企業と生活者懇談会
2017年3月2日 茨城
出席企業:安藤ハザマ
見学施設:安藤ハザマ技術研究所

「『人間と自然環境を結ぶ技術の創出』を目指して」

3月2日、安藤ハザマの技術研究所(茨城県つくば市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者18名が参加しました。企業・施設概要について説明を受けた後、技術研究所内の本館棟、音響・電波棟、環境・放射線棟、風洞棟、構造・振動棟を見学し、質疑懇談を行いました。 
安藤ハザマからは、弘末文紀技術本部長兼技術研究所長、笠博義技術本部技術企画部長、鈴木英之技術本部技術研究所副所長、崎浜博史技術本部技術企画部担当課長、秋田宏行技術本部技術企画部担当課長、平野薫建築事業本部営業第二部部長、社長室CSR推進部広報IRグループの出野啓課長、清野英理課長が出席しました。

安藤ハザマからの説明

■安藤ハザマの概要■
 安藤ハザマは、安藤建設と間組が2003年(平成15年)の資本業務提携後、2013年(平成25年)に合併して誕生しました。安藤建設は、安藤庄太郎が1873年(明治6年)に神田で創業し、当時の先進工法であるレンガ建築を手掛け、「建築」を主力分野として成長しました。一方、間組は、1889年(明治22年)に間猛馬が門司で創業し、九州鉄道の工事を手掛けるなど、ダム、トンネルなどの「土木」に定評あるゼネコンとして成長しました。両社は、それぞれの継続顧客の重複や、海外事業における競合エリアが少なかったこともあり、一般的にはメリットが少ないといわれる建設会社の合併において、シナジー効果を早期に発揮することができました。
 安藤ハザマの売り上げ(2016年3月期:単独で3605億円)の約65%が「建築」分野、約35%が「土木」分野となっています。また、海外の工事も手掛けており、海外での売り上げは全体の約1割となります。
 安藤ハザマの国内の拠点は、北は札幌支店、南は九州支店と全国にわたります。また、海外にも拠点があり、北中米、東南アジアのほか、ネパールやスリランカ、最後のフロンティアと呼ばれるアフリカにも進出するなど、世界中に事業を展開しています。
 安藤ハザマの企業理念は、次の3つです。「1.ものづくりを通して、社会の発展に寄与します。」安藤ハザマは、安全、安心で高品質なものづくりを事業活動の基本とし、社会の発展に寄与するという思いが込められています。「2.確かな技術と情熱で、お客様満足を追求します。」これは、社員一人ひとりが働きがいを感じ、仕事に対する情熱を持って、お客様が満足するようなものづくりを徹底するという思いが込められています。「3.新たな価値を創造し、豊かな未来を実現します。」これは、全ての関係者にとっての豊かで明るい未来を実現するため、現状に満足せず常に新しい価値の創造に挑戦し続けていくという決意が込められています。 

■人材の活用と育成■
 安藤ハザマは、会社の一番の財産は、「人」であると考えています。そのため、人材の活用と育成について、非常に力を入れています。
 人材活用の代表的な施策として「女性活躍の仕組みづくり」に取り組み、女性活躍に関する行動計画を公表しています。具体的には、定年制社員に占める女性比率を2020年までに13%以上に引き上げること、また、新規採用に占める女性比率を15%以上に引き上げることを掲げています。また、女性の働きやすさを支援する制度として、出産・育児支援制度にかかる各種休業取得はもちろん、配偶者の転勤があった場合、その勤務地に配慮した異動を行う制度、出産・育児で退職しても5年以内であれば復帰できるジョブリターン制度などを整備しています。
 また、人材育成については、特に新入社員への教育に力を入れています。現在、新入社員に対しては、技術研究所に隣接して設置した研修用宿泊施設「TTCつくば」も活用し、約5カ月間におよぶ長期の実践型研修を行っています。研修では、マンションの一部や土木構造物を実際に施工する模擬現場実習などを通して技術・ノウハウの伝承を行い、基礎知識を学んだ上で各職場に配属され、即戦力として活躍しています。

■安藤ハザマ技術研究所の概要■
 技術研究所は、1992年(平成4年)につくば市に移転開設されました。研究所のコンセプトは「人間と自然環境を結ぶ技術の創出」で、講堂やコミュニケーションプラザがある本館、8つの実験棟、屋外実験場から構成されています。研究所には、現在研究員が約60名、事務・専門職員が約20名、関係会社などの社員約20名がおり、合計100名ほどの体制で運営されています。
 技術研究所では、国内外のビッグプロジェクトや難工事における様々な技術的課題の解決に取り組み、そこで得られた新技術、工夫、アイデアを形にしてきました。コンクリートなどの基盤素材から各種複合材料、地震に強い構造物、汚染土壌の浄化や緑化といった環境関連技術、放射線治療を行う医療施設や放射性廃棄物処分などの原子力関連技術など、研究開発の対象は多岐にわたっています。さらに実大スケールレベルの建造物の構造特性の把握、多様な自然環境下における各種実証実験、材料の物理・化学的な分析など、様々な分野で多くの研究成果を挙げ、将来的な研究ニーズにも対応できる先進の研究施設となっています。
 なお、研究所では、一般向けの見学会や市内の児童、学生を対象としたものづくり体験の機会を提供し、地域との交流を深めています。

■地域エネルギー管理システム「AHSES」■
 研究所には、2013年(平成25年)4月から、AI(人工知能)を活用した新たなエネルギーマネジメントシステムである「AHSES(Adjusting to Human Smart Energy System)」が導入されています。
 主な導入効果は、「太陽光発電などの再生可能エネルギーを有効活用することにより、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の削減に寄与する」「太陽光発電や蓄電池などを活用することで電源を分散することができ、非常時におけるエネルギーの供給源になる」、さらには「刻々と変動する電力需要をAIを活用して予測し、効率的・効果的に電力を供給することで、使用電力のピークをカットする」といった3つがあります。今後さらに技術を検証するとともに、省エネルギーの推進に寄与していきます。

見学の様子

■音響・電波棟の見学■
 音響・電波棟では、主に音楽練習室、スタジオ、ホテル、マンションなどの建物において、快適な音環境の実現を目指して、音響設計や騒音防止技術を開発しています。
 参加者は、まず音の響きが長く残る残響室に入り、その後、音が全く響かない音響電波無響室に入り、それぞれの音の響き具合を比較しました。音の響き具合を自らの声で体感し、不思議な感覚に驚いていました。また、コンサートホールの20分の1の大きさの模型を実際に見ながら、模型を使って施工前に音の響き具合、伝わり方を模型内で再現・検証し設計に反映するという説明を受け、コンピューターシミュレーションだけでは分からない音の現象を捉えるなどのノウハウが詰まった実証試験の一端を感じることができました。
 その後、建屋の地下室に下り、積層ゴムなどの設備を目の前に、免震構造について説明を受け、揺れを免れる仕組みについて学びました。

■環境・放射線棟の見学■
 環境・放射線棟では、世界中の様々な気候を再現し、設備機器などの耐候性試験や建材の断熱性能の評価などを行っています。また、放射線治療を行う病院での活用を目的に、放射線を効果的に遮蔽するための材料の研究も行われています。
 参加者は、湿度や温度など、世界の様々な気候を再現することができる人工気候室で、実際に湿度10%、気温40度程度の砂漠のような気候を体験しました。また、その後、放射線(中性子)を効果的に遮蔽できるコンクリートの実物に触れ、技術力の高さを体感しました。

■風洞棟の見学■
 風洞棟は、最大風速25メートル毎秒の風を吹かせることができる設備があり、高層ビルなど大きな構造物の建設の際に考えられる風の流れの変化やビル風の抑制など、風に関する影響を研究する施設です。参加者は、街並みを忠実に再現した模型を見ながら、風の影響調査の方法について説明を受けました。
 その後、実験用の部屋に入り、風速10メートル毎秒の風を体感しました。参加者からは、「10メートルでも想像以上に強く感じた。非常に大掛かりな施設で驚いた」といった声が聞こえました。

■構造・振動棟の見学■
 構造・振動棟では、地震などに備えるための耐震構造の研究を行っています。柱など建物の一部を製作して荷重を与える試験や、実際の地震の揺れを再現し、建物の耐震性や什器の揺れ方の検証を行います。
 参加者は、高さ18メートルの反力壁、阪神・淡路大震災や東日本大震災の揺れを再現できる高性能な大型振動台などの巨大設備を間近に見ながら、説明を受けました。参加者は、その迫力に圧倒されるとともに、揺れが地面を通して、近隣に住む住民に影響がないよう床に深い溝があけられていたり、床が空気バネで支えられていたりといった工夫を見て、感心していました。なお、大型振動台実験は、安藤ハザマの研究・開発だけでなく、外部からの依頼も受けて行っています。

安藤ハザマへの質問と回答

社会広聴会員:
安藤ハザマの強みを教えてください。
安藤ハザマ:
土木分野では、トンネルなど大型土木工事に強みを持っています。都心部につくる場合、山を掘ってつくる場合など、様々な状況に合わせて大きく工法などを変えながら柔軟に施工することができます。また建築分野では、生産施設、物流施設、宿泊施設、オフィスビルなど幅広く取り扱っているという強みがあります。最近は、原子力分野のノウハウを生かして、がん治療施設といった放射線医療施設に注力しています。
 

社会広聴会員:
施工の際に気を付けている点を教えてください。
安藤ハザマ:
品質の良いものを「リーズナブルに」「スピーディーに」お届けする。そして、「何より安全を優先して施工する」という3点を主に意識しています。生産性向上のため、工場で建物の一部をつくって、現場で組み立てるプレキャスト工法にも力を入れています。
 

社会広聴会員:
力を入れている研究、取り組みなどを教えてください。
安藤ハザマ:
技術研究所では、現場ですぐに活用できる技術とともに、将来世の中で必要とされる技術の基礎的な研究を進めています。例えば、コンクリートに電気を流すことにより、劣化したコンクリートを補修する技術、橋梁やトンネル、下水道などのインフラのメンテナンスに対応できる技術の開発などを進めています。また、土木分野において、重機の運転の自動化やAIを活用した施工管理の高度化に取り組んでいます。建設現場の生産性の向上を目的に、測量・設計から施工、管理などの全てのプロセスにおいて様々な数値をデータ化し、活用するものです。そこにICT技術を活用した重機の自動運転などを組み合わせることで、将来的には、より少人数で工事現場を運営することも検討されています。現在課題となっている職人不足や高齢化への解決にも寄与する取り組みです。
 

社会広聴会員:
文化財の保存・修復・復元工事で気を付けることを教えてください。
安藤ハザマ:
歴史的文化財の復元で重要なことは、価値を損なわずに施工することです。見た目が一緒ならなんでもよいわけではありません。設計や工事計画を立てる段階から、歴史の専門家などの意見を取り入れ、指導していただきながら、施工しています。

参加者の感想から

●研究所の一つひとつの施設が興味深く、勉強になるとともに、多くの質問に誠実に対応いただき、大変好感を持ちました。 

●安藤ハザマの安全に対する意識の高さを感じることができ、安心しました。

●安藤ハザマの持つ素晴らしい技術力を学び、改めて日本のものづくりが世界で活躍できると確信しました。さらに活躍することを期待しています。

●「i-Construction」の導入など、革新的な取り組みで、持続可能なものづくりに努めていることが理解できました。私たちの暮らしを支えてくれている、社会貢献度の高い企業であると感じました。

●一番の財産は「人」で、その「人」を育てることに力を入れているという話に心を引かれました。

安藤ハザマご担当者より

 懇談会では、学生から企業人、また生活者としての多様な視点から、災害対応やインフラのリニューアルに対する建設会社としての取り組みや、技術開発内容について様々なご質問、ご意見をいただきました。
 本会を通じて、我々が当たり前と感じていることが、一般の方々にとっては未知なことも多く、建設会社には積極的な情報発信が求められていることを改めて感じることができました。
 今後も社会に役立つ技術研究開発を進めるとともに、またこのような機会を通じて交流ができればと思います。ご参加の皆さまありがとうございました。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
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