企業と生活者懇談会
2014年11月21日 福岡
出席企業:日清製粉グループ本社
見学施設:日清製粉福岡工場

「主要食糧である小麦粉の製造を担う日清製粉グループの取り組み」

11月21日、日清製粉の福岡工場(福岡県福岡市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者17名が参加しました。日清製粉グループおよび日清製粉福岡工場の概要説明を受け、工場見学、質疑懇談を行いました。 
日清製粉からは、福岡工場の高橋誠一郎工場長、久積淳一郎工場次長、品質保証部福岡工場駐在の田村佑介主査、日清製粉グループ本社からは、CR室の南澤陽一室長、山下敦子主査、人見有紀氏、総務本部広報部の関野修策部長補佐、堀野倫広氏が出席しました。

日清製粉グループ本社、日清製粉からの説明

■日清製粉グループのあゆみ■
 1900年(明治33年)に創業した日清製粉グループは、「信を万事の本と為す」と「時代への適合」を社是とし、「健康で豊かな生活づくりに貢献する」ことを企業理念としています。群馬県の館林に館林製粉としてスタートし、その後、数々の製粉会社を買収しながら拡大してきました。1908年(明治41年)、横浜市にあった日清製粉を買収した際に「館林製粉」から「日清製粉」に社名を変更しています。 
 製粉事業のほか、事業の多角化を進めてきました。小麦粉の副産物である「ふすま(小麦の皮の部分)」を生かした飼料事業が生まれたり、小麦粉の製造工程で使用する「ふるい」を作る会社を設立したことをきっかけとしてメッシュクロス事業に発展したりしました。その後、ペットフード事業、エンジニアリング事業なども発展させ、また海外での事業展開も米国などで加速しました。 

■小麦粉シェア国内トップの責任感■
 製粉事業では、業務用の小麦粉を製造し、国内シェアは第1位で約4割です。「国民の皆さまの主要食糧を支える」という社会的責任を果たすために、日々の業務に取り組んでいます。 
 創業120周年となる2020年を見据えた中期経営計画「NNI-120 スピードと成長、拡大」を、2012年(平成24年)4月にスタートし、その中で製粉工場の生産集約も進めています。製粉工場はもともと、小麦の産地に建てられていましたが、輸送費用の削減など製造効率と生産コストを勘案して、内陸の工場を順次閉鎖し、大きな新工場を海岸沿いに造っています。例えば北関東では、水戸、宇都宮、高崎、館林などを閉鎖し、千葉と鶴見に集約しました。九州では鳥栖と筑後を閉鎖し、福岡工場に集約しました。国内で使用する小麦の約9割弱は海外から輸入されており船で日本に運ばれてくるため、沿岸部の製粉工場では船から小麦を直接サイロに貯蔵できるため効率が良いのです。 

■最新のスマート工場■
 2014年(平成26年)2月に稼動した福岡工場は、主に九州で二次加工品(例:パン、麺、菓子)を製造するお客さま向けに用途に応じた小麦粉を生産しています。博多港から陸揚げした小麦をすぐに使用でき、高速道路の入り口にも近い好立地にあります。原料から製品までの工程が非常に短く、異物混入などの発生を防ぐ設計となっています。国内で最も新しい製粉工場で、日清製粉の最新のノウハウが注ぎ込まれています。 
 福岡工場には4つのコンセプトがあります。1つ目が「Quality」です。約90年、九州で蓄積した技術で、安定した品質でお客さまに製品を供給します。 
 次に「Safety」。お客さまにいつも安全な小麦粉を安心してお使いいただくために、製品の安全に最大限配慮して設計しておりますが、入退場管理などのフードディフェンスを今後さらに強化する計画です。
 そして「Technology」です。世界の最新技術を導入した機械を設置し、LED照明やガスヒートポンプ空調など、高効率、省エネ、環境に配慮しています。 
 最後が「BCP(事業継続計画)」です。東日本大震災後に建設された工場であり、高さ30メートルの立体自動倉庫に震度6でも倒れない制振装置を導入するなどしています。 
 このように福岡工場は、コンパクトで効率的、かつスマートな最新鋭工場です。 

■小麦粉が出来るまで■ 
 小麦は、胚乳、胚芽、表皮で構成され、小麦粉は、小麦の粉砕物から胚乳を段階的に取り分け、それらを組み合わせて製品化したものです。表皮はふすまになります。 
 タンカー等で運ばれてきた原料の小麦はサイロ会社のサイロで保管された後、工場に直結したコンベヤーベルトを通って製粉会社に持ち込まれます。最初は精選機にかけ、小麦以外の混入物を取り除きます。次に、小麦に水を掛けて調質します。調質の目的は、ふすまと胚乳が分かれやすい状態にすることと、産地、収穫時期などによって異なる水分量を一定にすることです。生産国や品種によって小麦の物性もいろいろで、お客さまごとのニーズに対応してブレンドも行います。 
 製粉工程では3つのプロセスを組み合わせて小麦粉を作ります。最初にロール機で回転する2つのローラーの間を通して小麦を砕きます。次に、目の大きさの異なる網が何十枚も入ったシフターでふるいにかけて、網を通過する粒の大きさごとに取り分けます。続いて風の力を利用したピュリファイヤーで、わずかに残ったふすまを除去し、胚乳を取り出します。これらのプロセスを何度も繰り返して、少しずつ小麦粉が取り出されていきます。 
 出来上がった小麦粉は、タンクに貯蔵された後、包装ラインで25キログラムずつクラフト紙の袋に詰められ、金属検出などのチェックを経て、立体自動倉庫に保管され出荷を待ちます。一度に大量に使用するお客さまには袋詰めせず約10トンずつ、専用のローリー車で届けます。

見学の様子

■多種多様な製品を作る技術■
 製造ラインは強力粉向けと薄力粉向けに分かれていて、機械の仕様・設定は何通りもあります。小麦は、工場の3~5階に設置されているロール機、シフター、ピュリファイヤーの各工程を、風で送られたり吸い上げられたりして何度も行き来しながら、用途に応じた何百種類もの小麦粉に出来上がっていきます。例えばパン用といっても、食パン、あんパン、メロンパンでは、それぞれに適した小麦粉が求められているのです。 
 小麦の粒の皮に近い部分や中心に近い部分など、どの個所かによっても、小麦粉の成分は異なります。日清製粉の技術は、その個所別に小麦粉を選別できます。微細な粒子を扱い制御する技術は、世界的に見てもトップレベルとされています。 
 小麦粉を作るための設備、機械は、長年の研究・開発で進化してきました。例えばシフターです。製品になるために小麦粉が通過する網の目は0.1~0.2ミリメートルという細かさ。目詰まりせずに安定的にふるいを行う網とその周辺部品は品質を決める重要なパーツです。参加者は実際に網や製造段階の小麦粉を触って、技術の蓄積を感じることができました。 

■加工・調理まで行い品質追求■
 工場の中には、小麦粉の物性を評価する品質管理センターや加工センターがあります。実際にパンや麺を試作して味、香り、色、食感などを確認し、品質検査や製品開発をしたり、講習会を開いたりしています。 
 強力粉と薄力粉それぞれで作られた2種類の食パンを試食しました。含まれているタンパク質の量などが異なるため、見た目や食感などが全く違い、パンには強力粉の方が向いていることが分かります。次に2種類のスポンジケーキを見比べると、薄力粉の方がふっくらと焼き上がっています。それぞれの食品に適した小麦粉が必要で、パンの食感、うどんののど越しなども、小麦粉の性質が大きく影響していることを知りました。

日清製粉グループ本社への質問と回答

社会広聴会員:
国内での小麦の利用について教えてください。
日清製粉グループ本社:
1970年代は麺が1位の用途でしたが、現在、パンが伸びて約40%、麺が約35%、菓子が12~13%となっています。国内で使用される小麦の量(輸入・国産)は現在、約600万トンです。
 

社会広聴会員:
国内産の小麦はどのくらいあるのですか。
日清製粉グループ本社:
今年は約85万トンです。食料自給率で見ますと、カロリーベースで米97%に対し、小麦は12%です。国内産小麦の生産は、戦前の昭和15年ぐらいに180万トンというピークを迎えています。戦時に大きく減少し、昭和36年にもう一度180万トン程度になり、再度減少し、変動を繰り返しています。
 

社会広聴会員:
九州地区の小麦の生産量はどのくらいですか。
日清製粉グループ本社:
都道府県別生産量では、北海道が55万トンと約3分の2を占め、2位はここ福岡県の5万トン、次に佐賀、群馬、愛知と続いています。現在、日本各地でいろいろな良い小麦がありますが、一つひとつの品種の生産量が少ないので、全国向けの小麦粉として販売するには難しい状況です。
その中でも日清製粉は国産小麦の製品を積極的に開発しており、福岡工場でも福岡県産小麦100%の「筑紫こがね」という地粉を九州地区限定で発売しました。
また、福岡県には「ちくしW2号(通称ラー麦)」という博多ラーメン用の小麦もあります。
 

社会広聴会員:
新興国の小麦消費の増加への対応について。
日清製粉グループ本社:
米、トウモロコシ、小麦、大麦など、世界の穀物需要量は、1970年(昭和45年)に比べ2倍に増加していますが、生産量もその伸びに対応して増えています。期末在庫率という数値も全体で21.1%、小麦は26.3%と、安心できる備蓄量があります。生産量の世界シェアはEU諸国、中国、インド、米国という順ですが、輸出量では米国、EU、カナダ、オーストラリアの順となっています。
日本の小麦の輸入元は3カ国で、米国54%、カナダ24%、オーストラリア22%です。

社会広聴会員:
小麦の種類による違いを教えてください。
日清製粉グループ本社:
小麦は大きく4つに分類されます。硬質小麦はタンパク質が多く、粘り・弾力性に富むので、パンや中華麺に適しています。軟質小麦はタンパク質が少なく柔らかいため、ケーキなど菓子向きです。和菓子やカステラなどには日本の小麦も向いていると思います。中間質小麦はうどんに適しています。また、デュラム小麦はスパゲティやマカロニ用で、弾力性の強いグルテンを豊富に含むため、こしの強いパスタができます。胚乳部が黄色なのが特徴です。
小麦の違いによって用途が異なり、パン向けの強力粉、中華麺などに向く準強力粉、うどんなどに向く中力粉、ケーキなどに向く薄力粉、パスタなどに向くデュラムセモリナに分かれます。
 

社会広聴会員:
家庭での小麦粉の保管方法を教えてください。

日清製粉グループ本社:
 開封後に閉め方が良くなかったり、常温で保管状態が悪い所に置くと、ダニが入ることがあります。特にお好み焼粉のようにかつお節などのにおい成分が入っているものをダニは好みます。そのため「開封後は、虫害による健康被害を防ぐため、冷蔵庫に保管し、お早めにお使いください」と表示している製品もあります。
小麦粉自体にはダニがそれほど付かないのですが、袋をきちんと閉めて、冷暗所に保管してください。なかなか使い終わらずに冷蔵庫からの出し入れを繰り返すと、夏場などは30度と5度の場所を行き来することになり、結露して固まりが出来てしまうことがあります。 
 

社会広聴会員:
小麦の残留農薬への対応について。

日清製粉グループ本社:
国内産小麦は、収穫されて出荷するまで生産者団体が測定、管理し、合格品が我々に入るようになっています。輸入品は、輸出国で船に積まれる前にサンプルが採取され、船が日本に来るまでの間に分析されます。万が一、政府の設定した残留基準値を超える農薬が検出された場合は、日本のサイロに入りません。なお、残留農薬は自社でもモニタリングしています。
 

社会広聴会員:
トレーサビリティについて教えてください。
日清製粉グループ本社:
使用した原料までさかのぼってトレースできる体制を構築しています。国際規格のISO22000(食品安全マネジメントシステム)の認証も取得しており、各工程での記録を保管しています。ロット番号で、どこの国のどの船の小麦だったかを追跡することができます。加えて、使った原料と小麦粉は、真空パックで2年間保存していますので、必要があれば取り出して分析が可能です。
 

社会広聴会員:
小麦の遺伝子組み換えについて。
日清製粉グループ本社:
小麦の遺伝子組み換えについては、世界各国で研究されていますが、菜種、大豆、トウモロコシ、ジャガイモなどと違い、まだ商業販売が認められた小麦の品種はありません。
 

参加者の感想から

●東日本大震災の経験を生かしたコンパクトで環境にやさしい最新設備の工場を見学し、素晴らしさがよく分かりました。 

●福岡は粉文化になじみの深い土地です。地元に根差した商品開発・販売を、今後も続けていただきたいと思います。 

●工場施設に入るときの衛生管理など、安心につながるものをいくつも体感しました。 

●工場を見学したことで、より企業や商品に関心が持てました。 

●身近にある製品が厳しい衛生管理のもとに製造されていることを知り、安心、感心しました。

日清製粉グループ本社ご担当者より

 このたびは、日清製粉 福岡工場にご来場いただきまして、誠にありがとうございました。「製粉工場」をご見学いただき、製造した小麦粉で作ったパンもご試食いただきながら、小麦粉の性質、製造工程や安全・安心に対する取り組みをご理解いただけたことと思います。また、積極的にご質問をいただいたことで、私ども社員一同も国民の皆さまの主要食糧である小麦粉を安定的に供給していく責任を強く受け止める機会となりました。今後も安全・安心かつ高品質の製品を皆さまのもとへお届けできるよう、日々努力してまいります。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
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