企業と生活者懇談会
2017年11月28日 愛知
出席企業:森永乳業
見学施設:中京工場

「創業100周年を迎えた森永乳業のおいしさのヒミツを五感で学ぼう」

11月28日、森永乳業の中京工場(愛知県江南市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者16名が参加しました。同社の概要、中京工場の概要説明を受けた後、アイスクリーム「ピノ」や乳飲料「マウントレーニア」「ピクニック」の製造工程などを見学、チーズ作りを体験し、その後、質疑懇談を行いました。 
森永乳業からは、中京工場の重野英明工場長、福田篤司事務部長、大沼千尋製造部長、中野治郎品質管理室長、広報部の湯谷太副部長が出席しました。

森永乳業からの説明

■森永乳業の概要■
  森永乳業は、1917年(大正6年)、日本煉乳として創業したことから始まります。創業当時は、爆発的にヒットしていたミルクキャラメルの原料である練乳を森永製菓に供給するための会社でした。日本ではまだ酪農が盛んではなく、乳製品は海外からの輸入に頼っていた時代、社長の松崎半三郎は「日本の乳業は一会社、一個人で私すべきではない。他産業にない公共的性格がある」とし、酪農業の発展と乳製品の開発に力を注ぎました。以来、乳製品の製造販売を中心に事業を展開し、森永製菓との合併分離を経て、1949年(昭和24年)に、現在の森永乳業が設立されました。 
 創業当初の小缶練乳「森永ミルク」から始まり、1921年(大正10年)に、育児用粉乳「森永ドライミルク」を発売。1961年(昭和36年)には、日本初の牛乳成分でできた粉末クリーム「クリープ」を発売しました。その後も、ビフィズス菌入りの「森永ビヒダスヨーグルト」、チルドカップコーヒー「マウントレーニアカフェラッテ」など、「乳」を基軸としたヒット商品を世に生み出してきました。また、海外のトップブランド「クラフト」「リプトン」「サンキスト」とも提携し、チーズや飲料といった身近な商品を提供しています。 
 夢のある新たな商品作りと将来に向けた技術革新をミッションとして研究開発にも取り組んでいます。母乳や牛乳に含まれ感染防御成分を有する多機能タンパク質「ラクトフェリン」、健康な赤ちゃんから発見し酸素や酸に強い性質を持つ「ビフィズス菌BB536」など、機能性素材の製造技術を多くの製品に応用しています。また、免疫力を高める「シールド乳酸菌®」、美肌効果などがある「アロエステロール®」、無菌状態で製造する「ロングライフ製法」など独自の技術・素材の研究開発に注力し、これまで7回の科学技術庁長官賞・文部科学大臣賞を受賞、「技術の森永」として発展してきました。 
 森永乳業グループは、2017年(平成29年)3月期でグループ会社64社、従業員数5771名、売上高5926億円、営業利益と経常利益は200億円を超え、2020年3月期までの「中期経営計画」を1年前倒しでの達成に向けて様々な事業基盤強化策にも取り組んでいます。 

■品質にこだわり続ける■
 順調に発展を続けていた1955年(昭和30年)、森永ひ素ミルク中毒事件を起こしてしまいました。その後、国と被害者団体と話し合い設立された「財団法人ひかり協会」により、被害者を恒久的に救済し続けるとともに、この事件を決して風化させてはならないと、品質・安全性を支える様々な取り組みを行っています。1998年(平成10年)には食品衛生管理システム「HACCP(ハサップ)」認証を取得し、2000年(平成12年)には、さらに発展させた同社独自の品質保証システム「MACCP(マサップ)」を導入。品質リスク分析を重視し、未然防止と再発防止の徹底、内部監査とその検証によるシステムの強化で、安全と品質を確保しています。また、調達前に原料のサンプル検査をする「先行ロット検査」体制を敷き、原料納入後も使用までに3回の検査を実施、検査結果はデータベースで共有しています。2005年(平成17年)に導入した「風味パネルマイスター制度」では、限界に近い薄さの五味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)を判断できる62名の味覚のプロフェッショナルが品質の守り番を務めます。2012年(平成24年)に、社内基準として「フードディフェンスガイドライン」を制定し、施設の出入口、排水溝などの、工場で意図的な危害を起こしやすい箇所を見える化した「フードディフェンスマップ」を作成。2014年(平成26年)には「フードディフェンスマニュアル」を改訂し、品質保証カメラの増強など、工程の管理レベルを向上させています。同社の品質方針に基づき、商品開発から流通・販売の各工程で、業界水準を上回る品質管理基準を設定・順守し、また、「品質」を作り上げるのは「人=社員」であるとの考えから、様々な社員教育や研修を徹底するなど、品質・安全と向き合い続けています。 

■「かがやく“笑顔”のために」 ■
 少子高齢化への対応、健康長寿社会の実現などの課題に直面する中、同社は「おいしさ」や「健康・機能性」という価値をお届けし、人々の健康と多様なライフスタイルを支えてきました。2017年9月には創業100周年を迎え、次の100年を見据えて経営理念体系も一新。コーポレートスローガンは「かがやく“笑顔”のために」、経営理念は「乳で培った技術を活かし、私たちならではの商品をお届けすることで、健康で幸せな生活に貢献し豊かな社会をつくる」です。さらに、「お客さまが自然と笑顔になるような価値あるものをお届けしたい」「社員もいつも笑顔で仕事に取り組んでいきたい」という願いを込め、ありたい姿を「夢共創理念」と名付けました。この理念を実現するため、将来を担う中堅・若手社員が中心となって、行動指針「私たちの8つの問いかけ」を策定しました。 

■森永乳業中京工場の概要■
 中京工場は、1966年(昭和41年)に愛知県江南市に設立された同社で3番目の生産規模を誇る工場です。6万611平方メートルの敷地に2つの製造棟があり、565人の従業員が24時間体制で生産を行っています。 
 同工場では、牛乳(森永牛乳ほか)、乳飲料(マウントレーニアほか)、乳酸菌飲料(マミーほか)、アイスクリーム類(ピノほか)、清涼飲料、果汁入り飲料、紅茶飲料(リプトンほか)を生産し、生産量は年間約15万キロリットルです。壜製品のマミーとラクトフェリンFe、プリズマパック製品のピクニックなどは、同工場だけで生産され、日本全国に出荷されています。

見学の様子

■徹底した衛生管理■
 従業員が工場内で着用する作業服は埃や髪の毛が付きにくい素材でできています。通年長袖、二重構造で、袖と足首の内側にゴムが入っており、体毛が外に落ちないよう工夫されています。異物を持ち込めないようポケットはありません。規定の靴下と安全靴を履きます。靴は生産区画の衛生度により、青・白・緑の3色に分けています。作業室に入室する前には、ヘアネットに髪の毛を全て入れ、その上からインナーヘルメットと作業帽を被り、マスクを着用します。30秒間粘着ローラーをかけ、30秒間の手洗い、アルコール噴霧を行い、背中粘着シート、靴底粘着マットでごみを取り、最後にエアシャワーを浴び、細かい埃を取り除いてから入室します。エアシャワーを浴びた参加者は、強い風圧に驚き、徹底した衛生管理を体感しました。

■飲料の製造工程を見学■
 最初に、アイスクリーム「ピノ」が出迎えてくれました。ここでは映像やクイズのほか、ピノをピックで刺したときの感覚を「ピノボタン」で体感しました。 
 乳飲料のコーナーでは、クラリファイヤー(清浄機)とホモジナイザー(均質機)について映像で学びました。1分間に5300回転という高速で遠心分離するクラリファイヤーで、牛乳の中の目に見えない小さいちりを飛ばしてきれいにし、ホモジナイザーで、1ミクロンという塩粒よりも小さい牛乳の脂肪球を、小さな穴に通すことでさらに小さく均質にそろえます。この2つの技術で牛乳はおいしさが増すそうです。 
 次に、大きなタンクやたくさんのパイプがある、自動ブレンディング殺菌ラインを見学しました。ここでは原料を量り、混ぜ合わせ、殺菌する全工程をコンピューターで行い、最大1日700トンの製品を扱っています。殺菌は、何枚ものステンレスプレートを重ね合わせた間を製品と熱湯や蒸気がプレートを隔てて交互に流れ、数秒で殺菌するプレート殺菌を採用しています。すぐに冷却されることにより製品の風味が損なわれず、処理された製品は各ラインに流れ容器に詰められます。 
 続いて、宅配が中心の壜製品、牛乳や紅茶など紙パック製品、キャップ付紙パック製品のラインを見学しました。 

■「マウントレーニア」のおいしさには■
 ここでは、壁いっぱいに描かれた歴代の「マウントレーニア」の容器のイラストが目に入りました。実は、この容器にもおいしさの秘密が隠されているといいます。カップはミルフィーユのようにたくさんの層で作られており、淹れたての味と香りを守っています。ストローはおいしく飲みやすい長さと直径にするなどの工夫がありました。また、コーヒーにもこだわっています。空輸された新鮮な豆をメーカーで焙煎後に中京工場で挽き、すぐにエスプレッソ方式で抽出しミルクと混ぜ合わせ、本格的な風味に仕上げます。原料の準備から仕上げのストロー装着、冷蔵庫への搬入まで全ての工程をコンピューター管理しています。 

■プリズマ製品の秘密■
 最後は、同工場だけで製造されているプリズマパック製品のラインです。1981年(昭和56年)発売の乳飲料「ピクニック」、当時は四角形のブリックパックでしたが、現在は、胴部が八角形、上面と下面が四角形のプリズマパックです。人間工学に基づいてデザインされ、持ちやすく中の液体が飛び出しにくい容器です。また、7層からなる容器はその中にアルミ箔が入っており、空気や光を通しません。無菌状態の中で製造されるため、賞味期限が60~120日と長いのが特長です。参加者は、製造工程のパタパタ漫画や、ブリックパックとプリズマパックの持ち比べなどをしました。 

■チーズ作りを体験■
 森永牛乳を使ったチーズ作りを体験しました。80度程度に温めた牛乳に酢を混ぜ5回ゆっくりかき混ぜると、あっという間に白い塊と黄色い液体に分離してきます。白い塊の水分を搾ったものがチーズ、黄色い液体はホエー(乳清)です。出来たてのチーズやホエーを試食した参加者からは、「ほんのり温かく、さっぱりした味わいでおいしい」と好評でした。

森永乳業への質問と回答

社会広聴会員:
賞味期限の長さで味に違いはありますか。
森永乳業:
当社独自のロングライフ製法は、無菌の空間で、殺菌した容器に、殺菌した内容物を充填して密封する製法です。そのため賞味期限が2カ月以上と長いのです。保存料や防腐剤は入っていませんので、基本的に味は変わりません。ただし、牛乳に関しては、ホモジナイザーの圧力の違い、殺菌温度も10度高いので、味覚に敏感な方は風味に差を感じるかもしれません。また、牛乳の産地によって、草や飼料などによる違いも出てきます。賞味期限は、風味を含め、当社独自の安全率の下、決めています。
 

社会広聴会員:
乳製品のうま味はどう捉えたらよいですか。
森永乳業:
うま味は五味の1つで、日本で発見された味です。チーズなどはグルタミン酸が多く含まれるので、乳製品にもうま味はあります。当社では、おいしさと安心を届けるため、風味識別能力テストを経て、「風味パネルマイスター」に認定された社員を中心に、わずかな風味の違いやうま味成分を判別できるように日々訓練をしています。
 

社会広聴会員:
食育活動のコンセプトを教えてください。
森永乳業:
CSR活動の一環として2003年(平成15年)から「M’S Kitchen(エムズキッチン)」という出張スタイルの料理講習会を開催しています。「もっと美味しく、もっと楽しく、もっと素敵に」がテーマです。身近な食材に牛乳・乳製品を加えた、当社オリジナルの「ミルク和食」などのレシピや、健康に対する知識を提案する食育活動です。

 

社会広聴会員:
牛乳だけでは利益が出ない理由はなぜですか。
森永乳業:
乳業界共通の大きな問題だと考えています。牛乳の原料となる生乳は、酪農家が授乳期間中の牛から搾乳し、それを乳業会社が買います。日本は、他国と比べて酪農家から買う生乳価格が高く、しかも用途により価格が違います。牛乳用は1kg当たり100円以上と高いのです。それが工場で商品となり、輸送され、店頭に並びます。生活者の食卓に毎日上がるものはスーパーの特売にもなりやすく、現状では利益を生みにくい構造になっています。

参加者の感想から

●光を通しにくい牛乳パックの色や形、ヨーグルトが付かない裏ぶた、「マウントレーニア」のふたなど、製品一つひとつの細かい部分に至るまで、消費者への配慮がされていると感じました。 

●「風味パネルマイスター制度」により人間の舌でも品質管理していることを初めて知りました。 

●チーズ作り体験が印象に残っています。簡単に家でも作れるという体験は新鮮でした。 

●食品に関わる健康志向が高まっている現在、これからも確固たる信念を持って、身体に勧められる新製品を開発されることを願っています。

森永乳業ご担当者より

 このたびは、森永乳業中京工場にお越しいただき、誠にありがとうございました。当社の工場見学は「五感で感じる工場見学」をテーマに、映像やクイズ、模型を使って牛乳・乳製品が出来る工程を楽しく、分かりやすくご理解いただけるよう工夫しています。当社ならではの安全・安心なものづくりの姿勢をぜひご覧ください。
 森永乳業はおかげさまで2017年に創業100周年を迎えました。次の100年も皆さまの健康で幸せな生活に貢献できるよう努めてまいります。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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