企業と生活者懇談会
2018年4月6日 大阪
出席企業:京阪ホールディングス
見学施設:京阪電車寝屋川車両基地

「“安全安心”から生まれる京阪エリアの魅力を再発見」

4月6日、京阪電車の寝屋川車両基地(大阪府寝屋川市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員19名が参加しました。まず、京阪ホールディングスから、京阪グループが展開している4つのコア事業について、続いて、京阪電気鉄道から、「車両工場」「検車庫」「留置線」から成る寝屋川車両基地について説明を受けました。そして、普段は見ることのできない車両を分解して点検する様子や、お客さまの安全を守るための様々な装置を見学するとともに、座席指定の特急車両「プレミアムカー」にも乗車し、その後、質疑懇談を行いました。
 京阪ホールディングスからは、松下靖執行役員、経営統括室経営戦略担当(広報・CSR)の高柳淳一課長、伊賀隆行課長、林淳一課長補佐、京阪電気鉄道からは、車両部の豊田秀明部長、亀井将洋課長、村上裕紀係長が出席しました。

 

 

京阪ホールディングスからの説明

■京阪グループの概要 ■
 京阪グループの歴史は、1906年(明治39年)、「日本資本主義の父」と呼ばれた渋沢栄一翁らによって、京阪電気鉄道株式会社が創立されたことに始まり、現在では、京阪電車が走る大阪、京都、滋賀を中心に約50社におよぶ企業で、運輸業、不動産業、流通業、レジャー・サービス業の4つのコア事業を核として、お客さまの生活に密接した様々な事業を展開しています。グループ全体の営業収益約3200億円の内訳は、運輸業が3割、不動産業が3割、流通業が3割、レジャー・サービス業が1割と、バランスの取れた事業構成となっています。 
 運輸業では、大阪、京都、滋賀の都市間アクセスを担う「京阪電車」をはじめ、比叡・鞍馬に代表される洛北エリアを走る「叡山電車」や、嵐山に延び「嵐電」と親しまれている「京福電車」、観光や地域の足として利用されている「京阪バス」「京都バス」などを運営し、京阪電車では1年間で約2億9000万人を運んでいます。
 不動産業では、「くずはローズタウン」「びわ湖ローズタウン」といった沿線の大規模な街づくりを昭和40年代から行うとともに、近年ではマンション開発にも力を入れていて、関西圏で培ったノウハウを生かし、東京や札幌などの沿線外のエリアにも展開しています。 
 流通業では、「京阪百貨店」や、大型のショッピングセンター「KUZUHA MALL」、スーパーマーケット「フレスト」、コンビニエンスストア「アンスリー」など、様々な形態の流通施設を展開し、沿線にお住まいのお客さまにも観光でお越しのお客さまにも満足いただけるコンテンツづくりに注力しています。
 レジャー・サービス業では、2012年(平成24年)に開園100周年を迎えた遊園地「ひらかたパーク」、京都のランドマーク「京都タワー」の運営を行っています。また、京都駅前の「京都センチュリーホテル」や大阪ベイエリアの「ホテル京阪ユニバーサル・タワー」など、ホテル事業も展開しています。

■“安全安心”と“チャレンジ” ■
 これら4つのコア事業において共通のキーワードが“安全安心”と“チャレンジ”です。
 鉄道事業はもちろんのこと、あらゆる事業において安全を最優先すべきものと捉え、お客さまに全てのサービスを安心してご利用いただけるよう、グループ一丸となり、日々、安全性向上のための取り組みを行っています。このように“安全安心”への取り組みを積み重ねることこそが、ステークホルダーの皆さまからの信頼獲得につながるとともに、京阪ブランドの源泉となっていきます。
 また、京阪グループのDNAには、渋沢栄一翁の「進取の精神」が刻まれています。これは「当事者意識と使命感を持ち、自ら率先して取り組む」という思いが込められていて、同グループでは、より便利で快適なサービスを提供し、沿線地域の発展に寄与するべく、過去から現在に至るまで様々な課題に対して果敢に挑戦してきました。京阪電車を例に挙げると、日本で初めて「急行運転」「ロマンスカー」を、関西民鉄で初めて「テレビカー」「ATS(自動列車停止装置)」を導入するなど、時代の変化を見据えながら常に先進的な取り組みに“チャレンジ”し続けてきました。

■次の100年に向けた事業展開■
 現在、京阪グループでは、創業以来100年にわたり育んできた“安全安心”の基盤を強固にすると同時に、人口減少やインバウンド市場の成長といった経営環境の変化に対応し、お客さまのくらしを支えながら地域と共に発展していくために新たな“チャレンジ”を行っています。「京阪沿線を新しくデザインする『沿線再耕』」、「『観光創造』で新たな成長」、「『くらしの価値』を高めるコンテンツの創造」をキーワードに、京阪電車で第3位の乗降客数を誇る枚方市駅および周辺エリアの再開発や、京都の表玄関である京都駅前エリアのグローバル拠点化、循環型社会に寄与するライフスタイルとして提案する「BIOSTYLE」を各種の商品・サービスに取り入れるなど、次の100年に向けて様々な事業をグループ横断的に展開しています。

京阪電気鉄道からの説明

■寝屋川車両基地の概要■ 
 1972年(昭和47年)に竣工した寝屋川車両基地は、京阪グループ最大の車両拠点で、34本の留置線があり、340両の車両を収容できます。車両基地は、車両の各部を装置単体もしくは部品レベルまで分解して行う定期検査や大規模修繕工事などを行う「車両工場」、各装置の動作や機能の検査および消耗品の取り替えなどを行う「検車庫」、車内清掃や洗車などを行う「留置線」から構成されています。グループ全体の安全を守るため、京阪電車はもちろんのこと、叡山電車や京福電車、男山ケーブル、そして、ひらかたパークの乗り物まで、様々な車両の保守に努めています。
 法令で定められた車両の定期検査としては、主要部分を外部から検査する「列車検査」(10日ごとに実施)、状態と機能を検査する「状態・機能検査」(3カ月ごとに実施)、主要部分について検査する「重要部検査」(4年ごと、または走行距離60万キロメートルごとに実施)、車両全般を検査する「全般検査」(8年ごとに実施)があります。このうち、列車検査と状態・機能検査については、1日程度で完了しますが、重要部検査と全般検査については、車両の各装置を部品レベルまで分解して清掃や検査を行うため、30日程度の日数が必要となります。各種設備を効率良く稼動させ、年間を通じての作業量を平準化するよう、綿密に検査の両数や長期的な工程を計画の上、車両の保守業務に努めています。

見学の様子

■気品と快適さを兼ね備えた「プレミアムカー」■
 まず、参加者は、2017年(平成29年)8月に運転を開始した、京阪電車で初となる座席指定の特急車両「プレミアムカー」へ乗車しました。京阪特急のカラーイメージを生かした「赤」と気品ある「金」を基調とした外装デザインの採用、ヘッドレストやコンセントを装備したリクライニングシートの全席導入、専属アテンダントの乗務など、“座席指定の特急車両にふさわしい品格と快適なプライベート空間の創出”を目指しています。実は、このプレミアムカーの車両は、新しく製造したものではなく、既存の8000系車両を改造したもので、設計から工事、完成検査までの一連の作業を寝屋川車両基地で行ったものです。

■当時の姿を現代に残す「びわこ号」■
 次に、1934年(昭和9年)に大阪(天満橋)-滋賀(浜大津)間を直通運転するために製造された特急「びわこ号」を見学しました。車体前・後面には当時の流行であった流線型のスタイルを取り入れていることに加え、車体間の連結部分に設置した台車で両方の車体を支える「連接構造」を日本で初めて採用して通常の線路を走る区間と路面上の線路を走る区間を直通で結んでいるため、乗降用の扉には高床用と低床用を、集電装置にはパンタグラフとポールを併設するなどの技術的な特徴もあり、2009年(平成21年)には経済産業省から「近代化産業遺産」の認定を受けました。

■一つひとつの工程に心を込めて■
 次に、車両の定期検査(全般検査・重要部検査)の様子を見学しました。定期検査では、「分解、清掃、整備、組立」といった一連の流れを部品レベルで行います。車両は多くの部品で構成されていますが、たとえ一本のねじであっても磨耗していないか確認を行ったり取り替えを行ったりするため、定期検査には、非常に複雑かつ多くの工程が必要とされます。お客さまに“安全安心”で快適な車両を提供するために、作業員一丸となり、一つひとつの工程に心を込めて取り組んでいます。
 各部品を元通りに組み立てた後は、加速・減速性能や走行音に異常がないか、外観・内装の仕上げは万全か、乗り心地は快適かなど、あらゆる要素について、数値上においても、五感においても厳しい確認作業や走行試験を行い、これらに合格したもののみが再び営業運転に戻ることができます。

■“安全安心”で快適な車両を実現するために■
 最後に、車体を支え「走る」「曲がる」「止まる」を担う台車の機能や性能について学びました。台車には、お客さまの人数や重量に応じて空気量を調整することによって車両の床の高さを一定に保つ「空気ばね」や、圧縮空気を用いて車両を減速・停止させる「ブレーキシリンダ」といった様々な技術が導入されていて、“安全安心”で快適な車両を実現するための縁の下の力持ちといえます。また、環境面への配慮から、省エネ性能の高い機器の採用も進められています。その他にも、京阪電車では、線路周辺への防音対策として、一般的な車輪よりも走行時の騒音を低減することのできる防音車輪を装着しています。参加者は、ハンマーを用いて通常の車輪との音の違いを確認することで防音車輪の性能を体感しました。
 このようにして寝屋川車両基地では、京阪電車を利用されるお客さまにも、沿線にお住まいの方にも信頼していただけるような車両整備に日々努めています。 

京阪ホールディングスへの質問と回答

社会広聴会員:
“安全安心”を支えるという非常に大切な業務を行うに当たり、どのようにして従業員のやる気やモチベーションを保っていますか。
京阪ホールディングス:
京阪電車では「社会を支える鉄道のプロフェッショナルとして、自ら考え行動し自己を高め、次世代につなげていく」人物をあるべき人物像として掲げています。“安全安心”を支えていくために、各種教育や講習会の実施に加え、過去の事故やトラブルから学ぶべく事故要因分析講習会や安全ディスカッションなどを行い、安全意識とモチベーションの向上に努めています。
 

社会広聴会員:
快適な走行を実現するためにどのようなことを行っていますか。
京阪ホールディングス:
車両関係では、京阪電車の全車両に防音車輪を装着し、適宜、車輪の削正を行っているとともに、保線関係では、線路の継目を無くす「ロングレール化」や、枕木の下の砕石を突き固める「道床突き固め」を進め、騒音や振動の低減に努めています。 
 

社会広聴会員:
他の鉄道会社とはここが違うというアピールポイントを紹介してほしいです。
京阪ホールディングス:
「技術の京阪」と言われるように、世界初となる座席自動転換装置などの先進的な技術を次々と導入し、そのDNAを受け継いでいることが挙げられます。プレミアムカーもその一例で、様々な顔や特徴を持つ車両を保有しています。また、沿線には世界遺産を含め有名社寺などが数多くあり、こうした観光スポットを多く持っていることも特徴であり、魅力であると考えています。
 

社会広聴会員:
人口減少や高齢化への対策は考えていますか。 
京阪ホールディングス:
 沿線の人口減少や高齢化は、京阪グループにとって重要かつ喫緊の課題の一つであると認識しています。「いつまでも美しく健康的に」をコンセプトにBIOSTYLEなど新しい生活スタイルの提案をしています。高齢者の方に、いつまでも健康でいていただき、電車を利用しグループの施設をお使いいただきたいと考えています。

参加者の感想から

●周期的な検査・修理などにより、“安全安心”が担保されていることが分かり非常に安心しました。長年使用されていた車両も、全面改修によって新品同様にきれいになっていて感心しました。

●利用者の安全を確保するため、しっかりした検査体制を整え、日常的に検査や改修を実施していることに感謝します。現場まで経営理念がよく浸透している風土を感じました。

●プレミアムカーが既存の車両を改造したものと聞いて驚きましたが、実際に乗車してみると外装も内装もきれいで座席の座り心地も良く感動しました。

●次の100年に向けた事業展開として枚方市駅周辺の再開発やBIOSTYLEの提案、新しいホテルの建設などの話を聞き、京阪ホールディングスの今後の取り組みが楽しみになりました。

京阪ホールディングスご担当者より

 このたびは当社寝屋川車両基地にお越しいただき、ありがとうございました。当日はあいにくのお天気ではありましたが、車庫内見学の際の皆さまの真剣な姿勢やまなざし、質疑応答での建設的なご提案がとても印象的でした。 また、貴重なご意見をいただくことができ、こちらこそ感謝しております。
 当社では今後も“安全安心”の取り組みを積み重ねながら、常に新たな“チャレンジ”を通じて、皆さまにより良いサービスを提供してまいりたいと存じます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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