企業と生活者懇談会
2014年5月16日 大阪
出席企業:コスモ石油
見学施設:堺製油所

「コスモ石油グループの使命~安定的にかつ高品質な状態で石油製品をお客様にお届けすること~」

5月16日、コスモ石油の堺製油所(大阪府堺市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員13名が参加しました。会社概要の説明を受けた後、堺製油所を見学、その後、質疑懇談を行いました。 コスモ石油からは、堺製油所の栗本英至所長、妻木久明総務担当副所長、平塚隆明生産管理担当副所長、禰津知徳製造担当副所長、勝村康彦安全環境担当副所長、宮崎佳剛技術課長、仲條正則総務課長、コーポレートコミュニケーション部の三浦幸雄広報室長が出席しました。また、石油連盟から橋爪吉博総務部広報グループ長が出席しました。

コスモ石油からの説明

■コスモ石油の沿革■ 
 1986年(昭和61年)に、大協石油、丸善石油および両社の精製子会社である旧コスモ石油の3社が合併し、コスモ石油が発足しました。その後、1989年(平成元年)にアジア石油と合併し、現在に至ります。本社(東京)、全国9支店、千葉、四日市、堺の3つの製油所を持ち、原油開発から石油精製・販売事業、再生可能エネルギー事業など一貫して行う総合石油企業です。 

■堺製油所の概要■ 
 堺製油所は、1968年(昭和43年)に関西石油として操業しました。関西電力など、地元の財界12社で出資して設立された製油所です。その後、1979年(昭和54年)に丸善石油と合併して丸善石油堺製油所になり、1986年にコスモ石油になりました。近畿地域および西日本一帯へ石油製品の供給を行っています。堺製油所の特徴は、50キロ圏内に大阪市、神戸市、京都市などの大消費地が入るところにあります。この立地を生かして、タンクローリー車によるガソリンおよび軽油燃料の輸送が非常に多くなっています。また、ジェット燃料を関西国際空港や神戸空港に供給しています。 
 敷地面積は約124万平方メートル(甲子園球場約31個分)です。原油処理能力は、1日当たり10万バーレルで、コスモ石油の各製油所の中では最も小さく、また全国23カ所の製油所の中でも最も小さな処理能力の製油所です。しかし、2010年(平成22年)に新しい装置群(重質油分解装置群)が稼動し、非常に効率的な精製を行っています。

■原油を一滴の無駄なく精製するテクノロジー■
 大型タンカーで運んできた原油は、大阪湾に面した原油桟橋から入荷し、原油タンクに貯蔵されます。 
 原油タンクに蓄えた原油は、まず加熱炉に入り、350~380度に熱せられてから、常圧蒸留装置に送り込まれます。常圧蒸留装置は通称トッパーとも呼ばれ、石油精製の過程で最も大切なものです。原油の中には、ガソリンや灯油など様々な成分が含まれており、沸点の違いを利用して、成分ごとに分けるのがこの装置です。 
 分離された各成分は、脱硫装置による硫黄分の除去などの過程を経てクリーンな製品に仕上げられます。液化石油ガス(LPG)はプロパンガスやメタンガスとして家庭や工場などで使われます。ナフサはその一部が、隣接する石油化学コンビナートにパイプラインで送られます。ここでさらに精製・加工され、石油化学製品に生まれ変わります。 
 加熱後に残る常圧残油は、減圧蒸留装置にかけます。減圧することで沸点が変わり、ここで新たに減圧軽油ができます。これを脱硫装置で硫黄分を除去した後、流動接触分解装置(FCC)にかけるとガソリン等に変わります。 
 それでもさらに残るのが、道路のアスファルト用になるような、粘土質の高い減圧残油(重油留分)です。この減圧残油分(C重油やアスファルト)の需要が減少している状況の中、2010年、重質油分解装置群という新しい装置群をつくりました。減圧残油をさらに約500度に加熱し、新たに分解油をつくります。これにより需要が減少傾向にある重油留分から、より付加価値の高いナフサやジェット燃料が新たに生産されるようになりました。 
 堺製油所は原油処理能力は高くはありませんが、新しい装置を建設したことで、非常に生産性の高い高機能な製油所に生まれ変わることができたのが大きな特徴です。減圧残油は通称「ボトム製品」と呼ばれますが、堺製油所は「ボトムレス製油所」として生まれ変わりました。 
 さらに2011年(平成23年)には、エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル(ETBE)装置を新設し、バイオエタノールとブタンから、環境に優しい植物由来のバイオガソリンを生産できるようになりました。二酸化炭素(CO2)を吸収して育った植物から生産されたバイオエタノール分は、ガソリン消費によるCO2を発生させない「カーボンニュートラル」という考え(京都議定書)により、環境に優しいガソリンになります。  

見学の様子

■新しい高機能な精製装置■
 製油所内には、巨大な原油タンクが整然と並んでいます。タンクは、直径98メートル、高さが22メートルあり、15万キロリットルを貯蔵できる、日本で最大級のものです。周辺には防油堤という、四角いコンクリートの壁があります。タンク内の石油が万が一漏れた場合も、防油堤外に流出しないよう、タンクの容量分の油が入る壁となっています。
 原油は、どの国のどの油田で産出されたかにより、性質(粘度、成分)などが大きく異なります。しかし製油所ではどんな原油でも、それに合わせて最高の品質の石油製品をつくり出しています。 
 今回訪れた堺製油所では、常圧蒸留装置、減圧蒸留装置、脱硫装置などの主要精製設備が並ぶ中、将来を見据えて確保してあった用地に、2010年に大型投資をして建設された重質油熱分解装置(通称コーカー)があり、真新しい装置が並ぶ一角となっています。国内で同タイプの重質油分解装置は現在3カ所のみです。 
 コーカーには、心臓部となるコークドラム装置が2基あります。片方に減圧残油を入れて分解油(ナフサ、ジェット燃料、軽油)を生成し、徐々にコークスが下部にたまります。もう片方では、ドラム内にたまったコークスをかき出す工程を行います。石油精製装置では珍しく、切り替え運転を行うようになっています。かき出されたコークスは、装置下部にある貯炭場に入り、UFOキャッチャーを思わせるバケットクレーンで持ち上げられ、ベルトコンベヤーで外に運ばれる仕組みとなっています。

■コントロール室■
 2010年に新設した装置のコントロール室を見学しました。コントロールの画面があり、基本的に自動で制御されており、高い所にあるカメラで、色々な角度から遠隔で監視します。また、24時間体制で、振動やにおいといった人の五感に頼る監視も行っており、現場で作業を行う場合は、電話で連携しながら、コントロール室と同時に作業を進めています。 

■出荷の様子■ 
 遠くの消費者には、大阪湾に面して浮かぶ小型のタンカーで海上輸送、近くの消費者には、陸上出荷場からの輸送になります。陸上出荷場にはドラム缶が並んでおり、若干量の出荷をしているそうです。東日本大震災の際には、被災地に向けドラム缶を活用して石油製品を出荷しました。
 タンクローリー車への積み込みの場所では、早いときは朝2時にタンクローリー車が来ます。通常はピーク時が朝6~7時で、この時間帯にはタンクローリー車がたくさん集まり、石油製品を積んで関西一円に出荷していくそうです。 

■安全・環境に対する取り組み■
 製油所では、周辺環境に対する影響にも十分に配慮しています。製油所の敷地には一定の緑地を確保しているほか、有害な窒素酸化物を減らすため、加熱炉などに低ノックスバーナーを設備したり、排出ガスに含まれる煤塵を取り除く電気集塵装置を取り付けたりするなどの対策を取っています。また、排水についても、高度な排水処理設備で油などを完全に取り除いて、きれいな水にしてから流しています。 
 安全面では、万が一に備えて、防災体制を確立しています。消防車は全部で7台所有しています。共同防災体制で、近隣で火災があった場合は協力して消火活動に当たることになっています。製油所内のあらゆる所に消火栓があり、いざというときに備えています。また、海上出荷設備付近には、巨大なバームクーヘンのような形をした「オイルフェンス」と呼ばれる設備があります。万が一、油が海に流出する事故が起きた場合、海に浮かべることで油の拡散を防ぐために備えられています。

コスモ石油への質問と回答

社会広聴会員:
米国のシェールガス革命について、近い将来、米国が世界最大のエネルギー供給国になるといわれていますが、日本への影響は。 
コスモ石油:
北米を中心にシェール層、頁岩層があり、中に封じこめられている天然ガスや石油が取れるようになりました。これにより、石油は3割ほど埋蔵量が増えるのでは、といわれています。石油業界としては、多様なエネルギーを歓迎すべきことと考えています。ただ、輸入するには高コストとなるため、日本は間接的な恩恵にとどまるのではないか、という見方をしています。
 

社会広聴会員:
将来、石油は枯渇するのでは。代替エネルギーをどのように考えているのか、石油業界の今後の見通しを教えてください。
コスモ石油:
現在は50~60年が可採年数といわれています。しかし、可採年数は、石油埋蔵量をその年の生産量で割った数値であり、石油埋蔵量は実は毎年増えています。石油埋蔵量の定義は、現在の技術と今の価格でほぼ確実(90%以上の確率)で、生産可能・採掘可能な量となっています。このため、技術開発により増えます。また原油価格の上昇で採算点が上がり、地中にある堀り残しを余分に取ってくることが可能になりました。このことにより、現在では、200年以上の資源量があるといわれています。 
一方、コスモ石油グループの再生可能エネルギーの取り組みですが、エコ・パワーというグループ会社が風力発電事業に取り組んでいます。全国で128本の風車を所有しており、総発電量は14万5000キロワットです。現在、建設中または建設準備中の風力発電所が3カ所あり、将来的には23~24万キロワットにまで発電量が増える予定です。
 

社会広聴会員:
昨今、火力発電所は、原油からLNGに転換されることが多いですが、石油会社としての危機感は。
コスモ石油:
41年前の第一次オイルショック時は、発電量の78%は石油で賄っていました。これが2010年度には9%にまで減りました。ところが、2011年度には18%、原子力発電所が止まった影響で2012年度は20%台と、実は回復をしています。
火力発電所向けの需要が減ることより、むしろ問題なのは、火力発電所が増えたときに、発電所向けの重油タンクや重油タンカーが不足することで、発電に必要な重油を届けることができなくなる、ということです。
そこで、新しいエネルギー基本政策で、国には一定量の発電用燃料を備蓄してほしい旨などをお願いしています。今後、緊急時を踏まえた電力対策の議論が深まってくるものと考えています。
  

社会広聴会員:
新しい装置を見学して、精製の技術開発は行けるところまで既に到達しているように思われました。今後、新しい技術開発は見込まれていますか。
コスモ石油:
ニーズがあって初めて技術は実用されます。我々が投資して重質油分解装置をつくったのは、需要の減少したC重油から、付加価値の高いジェット燃料などをつくるためです。今後、例えば中国、インド、アフリカなど、人口が爆発的に増えていく地域で、化学繊維の素材を使うことになれば、今まで燃料として利用されていた石油製品を、新規技術により、素材として利用することなどが想定されます。
 

社会広聴会員:
精製に携わる方の安全のポリシーは。 
コスモ石油:
社員一同、危険物を扱っている製油所という意識があり、自分で自分の身を守る、そして仲間同士で常に声を掛け合うことを心掛けています。事業の性質上、基本的には色々な安全システムが組み込まれて、装置設計されていますが、万が一の災害に備えて、消防設備・車、自衛の防災組織なども構えています。地域の皆さまに信頼していただくことが一番大切です。会議室前方には「ゼロ災害へ全員参加」など、たくさんの垂れ幕に安全対策の標語がありますが、会議の始めと終わりに指さしながら読み上げ、常に意識を高めています。
また、グループ社員全員で安全を考えるため、連結中期・安全計画があります。企業行動指針でも安全については明記しており、毎年、達成できたこと、できなかったこと、次にやることを分析し、「コーポレートレポート」に掲載しています。
 

社会広聴会員:
見学の際に、煙突から出ていた白い煙は何ですか。
コスモ石油:
煙に見えるものは実は水蒸気です。製油所では熱エネルギーの使用が多く、回収しきれなかったエネルギーの一部が蒸気として排出されます。煙突から出た時は白い煙のように見えますが、10メートルほど上空にいくと何も見えなくなります。
 

社会広聴会員:
堺製油所の環境保全活動を教えてください。 
コスモ石油:
皆さまに愛されているスローガン「ココロも満タンに」に加え、「ずっと地球で暮らそう。」というスローガンもあります。環境活動などに真摯に取り組んでいく姿勢を表しています。 
堺製油所では、周辺の環境と調和した製油所を目指していますが、さらに、堺市と協定を結んでいる奈良県東吉野村の里山保全活動も行っています。東吉野村にグループ社員とその家族が出向き、森を守るために木を間伐・除伐したり、整地をしています。コスモ石油の取り組みが奈良県のCO2削減に寄与しているとのことで、奈良県知事より吉野杉でできた賞状をいただきました。

参加者の感想から

●広大な敷地に最新設備がつくられており、付加価値の高い製品がつくられていることを実感しました。また、環境保護活動に寄付を行っているコスモ石油エコカード基金の活動について初めて知り、大変感動しました。 

●広大な敷地の中に縦横無尽に張り巡らされた配管とタンクの数が多いことに驚きました。また設備の災害に備えたシステムは素晴らしいと思います。

●「原油を一滴も無駄にしない」とのお話にオイルマンとしての考えの一旦を知ることができました。重要なエネルギーである石油産業は、重責を担っていることを認識するとともに、今後も、消費者の立場から大いに期待したいと思います。

●石油の埋蔵量、生産量について、時代、技術の変化が大きくかかわっていることが理解できました。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
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