企業と生活者懇談会
2013年8月7日 愛知
出席企業:デンソー
見学施設:本社、高棚製作所

「デンソーの環境への取り組み」

8月7日、デンソー本社(愛知県刈谷市)ならびに高棚製作所(安城市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者18名が参加しました。デンソーの会社概要ならびにCSR活動の説明を受けた後、本社総合展示ホール「デンソーギャラリー」、高棚製作所を見学し、質疑懇談を行いました。
デンソーからは、伊藤健一郎常務役員、高棚製作所の平岩成基所長、同・総務人事厚生課の成瀬昌彦課長、西谷泰治氏、同・安全環境課 の小田修司課長、情報通信製造部製造企画室安全環境課の森山学担当課長、安全環境推進部環境推進室環境企画課の渡辺芳紀課長、総務部社会貢献推進室の吉田忠久室長、広報部広報1室の小島秀治室長、吉田浩徳広報企画課課長、広報部の竹田光範担当次長、経営企画部経営戦略室の大野浩司担当次長、および同・CSR推進室の岩原明彦室長、粕谷知恵子担当課長が出席しました。

デンソーからの説明
■デンソーの概要■
 デンソーは、自動車用電装品の製造・販売会社として1949年(昭和24年)に設立されました(当時社名は「日本電装株式会社」)。2013年(平成25年)3月期の売上高は連結ベースで3兆5809億円、このうち98.4%を自動車関連分野が占めています。日本をはじめ、北米、欧州、アジア、南米など世界35カ国・地域に215のグループ会社があり、従業員数は連結で約13万人、単独でも約4万人に上ります。
 デンソーでは基本理念として、「世界と未来を見つめ、新しい価値の創造を通じて人々の幸福に貢献する」を使命に掲げ、その実行に向けた経営の方針と社員の行動を具体的に定めています。今年4月には、「地球と生命(いのち)を守り、次世代に明るい未来を届けたい。」をスローガンとする「デンソーグループ2020年長期方針」を策定しました。この長期方針では、より良いクルマ社会の実現に向けて、部品メーカーであるデンソー自らが高い志を持ち、積極的に働き掛けていく姿勢を打ち出しています。クルマが世界の人々に愛され続けるため、クルマの利便性・喜びを世界中の人々に届けるとともに、「地球環境の維持」と「安心・安全」にこだわり、これを今後10年のデンソーの使命として取り組んでいきます。
 
■デンソーのCSR活動■
 デンソーは2006年(平成18年)4月に策定した「デンソーグループ企業行動宣言」の下、CSR(企業の社会的責任)を経営の中核に据え、誠実な企業行動を通じて社会の持続的発展への貢献に取り組んでいます。
 環境保全活動では「デンソーエコビジョン2015」に基づき、温暖化防止、資源循環、環境負荷物質の管理・削減を全事業活動で重点的に推進しています。具体的には、「エコマネジメント」(環境経営の実践)、「エコプロダクツ」(環境技術・製品の開発)、「エコファクトリー」(生産環境負荷の削減)、「エコフレンドリー」(地域社会との共生)の4つがあります。必要なときに必要なだけエネルギーを使う“エネルギーJIT(ジャストインタイム)”や、生産ラインの省エネ化などの活動は「エコファクトリー」です。また、「エコフレンドリー」では、各事業所周辺の緑化活動のほか、例えば豊橋製作所近くにあるアカウミガメの産卵地の海岸保全など、地域固有の希少生物の保護活動も行っています。
 社会貢献活動では、「人づくり」「環境共生」「交通安全」を重点分野としています。「デンソーグループハートフルデー」では、毎年、事業所ごとに地域社会に貢献する日を設定し、グループを挙げて環境美化活動や福祉・教育支援を実施しています。また、社員への責任として、女性、高齢者、障がい者や、海外拠点における現地人材の活躍支援など、ダイバーシティ促進にも積極的に取り組んでいます。
 こうしたデンソーのCSR活動の根底には、社会の持続的発展とともに、デンソー自身も成長していきたいという思いが込められています。
見学の様子
■総合展示ホール「デンソーギャラリー」■
 ギャラリー入口には、「環境」「安全」「快適」「利便」の4つの分野別にデンソーの自動車関連製品が並びます。ハイブリッド車の心臓部であるパワーコントロールユニット、走行支援システム用の各種センサー、エアコンユニットなど、普段直接目にすることのない様々な製品を見ることができます。
 「デンソーのあゆみ」では、デンソーの歴史を年表と製品で振り返ります。その中には、「品質のデンソー」の証として、1961年(昭和36年)に受賞した品質管理の最高権威「デミング賞」のメダルも並んでいます。
 その名の通り“電装”品の製造・販売会社としてスタートしたデンソーですが、意外なことに創業期には家電製品や電気自動車も製造していたそうです。コーナーの一角には、当時製造していたドラム式洗濯機や、外観は当時のままに、最新の材料を使って復刻した電気自動車『デンソー号』なども展示されています。また、代表的な22の製品がそれぞれ古い順に並べられ、小型化や性能向上といった技術の進化が一目で分かるようになっています。
 様々な展示に混じって、マッチ棒の先端ほどの小さなミニカーが目を引きます。全長4.785ミリメートル、幅1.73ミリメートル、高さ1.736ミリメートルという極小サイズながら、モーター内臓でちゃんと走るそうです。1994年(平成6年)には“世界最小の動く模型自動車”としてギネスブックにも登録されていて、デンソーのマイクロ技術の高さが伝わってきます。
 最先端の製品や技術を紹介する「製品・技術ゾーン」では、自動車分野に加えて生活・産業分野の展示も用意されています。QRコードやICカードを読み取る自動認識関連機器は、実際に体験することができます。ちなみに、今ではすっかり身近になったQRコードですが、実はデンソーが自社の生産管理のために1994年に世界で初めて開発したものです。また、産業用小型ロボットのデモンストレーションでは、直径わずか0.5ミリメートルのシャープペンシルの芯を抜き差しする様子が見られ、そのスピードと精度の高さに驚かされます。
 「デンソーシアター」では、円形に配置された7台の大型モニターで、デンソーが考える環境に優しく安全な未来のクルマ社会の映像が楽しめます。
 
■“森の中の工場”高棚製作所■
 続いて、デンソー本社からバスで約30分の高棚製作所に向かいました。高棚製作所は自動車用部品の生産拠点として1974年(昭和49年)に創業した、デンソーでは5番目の事業所です。今回は、コンビネーションメータなどを生産する「501工場」を見学しました。
 バスで近づくと、田んぼの真ん中に木々で取り囲まれた高棚製作所の姿が現れます。高棚製作所は“森の中の工場”をコンセプトに設立され、37万平方メートル(ナゴヤドーム約7.7個分)という広大な敷地外周への植栽のほか、遊歩道やビオトープを整備して地域に開放するなど、環境保全と地域共生に積極的に取り組んでいます。
 工場の一画で、巨大なコージェネレーションシステムを稼動させています。高棚製作所の消費電力の約3割、ピーク時には約5割を賄う高効率なシステムとのことです。ほかに、廃材を分別・リサイクルする資源ステーションや排水処理場なども整備されています。
 501工場では、コンビネーションメータの部品加工から組み立て、出荷まで一連の生産工程を順に見学します。工場内のあちこちに赤・黄・青色のランプや電光掲示板があり、その表示で遠くからでも作業状況が把握できるように工夫されています。
 樹脂の成型加工には80台もの設備が並びますが、人の姿はほとんどなく、ロボットによる自動化が進んでいる様子が分かります。少し進むと、『カイゼン工房夢現』と書かれたスペースがあります。ここでは、ベテランの作業員を中心に、生産現場の課題解決に日々取り組んでいます。“夢現”という言葉には、夢を実現するという意味と、カイゼンの取り組みは無限だという思いが込められているそうです。
 電子回路基板の組み立ても自動化が進み、徹底した検査による品質管理が行われています。基板には、品番、生産日、IDなどの情報がQRコードで印字されます。このQRコードは、何か問題が起きたときに原因を特定する追跡調査に役立ち、“100%良品づくり”には不可欠なツールとして活用しています。
 メータの総組立ラインでは、“セルライン方式”を採用し、1人から数人の作業員を生産量に応じて編成し、作業を行います。501工場ではこうしたフレキシブルかつ効率的な生産方式により、多品種少量生産に対応しています。
 
■生産現場の省エネに取り組む「テクノクラブ」■
 501工場にある「テクノクラブ」は、ベテラン作業員が道場主となり、生産現場に必要な環境保全や安全、検査、品質管理などを教える教育道場です。
 『地球』と名付けられた道場では、生産現場の省エネについて教育しています。現場で使われる照明器具やエアブローなどが用意され、白熱電球とLED電球の消費電力の違いやエア漏れによるコストなどを、実際に測定して確認できます。「できることはすぐにやる」が道場の鉄則で、ここで学んだ成果はすぐに現場で実践されます。同時に、取り組み内容を社内に公開することで、横展開も図っているとのことです。非常に地道な取り組みですが、一つひとつ積み重ねることで、生産現場に大きな省エネ効果を生み出しています。
デンソーへの質問と回答
社会広聴会員:
デンソーの改善提案制度について教えてください。
デンソー:
日々の業務における様々な改善の提案を評価・報償する制度です。生産現場だけでなく、全社的に取り組んでいます。継続的な提案促進のために、1件ごとの評価だけでなく提案の累積に応じた報償が出るほか、イントラネット上で改善アイデアを共有する“改善事例展”を開催したり、表彰事例を皆の前で発表する場を設けるといった工夫もしています。
 
社会広聴会員:
工場内に『旬のライン』という看板がありましたが、どういう意味ですか。 
デンソー:
すべての生産ラインの稼働率を一斉に上げることはなかなか難しいので、毎月重点的に取り組むラインを『旬のライン』として設定し、生産現場の管理者も含めた全作業者にそれが分かるように看板を掲示しています。こうした看板は、管理者にとって必要な仕掛けの一つだと考えています。
 
社会広聴会員:
デンソーの技術開発の方針は。 
デンソー:
常に未来のクルマ社会を見据え、その社会ではどんな技術が求められるのか、そのニーズに対してデンソーがどのように貢献できるのかという視点で取り組んでいます。
 
社会広聴会員:
デンソーのグローバルな事業拡大を支える強みとは何でしょうか。
デンソー:
デンソーは現在、日系企業だけでなく、世界の自動車メーカーとのビジネスを拡大しています。その原動力となっているのは、創業以来受け継いできた、「先進」「信頼」「総智・総力」の3つから成るデンソースピリットです。この価値観を全世界のデンソー社員がしっかりと共有し、事業拡大を推進していることが強みだと考えています。
 
社会広聴会員:
海外拠点において、どのように“人づくり”に取り組んでいるのですか。 
デンソー:
  「人づくりこそ事業の基盤」という人材育成の考え方は日本も海外も同じで、基本的にはデンソーの“人づくり”を海外拠点にも伝承しています。その際、文化的な違いを正しく理解することが大切であり、デンソーでは相手の文化を尊重し、その文化を反映した人づくりに取り組んでいます。ただし、国や地域が変わっても、デンソーの“100%良品”を提供するという原則は決して変えません。
 
社会広聴会員:
積極的に海外進出する一方で、日本の生産はどうやって守っていくのですか。
デンソー:
デンソーでは、日本を最先端の製品や生産技術の開発・展開を行う“世界のマザー工場”として位置付けています。この役割を果たすためには、国内の生産量を確保し、雇用を維持することが不可欠だと考えています。そのため、国内生産の競争力強化を図るとともに、自動車生産の増減による影響を受けにくいように、「健康・医療」や「バイオ」といった新事業分野の育成にも力を入れています。
 
社会広聴会員:
部品メーカーであるデンソーが、どうやってクルマ社会を変えていくのでしょうか。
デンソー:
デンソーは従来、自動車メーカーからの「こんな自動車部品が欲しい」という要望を受け、その部品を高品質で安く生産することを中心とする会社でした。しかし今後は、部品メーカーであるデンソー自らが、こんな部品があればもっとクルマが快適になる、あるいは社会の問題解決に貢献できるということを世の中にどんどん提案していきたいと考えています。未来のクルマ社会で活躍する先進的な技術・製品を次々と提案していけるよう、グループ一丸となって取り組んでいきます。
参加者の感想から
●参加前は「自動車部品の会社」という知識しかありませんでしたが、デンソーのイメージが変わりました。今後、新規事業が時代に即してどのような形になるのか、待ち遠しくなりました。

●環境、安全に対する企業理念を強く感じました。
 
●ギャラリーでは、人々の幸福に貢献するため常に新しい価値の創造を目指すというデンソーのポリシーを、ひしひしと感じ取ることができました。
 
●高棚製作所では想像以上にロボットが導入され、広い工場内に人が少ないことに驚きました。また、工場がよく整理されていて、作業効率と安全確保への徹底した取り組みが分かりました。
 
●海外拠点の人材育成において、現地の文化を正しく理解し、相手を尊重することの大切さを繰り返し話されたことが印象的でした。
デンソーご担当者より
 社会広聴会員の皆さまには、様々な視点から貴重なご意見・ご質問等を頂き、誠にありがとうございました。
デンソーは今年(2013年)「2020年長期方針」を発表しましたが、その実現には「社会の視点」が大切と考えておりますので、今回の懇談会は有意義な機会でした。今後も社会との対話を大切にしてまいりたいと思います。
 なお、頂いたご意見・ご質問等は弊社が2020年に向けた一歩を踏む出すためのヒントとさせていただきます。最後に貴重な機会を設定頂きましたことに感謝申し上げます。
お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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