生活者の企業施設見学会
2018年6月19日 神奈川
企業・団体:JXTGエネルギー
見学施設:スイソテラス

「『未来の水素社会』を実現する水素エネルギーについて学ぼう!」

2018年6月19日、JXTGエネルギーの水素情報発信拠点「スイソテラス」(神奈川県横浜市)で「生活者の企業施設見学会」を開催し、社会広聴会員16名が参加しました。

概要説明

 2017年4月のJXホールディングスと東燃ゼネラル石油の経営統合によりJXTGホールディングスが誕生しました。JXTGエネルギーは、その傘下にある3つの中核会社の1つです。ENEOS、エッソ、モービル、ゼネラルのブランドでおなじみの石油精製販売をコア事業とし、電力事業や水素事業にも注力しながら、総合エネルギー企業として多様なエネルギーをお客さまに安定供給しています。また、自社の保有技術を生かした機能性フィルムや不織布などの機能材事業も推進しています。
 今回訪問したスイソテラスは、未来を担う水素エネルギーについて、「見る」「体験する」をコンセプトに水素情報発信拠点のショールームとして、2017年3月にオープンしました。次世代都市型スマートシティとして先進的環境配慮に取り組んでいる「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」内にある、燃料電池自動車(FCV)に水素燃料を供給するENEOS横浜綱島水素ステーションに併設され、映像や水素充填の模擬体験などを通じて「水素の力」を身近に感じられるスペースとなっています。スイソテラスは水素利用拡大に向けた普及啓発活動を目指し、将来の水素社会に向けた水素エネルギーに関する情報を発信しています。

見学の様子

 まず、2階のミニシアターでプロジェクションマッピングの映像を見ながら、水素エネルギーの特性や水素ステーションの安全対策、同社の水素エネルギーに関する取り組みなどについて学びました。
 水素は地球上で3番目に多い元素で、人工衛星打ち上げロケットをはじめ、光ファイバー、半導体、液晶パネル製造、LED、ニッケル電池、ビタミン剤などに使われ、私たちの身の回りで暮らしに役立っています。
 水素と酸素を反応させて電気を発生させる燃料電池は、使用時にCOを排出しないクリーンエネルギー技術としても注目されており、自動車分野ではFCVなどに使われています。現在、FCVに水素燃料を供給する水素ステーションは四大都市圏を中心に100カ所、うちENEOSブランドのものは40カ所で、今後さらに増えていきます。
 将来の水素社会では、水素発電が導入されたり、水素の製造から消費まで完全なCOフリーの水素供給システムが構築されたりすることが見込まれるなど、地球温暖化対策やエネルギー自給率向上の解決策の1つとして、水素エネルギーは様々なポテンシャルを秘めた新しいエネルギーであることを学びました。
 次に、水素ステーションの安全対策について理解を深めました。水素ステーションには高圧ガスを扱える資格を持ったスタッフが常駐し、監視しています。水素は空気よりも軽いため、万が一、水素漏れした場合も水素が上に逃げて拡散できるよう、水素ステーションの天井は開放されています。水素は燃えても無色透明で肉眼では見えませんが、炎に含まれる紫外線を検知する紫外線炎検知器が設置されています。水素ガス漏れ検知器も完備され、アラームが鳴ると機器が自動停止する仕組みになっています。水素ガスは空気中の水素濃度が4%で引火しますが、検知器は1%でアラームが鳴るよう設定されています。この他にも、地震計やスプリンクラーなどが張り巡らされ、何重もの安全対策が取られています。
 JXTGエネルギーの水素事業の取り組み紹介ビデオでは、同社の水素製造出荷センター(横浜市)や水素ステーションでどのように水素が貯蔵されているのかについて理解を深めました。同センターでは、プロパンガスと水を高温で反応させ、不純物を除去して高純度の水素を作ります。製造された水素は圧縮され、蓄圧器という高圧タンクに貯蔵して、専用トレーラーで首都圏にあるENEOSの各水素ステーションに出荷されます。トレーラーで運ばれた水素は水素ステーションで再び圧縮され、蓄圧器に蓄えられます。
 続いて、1階の展示フロアでは説明員の解説を聞きながら、水素ステーションの安全を支える技術について学びました。
 水素ステーションで保管される水素は最大82メガパスカル(約820気圧)まで圧縮されるため、蓄圧器は耐高圧性と高気密性を保たなければなりません。また、水素は分子が細かく金属をもろくする性質があるので、耐水素性に優れた材料が求められます。そこで、蓄圧器の内側はアルミ製ライナーで作られ、外側は航空宇宙用途にも使用される炭素繊維複合材料を10センチメートルの厚みまで巻いて強度を保っているそうです。また、水素ステーション内の圧縮機周辺の水素が通る配管には、従来は難しかった溶接継手が可能で、90度近く曲げることができる新素材が使われています。溶接箇所が少ないので密閉性にも優れ、曲げる加工ができるのでダウンサイジングも可能となりました。さらに、水素をFCVに充填する際のホースも特殊な材料で作ることで、耐高圧性としなやかさを実現することができました。このように、水素ステーションの設備は、安全性を高めるための技術や機能素材で支えられています。
 気体は圧力をかけると高温になるので、水素ステーションでは、マイナス40度に冷やされてディスペンサー(FCVに水素を送り込む機械)からFCVに充填されます。FCVのカットモデルの充填口にノズルを差し込み、ディスペンサーのタッチパネルを操作して水素充填の模擬体験をしました(水素は流れません)。タッチパネルの開始ボタンを押すと、赤外線通信によってFCVに残っている水素の量、温度、圧力を検知して最適な温度とスピードで充填します。このような先端技術によって、実際の水素充填でも約3分でタンク内が満タンとなる5キログラムに達することが可能となります。水素ステーションでは、資格がないと水素を充填することはできないため、ここでは貴重な体験ができました。
 参加者は見学を通じて、水素エネルギーとは何か、そして水素エネルギーがどのように作られて水素ステーションに届けられるのか、また将来の水素社会などについて「見て」「体験して」理解を深めながら、水素エネルギーを身近に感じることができました。

*ENEOS横浜綱島水素ステーションでは、事業者と水素充填準備作業を行う契約を結び、かつ安全に関する講習を受講するなどの要件を満たすことにより、水素を自ら充填するセルフ充填を行うことができるようになりました。

参加者の感想から

 「水素エネルギー充填の模擬体験は興味深いものでした」「水素ステーションなど、話に聞くものの、とても遠い存在でした。百聞は一見に如かず、大変よく理解でき、安全を考え、様々な新技術が開発されていることも理解しました」「水素燃料について学べ、未来の車社会がぐんと身近になった感じがしました」

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
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