企業と生活者懇談会
2016年2月25日 茨城
出席企業:雪印メグミルク
見学施設:阿見工場

「お客さまに安全で安心していただける商品の提供~“おいしさ”にこだわる『ものづくり』~を学ぶ」

2月25日、雪印メグミルクの阿見工場(茨城県稲敷郡阿見町)で「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者15名が参加しました。同社から企業・工場概要について説明を受けた後、プロセスチーズやマーガリンの製造工程を見学し、質疑懇談を行いました。 
雪印メグミルクからは、阿見工場の松永政也工場長、CSR部CSR推進グループの横山浩課長、重信旭氏、広報部の佐瀬修部長、吉田克紀広報グループ担当部長(阿見工場駐在)、渡邉健太郎広報グループ課長、齋藤浩哉広報グループ担当課長が出席しました。

雪印メグミルクからの説明

■雪印メグミルクの概要■
 雪印メグミルクは、2009年(平成21年)に設立されました。本社は東京都新宿区にありますが、登記簿上の本店は当社の発祥の地である札幌にあり、株主総会は毎年札幌で行っています。
 当社のルーツは、1925年(大正14年)、北海道の酪農民が設立した北海道製酪販売組合から始まります。まずバターの製造を開始し、1950年(昭和25年)に雪印乳業が発足、その後乳製品のパイオニアとして、「6Pチーズ」や「スライスチーズ」「ネオマーガリンソフト」など、数々のロングセラー商品を生み出しました。
 当社の歴史の中で、決して忘れてはならないのが2000年(平成12年)の雪印乳業食中毒事件と2002年(平成14年)の雪印食品牛肉偽装事件です。この2つの不祥事により、2003年(平成15年)に雪印乳業は解体し、それまで手掛けていた冷凍食品や医薬品など、ミルク以外の事業を分離するとともに、乳製品事業を行う雪印乳業と、飲料・デザート事業を行う日本ミルクコミュニティに事業分割しました。その後、2009年にこれら2つの会社が経営統合し、持ち株会社として雪印メグミルクが設立され、2011年(平成23年)に両社が合併し、現在に至ります。 
 当社は、「消費者重視経営の実践」「酪農生産への貢献」「乳(ミルク)にこだわる」という3つの使命と、「未来は、ミルクの中にある。」というコーポレートスローガンによって構成される企業理念を掲げています。乳(ミルク)を軸として事業を行う当社では、取扱商品・サービス等を「飲料・デザート類」「乳製品」「飼料・種苗」「その他」の4つのセグメントに分類しています。現在の売り上げの構成比は、毎日消費される牛乳類の割合が大きく、「飲料・デザート類」が約半数を占めています。次いで「乳製品」となり、この2つで全体の約85%に達します。従業員数は連結で5000人弱、売上高は連結で約5500億円です。ミルクの新しい価値を創造することにより、社会に貢献する企業であり続けることを目指しています。

■品質と向き合い続ける■
 先に述べた2つの不祥事は、決して風化させてはならないものです。一方で、現在は社員の約半数が当時の事件を経験していません。そこで、雪印乳業食中毒事件を起こした6月と、雪印食品牛肉偽装事件を起こした1月を節目の月と定め、「食の責任を強く認識し、果たしていくことを誓うための活動」を行っています。具体的には、社外から有識者を招いての講演や、品質に関する理解度テストの実施、事件当時の報道番組の視聴などを行い、改めて品質に向き合う月としています。また、取締役会の諮問機関として、外部の有識者で構成された企業倫理委員会を設置し、経営における透明性の確保と、品質や表示などについての社外からの監視機能を強化しています。

■阿見工場の概要■
 阿見工場は、横浜チーズ工場・関西チーズ工場・厚木マーガリン工場の3工場から生産機能を移管・集約した、国内最大級の乳製品工場です。敷地面積は13万4000平方メートル、東京ドームの約3倍の大きさで、2014年(平成26年)より生産を開始し、現在約500人の従業員が働いています。
 当工場では、主にプロセスチーズやマーガリン類を生産しています。プロセスチーズの原材料は、ナチュラルチーズです。ゴーダやカマンベールに代表されるナチュラルチーズは、乳酸菌や酵素が生きているため、そのままでは熟成が進み続け、味が変化します。そこでナチュラルチーズを加熱殺菌して発酵を止め、保存性を高めていつでも同じおいしさを味わえるようにしたものがプロセスチーズです。当社では、主に北海道の工場で製造したナチュラルチーズと、一部輸入したナチュラルチーズを使用しています。マーガリンは、大豆やトウモロコシなどから採れる植物性油脂を原材料とし、水、食塩、乳製品などを混ぜ合わせて作ります。そのため、当工場は当社で唯一原料乳(生乳)を直接扱わない形態の工場です。 
 製造設備は37ラインで、およそ200種類の商品を製造しています。今年度(2015年度)は約4万6000トン規模の生産を見込んでいます。
 当工場の特徴として、阿見総合物流センターを併設していることが挙げられます。阿見総合物流センターは、それまで関東と関西に設けていた保管倉庫の機能を集約するとともに、全国への配送機能も持っています。冷蔵能力は8万4000トン、冷凍(マイナス25℃)、冷蔵(0℃、5℃、10℃)、定温(20℃)、常温の6つの温度帯に分け、製品保管と原材料であるナチュラルチーズの熟度管理を行っています。
 また、当センターは保税蔵置場の許可を取得しています。従来は、ナチュラルチーズを輸入した際は、港の近くの倉庫に貨物を預け入れ、そこで通関手続きを行っていました。保税蔵置場の許可を取得したことで、輸入したチーズは未通関のままで当物流センターに搬入され、通関手続きを行います。原料調達、製造、製品保管、出荷まで一体化し、効率化が実現しました。

見学の様子

■徹底した衛生管理を体験■ 
 参加者は、まず従業員が工場内で着用する作業服について説明を受けました。作業服は埃や髪の毛が付きにくい素材でできていて、袖と足首の内側にゴムが入っており、体毛が外に落ちないよう工夫されています。異物を持ち込めないようポケットはありません。プロセスチーズやマーガリンを製造する製造室に入るためには、生地や構造がさらに工夫された防塵服を着用しなければなりません。製造室の壁や天井はステンレスでできていて、室内の気圧を周りよりも少し高くすることで、外部からの埃の進入を防いでいるそうです。 
 作業室に入室する前には、使い捨てのインナーキャップに髪の毛を全て入れ、その上からフードとマスクを着用します。異物を工場棟へ持ち込まないよう、毛髪・塵埃除去機「取るミング」を使って、頭から背中、足下まで30秒かけてきれいに埃や髪の毛を吸い取ります。「取るミング」が終わった後は30秒間の手洗いを行い、最後にエアシャワーを浴びてから入室します。 
 同工場には、取るミング、手洗い、エアシャワーの体験コーナーが設けられています。エアシャワーを浴びた参加者の中には、強い風圧に驚く人もいました。参加者は、徹底した衛生管理について、体験しながら学ぶことができました。

■チーズ製造工程を見学■
 次に、参加者は見学用の通路からプロセスチーズの製造工程を見学しました。プロセスチーズは、作る種類に合わせて、数種類のナチュラルチーズを細かく砕き、混ぜ合わせます。それを乳化釜という大きな釜の中に入れ、約80~85℃に過熱して溶かします。
 スライスチーズの場合は、この溶かしたチーズを筒状にしたフィルムへ連続的に流し入れ、薄く伸ばします。伸ばしたチーズは下にある水槽で冷やし固めます。固められたチーズは1枚ずつ切り分けて所定の枚数に重ね、包装室へと送られます。包装室では、重ねられたスライスチーズをポリフィルムで包装します。この際、袋の中の空気を一瞬にして追い出し、炭酸ガスと窒素ガスの混合ガスに入れ替えます。これはガス置換包装といって、品質を保持するための工夫です。
 6Pチーズの場合は、溶かしたチーズをアルミ箔を敷いた型に流し込み、三角の形にします。6個ずつ箱(パッケージ)に入れてから、45分間かけて冷やし固めます。6Pチーズは1箱108グラムですが、このチーズを作るためには、約10倍の量の牛乳が必要になるそうです。 
 いずれのチーズも製造工程で重量検査、異物検査を行った上で、認定検査士が風味や色・組織・微生物・成分などの検査を行い、合格したものだけを出荷します。スライスチーズのラインは1分間に750枚、6Pチーズのラインは1分間に500ピースの製造能力があるそうです。参加者は、見慣れたチーズが次々と包装される様子を熱心に見学していました。

■チーズを試食!■
 見学後、参加者は「6Pチーズ塩分15%カット」「うまみベビーチーズ」「雪印北海道100クリームチーズ」の3種類のチーズを試食しました。塩分をカットし、あっさりした味わいの6Pチーズと、「芳醇ゴーダ」という同社独自のうまみが凝縮した北海道産ナチュラルチーズを使用したうまみのあるベビーチーズ、それぞれの味を食べ比べ、楽しいひとときを過ごしました。

雪印メグミルクへの質問と回答

社会広聴会員:
コーポレートスローガン「未来は、ミルクの中にある。」とは、どういう意味を持っていますか。
雪印メグミルク:
哲学的な言葉だとよく言われます。不祥事を起こした後の当社は、会社の再建に当たり、それまで手掛けていたミルク以外の事業を分離し、ミルクを事業の軸にしました。また、赤ちゃんが生まれた時の初乳は、いまだに解明できないくらい神秘的な、いろいろな成分が含まれているといわれています。その意味では、まだまだミルクの成分は未知なる世界だと捉えています。それをものづくりに、いかに生かしていくか、私たち社員の再建にかける思いと、将来に向けて未来を見つけていこうという気持ち、両方を込めた言葉です。
 

社会広聴会員:
バターの品薄が話題になっていますが、解消のためにどのような取り組みを行っていますか。
雪印メグミルク:
バターの品薄については、ここ数年メディアで取り上げられています。そもそも品薄が起こった背景としては、北海道の原料乳(生乳)の生産基盤である酪農生産者の離農や後継者不足による廃業により、原料乳の絶対量が足りなくなったことが挙げられます。また、バター不足だとされることで、普段ならまだ買わないところを慌てて買ったり、1箱しか買わないところを2箱買ったりすることで、日本全国の需要が急に上がったことも要因として考えられます。最近では、だいぶ落ち着いてきましたが、引き続き業界一丸となって原料乳の確保など、需要を満たせるよう努力していきたいと考えています。
 

社会広聴会員:
TPP(環太平洋経済連携協定)の影響をどう考えていますか。
雪印メグミルク:
昨年(2015年)10月に12カ国との交渉で大筋合意に至りました。現在、乳製品は国内の酪農を保護するという考え方から、輸入には関税がかけられています。TPP交渉の結果、関税率の引き下げや撤廃するなどの規制緩和の動きが出ています。私どもは、まずは国産乳製品の付加価値を高め、酪農が未来永劫日本の中で成り立つことが第一であり、それに向けて商品を作っていきます。一方、TPPは海外に向けて門戸が開かれることでもあります。全世界規模で見ると、これから洋風化の流れがでてくる東南アジアなど、乳製品の需要量は高まると考えられます。世界の乳製品需給が逼迫したときに、国内の酪農基盤を強めておいて、日本から海外に対し高品質な乳製品を輸出することもあるのではないか、そういう意味で決してリスクだけではなく、チャンスでもあると考えています。
 

社会広聴会員:
牛乳の消費拡大に向けての取り組みは。
雪印メグミルク:
牛乳の消費は前年割れが業界全体の動きです。統計的に見ると少子化の影響を受け、学校給食での消費量が減っていることが原因の1つと考えられます。また、牛乳は重く、高齢者の方が持ち帰るのが大変な商品でもあります。当社では、高齢者の方に引き続き飲んでいただけるよう、小容量のものや保存が効くロングライフ商品のご提供、宅配システムの推奨などを行っています。
 

社会広聴会員:
消費者に対して、安心への取り組みをもっとアピールすべきではありませんか。
雪印メグミルク:
工場では、品質を最優先にして取り組んでいます。不祥事を起こした私どもが考えていることは、安全であることは当たり前であって、メーカーとしてきちんと取り組んでいかなくてはならないことだということです。一方、お客さまが安全なものを安心していただけるかどうかということは、お客さまが決めることであり、それを私どもが押し付けてはいけないとも考えています。お客さまに選んでいただくためには、安全な商品をご提供し、安心していただくこと、そして、おいしくあることが大切だと考えています。今後とも、お客さまに選んでいただける、価値ある商品をご提供できるよう努めてまいります。

参加者の感想から

●最先端の技術と機械設備を使って衛生的な環境の中で、安全に生産されていることがよく理解でき、安心しました。 

●品質管理面において、非常に注意が払われていることが分かりました。品質に徹底と自信を持った製造業として、世界の「スノーブランド」を築かれるよう応援いたします。

●社員の方々の丁重な対応、工場の最新式の生産設備、会社のCSRに対する真摯な取り組み等々、強い印象を受けました。こういう企業からは安心して商品を購入できると確信できたのは収穫でした。

●不祥事を二度と起こさないという強い思いが、社内に浸透していることに、感銘を受けました。

雪印メグミルクご担当者より

 限られた時間ではございましたが、阿見工場見学および意見交換をさせていただき、当社の取り組みについてご紹介いたしました。皆さまからは貴重なご意見やご感想、また温かい激励のお言葉を頂戴し、心より感謝申し上げます。私どもは“品質”と“おいしさ”にこだわり、お客さまに安全で安心していただける商品をお届けするため、日々努力を重ねておりますが、皆さまに愛される食品企業となるようさらに研さんを積んでまいります。これからも雪印メグミルクならびに当社商品を応援していただきますようよろしくお願いいたします。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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