企業と生活者懇談会
2014年9月25日 神奈川
出席企業:花王
見学施設:川崎工場

「花王の“よきモノづくり”を知る」

9月25日、花王の川崎工場(神奈川県川崎市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員20名が参加しました。会社概要、工場概要の説明を受けた後、川崎工場を見学し、質疑懇談を行いました。 
花王からは、川崎工場の和田康工場長、菊地寛之課長、生活者コミュニケーション部の大竹正子部長、サステナビリティ推進部の横見瀬薫部長、広報部の坂倉隆仁部長、篠崎直之課長、小川直哉氏が出席しました。

花王からの説明

■花王について■
 花王は、「長瀬商店」として1887年(明治20年)に創業しました。今では約3万3000人の従業員が働き、1兆3152億円(2013年度)を売り上げる企業グループに成長しました。ビューティケア事業(化粧品、スキンケアやヘアケア製品)、ヒューマンヘルスケア事業(サニタリー製品、健康機能飲料、入浴剤や歯みがきなどのパーソナルヘルス製品)、ファブリック&ホームケア事業(衣料用洗剤、台所用洗剤、住居用洗剤など)、ケミカル事業(産業界向け工業用製品)の4つの事業部門から成ります。国内には、北から酒田、栃木、鹿島、東京、川崎、小田原、豊橋、和歌山、愛媛の9つの工場があります。 

■“よきモノづくり”とは■
 「よきモノ」とは、店頭でお客さまに購入していただけるコンセプトやデザイン、価格を有している商品というだけでなく、購入後も、使用感に満足し、最終的には感動していただける商品と考えています。充実した研究開発体制により革新的な製品を創造するだけでなく、常にお客さまからのご意見に耳を傾け、お客さまの声をよりよい商品開発や生産に生かしています。 
 川崎工場では毎朝、花王独自のお客さまの声を集約するシステムを用いて、川崎工場で生産された商品に対して寄せられたお客さまの意見を全員で確認し、日々の仕事に生かすことで“よきモノづくり”を生産の現場で実践しています。 
 花王は、消費者・お客さまの立場に立って、心を込めた“よきモノづくり”を行い、世界の人々の喜びと満足のある豊かな生活文化の実現を目指しています。 

■川崎工場■
 川崎工場は、主に衣料用洗剤、食器用洗剤、全身洗浄料、シャンプー・リンス、住居用洗剤などを年間約41万トン(2013年度)製造する工場で、約270名が働いています。約10万平方メートルの敷地を有し、多摩川と多摩運河に囲まれた川崎臨海工業地帯の浮島町の入り口に位置しています。工場の操業開始は1962年(昭和37年)です。 
 川崎工場は首都圏に位置する工場であるため、その使命は確実に首都圏や東日本のお客さまに商品をお届けすることです。川崎工場は徹底した効率化を追求した工場であり、非常に少ない人数で生産を行っています。しかし、それと同時にお届けする商品の品質を保つ取り組みや工夫を常に行っています。
 また、川崎工場には家庭品の基幹工場として遂行すべき社会的責任があります。第一に守るべきことは安全です。また、万が一大きな災害や事故で生産が止まってしまうと、お客さまに商品を十分にお届けできないという事態にもつながりかねません。24時間稼動している工場であるため、生産を続けながら、安全に対してしっかりとした目配りと気配りを怠らないような運営を行っています。 
 さらに工場として重要なことは、環境に対する配慮です。これまで、工場の外に出すガスや排水を徹底的に綺麗にする努力をしてきました。その結果、現在、この川崎工場では、多摩川より綺麗な水を排水しているのが誇りです。そのほかにも、地道な努力を続けながら安全・安心な工場運営を行っています。 

見学の様子

 川崎工場では、液体洗剤、粉末洗剤などの製造ラインや箱に入った製品の保管と出庫準備をする自動倉庫を見学しました。特に製造ラインでは、間近で製品の生産現場を見ることができました。そのため、見学者の安全確保と落毛防止などの衛生上の理由から、全員がインナーキャップと帽子を着用しました。 

■液体洗剤の充填工程■
 工場内部に入ると液体洗剤の中身をパウチと呼ばれる詰め替え用の袋に充填するラインが動いています。詰め替え用の袋が自動的に供給され、ロボットが袋をつかむと正しくつかんでいるかをセンサーがチェックしロットナンバーが印字されます。その後、袋は充填用機械に運ばれ、袋の口が開けられ、液体洗剤がノズルより袋に自動的に充填され、所定の量が入ると口が熱でシールされます。最後までノズルから勢いよく液体洗剤を袋に充填すると、泡が立ち袋から溢れてしまうので、充填速度をコントロールしながら泡を立たせず、かつ、高速に充填しています。パウチの口をシールすると次の箱詰め工程に送られます。すべて機械は自動であり、無人化が徹底されています。この充填用機械は数種類の製品に対応しており、同じ機械で洗剤や柔軟剤の充填をすることが可能です。しかし、各製品で大きさが異なるため、通常は同じ機械やラインで数種もの異なる種類の生産は非常に困難とされているそうです。花王では独自の生産技術の開発により安全性や高生産性を損なうことなく、製品の種類ごとの大きさの違いを吸収できるよう製造ライン上で工夫がされています。 
 参加者は機械の間近まで立ち入ることができ、製品を搬送するコンベヤーは、まさに手が届くところを高速で動いていました。参加者がそのダイナミックな動きにしばし見入っている間も工程の要所要所で重量や充填した液体が外に垂れていないかなど、センサーによるチェックが一品一品自動で行われていました。参加者は、高速で製品が生産されるなかで、こうした徹底したチェックが、高い品質を支えていることを知ることができました。 

■粉末洗剤の外箱の組み立てと充填工程■
 粉末洗剤を充填する外箱は、平らな紙の板を折り畳むことでつくられます。印刷された紙の板が専用の組み立て機に供給され、ロボットにより機械の中を一周するうちに組み立てと糊付け、乾燥が行われます。その後、箱が正確な形状に組み立てられたかをチェックします。効率的な組み立ての順番や、糊の乾燥を短時間で行うなど、数多くの工夫が施されています。
 チェックされた外箱は充填工程へと送られます。充填工程でも素早く正確に粉末を充填するためにわざと一度で充填せずに、速度を変えて充填するなどの工夫が施されています。 

■自動倉庫■
 自動倉庫は、パレットと呼ばれる木製の台座の上に製品が入った何個かの段ボールを積む工程とそのパレットに載った製品を倉庫棚に格納する工程から成っています。自動倉庫はすべて無人であり、空調のないエリアです。 
 段ボールをパレットに積む工程は、パレットローダーと呼ばれる機械で行います。パレットローダーは、パレットの上に、製品を詰めた箱を積み上げます。2段積みにされたパレットは自動的に倉庫にコンベヤーで送られます。
 倉庫の空間は高さ30メートル、横幅40メートル、奥行き68メートルで、そこにおよそ7500の棚があります。専用のベルトコンベヤーとクレーンが棚の間をひっきりなしに行き来しています。2階ではクレーンにより製品が積まれたパレットが棚に入れられ、1階では棚からパレットごとに運送用トラックに運び込まれる仕組みになっています。なお、製品はその種類ごとにまとまって入っているのではなく、ランダムにバラバラの状態で棚に入っています。 
 参加者は24時間動き続ける工場の見学を通じて様々な場面での安全と品質確保への努力を学ぶことができました。 

花王への質問と回答

社会広聴会員:
川崎工場では、周辺地域とどのような関係づくりをされていますか。 
花王:
浮島町の工業地域で操業している花王を含む9社は隔年で「地区対話」という意見交換会を開催しています。地域にお住まいの代表の方と企業の代表者が一堂に集まり、企業から安全、衛生、環境や防災活動を中心に報告し、意見を交換しています。また、夏休み期間中に神奈川県が主催する「かながわサイエンスサマー」という企画に川崎工場も参画しています。これは、夏休みに親子で参加できる科学教室で、2014年(平成26年)の夏は、「洗剤の成分の働きの学習」「ハンドクリームを作る実験」「汚れ落ちの実験」などを実施し、工場見学も組み合わせて、約280組の家族に体験を通じてモノづくりを学んでいただきました。
 

社会広聴会員:
ヒューマンエラーはどのように防止していますか。 
花王:
これをすればヒューマンエラーはなくなるという策はありません。エラーが起きないような工夫を地道に一つひとつ丁寧に積み重ね、皆で心掛けていくしかないと考えています。花王は生産における作業リスクアセスメントを必ず行っています。もし、流れる商品が倒れたときに手を出してしまったらどうなるか、など多くのリスクを想定し、その際にどうすれば安全に作業できるかを検討しています。このようなリスクアセスメントに加えて、声に出してチェックしながら作業を行うといった地道なこともずっと続けることがヒューマンエラーの防止に重要と考えています。
 

社会広聴会員:
花王の環境への取り組みについてお聞かせください。 
花王:
花王は2008年(平成20年)に環境宣言を行いました。その中で二酸化炭素(CO2)の削減、製品使用時の水の削減、自然保護に配慮した原材料調達、化学物質の安全管理の4つの事項を約束しました。特に原料調達について述べますと、洗剤の活性剤の原料は、熱帯雨林気候に生育するパームやヤシの油を使用しています。一方、国連のニューヨークでのサミットにおいて、パームやヤシの無計画な伐採が森林破壊によるCO2の上昇や地元の暮らしの破壊などにつながっているとの指摘があります。そこで花王では認証原料を使用するようにしています。認証原料とは森林破壊や児童労働などの問題がない農園で得られた原料(パームやヤシの油)のことです。花王では2013年(平成25年)末に原材料調達ガイドラインを改訂し、2020年までに原材料調達による森林破壊をゼロにすることをコミットメントしています。
 

社会広聴会員:
川崎工場の省エネルギーの取り組みをお聞かせください。 
花王:
川崎工場では付加価値生産高当たりで前年比1%削減を継続しています。更には排水、廃棄物、温室効果ガス、エネルギーは2008~2014年で40~50%削減し、この7年で1つの商品を製造するのに必要なエネルギーをおよそ半分に減らしています。
 

社会広聴会員:
海外での事業展開についてお聞かせください。
花王:
タイと台湾が花王の海外事業のスタートですが、本年(2014年)9月に50周年を迎えることができました。花王には2015年までに売り上げの海外比率を30%に、2020年まで50%にする目標があります。皆さまは川崎工場で製造している衣料用洗剤と同じものが海外で販売されている印象を持っておられるかもしれませんが、海外では日本とは洗濯の仕方や水質などに大きな違いがあり、その国に合った商品開発をしています。特にアジアでは洗剤、オムツ、生理用品、全身洗浄料、シャンプー・リンスなどはその地に合った商品開発を進め、市場に出していきます。
 

社会広聴会員:
ヒット商品が生まれた背景においてお客さまのニーズはどのように生かされていますか。 
花王:
花王ではお客さまの満足点、不満点を調査して商品開発に生かしています。花王の電話相談には年間約18万5000件のお問い合わせがありますが、問い合わせをいただくというのは、製品が分かりにくいからととらえて、お客さまの意見に耳を傾けるよう常に心掛けています。さらにご意見を相談部門だけでなく、生産や研究や営業などでも共有することでよりよい製品の開発につなげています。
 

参加者の感想から

●花王社員の方が、一丸となってよきモノづくりに向かっている姿勢、社員教育が行き届いていると感じました。また、気持ちの良い応対には花王の品格の良さを感じました。 

●花王の「おもてなし」の心が伝わるとともに、川崎工場がモノづくりの第一線に立っていることを実感しました。会社への理解や親しみを深め、花王ファンを増やしていくための大きな役割を果たしていると感じました。

●廃棄物を燃やして出た熱の工場内での再利用や、排水は多摩川よりもきれいにして流していることを知り、環境に配慮した企業であることを実感しました。

●3.11の際、いち早く赤十字に寄付し、その後も被災地にその時その時に応じた援助と支援を継続されているなど熱心な取り組みについても知ることができ、素晴らしい企業であることを再認識しました。 

●各部門の方からのご説明もお聞きすることができ、消費者を大切にする花王ウェイを実感した1日になりました。 

●地域に開かれた企業として様々な活動をされていることに感銘を受けました。
 

花王ご担当者より

 参加者の皆さまには、日ごろからご愛顧いただいている花王製品を製造する川崎工場をご見学いただきありがとうございました。見学と懇談会を通じて、当社の企業姿勢から、製品づくりにかかわる様々な取り組みについてご理解を深めていただけたのではないかと思います。また、生活者の皆さまが日ごろどのようなご意見を持っておられるのかをじかにお伺いするよい機会を頂き感謝しています。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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