企業と生活者懇談会
2018年2月7日 東京
出席企業:セイコーホールディングス
見学施設:セイコーミュージアム

「セイコーの『常に時代の一歩先を行く』先進性とチャレンジ精神を学ぼう

2月7日、セイコーミュージアム(東京都墨田区)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員19名が参加しました。セイコーホールディングスとセイコーミュージアムの概要説明を受けた後、同ミュージアムで、貴重な品々とともに、時計の進化や同社の歴史を見学しました。また、スポーツ計時体験や3Dバーチャルでムーブメントを動かす体験、オリジナル腕時計の組立体験などを通じて、高精度な時計の世界を体感し、その後、質疑懇談を行いました。 
セイコーミュージアムからは、渡邉淳館長、熊谷勝弘副参事、内山祐一副参事、沼尻守弘主事、神山めぐみ氏、大友沙織氏、セイコーインスツルからは、ウオッチ事業部・W商品企画部時計研修センターの名倉健治副主査、セイコーホールディングスからは、広報室の高比淳子副参事、安井稚葉氏が出席しました。

セイコーホールディングスからの説明

■セイコーホールディングスの概要■
 セイコーホールディングスは、1881年(明治14年)、創業者服部金太郎が、京橋采女町で輸入時計の販売と修理を行う服部時計店を創業したことから始まります。その後、1892年(明治25年)に、「国産時計事業を興し、時計を通じて社会・産業の発展に貢献する」ことを目指し、現在の東京都墨田区に精工舎を設立しました。工場名の精工舎には、「精巧な製品により、欧米に負けない時計事業を日本に興す」という時計の国産化に乗り出した金太郎の固い決意が込められています。1895年(明治28年)には銀座四丁目に服部時計店の時計塔を構え、この時から銀座の中心地で時を知らせるようになります。時計製造で培った技術を多岐に亘り展開し、2001年(平成13年)より持株会社制に移行し現在のセイコーホールディングスグループとなりました。「ウオッチ事業」のほか、インクジェットプリントヘッドや世界トップクラスのシェアを誇る水晶発振器用ICなど、クオーツウオッチの開発技術を応用した「電子デバイス事業」、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを一貫して行い、最適なICTソリューションを提供する「システムソリューション事業」の3つを事業の柱としています。 

■革新的な製品で時代を創る■
 同社は、創業から10年足らずで掛・置・懐中時計の3部門を持つ国内唯一の総合時計工場となりました。1909年(明治42年)には、大量生産が可能となり、大衆向け懐中時計「エンパイヤ」が大ヒットします。さらに、2014年(平成26年)に機械遺産にも認定された、国産初の腕時計「ローレル」(1913年(大正2年))、世界最高峰の機械式腕時計「初代グランドセイコー」(1960年(昭和35年))、世界初のクオーツ腕時計「クオーツ アストロン」(1969年(昭和44年))などで、世界の時計産業をリードしてきました。その後も、腕の運動エネルギーで動く「キネティック」(1988年(昭和63年))、機械式時計と同じゼンマイのほどける力を動力源としながらクオーツ式時計同等の高精度を実現した、世界初で唯一の腕時計「スプリングドライブ」(1999年(平成11年))、世界初のGPSソーラー腕時計「セイコー アストロン」(2012年(平成24年))といった革新的な製品・サービスを提供し、「常に時代の一歩先を行く」という創業から続く経営姿勢を貫いています。

■時代とハートを動かすSEIKO■
 グループスローガン「時代とハートを動かすSEIKO」は、創業以来、技術革新で世界を牽引し、築き上げてきた大きな信頼を大切にしながら、次代を切り拓いていく感性とチャレンジ精神で、ワクワク、ドキドキする時代をお客さまと分かち合いたいという願いを込め、2014年に制定しました。世界中のステークホルダーと感動を分かち合えるグローバルな企業グループを目指し、ブランドの育成に力を注いでいます。

見学の様子

■セイコーミュージアムの概要■
 セイコーミュージアム(旧セイコー時計資料館)は、創業100周年の1981年(昭和56年)に、時と時計の研究資料の収集・保存を目的として設立され、2012年にリニューアルオープンしました。同社の情報発信の役割を担うとともに、「時計の進化」と「セイコーの歴史」について、展示や時計組立のワークショップなどを通じて、楽しみながら学べるミュージアムです。タブレットを使った日英2カ国語の音声ガイドでは、展示されている時計が動く様子を動画で見ることができます。ウオッチやクロック、和時計などを1万2000点以上、文献類を1万5600点所蔵し、国内外の子どもから大人まで、毎年1万人以上が訪れます。海外など遠方の方のために、ホームページでは館内を映像で見学できるバーチャルツアーも公開しています。 

■時計の起源から進化の歴史をたどる■
 最初に、時計の起源といわれる、紀元前4000年ごろにエジプトで発明された日時計を見学しました。1700年代の中国の清朝時代の「赤道型日時計」は、日影棒の先端が北極星を指し、石の文字板が赤道と平行になっています。太陽の位置により、春分から秋分は表面に、秋分から春分は裏面にできる影で時刻を表示します。
 日時計は様々な場所で作られましたが、日が出ていないと使えません。そこで、エジプトで新たに考えられたのが水時計です。最初の水時計は、容器の底に穴が開いたお椀型の容器に水を入れ、水位の変化で時間を計りました。日本書紀によると、日本では漏刻と呼ばれ、中大兄皇子(後の天智天皇)が660年に造り、初めて漏刻を用いて人々に時を知らせたのが、671年6月10日(グレゴリオ暦)で、現在の「時の記念日」の由来にもなっています。
 次に、機械式時計を見学しました。鉄枠塔時計は、キリスト教の祈りの時間を知らせる道具として、1300年ごろに北イタリア・南ドイツ地方の修道院で発明されました。参加者は、世界最古の鉄枠塔時計と同じ仕組みの1500年代の英国の「鉄枠塔時計」と、ガリレオ・ガリレイの「振り子の等時性」を応用した振り子時計として、英国のビックベンの試作品が動く様子を見比べ、技術の進歩に驚いていました。

■日本で独自の進化を遂げた和時計■
 キリスト教とともに機械式時計が伝来しましたが、日本では和時計が発展します。当時の日本は不定時法で、明るい時間を昼、暗い時間を夜と2つに分け、さらに昼と夜を6等分ずつしたその1つを一刻としていました。江戸城で使用された「櫓時計」は、仕組みは塔時計とほぼ同じで、錘の重さを動力として歯車を回します。棒てんぷの錘を中心に掛けると速く、外側に掛けるとゆっくり往復運動し針の動くスピードを調整します。1日2回、錘の場所を調整するなど手間が掛かるため、時報を司る掛りの者が管理しました。そのほかにも、べっ甲に蒔絵を施した「印籠時計」や、錘の位置で時刻を計る「尺時計」といったユニークな和時計が誕生します。1873年(明治6年)に時刻制度が変わり、和時計は使われなくなりますが、このとき培った機械技術が日本の近代化につながりました。

■創業者服部金太郎■
 創業者服部金太郎は、先見性に長けた人物でした。1860年(万延元年)に京橋采女町で誕生し、11歳で洋雑貨屋に奉公に出ます。時は明治の改暦、13歳の金太郎は、客足の少なくなる雨の日でも時計屋が繁盛している様子を目の当たりにします。「売るだけでなく修理の仕事もあり、時間を無駄にせずにどんなときでも働くことができる」と、時計屋で修行を始めます。21歳で服部時計店を創業後、「すべての商人は世間より一歩進む必要がある」とし、精工舎を設立し「八日巻掛時計」の生産を開始。海外メーカーの視察や新しい工作機の輸入など、人材育成と最新鋭の工場づくりに力を注ぎ、「良品はかならず顧客の愛顧を得る」という信念の下、「品質第一」「顧客第一」のモノづくりに励みました。 
 1923年(大正12年)、関東大震災に見舞われ、工場・営業所・自宅を焼失します。「お客さまには迷惑は掛けられない」と、修理のため預かり焼失した懐中時計約1500個を無償で新品同等の品と交換し、人々の信頼を得ます。金太郎の「必ず約束を守る」精神は、同社のDNAとして引き継がれています。

■高精度な時計の世界を体験■
 1958年(昭和33年)に開発した同社初の放送局用水晶時計は、温度を一定に保つ恒温槽や真空管などが必要で、高さが2.1メートルもありました。その後、腕時計サイズの開発に成功、1969年世界初のクオーツ式腕時計を発売し、世界中にクオーツショックを巻き起こします。また、その特許を公開したことにより、現在もクオーツ式腕時計の基本的な仕組みや構造は、このセイコー方式が採用されています。
 「グランドセイコー」は、初代モデルから世界最高峰の実用時計といわれ、高い精度を追求する自社基準のGS規格に合格しています。製造する岩手県盛岡市の「雫石高級時計工房」は、高級メカニカルウオッチの部品製造から完成品の組み立てまで一貫して行う日本唯一の工房です。現代の名工にも選ばれた職人が、200以上の部品を顕微鏡で見ながら手作業で組み立て、0.01ミリ単位で調整します。組み立ては機械でもできますが、精度を出すのは職人技です。米粒のようなパーツを虫眼鏡で見たり、3Dバーチャルでグランドセイコーのムーブメントを動かす体験をした参加者は、緻密な作業に驚いていました。

■アジア初のオリンピック公式計時を担当■
 同社には、陸上の山縣亮太選手や福島千里選手が在籍し、スポーツにも縁があります。その歴史は、1964年(昭和39年)の東京オリンピックで、アジア初のオリンピック公式計時を務めたことから始まります。ゼロから競技ごとに異なる36機種1278個もの機材を開発。世界で初めて総合的に電子計時を導入したことで、オリンピック史上初の計時クレームゼロを達成し、“世界のセイコー”へ飛躍します。現在も最新の機材でスポーツ大会を支えており、陸上で使われるスターティングブロックは、内蔵された圧力センサーが選手の蹴り出す瞬間を検知してファウル判定装置と連動するほか、前方にはスピーカーを内蔵し、スタート音が選手の耳の近くで鳴るように造られています。また、水泳のタッチ板は、波が当たってもセンサーが反応しないよう、板に細かい穴を開け、水圧を逃がす仕組みです。参加者は、水泳のタッチ板を使って陸上100メートルの世界新記録9.58秒の計測に挑戦し、選手にとって人生をかけた記録が一瞬で決まる緊張感を体感しました。

■オリジナル腕時計の組立に挑戦■
 専門家の指導を受けながらミュージアムオリジナルの時計組立に挑戦です。文字板付ムーブメント、文字板を固定する中枠、りゅうず、電池など、専用のピンセットを使いながら小さなパーツを慎重にケースに組み込みます。最後に、きずみでごみがないかを検査、裏ぶたを閉めたら完成です。時計が動き出す瞬間、参加者から一斉に歓声が上がりました。

セイコーホールディングスへの質問と回答

社会広聴会員:
セイコーの優位性について教えてください。
セイコーホールディングス:
高い技術力を誇り、部品製造まで自社で行う真のマニュファクチュールであることを強みとしています。時計はパーツごとに別々の会社で作って組み立てるのが一般的ですが、セイコーは高品質な時計を提供するため、時計の部品に使われる特殊な金属素材の開発まで自社で行い、部品製造から完成品の組立、調整、品質検査を自社で一貫して手掛けるマニュファクチュールです。また、先進技術と匠の技を融合することで、「グランドセイコー」「セイコー アストロン」などの様々なブランドを展開し、ブランドごとにさらなる高みを目指しています。
 

社会広聴会員:
時計の価格の違いは何に影響されているのですか。
セイコーホールディングス:
基本的には時計としての機能や外装の仕上げといった付加価値が価格の違いになります。トゥールビヨンなどの複雑で部品数の多い機構を使った数百万円から数千万円する超高級時計もあります。当社の時計は、研磨の技術が優れていたり、和の素材の漆や琺瑯などを用いたり、シンプルでありながら匠の技を追求したこだわりが詰まっています。精度面も、「グランドセイコー」は機械式で日差-3~+5秒を実現しています。品質や信頼性の高さは、創業当初からのDNAを受け継いでいます。
 

社会広聴会員:
子どもたちに時計の魅力を伝えるため、どのような取り組みをしていますか。
セイコーホールディングス:
小・中学生向けに、時や時計に対する関心を高める活動をしています。携帯電話の普及などで、無意識のうちに時間が分かるため、時間そのものや生活の中での時計の役割についてまず考えてもらうことが重要であると感じています。セイコーミュージアムでは、時計の歴史を通して日本の技術力や製品に触れ、時や時計をより身近に感じてもらえるようにしています。組立体験や小学校での出張授業も行い、理科で振り子を学んだ後に、その仕組みが時計で応用されていることを体感してもらっています。
 

社会広聴会員:
未来の時計像についてお聞かせください。
セイコーホールディングス:
現在はスマートウオッチの参入で、時計市場が活性化しています。時計は不思議な世界で、100円の製品の方が、数百万円の製品より精度が高いこともあります。それにも関わらず、高い価格の製品を選ぶお客さまもいらっしゃいます。それは、単に時刻を知るだけでなく、ステータスやデザインなどの付加価値を求めているからです。時計はギフト需要が多く、クリスマス時期に売り上げが上がります。自分へのご褒美だけでなく、両親からの贈り物、大切な人への贈り物といった“記念”の要素もあり、身に着けることで人生に彩を添えます。今後も、機能だけでなく、エモーショナルな部分にも付加価値を付け、ワクワク、ドキドキする製品で「時代とハートを動かすSEIKO」を実現していきます。

参加者の感想から

●時計の進化の歴史を知り、先人たちがいろいろ考え、工夫した先に今があるのだと考えさせられました。 

●関東大震災の時に約1500個の時計を無償交換したことなど、創業者が社会に対して誠実に事業を展開し、また、拡大してきた歴史に感動しました。

●時計組立は、非常に精密な作業が求められていて、その一端だけでも体感でき、貴重な経験でした。 

●自分で組み立てた時計を身に着けるようになって、アナログ時計の良さを再び実感しています。

●社員の方の時計に対する真摯な姿勢が伝わり、「いい加減な仕事はしていない」という気概を感じました。

●技術を継承する活動をしていると知り、うれしくなりました。こういった企業風土を残してほしいです。

セイコーホールディングスご担当者より

 「常に時代の一歩先を行く」。この創業精神を守り続けセイコーは137年の歴史を歩んできました。
 時計は人生の一秒を刻み、生活に密接しながら社会を支えています。懇談会では未来の時計像について多くのご質問を頂戴しましたが、時や時計について、改めて考えていただく機会になっておりましたら幸いです。
 「時代とハートを動かすSEIKO」というグループスローガンのもと、セイコーはこれからも挑戦を続け、常にお客さまと響きあえる企業を目指してまいります。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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