企業と生活者懇談会
2017年10月12日 兵庫
出席企業:住友大阪セメント
見学施設:赤穂工場

「環境とエネルギー分野にも重要な社会的ミッションを担うセメント工場の役割を学ぼう」

10月12日、住友大阪セメントの赤穂工場(兵庫県赤穂市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者20名が参加しました。セメント産業の概要、住友大阪セメントの企業概要、赤穂工場の概要説明を受けた後、工場の施設を見学。ロータリーキルン(回転窯)の近くで迫力ある焼成工程の仕組みの説明を受けた後、プレヒータ(予熱機)のタワーに上り工場全体の設備を見学。その後、質疑懇談を行いました。 
住友大阪セメントからは、赤穂工場の戎井昌彦副工場長、田中一也業務課長、山田英樹業務課参事、森健次生産課参事、総務部の西條圭IR広報グループリーダー、セメント協会から広報部門の藤原恵美統括リーダーが出席しました。 

セメント協会からの説明

■循環型社会形成に欠かせないセメント産業
 セメントは、コンクリートをつくるために欠かせない材料。セメントと水と砂、砂利が混ざってコンクリートとなります。セメントは、水と接触して固まる性質を持っていることから砂と砂利の“接着剤”の役割を担っています。セメントの原料となる石灰石は全国各地で産出されていることから、セメントは資源が少ないといわれている我が国で国産100%の資材で、北海道から沖縄まで全国30カ所にセメント工場があります。生産量の約5割は九州および山口県でつくられ、主な消費地である近畿、東海、関東へタンカーで輸送されています。
 セメント製造会社の業界団体であるセメント協会には、全国のセメント会社が17社加盟しています。セメント業界では、石炭火力発電所から出る石炭灰、日々の暮らしで発生する下水汚泥、都市ごみ焼却灰などの廃棄物を受け入れ、セメント原料や熱エネルギーの代替物として有効活用しています。また、2015年(平成27年)には、環境省が組織する災害廃棄物処理支援ネットワークに当協会も参画。東日本大震災や熊本地震により発生した災害廃棄物の処理も積極的に行い、早期の復旧・復興に向けた基礎資材となるセメントにも生まれ変わらせています。廃棄物・副産物は、セメントの製造工程において窯の内部が1450度に達するロータリーキルンで焼成されるので、ダイオキシンなどの有害物質も分解されます。残った灰もセメントの中間製品である「クリンカ」の原料となるため、二次廃棄物は発生しません。セメント産業は、いわば、「ごみを使って、ごみを出さない」産業といえます。

住友大阪セメントからの説明

■110年以上、日本の社会インフラを支える■
 住友大阪セメントは、1994年(平成6年)に住友セメントと大阪セメントが合併し、誕生しました。 
 そのルーツは、1907年(明治40年)、福島県石城郡大野町(現いわき市)で石灰石を利用したセメント事業を起こすため、住友セメントの前身である磐城セメントを設立したことにさかのぼります。1908年(明治41年)に本社を東京に移転後、各地でセメント工場を運営、国内大手メーカーの一角として事業を拡大しました。また、1963年 (昭和38年)に住友グループに参加、住友セメントと社名を変更しました。 
 一方、大阪セメントは、1882年(明治15年)に大阪窯業が発足。1916年(大正5年)にセメント部が操業を開始。その後、1963年(昭和38年)には社名を大阪セメントに変更しました。 
 住友大阪セメントは、年間のセメント販売数量1000万トン、国内販売シェア20%を誇り、現在、国内第3位。住友グループのセメント会社として、ビルや橋、道路といった社会インフラ整備という公的な事業の一端を担っています。
 主力のセメント事業の他にも、セメントの原料である石灰石を、鉄鋼メーカーや化学メーカーなど他産業の原材料として販売する「鉱産品事業」、老朽化が懸念される橋や建物などを補修する材料を提供する「建材事業」、光通信システムで使用されるLN変調器を製造販売する「光電子事業」、様々な機能性材料を提供する「新材料事業」、そして、世界最高水準の安全性を誇る、リチウムイオン電池の正極材料を提供する「電池材料事業」を展開。循環型社会の構築と豊かな社会の維持発展に貢献しています。

■関西唯一の大規模臨海工場■
 赤穂工場は、兵庫県南西部、岡山県との県境に位置する赤穂市に立地し、瀬戸内海に面した国内最大級かつ関西地区唯一の臨海工場です。赤穂市より塩田跡地への工場誘致を受け用地を取得、1966年(昭和41年)に操業を開始しました。
 生産能力は年間420万トン、敷地面積は62万4472平方メートル(東京ドーム13個分の広さ)。生産するセメントの品種は、土木・建築用に用いられ汎用性の高い普通ポルトランドセメント、ダムや港湾などの大型土木工事に用いられる高炉セメント、高層鉄筋コンクリート構造物や河川・港湾構造物などに用いられる低熱ポルトランドセメントなど多種多様なセメントを生産し、日本各地へ供給する一大供給拠点となっています。
 主原料である石灰石は、鍾乳洞で有名な山口県美祢市の秋芳鉱山で採掘されタンカーで輸送。また、石炭は主にロシアから専用船で運んでいます。同工場では、年間約200万トンの廃棄物・副産物を受け入れ、セメント1トンの製造当たり500キログラムの副産物を有効利用しています。2010年(平成22年)より兵庫県の外郭団体である「ひょうご環境創造協会」との共同事業で市や町の焼却灰とばいじんをセメント原料として活用する「一般ごみ焼却灰およびばいじんのセメントリサイクル事業」を開始しました。これにより、従来埋め立て処分していた最終処分場の縮小・延命にもつながっています。

■セメントの製造は、主に3工程■
 セメントの製造工程は、原料工程、焼成工程、仕上工程の大きく3つに分かれます。原料工程では、原料となる石灰石やけい石、鉄原料、粘土などの各種原料を製品の種類に合わせ調合し、乾燥、粉砕します。次に、焼成工程では、粉砕した原料を高温で反応させ、クリンカと呼ばれる中間製品をつくります。最後の仕上工程では、クリンカに石こうを加え粉砕し、最終製品である粉末状のセメントが出来上がります。セメントの品質の安定化のために各工程で化学成分や温度、圧力などを測定し、各プロセスにおいてフィードバックを繰り返しながら、高品質なセメントを製造しています。

見学の様子

■赤穂工場■
 焼成工程のメインとなるロータリーキルンの窯の前で、高温の内部の様子を確認し、説明を受けた後、エレベーターでプレヒータのタワー7階に上り約70メートルの高さから原料工程、仕上工程など工場全体の設備、セメントタンカーや原燃料の運搬船が入出港するシーンなどを見学しました。
 まず、セメントをつくる工程で最も重要なプロセスを担うロータリーキルンを見学しました。同工場は、直径5.6メートル、長さ約94メートルもの巨大なロータリーキルンを稼動。1分間に2回の速度でゆっくりと回転し、1450度の高温で焼成します。この時、廃棄物は石灰石などと反応し、クリンカに生まれ変わります。ロータリーキルンの内部は高温のため、耐火レンガを内張りしています。マグマのように溶けた原料の熱のため1年に2回ラインを止め、レンガの交換、点検を行っています。省エネルギーにも配慮されており、ここで発生した熱を二次利用し生産効率を上げているそうです。
 参加者は、炎の燃え上がる窯の前で、輻射熱を体感しながら、その安全性、生産能力、エネルギー効率について学びました。 
 続いて、エレベーターで高さ約70メートルのプレヒータのタワーに上り工場全体を俯瞰しました。瀬戸内海を間近に臨み、すぐ近くで接岸できる立地の良さ、また、工場内をJR(赤穂線)の線路が通っており、参加者からはその広大さに驚嘆の声が上がりました。なお、現在は鉄道でのセメント輸送は行っていないそうです。
 西の方角を見ると、セメントの原料となる石灰石のドーム型の貯蔵場所「石灰石ストレージ(1基当たり約3万トンを保管)」が2基、同じく粘土を貯めておく「粘土ストレージ(1基当たり約3万トンを保管)」が1基あります。石灰石ストレージには、秋芳鉱山で採掘され、石灰石専用船で運ばれてきた石灰石を港湾からコンベヤーで直接取り込んでいます。ドーム型の貯蔵庫は、デッドストックが少なく連続して貯蔵・搬出入できるメリットがあるのだそうです。
 東の方角には、完成したセメントを貯蔵する倉庫「セメントサイロ(1基当たり約3万トン保管2基と1.5万トン保管1基)」が3基見えます。こうした貯蔵設備は、車などを使わずコンベヤーでダイレクトに港湾施設に送られており、臨海工場ならでは利点が生かされています。
 また、北の方角には、巨大な自家発電設備が見えます。驚くべきは、その発電能力です。出力は、セメント会社としては国内最大級の約10万キロワット。その約4割で工場内の電力全てを賄い、残りの約6割は電力会社に販売しているそうです。同社では、高知工場や栃木工場でも自家発電設備を設け、電力の外部供給を行っていますが、セメント産業がセメントを生産するだけでなく、資源の再生、そして、電力の供給まで手掛けていることを知り、参加者からは感服の声が上がりました。

住友大阪セメントへの質問と回答

社会広聴会員:
播磨地域で操業するメリットは。
住友大阪セメント:
セメント工場は一般的に物流を考慮し、セメントの供給先である関東圏、関西圏、中京圏などへの近さを優先し、立地しています。ここ赤穂工場は、阪神工業地帯に近接しており、海運にも便利です。また、原料を採掘する山口県の秋芳鉱山にも近いという大きな利点があります。最近では、関西圏に1つしかない工場であるという点から、基幹産業から出る産業廃棄物を豊富に集めやすいというメリットも大きくなっています。
 

社会広聴会員:
赤穂工場の生産体制について教えてください。
住友大阪セメント:
現在、従業員は約120名。関係会社を含めて約390名が従事、24時間3交代制で操業しています。キルンは年2回、キルン内の点検や耐火レンガの交換などを行うため操業を一時停止しますが、それ以外は24時間操業しています。
 

社会広聴会員:
セメントの用途は、ビルや建物などの構造物以外にありますか。
住友大阪セメント:
セメントは、地盤改良材にも使われています。どんなに立派な建物を計画しても、基礎地盤が軟弱ではその建物を支えることはできません。そのため軟弱な地盤を強固に改良し、構造物を支え続けます。
 

社会広聴会員:
コンクリートの種類について教えてください。
住友大阪セメント:
コンクリートには、「自由な形のものがつくれる」「耐久・耐火に富む」「圧縮に対して抵抗性が大きい」など多くの利点があります。一般に使用される「一般構造用コンクリート」以外にも、ダムや橋脚などに使用される「マスコンクリート」、高層ビルや大型構造物などに使用される「高流動コンクリート」「高強度コンクリート」など、用途や設置環境などに応じて様々な種類があります。
 

社会広聴会員:
CSR活動について教えてください。
住友大阪セメント:
小・中学生や地域住民の皆さんを対象に、工場や事業所見学をはじめ様々な地域貢献活動を行っています。その他にも当社ではユニークな取り組みを行っております。その1つが、長崎県対馬だけに生息し絶滅危惧種に指定されているツシマヤマネコの保護を目的とした森づくり活動です。ツシマヤマネコは、生息数がわずか100頭弱と推定され、最も絶滅が危惧されている絶滅危惧IA類に分類されています。当社では、2007年(平成19年)より長崎県対馬市舟志地区に所有する森林約16ヘクタールを無償で提供し、保護活動を行っています。また、地域貢献活動の一環として、地域おこし、名産品の紹介など、地元PRに一役買っている「ゆるキャラ」を全社挙げて応援しています。栃木工場の地元「さのまる(佐野市)」や高知工場の地元「しんじょう君(須崎市)」を応援、見事「ゆるキャラグランプリ」でグランプリを獲得しました。

参加者の感想から

●産業廃棄物や汚泥を利用し、しかもその後は、廃棄物が出ないようにしているなど、環境にとても配慮した取り組みをされていることに感銘を受けました。

●私たちの生活に必須なのがセメントだと改めて認識しました。学童保育の子どもたちや孫たちにも頂戴したパンフレットを見せて教わったことを伝えたいと思います。

●セメントが社会インフラの整備・構築に欠かせないとの認識はありましたが、巨大なロータリーキルンを中心に、広大な製造工場を見学し、改めてその重要性を確認しました。

●私にはあまり関係がない業界だと思っていましたが、生活に大きく関わっていることも実感しました。とても良い刺激になりました。

●セメントの生産と下水汚泥・産業廃棄物が大きく関わっていることには大変考えさせられました。ごみを資源として再生させ、良質の製品を生産。利益を出し、雇用を確保、そしてツシマヤマネコの保護活動、地域貢献活動も行っている住友大阪セメントのますますの繁栄を願わずにはいられません。

●時代の要請に応じて、下水汚泥の回収など循環型産業の一端を担っていることを初めて知りました。

 

住友大阪セメントご担当者より

 今回の見学会で、セメントとコンクリートの違い、セメント工場の規模の大きさや、廃棄物を受け入れ原燃料として有効活用していること等、一般にあまり知られていないことを知っていただけたのではないかと存じます。私どもにとりましても、会社PR活動に生かすことができる貴重なご意見を伺う良い機会となりました。
 今後も社会インフラに必要不可欠なセメントという基礎資材を提供していくとともに製造過程の廃棄物処理を通じて循環型社会への貢献を続けてまいりますので、よろしくお願いいたします。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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