企業と生活者懇談会
2013年11月29日 大分
出席企業:住友化学
見学施設:大分工場、住化ファームおおいた

「日本の農業の活性化を目指す住友化学の取り組み」

11月29日、住友化学大分工場(大分県大分市)および住化ファームおおいた(大分県豊後大野市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者7名が参加しました。同社概要の説明を受けた後、大分工場と住化ファームおおいたを見学、その後、質疑懇談を行いました。
住友化学からは、大分工場の村田弘一副工場長、大分工場総務部の松本亨チームリーダー、アグロ事業部事業企画部の大井隆志主任部員、コーポレートコミュニケーション室の都渡正裕担当部長、住化ファームおおいたから大西孝治取締役が出席しました。
住友化学からの説明
■住友化学の概要■
 住友の事業は、1691年(元禄4年)に四国に別子銅山を開坑したことで大きく発展しました。しかし、別子の銅鉱石は多量の硫黄分を含む硫化鉱であったため、製錬する際に亜硫酸ガスが排出されました。このガスによる煙害を解決する調査・研究のもと、硫化鉱から硫酸を製造し、それをもとに肥料を生産したのが住友化学の始まりになります。
 住友化学は現在、大きく分けて5つの事業を展開しています。1つ目が基礎化学部門です。合成繊維原料をはじめ、アルミニウム、メタクリル樹脂などを提供しており、メタクリル樹脂は、沖縄美ら海水族館の水槽にも使われています。2つ目が石油化学部門で、主に合成樹脂を提供し、自動車の軽量化などに貢献しています。3つ目は情報電子化学部門で、液晶ディスプレイ用のフィルム類、スマートフォン用のタッチセンサーパネルなど、IT関連製品を供給しています。4つ目は、健康・農業関連事業部門で、大分工場で製造している殺虫剤や除草剤などの農薬や、飼料添加物、マラリア予防の蚊帳などがあります。5つ目が医薬品部門で、主に医療用医薬品および診断用医薬品に注力しています。

■大分工場■
 1939年(昭和14年)に設立された染料工場が大分工場の始まりです。染料は現在、扱っていませんが、1950年代に農薬の製造を開始しました。大分工場の敷地面積は約77万平米で、東京ドーム約16個分に相当します。敷地内では関連企業の方々を含め、約1100名が働いています。日本の食糧増産に役に立つ農薬を生産した功績が認められ、1958年(昭和33年)には、昭和天皇、香淳皇后が工場をご見学されました。
  住友化学の健康・農業関連事業部門において、大分工場は主力の工場となっています。2012年(平成24年)夏には除草剤の設備能力を倍増していますが、今後、2015年度までに除草剤の製造設備を1.5倍の生産能力に引き上げることを予定しています。
 工場設立当時、周囲にはほとんど何もない状況でしたが、現在は工場の周囲に住宅が増えて、環境が大きく変化しています。大分工場では、地域の皆さまとの共存共栄を図っていくため様々な活動をしています。大分コンビナート全体での総合防災訓練や、環境モニター制度で、地元の自治会長、大分工場のOBや社員などから情報をいただくことなど、工場としてしっかり対応していくことはもちろん、小中学校への出前授業やサッカー大会の後援、地域向け広報紙「つるさき」の発行、大分国際車いすマラソン大会沿道の清掃などの地域活動も行っています。また、「鶴崎踊り」大会には、毎年、社員が参加しています。

■住化ファームの概要■
 住化ファームは、住友化学グループの農業関連製品を用いた、新しい農業ビジネスの構築を目指して設立しました。第1号は2009年(平成21年)設立の住化ファーム長野です。続いて、大分、山形、三重、茨城で立ち上げ、経団連の未来都市モデルプロジェクトとしてその後愛媛県西条市と愛知県豊田市で設立し、現在までに7カ所で展開しています。
 住友化学グループの最新技術と農産物の栽培・販売のノウハウを生かした事業を、農家の方々に見ていただきたいという思いから、今後、各県に1つは住化ファームを設立することを計画しています。

■住化ファームおおいた■
 住化ファームおおいたは、2009年12月に設立しました。敷地面積は約1.8ヘクタール、栽培面積は1ヘクタール強で、トマトの栽培を行っています。
 もとは耕作放棄地だったところです。日照条件や気温がトマトの生育に適した場所であることを総合評価して選びましたが、最も重視したのは地域住民の歓迎ムードが非常に強いことでした。
 住化ファームおおいたの事業目的は大きく3つあります。①高品質トマトの生産販売、②グループ内で販売されている、農業関連資材等を用いた栽培・営農モデルの構築および水平展開、③栽培・生産に関する新規技術の実証検討、になります。
 大分は、住化ファームの中で2番目に設立したことから、大分で成功した栽培・営農モデルを次に展開していくための試験圃場的な意味合いがあります。
見学の様子
■大分工場 コントロール室(第六製造課計器室)■
 工場の正門は赤レンガ造りで、東西には楠の並木道、南北には銀杏の並木道が延びる大学のようなアカデミックな雰囲気です。
 除草剤を製造する工場エリアで、第六製造課計器室を見学しました。工場内は想像以上に機械化・無人化され、計器室では数名で24時間体制の監視・制御をしています。コンピューター画面では、プラントの製造工程の進捗が、数字やグラフなどで示されていました。
 工場設備付近ではあまり作業者を見掛けませんが、製造過程の微妙な色合いの差異や、タンクが空になったかなど、社員が実際に見て確認する工程もあるそうです。人間の判断とコンピューターをうまく組み合わせ、品質の安定化や省力化が図られていることを学びました。
 
■大分工場 御番所跡地■
 プライベート・バース(社有埠頭)を見学しました。ここから、工場内で使用する各種原料を運び入れたり、製品を一部出荷したりしているそうです。 
 江戸時代には、熊本藩(肥後藩)の飛び地があり、この地から参勤交代に出掛けていった歴史があります。
 船の監視の御番所が設けられていたことから、バースの一角には、御番所跡地の記念碑が設けられています。昔と今で、船で運ぶ対象は変わりましたが、要衝の地であり続けていることがうかがえました。

■住化ファームおおいた ~栽培用ハウス~■
 工場見学の後、住化ファームおおいたを見学しました。3つの栽培用ハウスで、中玉トマト「カンパリ」を、1つの試験用ハウスで高糖度トマト「ソプラノ」を栽培しています。8月末に苗を定植して、10月下旬から翌年7月中旬まで果実を収穫しています。
 ハウス内は、トマトの良い香りに包まれていました。高さ約9~10メートルになるトマトが「Qターン」と呼ばれる方法で、1周約3メートルの輪を描いて整然と並んでいます。芯先を斜めにずらしていく斜め誘引という方法ではなく、Qターンで芯先を回していくことで、トマトがストレスを感じず伸び伸びと成長し、品質や収穫量も高くなるそうです。 
 トマトを試食することができました。ハウス内は太陽光のみで育てたということですが、真っ赤に熟したトマトが数多くあり、試食した参加者から「甘い」という声が、あちらこちらで上がりました。
 
■住化ファームおおいた ~選果場~■
 栽培用ハウスの隣にある選果場では、地元採用のパートタイムの方々がトマトを選別して、パックに詰める作業をしていました。赤い色のトマトが並んでいます。夏場は日持ちを考慮し、まだ青い状態で収穫せざるを得ませんが、こちらのトマトは主に寒い時期に収穫するため、赤くなってから採っているそうです。
 収穫したトマトは、大分県内各地や北九州市、東京などへ出荷されています。寒い時期でもおいしいトマトが店頭に並ぶのは、このような先進的なファームのおかげだと感じました。
住友化学への質問と回答

社会広聴会員:
大分工場における、安全・安定操業のための取り組みを教えてください。
住友化学:
まずは「良き社会人であれ」「良き家庭人であれ」ということが挙げられます。化学工場は危険な場所もあるため、個人が心穏やかに仕事をしていくことが大事です。
また、化学工場で働くための、プロフェッショナルとしての知識や経験を身に付けていくことも大切です。机上の勉強もありますが、それ以上に訓練が必要となってきます。安全に対する感覚を身に付けることを重点において訓練しています。
さらに、設備面において何重にも安全対策を取っています。科学技術の進歩に合わせて、安全面においても、随時改善を加えていっています。
 

社会広聴会員:
農薬は、食の安全・安心の観点からは、問題ないでしょうか。
住友化学:
安全性を重視したものとなっています。よく育ち、おいしいものを収穫するためには、農薬が必要とされている面があります。
 
社会広聴会員:
住化ファームが、ほかの農業法人と異なる特徴は。
住友化学:
住友化学アグログループの「トータル・ソリューション・プロバイダー」事業の中で、我々が何をしたいのか、ということがお答えになるかと思います。
グループ各社が持っている技術やノウハウ、知識をお互いが共有し、各自の付加価値を高め、農業に関するすべてのことを提供していこうとしたときに、営農経営に関するノウハウ、すなわち核となる部分が必要になると考えました。
そこで自ら実践してみようということで立ち上がったのが住化ファームです。企業である以上、経営利益はもちろん求められますが、それ以上にノウハウの蓄積などを一番に求めるところが、住化ファームがほかの農業法人とは異なるところです。
住化ファームでは、雪の多い地域で、どのような作物を作ればよいかや、農業の事業継承などについて研究しているところもあります。
今ではノウハウの蓄積などにとどまらず、日本の農業が抱えるいくつかの課題に対して、解決策をご提示していくことも目指しています。
 
社会広聴会員:
住化ファームの地元への貢献は。
住友化学:
 地域の雇用に貢献しています。また、耕作放棄地を有効に活用することや、農場運営の姿を近隣の農家にじかに見ていただき、我々の技術等をお伝えしていくことを通じて、地域への貢献をしていきたいと考えています。
 
社会広聴会員:
栽培ハウスで、肥料はどのように与えていますか。
住友化学:
 養分が混ざった水を、点滴かん水という方法で与えています。ハウス内のシステムで肥料の組成データを作成し、どのタイミングでどの肥料をどれ位与えるか、といった条件をシステムに組み込んでいきます。水のタンクは6種類でそれぞれ肥料が入っていますが、自動的に計算されて、水と一緒に肥料が送られていく仕組みになっています。
参加者の感想から
●住友化学大分工場が、地域に根差して活動していることがとてもよく分かりました。また、地域との関係を良好にしていこうという気概が伝わってきました。
 
●大分工場で、丁寧な説明を受けながら見学ができたことが良かったです。また、住化ファームおおいたでは、トマト栽培に対する熱意を感じました。
 
●化学工場と日常食べているトマトのつながりを感じることができました。また、ハウス内でいただいたトマトもおいしかったです。
 
●住化ファームでは、住友化学が手掛ける地域の広さや、それぞれの地域の状況に合わせて活動していることがよく分かりました。
住友化学ご担当者より
  今回は最近注目を集めている農業関係に絞って住友化学の事業をご紹介させていただきました。社会広聴会員の皆さまをはじめ、少しでも多くの方に、農業経営を総合的にサポートし、日本の農業の競争力強化を目指す取り組みをご理解いただけますと幸いです。 ご来訪、ありがとうございました。
お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
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