企業と生活者懇談会
2018年5月31日 愛知
出席企業:レンゴー
見学施設:新名古屋工場

「現代社会の物流を支える『パッケージング』の最先端を学ぼう!」

5月31日、レンゴーの新名古屋工場(愛知県春日井市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、生活者18名が参加しました。はじめにレンゴーから、製紙、段ボール、紙器、軟包装、重包装を中心とした、パッケージ関連の多彩な事業について、続いて、世界最先端の段ボール工場である新名古屋工場の概要について説明を受けました。その後、工場内で、段ボールが出来るまでの様子を見学。さらに、小学生向けの出前授業や、段ボールの組み立てを体験しました。また、懇談では、内容物に合わせて工夫を凝らした機能性段ボールや最新の技術、段ボールを製造する際のエネルギー効率や安定供給、リサイクルといった環境への取り組みなどについて、活発な議論を通じて理解を深めました。
レンゴーからは、新名古屋工場の奥利壽工場長、小野喜昭総務部長、岡野智彦製造部長、鈴木良武品質保証室長、広報部の後藤光行執行役員広報部長、室谷哲郎部長、長井絵里子氏、環境・安全衛生部の山下毅部長代理、楠本幸絵主任が出席しました。

レンゴーからの説明

■レンゴーの概要■
 レンゴーの歴史は、1909年(明治42年)、創業者の井上貞治郎が同社の前身である三盛舎(後に三成社)を設立し、日本で初めて段ボールの事業化に着手したことに始まります。「段ボール」という名前は、段の付いたボール紙であること、また語呂も良く覚えやすいとのことで井上が命名しました。軽くて丈夫、安価で大量生産や印刷も可能、折り畳めてリサイクルもできるという特徴を持つ段ボールは需要を伸ばし、それまで物流包装材の主流だった木箱に取って代わっていきました。1920年(大正9年)に、「紙を聯ね合わせて包装紙をつくる会社」の意味から、「聯合紙器株式会社」を設立し、その後、1972年(昭和47年)には、「聯合」から現在の「レンゴー」という親しみやすい社名に変更しました。 

■6つのコア事業■
 レンゴーグループは、長年にわたる包装に関する技術とノウハウを生かした総合力により、様々なお客さまの「包む」「装う」に対するニーズに応えるとともに、「物の流れ」の最適化を考え、現在では、製紙、段ボール、紙器、軟包装、重包装、海外の6つのコア事業を中心に多彩な事業を展開しています。国内の直営工場は33工場、国内グループ企業72社、海外グループ企業がアジア、欧州、中東、米国など、143工場、23拠点として、国内・海外に生産ネットワークが広がっています。あらゆる産業の全ての包装ニーズに対して、総合的なソリューションを提案する企業グループ「ゼネラル・パッケージング・インダストリー」=GPIレンゴーとして、たゆみないイノベーションで、環境に配慮し、付加価値の高いパッケージづくりを行っています。

■環境への取り組み“Less is more.” ■
 「人に、環境に優しいこと」を事業活動の基本とするレンゴーグループは、より少ない資源で大きな価値を生むパッケージづくりを表わす“Less is more.”をキーワードに環境への様々な取り組みを行っています。
 段ボール工場として初めての大規模太陽光発電設備の導入などによって、1990年度比28.2%(2017年度)のCO排出量削減を達成しています。また、段ボールの製造時に発生する端材を自社の製紙工場で段ボールへと再生するなどの取り組みから、古紙使用率は98.2%(2017年度)に達しています。
 さらに、使用済み段ボールの適正なリサイクルを促進するため、段ボール箱に「段ボールのリサイクルマーク」を表示することをユーザーに提案し、普及・啓発にも積極的に取り組んでいます。取り組みの結果、日本での段ボールの回収率は96.6%(2016年)に達しています。レンゴーでは、パッケージづくりを通じて社会に貢献することが使命であると考えています。

■新名古屋工場の概要■
 新名古屋工場は、名古屋市東区に立地していた名古屋工場の移転先として、愛知県春日井市に建設され、2014年1月より稼動しました。敷地面積は、10万5785平方メートル(ナゴヤドームとほぼ同じ面積)で、同工場では段ボールシート、ケースの生産を行っており、太陽光発電設備の導入、段ボール工場では初のラック式免震自動倉庫を導入し、効率的な在庫管理と物流作業の安全性向上を図っています。また、高い天井と換気による暑さ対策の徹底とともに、照明は全てLEDを用いると同時に自然光も活用し、明るく働きやすい作業環境を実現しています。

■段ボールの製造は2工程■
 新名古屋工場では、段ボールシートをつくる貼合工程と、出来上がった段ボールシートの加工・印刷を行って段ボールケースをつくる製函工程があります。ここで1日につくられる段ボールの面積は東京ドーム約11個分にもなります。

見学の様子

■貼合工程■
 コルゲータという機械で段ボールシートをつくっていく工程を貼合工程といいます。この工程で用いる最新鋭の機械では、幅2メートル50センチの段ボールシートを1分間に350メートル生産することができます。
 まず、ギザギザの付いた2本のロールの間に中しん原紙を通して波状に成形し、波状の頂点の部分にのりを付け、平らな原紙(裏ライナ)と貼り合わせて片面段ボールをつくります。次に、片面段ボールにのりを付け、平らな原紙(表ライナ)を貼り合わせ、180度の熱で乾燥させます。乾燥を終えると、1枚1枚折り目を付け、決められた長さに切断し、箱をつくる材料となる段ボールシートが出来上がります。一定の枚数に積み上げ、次の製函工程へと移します。

■製函工程■
 貼合工程で出来た段ボールシートは、みかん箱のような一般的な形状の段ボールケースの場合、フレキソグルアと呼ばれる機械で、印刷から箱の成形までを1工程で一気に行います。印刷の工程では、商品名やイラストなどの絵柄やバーコードを印版で段ボールシートに直接印刷し、縦に切れ目を入れ、折れ目を付けます。印版は、製品ごとに全て異なるため、印刷のたびに交換する作業が必要となります。その後、折り目にそって折り畳み、のり付けをして箱状に加工します。
 缶ビールなどの飲料缶に使用されるケースや複雑な形状のものは、別の機械で印刷した後、さらに型抜き加工をします。最後に、結束機で所定の枚数にそろえ、束ねてひもをかけ、パレットに積みます。パレットに段ボールを積む作業はロボットが行っており、一定の間隔で大きな段ボールシートを間に敷き、荷崩れ防止の作業を行っています。こうしてパレットに積まれた段ボールケースは自動で倉庫まで運ばれます。
 各機械の上には電光掲示板があり、1つの製品を生産する経過時間や、1分間に何枚生産しているかが表示され、作業員はこれを見ながら作業効率を確認しています。その他にも、現在何をつくっているのかが、一目で分かるように詳細を表示するモニターが設置されていたり、インクの汚れや印刷の欠けなどの不良をカメラで確認したり、作業効率向上と品質管理のための工夫を様々なところで見ることができます。

■段ボール工場初のラック式免震自動倉庫■
 製函工程を経た段ボールは、常時稼動している5台の自動搬送装置によって、ラック式免震自動倉庫へ運ばれ、保管されます。この倉庫は3118の棚があり、6000パレット分の製品の保管が可能です。
 また、積まれた段ボールケースには、プラカードが付いており、それぞれの製品情報が入っています。プラカードを付けたままお客さまに届けるので、配送後に不具合があった場合は、そのプラカードの情報をもとに工程などをさかのぼって確認し、その原因をお客さまへフィードバックすることができます。

体験の様子

■小学生向けの出前授業を体験■
 参加者は、レンゴーが行っている小学生向け環境教育を体験し、段ボールの特徴や知識について学びました。段ボールは、①軽くて強い、②中身がわかる、③中身を大切に守る、④たくさん積める、⑤いろいろな形になる、⑥宣伝も上手、といった特徴を有し、暮らしのあらゆるところで活躍しています。何度でも再生でき、ごみにならず、資源を有効活用している段ボール。レンゴーの段ボールは98%が古紙からつくられているのだそうです。その他にも、段ボールについての豆知識や専門用語などを知り、段ボールについて理解を深めました。

■段ボールの組立体験■
 続いて、段ボールを使った、2種類の組立体験をしました。この体験では、まず、猫の顔を型どった段ボールを組み立て、かわいらしい小物入れをつくりました。そして複雑な形をつくる組み立てでは、説明を受けながら挑戦し、「難しい」「できた!」といった声があちらこちらで聞かれ、楽しみながら、段ボールに触れ、その特徴をあらためて実感することができました。

レンゴーへの質問と回答

社会広聴会員:
今後の段ボールの可能性は。
レンゴー:
段ボールは100%リサイクルが可能です。元々の原料である紙も木からつくられますので、太陽と水と炭酸ガスがある限り再生産が可能です。それゆえ、段ボールは持続可能な包装材であり、これに勝るものはないかと思います。また、この世で物が動く限り「包むもの」として「段ボール」が必要になります。最近は、ネットショップの利用者が増えるなど、段ボールの需要も増加しています。将来的には、IT(情報技術)やAI(人工知能)がさらに普及した社会となっていくでしょうが、それでも最後に人とコンピューターをつなぐには、配達が必要で、トラックとドライバー、そして段ボールが必要不可欠です。段ボールはこれからも進化をしつつ生き残っていくでしょう。
 

社会広聴会員:
機能性段ボールについて教えてください。
レンゴー:
青果物用の鮮度保持段ボールは、需要が高いです。野菜や果物などは、呼吸をし、水分が蒸発するとだんだんと鮮度が落ちていきます。そこで蒸発をコントロールするために、人体に無害な薬剤を段ボールに塗り、防湿・鮮度保持効果を持つ段ボールが生まれました。その他にも、金属製品や電子部品のさびや腐食を防ぐものや、水や結露にも負けない耐水段ボール、保冷段ボールなどがあります。以前は耐水段ボールといえば、蝋を塗っていましたが、リサイクルができないため、現在では違う方法を用いています。どの段ボールも必ずリサイクルができるようつくられています。これまでに様々な機能性段ボールが開発されてきましたが、全てお客さまのニーズを聞きそれに応えてきた結果です。
 

社会広聴会員:
「多様な人材が活躍できる職場づくり」の具体的な取り組みについて教えてください。
レンゴー:
特に、女性の活躍推進に力を入れています。新名古屋工場には、工場では初の女性オペレーターが勤務しています。デザイン部門やマーケティング部門では、9割が女性で非常に活躍していますが、段ボール業界は男性社会というイメージがあり、製造現場や営業ではまだまだ女性が少ないというのが現状です。そこで、当工場では、お手洗い設備の配慮や、工場内の暑さ軽減など、女性が働きやすい環境を整えています。こうした取り組みから、新名古屋工場をモデル工場とし、各地の工場でも取り組んでいこうとしています。今後もこの取り組みを広め、どの工場でも安全で、快適な職場で女性をはじめ誰もが気持ち良く働ける環境をつくっていきたいと考えています。

参加者の感想から

●お客さまのニーズに応えるために、様々な工夫がされている点や、段ボールを製造するだけでなく、デザインまで提案するなど、トータルなサービスを提供している点が印象に残りました。

●資料を事前に送っていただき、予習が少しできたとはいえ、想像をはるかに超えた素晴らしい企業でした。何よりもリサイクル100%を目指しているという高い理念に触れ、とても感動しました。

●環境教育の体験では、段ボールの特徴や利点を、とても分かりやすく、大人でも十分、学べる内容でした。

●工場見学時に靴カバーを履いたり、異物が混入しないよう、キャップ付きのペンを持ち込まないなど、衛生面や品質管理に高い意識を持っていることがよく分かりました。

●懇談会では、質問に対してユーモアを交え、懇切丁寧な回答をいただき、生活者と真摯に向き合う企業としての姿勢や誠実さを感じました。

レンゴーご担当者より

 懇談会では活発なご質問やご意見をいただき、誠にありがとうございました。どんなに素晴らしい商品も、それを包む段ボールがなければ、その価値を世の中に届けることはできません。今回の見学会をとおして、私たちの身近にある段ボールが、日々進化を遂げ、様々な工夫がなされていることを知っていただく機会となりましたら幸いです。当社はこれからも“Less is more.”のイノベーションで、人にも環境にも優しい製品づくりに努めてまいります。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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