生活者の皆さまに、当社グループの事業内容や、環境保全をはじめとする活動に対するご理解を深めていただき、大変有意義な機会でした。 
 皆さまからいただいた貴重なご意見やご感想は今後の当社グループの活動に生かしてまいります。ありがとうございました。
お問い合わせ先
(財)経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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