企業と生活者懇談会
2013年6月7日 滋賀
出席企業:ヤンマー
見学施設:ヤンマーミュージアム

「ヤンマーのミッション」

6月7日、ヤンマーが今年3月にオープンしたヤンマーミュージアム(滋賀県長浜市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者24名が参加しました。会社ならびにミュージアムの概要説明を受けた後、ミュージアムを見学し、質疑懇談を行いました。
ヤンマーからは、ヤンマーミュージアムの小林文博館長と、ヤンマー総務部広報グループの大山裕誉専任課長が出席しました。
ヤンマーからの説明
■ヤンマーグループの概要 ■
 ヤンマーは2012年(平成24年)に創業100周年を迎えました。現在、ヤンマーグループの売上高は連結ベースで約5700億円(2013年3月期)、約4割近くをトラクターやコンバインなどの農機事業が占めています。農業機械や建設機械などに搭載される小型ディーゼルエンジンも主力事業です。建設機械では、小型のミニショベルを得意としています。また、ガスエンジンによる空調システムや、ガス燃料で発電し、同時に温水をつくるコージェネレーションシステムなどのエネルギーシステム事業にも力を入れています。東日本大震災以降は、非常用電源装置への需要も高まっています。 
 全体の約4割は海外に向けて販売していますが、エンジン関連製品については、主に他社製品に組み込まれた形で販売しています。 
 
■ヤンマーミュージアム設立の経緯■ 
 創業100周年の記念事業として、「100年間の感謝の思いを伝える施設を」と考え、ミュージアム設立を計画しました。当初は、社員と取引先の方々にヤンマーの歴史と将来像を紹介する施設として検討を始めましたが、やはり地域の方々も含め、お世話になっているすべての皆さまにヤンマーを知っていただく場にしようと、現在の姿になりました。 
 建設候補地はいくつかありましたが、最終的に創業者である山岡孫吉の生誕の地である長浜を選びました。 
 
■「海洋」「大地」「都市」をテーマに ■
 ミュージアムのテーマは、ヤンマーの事業領域であるマリンエンジンや小型漁船などの「海洋」、農業機械・施設などの「大地」、建設機械やエネルギーシステムなどの「都市」の3つです。建築デザインにも工夫を凝らし、建物周辺に張り巡らせた水盤で「海洋」を、屋上緑化で「大地」を、2階部分のガラスとコンクリートの構造物で「都市」をそれぞれ表現しています。 
 また、建物全体を環境配慮型とすることで、ヤンマーの環境に対する企業姿勢をアピールしています。ビオトープ※1のある屋上庭園にはヒートアイランド現象の緩和効果があるほか、建物周辺の水盤には井戸水を使っています。太陽光発電パネルやガスヒートポンプエアコン室外機などを、あえて来館者の目に付く場所に設置することで、ヤンマーの環境技術の“見える化”も図っています。 

※1 野生の動植物が生態系を保って生息する環境
 
■「見てふれて乗って」学べる体験型ミュージアム■
 最大の特徴は、展示を見るだけではなく、実際の物にふれて動かすことができる“体験型”ミュージアムであることです。展示室では、ミニショベルやボートなどの操作シミュレーションに挑戦することができます。また、地元産のお米を使った料理のワークショップや、「ヤンマー体験農園」での田植え体験なども開催し、来館者の皆さまに「ものづくりの面白さ」「挑戦することの大切さ」を体感いただくことを目指しています。 
見学の様子
■「農作業をもっと楽に」-その思いから生まれた世界初の小型ディーゼルエンジン■
 エントランスには、1899年にドイツのMAN社が実用製品化した世界最古のディーゼルエンジン(複製)がそびえています。このエンジンは、ヤンマー創業者である山岡孫吉がディーゼルエンジンの小型化に成功し、その普及に貢献した功績をたたえて、MAN社から寄贈されたものです。
 山岡孫吉記念室では、創業者・山岡孫吉の生涯と、100年に及ぶヤンマーの軌跡を紹介しています。ここでは、山岡孫吉が世界で初めて小型実用化に成功した横型水冷ディーゼルエンジン「HB形」を見ることができます。先程のMAN社のエンジンは見上げるほどの大きさでしたが、このエンジンは人力で運べるレベルにまで小型・軽量化されています。農家の出身である山岡孫吉は、大変な重労働である農作業を「もっと楽にしたい」という思いを強く持ち、灌がいポンプや籾すり機の動力源に使えるようにと、ディーゼルエンジンの小型化に取り組んだそうです。

■“本物の製品”を体験できる展示室■
 展示室の「農業ゾーン」には、ヤンマーが最初に製造した耕うん機から最新鋭のコンバインまで、様々な農業機械がずらりと並びます。田植えや稲刈りなど実際の農作業シーンを再現した展示で、農業機械の活躍の様子が一目で分かります。また、展示パネルでは、農業の進化の歴史や、一年を通じた稲の生育過程などを分かりやすく紹介しています。 
 「まちづくりゾーン」では、小型建設機械を数多く展示しています。労働力不足を補うために日本で開発された小型建設機械ですが、今では世界中で活躍しています。本物のミニショベルの操作シミュレーションもあり、その小回りの良さを体感することができます。 
 「ものづくりゾーン」では、ヤンマーのエンジン製造技術を紹介しています。エンジンは数千点もの部品で構成され、その一つひとつが鋳造、鍛造、切断、プレスといった複雑な工程を経て精密につくられていることが分かります。中でも、燃料噴射ノズルの先端には、直径0.14ミリメートルという微細な穴が開けられています。その様子を虫眼鏡で見ると、穴を開ける針のようなものが見えます。実はこれはドリルで、顕微鏡で拡大するとドリル形状が確認できます。 
 この燃料噴射ノズルとポンプはエンジンの心臓部ともいえる大切な部品ですが、エンジンメーカーで自社生産しているのは、現在は世界でヤンマーが唯一だそうです。 

■歴代のエンジンが勢ぞろい■
 2階にある「エンジンギャラリー」には、ヤンマーがこれまでに開発してきた“往年の名エンジン”が年代順に並び、エンジンの進化の様子と、ヤンマーのものづくりの変遷が楽しめます。展示パネルでは、それぞれのエンジンが初めて開発されてから、現在に至るまでの進化の概要が紹介されています。 
 
■ビオトープで琵琶湖岸の自然を観察■
 屋上庭園には琵琶湖岸の環境を再現したビオトープがあります。基本的に余計な手は加えず、地域固有の植生や生物を、自然そのままの姿で観察することができます。
 また、ミュージアムに設置されたコージェネレーションシステムを利用した足湯も用意されています。疲れた足を休めながら、ヤンマーの環境への取り組みを体感できるスペースです。 
ヤンマーへの質問と回答
社会広聴会員:
ヤンマーの企業理念をお聞かせください。 
ヤンマー:
ヤンマーグループでは、創業100周年を迎えるに当たり、新しいミッションステートメントを発表しました。“自然と共生し、生命の根幹を担う食料生産とエネルギー変換の分野で、お客さまの課題解決によって豊かな暮らしを実現する”という内容で、ヤンマーにとっての普遍の使命だと考えています。 
また、ヤンマーには「美しき世界は感謝の心から」「燃料報国」という創業者の精神があります。「美しき世界は感謝の心から」は、企業も個人も様々な人に支えられて今があるので、感謝の気持ちを持つと同時に、誠実でなければならないという考えです。「燃料報国」は、資源の無い日本が発展するために、省エネルギーに貢献することで国に報いるという気持ちを表しています。
 
社会広聴会員:
100年も会社が存続した秘訣は何でしょうか。
ヤンマー:
創業者の山岡孫吉は、農作業を楽にしたいという思いから、農家の方に使っていただける大きさ、重量のディーゼルエンジンの開発に情熱を注ぎました。創業以来、常にお客さまに目を向け、そこで求められる製品・サービスを提供し続けてきたことが、現在につながっていると考えています。
 

社会広聴会員:
農業事業の方向性を教えてください。
ヤンマー:
従来は農業機械の提供が中心でしたが、最近では機械だけでなく、生産者とお客さまをつなぐサービスの提供や、より付加価値の高い農作物の生産技術や良い土づくりのための技術提供にも積極的に取り組んでいます。
 

社会広聴会員:
自然エネルギー分野ではどのような取り組みがありますか。
ヤンマー:
ディーゼルエンジンは燃料の種類が非常に多様で、バイオマス燃料もかなり普及しています。しかし、トウモロコシなどからつくられる燃料は食料供給を阻害しているという批判もあります。そこで、ヤンマーでは非可食植物から燃料をつくる研究を進めています。例えばマレーシアの研究所では、毒性のあるジャトロファという植物を使って燃料をつくる研究をしています。
 
社会広聴会員:
どのような社会貢献活動をされていますか。
ヤンマー:
東日本大震災の被災地復興支援活動として、農道や用排水路の除染技術を開発し、迅速な農業再開を支援しています。また、三陸沿岸における牡蠣の養殖業者の方々に、稚貝や養殖技術の提供も行っています。 
教育支援では、1950年(昭和25年)に「山岡育英会」を設立し、学生への奨学金給貸与を実施しています。これまでに述べ5200名以上が奨学金を利用して学業を修了しました。大学生が中心ですが、地域貢献として滋賀県内の高校生にも提供しています。
 
社会広聴会員:
変わらない創業者の精神や理念がある一方で、“変えなければならないもの”とは何でしょうか。 
ヤンマー:
ヤンマーは積極的に海外展開を進めていますが、「人々の生活の向上に寄与する」という根底の考えは日本も海外も変わりません。ただし、日本市場だけを考えた製品をそのまま導入するのではなく、各国の文化に合わせた製品を提供することが大切です。これは変えなければならない部分だと思います。
 
社会広聴会員:
海外展開の状況を教えてください。
ヤンマー:
ヤンマーの海外進出はかなり早い時期から展開していました。タイ、インドネシア、ブラジルは特に古く、50年以上にわたる事業活動の歴史があります。米国や欧州にも、エンジンや建設機械の工場があります。 
今、一番活発な地域は東南アジアです。タイやインドネシア、ベトナムのほか、タイ周辺諸国のラオス、カンボジア、ミャンマーにも力を入れています。
社会広聴会員:
マスコットキャラクター「ヤン坊マー坊」はどのように誕生したのですか。
ヤンマー:
「ヤン坊マー坊」天気予報は、農業や漁業に従事する皆さまに役立つ情報をテレビで提供したいという思いから、1959年(昭和34年)6月1日の気象記念日に放映を開始しました。産業機械を扱うヤンマーには堅い企業イメージがあったため、マスコットを通じて一般の方にもっと親しみを持ってもらうという狙いもありました。現在“54歳”になった「ヤン坊マー坊」ですが、天気予報は地方を中心に全国32局で放映が続いており、おなじみのコマーシャルソングとともに、かわいい笑顔を元気に届けています。 
なお、「ヤン坊マー坊」のアニメーションは、生みの親であるアニメーターの中靖夫氏が、1959年以来一貫して描き続けています。 
 
社会広聴会員:
ミュージアムで最も伝えたいことは何ですか。
ヤンマー:
普段目にすることのない農業や漁業の様子を見、実際に機械に触って楽しむことで、子どもたちが機械を好きになり、ものづくりに関心を持ってもらうことが大きな意義だと考えています。日本の生命線であるものづくりの後継者の育成に、このミュージアムが少しでも役に立てればと思います。
 
参加者の感想から
●創業者の理念や会社の歴史を知ることができ、また実際に製品を触らせていただき、参考になりました。日本が世界に誇れる企業だと思いました。 
 
●ディーゼルエンジンの開発を重視し、それを「海洋」「大地」「都市」に特化して展開している点は、大変素晴らしいと思いました。 
 
●農家を楽にさせたいという創業者の思いから、「美しき世界は感謝の心から」、「燃料報国」という企業理念の言葉となって100年続く立派な企業であることがよく分かりました。 
 
●堅苦しくなく、楽しみながら実体験ができるミュージアムはとても良いと思いました。将来を担う子どもたちに影響を与えることでしょう。
ヤンマーご担当者より
 このたびはヤンマーミュージアムへお越しいただき御礼申し上げます。当ミュージアムは本年3月のオープン以来、3万人以上もの方にご来場いただいています。今般社会広聴会員の皆さまより、ご見学後に様々なご意見をいただき大変参考になりました。今後の施設運営などに反映していきたいと思います。また、当社の企業理念や各産業界における取り組みについてご説明させていただけたことは得がたい経験でした。今後も地域との共生を図りながら資源循環型社会の実現に向けて歩んでまいります。
お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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