生活者の企業施設見学会
2018年10月26日 大阪
企業・団体:田辺三菱製薬
見学施設:田辺三菱製薬史料館

「創業時から変わらぬ、世の中に役立つ薬づくりへの挑戦!」

2018年10月26日、田辺三菱製薬史料館(大阪府大阪市)で、「生活者の企業施設見学会」を開催し、社会広聴会員11名が参加しました。

概要説明

 田辺三菱製薬は、2007年10月に田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併し発足しました。しかし、その前身である田辺製薬の創業は、今から340年前にまでさかのぼり、1678年(延宝6年)、初代田邊屋五兵衞が、大阪・土佐堀田邊屋橋(現・常安橋)南詰で、合薬「田邊屋振出薬」の製造販売を家業として店舗を開いたことに始まります。製薬会社の中では日本最古、世界でも2番目に古い会社です。以来、一貫して世の中に役立つ薬づくりに挑戦し続け、数々の革新的な医薬品を創出してきました。企業理念の「医薬品の創製を通じて、世界の人々の健康に貢献します」に基づき、国際創薬企業として、社会から信頼される企業になることをめざしています。 
 2015年5月、本社2階に開館した「田辺三菱製薬史料館」は、くすりの町・道修町の歴史と文化、江戸時代から続く同社のあゆみと企業活動を紹介しています。

くすりって?

 我々の身近にありながら、実はよく知らない「くすり」は、大きく2つに分類されます。1つは、医師の処方箋が必要な医療用医薬品で処方薬といわれるもの。治療効果が高く、安全管理が必要であり、メディアでの宣伝はできません。もう1つは、薬局・薬店で自由に購入できる一般用医薬品でOTC医薬品・大衆薬といわれるもの。処方箋が不要で、メディアでの宣伝も可能です。日本の医薬品市場での両者の売上比率は9:1で、そのほとんどを医療用医薬品が占めています。さらに、医療用医薬品は、長年の研究開発を通して新しく発売される新薬(先発医薬品)と、新薬の特許期間が切れた後、同一成分で他の製薬企業が製造販売するジェネリック(後発医薬品)に分かれます。医薬品売上高上位100品目のうち85品目を日米欧の上位5カ国が創出。日本は米国、スイスに次ぐ世界第3位の新薬創出国です。新薬の研究開発期間は9~16年、研究開発費用は1000億円を超え、新薬創出の確率は2万5000分の1以下といわれています。田辺三菱製薬は、医薬品の中でも医療用医薬品の新薬を製造販売しており、連結売上収益のうち約99%が医療用医薬品によるものです。
 同館のフロアは3つのゾーンに分かれています。「くすりの道修町ゾーン~ルーツを辿る~」では、明治初期の道修町を田邊屋の店構えとともに再現。創業当時の軒下看板や大正時代に使用していた提灯などとともに、店先では十二代田邊五兵衛の映像が出迎え、同社のルーツを語ってくれます。通気を保ち外が見えにくい「虫籠窓」といわれる2階部分の格子窓、店先に置かれた看板代わりのロゴが入った「出し櫃」は、当時の道修町の薬問屋の特徴だったそうです。
 続く、「あゆみゾーン~歴史を巡る~」では、「計量法」に基づく秤の点検の基準器として高品質な医薬品の研究開発・製造を側面から長年支えた「基準手動天秤」などの数々の貴重な収蔵品を一堂に展示。戦後、経営が厳しい状態から起死回生の一手となり、第1回デミング賞を受賞した「ニッパス」という薬の小箱や、戦前戦後の処方薬のパッケージ、OTC医薬品のポスターなどの数々の展示物から、製薬技術の変化、社会の変化が分かります。
 壁面には、同社の合併の系譜や社業のあゆみをパネルやデジタル年表、映像などで分かりやすく紹介しており、製薬会社に合併が多いのは、薬の研究開発にお金がかかることによるとの説明に参加者は納得していました。 
 そして「いまと未来ゾーン~次代を拓く~」では、人体をかたどった立体スクリーンに映像を投影し、人体の仕組みや薬の作用を3DCG映像で解説する「バーチャル解体新書」、薬に関するクイズやパズル「タッチ&トライ」などの体験型展示で体と薬の密接な関係が学べます。壁面パネルでは、“アンメット・メディカル・ニーズ(未充足の医療ニーズ)”に応えるため、情熱を持って創薬・育薬に努力し続ける同社のフロンティア精神や、歴史を経て国際創薬企業へと向かう同社の今と未来の姿を紹介しています。
 最後に、日本の医薬品発祥の地といわれる道修町の「道修町ミュージアムストリート」を見学しました。薬の町の始まりは江戸・寛永年間、堺の薬屋小西吉右衛門が2代将軍徳川秀忠の命で道修町に店を開いたのが発端です。江戸中期には100軒を超える薬問屋が並び、当時日本に入ってくる唐薬の約90%が道修町に集まっていたため、幕府は道修町の薬問屋に薬種仲買株仲間という組織を形成させ、生薬の品質鑑定と価格決定の独占的な権限を与えました。明治に入り薬種仲買株仲間解散後も、道修町の薬問屋は時代の流れに追随し力を合わせて薬業界の西洋化をけん引してきました。
 道修町には同館の他に、明治の中ごろ、医薬品の近代化のために道修町の有力医薬品会社が資金を出し合って設立した大日本住友製薬のあゆみを紹介する「大日本住友製薬展示Gallery」、五代・六代武田長兵衛が本草医書の散逸を防ぐために私財を投じて典籍を購入し形成した「武田科学振興財団杏雨書屋」、塩野義製薬の商標にもなった分銅の実物や大福帳などを展示した「塩野義製薬本社展示コーナー」、そして、薬の神様である神農さんと少彦名命を祭った「少彦名神社」の社務所にあり、3万点もの道修町に関する資料を保存する「くすりの道修町資料館」があります。この5館を挙げてくすりの町・道修町で、地域活性を図る取り組みをしているとの説明に、参加者から現在も企業の枠を超えて協力し合う姿に感心の声が上がっていました。

参加者の感想から

「『なおせないをなくしたい』を軸に社会の変化やニーズに先見性を持って挑戦し続けてきたという自負に、創業340年の老舗企業のプライドを感じました」「田辺三菱製薬や道修町の歴史、少彦名神社のいわれ、薬種商の協力関係など、大変興味深かったです」「道修町ミュージアムストリートを歩き、ここで製薬会社を興し育て上げた人々の、この地域に対する誇りと愛着を感じました」「たなべや薬のルーツは島津家の陣中薬であったことが興味深いです」「道修町で複数の会社が協力し合い製薬業界の発展に尽力してきたことに感動しました」「人生100年。薬の役割はより大きくなっていくと思います。安心な生活のために、医薬の発展を見守りたいです」

お問い合わせ先
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