企業と生活者懇談会
2018年10月17日 東京
出席企業:関西ペイント
見学施設:ペイントギャラリー

「“街”や“暮らし”の様々なシーンに使われ、世の中に『なくてはならない』材料、“塗料”について学ぼう!」

10月17日、関西ペイントのペイントギャラリー(東京都大田区)で、「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員13名が参加しました。企業概要、ペイントギャラリーの概要説明を受けた後、同ギャラリーを見学。色彩の基礎や家の塗り替えなど、建築用塗料について学びました。また、ステンシル塗装によるパネル作成を体験。身近な存在である「塗料・塗装」に親しみ、最後に質疑懇談を行いました。 
関西ペイント販売から、建築塗料販売本部営業部 の石橋修一担当部長、佐々木広明係長、桂川有加係長、関西ペイントからは、塗料事業部商品企画部の宮川理香部長、社長室の栗山利治部長、山瀬直部長が出席しました。

関西ペイントからの説明

■関西ペイントの概要■
 関西ペイントは、1918年5月、創業者岩井勝次郎が兵庫県尼崎市で塗料・顔料の開発・製造を開始したことから始まり、今年(2018年)で創立100周年を迎えました。国産初のスパーワニス「ジャパナイト」(1920年)や非油性塗料で速乾性のある国産初ラッカー「セルバ」(1926年)の開発は、日本の塗料製造技術の水準を一気に引き上げ、それまでは天然素材を原料に用いていた塗料を、化学の力により高品質で安定生産される「化学製品」へと変貌させました。創業以来、優れた技術開発力を駆使して、日本では最も先進的な塗料メーカーとして成長。種塗料の分野において、魅力ある製品を提供し続け、国内にとどまらずグローバルに事業を展開しています。 

■塗料業界と関西ペイントの現状■
 同社の事業内容は、各種塗料の製造販売であり、塗料業界の世界ランキングは8位です。2000年以降、連結売上高と海外売上高比率を順調に増やし、2017年度連結売上高は4019億円、うち海外売上高比率は65%となっています。関連会社・子会社を含めて157社、約80カ国で事業展開。従業員数は関西ペイントで約1500人、グループ企業全体で約1万5000人です。
 事業領域は、建築用、防食用、自動車補修用、自動車用、工業用、船舶用の全ての塗料分野を扱う総合塗料メーカーです。中でも、自動車塗料分野では、自動車の下塗り中塗り上塗りの全てを供給できる塗料メーカーは世界で5社といわれ、同社はそのうちの1社。国産車の上塗り塗料のシェアは55%を占めます。さらに、最近は、漆喰塗料や虫除け塗料といった機能性塗料も展開しており、今年には、リチウムイオン電池用の部材開発にも参入するなど、塗料+αにも挑戦しています。 日本の塗料市場は、売上げが約6700億円、一般大衆薬と同程度の規模です。需要はピーク時の85%で推移しており、今後の量的拡大は期待できない状況です。
 一方、世界市場は約15兆円を超え、日本の約20倍。市場動向は年々拡大傾向で、アジア・中東・アフリカなど新興国を中心に年率5%で成長。2021年には市場規模が20兆円を超え、塗料業界は世界的には一大成長産業であると考えられています。

■関西ペイントグループ企業理念の策定■
 同社は、創立100周年を機に、グローバルでの事業成功と社会への貢献をグループ一丸となって推進させるため、国内外のグループ全体で共有する新しい企業理念を策定しました。「私たちは、塗料事業で培った技術と人財を最大限に活かした製品・サービスを通じて、人と社会の発展を支えます。」を使命目的とし、「誠実・顧客志向・責任感・尊重・企業家精神・革新」の6つの価値観と行動規範にのっとり、企業理念の実現が社員一人ひとりの役割であることを認識して行動しています。「会社の信用を重んじ、顧客に満足される製品を供給することによって社会に貢献する。」という社是は、創業以来受け継がれてきた関西ペイントの精神的背景であり、関西ペイントグループ企業理念の基盤となっています。

見学の様子

■ペイントギャラリーの概要■
 ペイントギャラリーは、「暮らしにもっとペイントを!」をコンセプトに、ペイントならではの自由な表現、独自の風合い、特別な機能などを体感・体験できる拠点として、2016年6月、同社の東京事業所1階にオープンしました。高画質・大画面で現実的・具体的な色彩コーディネートが分かる「大型スクリーンと高解像度プロジェクター」や、実際の部屋で養生から塗装まで一連の作業を体験できる「塗装体験ブース」、大きな見本で実際に塗装された色や風合いを見ることができる「内装・外壁大型見本展示ブース」、消臭効果など塗料の性能を体感できる「塗料性能体験ブース」、そしてクオリティーの高いデザインペイントの特大実物サンプルなどがあり、見学や体験を通して身近な存在である「塗料・塗装」について学ぶことができます。

■ペイントギャラリーを見学■
 ペイントギャラリーのスクリーンは200インチの大画面、実はスクリーンではなくアレスシックイという漆喰塗料を塗った壁面です。アレスシックイの塗膜が非常に緻密で、乱反射せず影も出にくいためスクリーンとしても活用できます。大画面・高画質のCG映像で内装や外装を現実的にイメージでき、塗装ならではの特長を生かした施工や色彩コーディネートが体感できます。
 スクリーンの両脇には、アレスシックイと水性塗料「PXI’s(ピクシーズ)」で仕上げた特大のアーティスティックな壁面があります。塗料の世界では、一般の水性塗料でもここまで仕上げることができるという1つのサンプルだそうです。参加者は壁に描かれたバッタの絵に触れ、「まるで生きているようだ」と驚いていました。
 塗装体験ブースは、自分の部屋を実際に塗装していくイメージで、マスキングといわれるビニールを貼る養生作業から、実際に塗料を壁に塗る作業までを体験できるブースです。塗料の作業性、塗りやすさ、におい、仕上がりなどを体感できます。また、光源の違いで色が実際にどのように見えるかを確認できるよう、調光機能も備えています。
 内装・外装大型見本展示ブースでは、内装用のアレスシックイや多彩模様仕上げの見本板、そしてインテリアカラー「PXI’s」は1470色のオリジナル見本帳から、日本の内装市場に使用しやすい101色の塗板を展示しています。また、畳1畳ほどの大きな塗板は外壁、外装材の塗料の見本板です。こちらは、同じ塗料であっても水性塗料と溶剤塗料、艶あり艶消しなど、塗料の種類や艶によって色の見え方が違うため、見比べられるように大型見本板を取り揃えています。
 塗料性能体験ブースでは、日本の伝統素材である「漆喰」をローラーで誰でも簡単に塗装できるようにした塗料「アレスシックイ」の優れた機能を体感できます。アレスシックイは国産の消石灰を主成分とし、消石灰は強いアルカリ性であるため、その成分から消臭や抗菌・抗ウイルスなどの様々な機能を有しています。アレスシックイを塗ってあるボックスと塗っていないボックスの中に酢昆布を入れ、消臭効果を体験しました。アレスシックイを塗っているボックスの中はほとんどにおいがないことに、参加者は驚いていました。さらに、カビの発生や細菌の増殖を抑制する抗菌・抗ウイルス機能、ホルムアルデヒドやスギ花粉、ダニアレルゲンなどの有害物質吸着除去機能、吸湿性と放湿性から結露抑制機能、他にも二酸化炭素吸収機能などの優れた機能を有し、化学物質にアレルギー反応を起こす人でも安心して使える自然素材との説明に参加者は感心していました。

ステンシル塗装によるパネル作成に挑戦■
 アレスシックイと水性工作用塗料ヌーロを使用し、パネル作成に挑戦しました。まず、ローラーでボードにアレスシックイを塗装し、次に、簡単にチューブから出して塗れるヌーロを、スポンジでフレームに塗装します。短時間でボードの塗装が乾くので、その上にステンシル塗装をし、乾いて組み立てれば完成です。参加者は、カラーバリエーションが豊富な塗料の組み合せに悩みながら、真剣に作業をしていました。また、使用した塗料にほとんどにおいがないことや、水性塗料であるため手に付いても簡単に落とせることに驚き、漆喰塗料を含めた塗料が、絵の具と同じように手軽で身近に感じられたようでした。

■家の塗り替え、全て教えます!■
 家の外装塗装に関わるレクチャーがありました。まず、「誰に頼む?」では、塗装店、工務店、ハウスメーカー、それぞれのメリットとデメリットについて、「塗装費用?」では、材料費、足場の費用、人件費、その他運営費など、外壁塗装費用の内訳や詳細ついて説明がありました。「塗料の種類?」では、塗料の種類による耐候性、遮熱・断熱効果など省エネ性、意匠性、価格等について説明があり、外壁の塗り替えでよくある失敗例をもとに、色彩の基礎について学びました。五感の中で視覚による情報量は80%以上、色を認識する時間は0.1秒から0.2秒といわれており、色には心理的作用を促す効果、商品購入の決め手となる動機付け、そして商品の世界観を表現する力があります。生活のいろいろな場面で色の影響力は大きく、色の誘目性や記憶色など色の視覚作用や色彩の基礎を知っておくことは有効です。最近は景観法に基づくカラーガイドラインを持つ自治体が多く、家の色を選ぶ前に地域に色彩規制がないか調べることも重要だそうです。参加者は興味深い説明に熱心に聞き入っていました。

関西ペイントへの質問と回答

社会広聴会員:
塗料の商品について教えてください。
関西ペイント:
塗料には、錆びないようにするなどの素材保護と美観(意匠性・色彩・光沢などを与える)の2つの大きな役割があります。加えて、特別な機能付与という3つ目の役割が必要とされています。鉄は錆びるため、錆び止め塗料を塗りますが、身近なものでは自動車ボディーの一層目に錆び止め塗料が塗られています。また、暮らしをより快適にすることを塗料で対応できる機能性を与えようと取り組んでおり、その代表的な商品が先ほどご紹介した「アレスシックイ」です。その他にも、虫除け塗料、遮熱・断熱塗料、汚れにくい塗料、長持ちする塗料などたくさんの塗料があります。 
 

社会広聴会員:
女性は活躍していますか。
関西ペイント:
化学製品メーカーは全般的に女性がそれほど多くありませんが、当社では、製品開発・研究開発部門で、たくさんの女性が活躍しています。
 

社会広聴会員:
安全性や環境への取り組みについて。
関西ペイント:
塗料メーカーは化学品を扱っているため、安全が最優先事項です。各事業所に安全担当部署があり、安全環境管理部が全体を見ています。細部にわたり方針やルールがあり、モニターする体制も整っています。工場では指差呼称を一日何十回も徹底して行っています。原材料からの製造工程で、保護眼鏡やマスクなどの着用は徹底的に義務付けられ、定期的な特殊健診も行っています。また、工場から原材料の流出がないよう対策も講じています。建築塗料や自動車塗料は水性化が進んでおり、塗料製造における安全性はもちろん、環境に優しい方向に進んでいます。
 

社会広聴会員:
塗料業界、塗料会社の将来をどう考えていますか。
関西ペイント:
グローバルでは一大成長産業だと期待しています。グローバルで新中間層(年収が100万円位に届く)人口が、間もなく20億人に達するといわれています。今後、その人口が収入の高い方に移行する中で、まず家を持つ、次に工業化が進む、車を持つというプロセスがあります。このそれぞれのプロセスにおいて塗料が必ず使われており、当社は、家用も工業用も自動車用の塗料もラインアップしているので、グローバルで見ると将来は明るいという見方をしています。日本は人口減少ですが、住宅や個人の習慣は個の尊重がより進み、住宅の戸数自体は人口ほど減らないと考えています。現在、日本では、塗装による内装は10%しかなく、塗料需要自体はまだ広げるチャンスがあります。日本においても決してネガティブに考えてはいません。

参加者の感想から

●ペイントの用途について、建築物・工業用製品の内外を飾るだけでなく、消臭・防蚊機能などの新たな機能があることを知り、大変参考になりました。

●色の持つ力はすごいと思います。今まで気にも留めなかった建物、看板、公園の遊具など、私たちの周りには塗装とその色があり、それが生活を豊かに、便利にしてくれているのだと思いました。

●ペイントギャラリーでは見学だけでなく、実際に「塗る」という体験を通して、塗料を身近に感じることができました。

●B to B企業が、塗料の知識・魅力を生活者に啓発・普及に取り組まれているのを体験・体感し、大変感激しました。

●最近は水性塗料が主流となり、環境にも配慮されている塗料の安全性をもっと世の中にアピールしてほしいです。

関西ペイントご担当者より

 業界全体として塗料や塗装に親しんでいただこうという動きがあるなか、今回のイベントは、その利用者である方々に、直接、塗料のことを実感し、知っていただくことができる有意義な機会でした。
 ご参加いただいた皆さんが、私たちの話に熱心に耳を傾けていただき、にぎやかに塗装体験をしていただいたことは、何よりもうれしい瞬間でした。
 また、塗料や塗装に関心を持つ方がますます増えるよう、さらに市場への訴求が必要だと感じる機会でした。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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