企業と生活者懇談会
2018年5月16日 埼玉
出席企業:東日本高速道路
見学施設:東京外かく環状道路大泉JCT工事現場、関東支社道路管制センター

「より安全で快適に、『あなたに、ベスト・ウェイ。』を目指して!」

5月16日、東日本高速道路(NEXCO東日本)の東京外かく環状道路大泉JCT(ジャンクション)工事現場(東京都練馬区)、Pasar羽生・鬼平江戸処(埼玉県羽生市)、関東支社道路管制センター(埼玉県さいたま市)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者17名が参加しました。同社の概要、東京外環プロジェクトと工事概要について説明を受けた後、大泉JCT工事現場を見学。その後、道路管制センターを見学し、質疑懇談を行いました。
 NEXCO東日本からは、広報・CSR部広報課の河内康髙課長、仁木啓太係長、関東支社の総合企画部広報課松下幸之助課長、東京外環工事事務所安原正幸副所長、藤原達範工務課長、道路管制センター交通管理課加賀田正則課長、前田信課長代理、東北自動車道鬼平江戸処マネジメントオフィスの山田嘉則副館長が出席しました。

NEXCO東日本からの説明

■NEXCO東日本の事業概要■
 NEXCO東日本は2005年10月1日、旧日本道路公団の分割民営化により設立されました。従業員数は約2200人、グループ全体では約1万4000人となっています。新潟県や長野県の一部を含む関東以北から北海道までの広範囲なエリアを管轄し、営業延長は約3900キロメートル、一日の利用台数は約290万台に上ります。
 同社は「あなたに、ベスト・ウェイ。」をコーポレートスローガンに、主に3つの事業に取り組んでいます。1つ目の管理事業では、24時間365日、安全・安心で快適な高速道路を支えるために、高速道路の保全とサービスの充実に努めています。同社が管理する高速道路のうち約4割が供用開始から30年以上経過し構造物が老朽化しつつあるため、大規模更新・修繕を行う「高速道路リニューアルプロジェクト」を進めています。2つ目の道路建設事業では、首都圏における環状道路の整備や4車線化など、高速道路ネットワークの整備を着実かつ効率的に進め、渋滞緩和や沿線地域の利便性向上などに努めています。3つ目のサービスエリア事業では、地域活性化につながる個性的かつ魅力的なエリアづくりを進めています。その他にも経営資源を有効活用し多様な関連ビジネスを展開しています。

■東京外環プロジェクトとシールドトンネル工事■
 東京外かく環状道路(外環道)は、都心から約15キロメートル圏域を環状に結ぶ、延長約85キロメートルの高速道路で、首都圏の渋滞緩和、環境改善、円滑な交通ネットワークを実現する目的で建設されています。現在施工中の関越自動車道(関越)から東名高速道路(東名)までを結ぶ延長約16キロメートルの区間は、本線の大部分を地下40メートル以深(大深度地下)に建設する初めての道路事業です。沿道環境に配慮したトンネル構造で、国土交通省とNEXCO中日本、NEXCO東日本の共同で事業を進めています。現在、関越から東名間の環状8号線は所要時間が約60分ですが、外環道が整備されると約12分に短縮されます。また、幹線道路の交通量が減少することにより安全な生活道路を構築し、災害や事故の時も速やかに移動できます。
 施工中の本線は、東名に向かう「南行トンネル」と関越に向かう「北行トンネル」の2本のトンネルで構成され、片側3車線、計6車線の道路となります。各トンネルの始点・終点から、計4基のシールドマシン(掘削機)で掘削工事を進めるシールド工法で、シールドマシンの外径は約16メートル、重量は東京タワーに匹敵する約4000トンと、国内最大、世界的にも最大規模のシールドトンネル工事です。シールドマシン前面のカッターヘッド(超硬合金のビットと呼ばれる歯が放射線状に配置されている)が回転し土を削り、削られた土をスクリューコンベヤーで後方へ運び、地上へ続くベルトコンベヤーで搬出します。トンネルの壁にシールドジャッキを押し付け伸ばすことでシールドマシンが前進し、できた空間にセグメント(トンネル本体の壁となる1枚の重さ10トン、厚さ65センチメートル、長さ1.6メートルのコンクリートパネル)13枚をリング状に組み立て壁が構築されます。このステップを繰り返すことにより掘り進めていく工事です。

見学の様子

■外環道大泉JCT工事現場■
 現在、大泉JCT工事現場では、深さ25メートルのシールドマシン発進立坑でシールドマシンが2基同時に組み立てられています。既存の道路に挟まれた狭い場所の工事であるため、工事現場で使用する大型クレーン車を使えず、工場で使うような門型クレーンを使用しています。30トンから200トンを吊り上げるクレーン3台を使い分けながら、巨大なシールドマシンを組み立てます。また、工事現場のすぐ横の道路を走行している人に圧迫感を与えないように、クレーンの高さにも配慮しているとのことです。
 この工事では一日最大約1万立方メートルの土砂が発生します。土砂の運搬には通常10トン積トラックで約2000台が必要ですが、現在供用中の外環道中央分離帯側に土砂運搬用のベルトコンベヤーを設置し、シールドマシン発進ヤードから約6キロメートル先の仮置き場まで運搬することにより、使用するトラック数を減らし周辺道路への影響を緩和しているのが特徴です。運搬された土砂は土壌分析を行い、環境上の問題がないことを確認後、他の事業などに使用されています。参加者は迫力ある工事現場の様子を見学しながら、工事の配慮や工夫に感心していました。

■東北道羽生PA(パーキングエリア)■
 その後、東北道羽生PA「Pasar羽生」(下り線)、「鬼平江戸処」(上り線)を見学しました。
 NEXCO東日本が管理運営するSA(サービスエリア)・PAは197カ所。独自の世界観を演出した2カ所の「テーマ型エリア」、旅のドラマを演出する16カ所の「ドラマチックエリア」、そしてNEXCO東日本の旗艦店として展開している6カ所の「Pasar」(パーキングエリアのPA・サービスエリアのSA・リラクゼーション:RelaxationのRを組み合わせたもの)があります。
 「Pasar羽生」は、和風モダンをコンセプトに“東北道における旅の始まり”をイメージし、「テーマ型エリア」の「鬼平江戸処」は池波正太郎の時代小説「鬼平犯科帳」をモチーフにしています。江戸時代「入り鉄砲に出女」を取り締まったという日光街道「栗橋関所」や、「日本橋大店」「本所深川」「両国広小路」など、エイジング技法で古き良き江戸の街並みを再現しています。2013年12月に営業を開始し、昨年度(2017年度)の来館者数は約280万人。高速道路利用者だけでなく一般道からも利用できます。参加者は、建物、小物、看板、グルメ、お土産にいたるまで、江戸の雰囲気を感じていました。

■関東支社道路管制センター■
 2016年3月にリニューアルされ、高い耐震性と防災機能の強化、情報提供や管制運用の高度化を図った関東支社道路管制センターを見学しました。
 道路管制センターには2つの部門があります。交通管制部門では、道路状況・気象状況などの情報をお客さまに提供し、異常事態発生時には現地の交通管理隊など関係者に処理の指示・要請をします。施設制御部門では、設備の状態監視および制御と、故障・復旧対応、トンネル火災発生時には、非常用設備を稼動させ迅速かつ適切に対処します。
 関東地域と長野県の高速道路を一括管理し、年間約10万件(1日平均約270件)もの異常事象を処理しています。広いエリア、膨大な設備を効率良く管理するための様々な最新設備が備えられ、管理範囲を一望できる国内管制最大規模の大型ディスプレイがこの施設の特徴です(高さ5.5メートル幅17メートル、55インチの高性能液晶画面112面)。大型ディスプレイの大きさ、表示内容、操作卓の配置は、最新の人間工学の理論に即して設計されており、スタッフの負担を軽減するよう配慮されているそうです。
 また、大規模災害発生時こそ、的確な管制業務が行えるように、建物全体の耐震構造に加え、道路管制室と各設備を免震構造とすることで、非常時でも被害を最小限にし、業務を継続できるよう設計されています。屋上にはヘリポートも備え、電力や水のライフラインの確保など、非常時に対応すべく様々な備えが確保されています。参加者は、高速道路の非常電話の使い方などを体験し、終始感心しながら熱心に耳を傾けていました。

NEXCO東日本への質問と回答

社会広聴会員:
NEXCO東日本と他エリアの会社との大きな違いはどのようなところですか。
NEXCO東日本:
NEXCO東日本が管理する約3900キロメートルの高速道路のうち約7割が積雪寒冷地域にあります。安全な冬季交通を確保するために雪氷対策は非常に重要で、そこが他社とは大きく違うところです。日々、雪との闘いのノウハウを積み重ね、雪氷対策高度化のための技術の導入をしています。路面凍結対策作業(凍結防止剤の散布)においては、「路面状態判別システム」を搭載した雪氷巡回車が3~4時間周期で路面状態を把握し、その情報に基づいて、100メートルごとに散布量を変えながら自動散布する「凍結防止剤最適自動散布システム」の現地実験を始めています。今後は路面状態に応じたより最適な凍結防止剤散布が可能となり、凍結防止剤の費用削減や道路への塩害低減も期待されます。
 

社会広聴会員:
道路設備のメンテナンスや管理方法は。
NEXCO東日本:
 メンテナンスは、点検、変状の判定・評価、点検結果の記録、補修計画の策定、補修実施、その補修結果の記録、データベース(道路保全情報システム) への蓄積、というPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルをきちんと回していくことが基本です。これまでは人が実施してきたメンテナンスサイクルを、これからはICT技術(ドロ-ン・ロボット・赤外線カメラ・タブレットなど)を活用して点検作業の効率化や生産性向上を図るとともに、マネジメントを向上させるために業務の高度化・体系化を図ります。将来的にはAIを活用した判断支援など、さらなる進化を目指していきます。NEXCO東日本は長期的な道路インフラの「安全・安心」確保に向け、維持管理業務のあらゆる面に最先端の技術を取り込むことを目指した「スマートメンテナンスハイウェイ」のプロジェクトを2013年から進めています。
 

社会広聴会員:
交通安全の具体的な対策について教えてください。
NEXCO東日本:
交通事故を防止するために、高齢者の逆走防止対策として、高速道路本線への合流部にラバーポールの設置、路面表示の拡大、看板の設置や方向別カラー舗装など様々な対策を推進しています。また、高速道路の暫定二車線区間(中央分離帯がない対面通行区間)は、正面衝突事故防止対策として、2017年4月からラバーポールの代わりにワイヤーロープ(ガードロープ)を試行設置しています。設置後は死亡事故が発生しておらず、その効果を認めた国土交通省からも全国的にワイヤーロープを設置していく方針が発表されました。
 

社会広聴会員:
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、関東地域の道路整備は進んでいますか。
NEXCO東日本:
首都圏では、本日見学をした外環道を含む3環状道路の整備をしています。外環道千葉側の三郷南インターチェンジから高谷JCT15.5キロメートルは今年(2018年)6月2日に開通し、これで外環道の6割は完成します。外環道の1つ外側の圏央道(首都圏中央連絡自動車道)は、昨年2月に成田空港から湘南までが直結となり全長約300キロメートルのうち9割が完成するなどネットワークが充実してきています。また、グローバル化への対応として、NEXCO東日本のホームページは4カ国5言語に対応しており、お客さまセンター(24時間対応)を多言語対応への体制に整え、ハイウェイパトロール員がITを駆使して外国語対応ができるようにすることなどを考えています。
 

社会広聴会員:
エコエネルギー対策(クリーンエネルギー自動車への対応)は現在どのような状況ですか。
NEXCO東日本:
低炭素社会実現のための電気自動車普及に向けた取り組みとして整備を進めている“EV急速充電スタンド”は、現在、NEXCO東日本管内のSA・PAのうち139カ所に設置されています。水素ステーションについては、まだ水素自動車があまり普及していないこともあり管内に設置はございません。

参加者の感想から

■大泉JCT工事現場では、多くの制約を受けながら、国内最大級のシールドトンネルを構築する中、近隣住民や高速道路利用者への細かい配慮、発生土砂の再利用まで考えられていることに感心しました。

■シールドマシンは、ニュースや写真で見たことがありましたが、実物の巨大さに圧倒されました。 

■鬼平江戸処の建築物のエイジング加工に驚嘆しました。近年、SA・PAの施設としての充実ぶりは瞠目すべきところがあります。一般道からの利用も可能であるというところが素晴らしいと思います。

■道路管制センターを見学し、高速道路の安全と安心を確認しました。 高速道路に設置されている非常電話の取り扱い説明はとてもよく分かりました。

■工事のための車線規制など不便に感じていましたが、その裏で安全や環境保護、円滑な運用のための甚大な努力、配慮を知り、頭が下がる思いでした。利用者の理解を得やすくするためにも、企業側の取り組みについてもっと情報発信をしてよいと思います。

NEXCO東日本ご担当者より

 このたびは、外環道建設現場をはじめ、当社施設の見学にお越しいただき、ありがとうございました。 
 懇談会でいただきました貴重なご意見は、今後の事業に反映させてまいります。
 当社では、お客さまに「安全・安心・快適・便利」な高速道路空間をご提供できるよう努めてまいりますので、引き続きご支援・ご協力をお願いいたします。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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