企業と生活者懇談会
2019年3月19日 東京
出席企業:森ビル
見学施設:六本ヒルズ

「六本木ヒルズの裏側を探検し、安全・環境・文化を重視した都市づくりについて学ぼう!」

3月19日、森ビルが運営する六本木ヒルズ(東京都港区)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員19名が参加しました。まず、森ビルの企業概要や親子向け学習プログラム「ヒルズ街育プロジェクト」の概要などについて説明を受けました。続いて、六本木ヒルズで、通常非公開の10万食分の飲食料品や医薬品を保管する備蓄倉庫や様々な動植物が観察できる屋上庭園、各所に設置されたパブリックアートなどを見学し、最後に質疑懇談を行いました。
森ビルからは、広報室の野村秀樹室長、田部麗氏、服部祐平氏、佐々木悠理氏、三品秋穂氏、震災対策室の寺田隆事務局長、環境推進室の村田麻利子氏が出席しました。

森ビルからの説明

■森ビルの概要■
 今年(2019年)で設立60周年を迎える森ビルは、「都市を創り、都市を育む」をコンセプトに、都市再開発事業や不動産賃貸・管理事業、文化・芸術・タウンマネジメント事業などを手掛ける総合ディベロッパーで、東京都港区を中心に約100棟の物件を運営管理しています。
 森ビルの前身である森不動産が初めて手掛けた賃貸ビルが、1957年に完成した西新橋1森ビルと西新橋2森ビルです。この2棟のビルから森ビルの歩みが始まりました。その後、新橋・虎ノ門地区に集中的にオフィスビルを建設し、本格的な賃貸オフィス事業に進出。1960年代には、事業拡大に伴い、ビル単独の「点的開発」から、複数の街区や街路を含めた「面的開発」へと移行していきました。そして、1986年、民間による日本初の大規模再開発事業となるアークヒルズが完成しました。
 オフィス、住宅、ホテル、コンサートホールなどからなるアークヒルズは、職住近接や都市と自然の共生、文化の発信などを具現化した、森ビルの都市づくりの原点です。「地元住民に街づくりへの参加を呼び掛け、じっくりと対話を重ねていく」という、設立当初から変わらない開発手法を貫き、構想から完成までは実に17年の歳月を要しました。
 その後も、建築家の安藤忠雄氏とともに設計した表参道ヒルズ(2006年)や地上101階、高さ492メートルを誇る上海環球金融中心(2008年)、銀座エリア最大級の大規模複合施設GINZA SIX (2017年)といったプロジェクトを国内外で手掛けてきました。
 その他にも、これまで東京で培ってきた都市づくりのノウハウを生かし、香川県高松市の丸亀町グリーン(2012年)や愛媛県松山市のアエル松山(2015年)、福井県永平寺町の永平寺門前再構築プロジェクトなど地方都市の“磁力”を高める取り組みにも携わっています。 

■ヴァーティカルガーデンシティ(立体緑園都市)■
 森ビルの都市づくりには、1.安全・安心、2.環境・緑、3.文化・芸術という3つのテーマがあります。これらのテーマを達成するため、都心の空と地下を有効活用することでオフィスや住宅を縦に集約し、地上部分を人と緑に開放する都市モデルを生み出しました。この理想的な都市モデルをヴァーティカルガーデンシティ(立体緑園都市)と呼んでいます。建物を高層化するとともに、映画館やコンサートホール、店舗といった外からの光を必要としない施設はなるべく地下に配置するなどして効率的に空間を使うことができます。それによって、職、住、遊、商、学、憩、文化、交流などの多彩な都市機能を立体的重層的に組み込んで、徒歩で暮らせるコンパクトシティの実現を目指すというのが森ビルの都市づくりの基本的な考え方です。

■六本木ヒルズの概要■
 六本木ヒルズは、森ビルにとって社運を懸けたといっても過言ではない超大規模再開発プロジェクトです。区域面積は約12ヘクタール、延床面積は約76万平方メートルの規模を誇り、居住者数は約2000人、就業者数は約2万3000人で、年間では約4000万人が訪れています。
 再開発前は木造の家屋が密集していて、消防車が入れないような狭い路地が入り組んでいるようなエリアでしたが、再開発することによって広い道路を通したり緑化を進めたりするなど、都市インフラの整備を進めました。地権者の方々と共同で都市づくりに取り組んでいくに当たって、これから住み続ける人々にとって安全な街につくり変えるということは最重要事項でした。400人以上の地権者の方々と何百回も膝を突き合わせながら対話を積み重ねて合意形成を図り、17年の歳月をかけて2003年に六本木ヒルズは完成しました。
 東京に新しい「文化都心」を生み出すことをコンセプトの1つに掲げる六本木ヒルズは、オフィスやレジデンス、ショップ、レストランはもちろんのこと、展望台や美術館、会員制クラブ、アカデミー・フォーラム、映画館といった文化施設も充実しています。その他にも地上には日本庭園やパブリックアート、イベントスペースなどもあり、知的な刺激に溢れています。働き、住み、遊び、学び、交流するなど、様々な要素が複合的に組み合わさったコンパクトシティを実現しています。
 森ビルは、完成後も街を手塩にかけて育んでいくタウンマネジメントにも力を入れています。例えば、春には春祭り、夏には盆踊り、秋にはハロウィーンパレード、冬にはクリスマスイルミネーションといったように、1年を通して様々なイベントを開催し、来街者をひきつけています。

見学の様子

■ヒルズ街育プロジェクト■
 森ビルは、創業から60年にわたり地域の方々とともに都市づくりを手掛ける中で培ってきたノウハウや都市づくりの魅力を子どもたちに伝えるとともに、次世代の都市の在り方を考えるための機会として、文部科学省や港区教育委員会と連携し2007年よりヒルズ街育プロジェクトに取り組んでいます。これは、実際の“街”を舞台とした見学やワークショップからなるツアーを通して、都市づくりについて学ぶものです。現在では、様々な種類のツアーが開催され、毎年合計で1500名を超える小学生や保護者が参加しています。
 参加者は、その中でも特に人気の高い「六本木ヒルズのヒミツ探検ダイジェストツアー」を体験し、森ビルが都市づくりをする上で大切にしている3つのテーマについて学びました。

■「逃げ出す街」から「逃げ込める街」へ■
 森ビルは、阪神・淡路大震災を機に「逃げ出す街から逃げ込める街」へというコンセプトを掲げ、ハード・ソフト両面での震災対策を進めています。
 ハード面の対策として、六本木ヒルズをはじめとした超高層ビルには地震や風のエネルギーを吸収する制振装置を導入し、行政の基準値の1.5倍以上高い耐震性を有しています。また、電力供給については、六本木ヒルズ独自の都市ガスを燃料とする発電プラントを地下に有しています。有事の際には電力会社からの供給と灯油を燃料とする非常用発電機のバックアップも備えていて、3重の安定性を持っています。東日本大震災の際には停電が生じなかったどころか、発電した電力の余力と節電分、約1100世帯分を東京電力に提供しました。
 ソフト面の対策として、行政機関や入居者、近隣などと連携しながらエリア全体の防災力を向上させるため、六本木ヒルズ自治会や消防署と連携した震災訓練を定期的に行っていたり、オフィスや店舗の就業者に対しての啓発活動を行ったりしています。また、防災対応拠点となる六本木ヒルズ近隣2.5キロメートル圏内に約100名の訓練を受けた社員が居住していて、夜間や休日に災害が発生した際にも迅速な対応が行える防災組織体制が敷かれています。
 見学した備蓄倉庫には、10万食の備蓄食料や、毛布、医薬品、簡易トイレなどが保管されており、帰宅困難者が3日間生活できるようになっています。その他にも災害用の井戸が設置されており、各施設ならびに近隣に生活用水を供給することが可能となっています。

■都市と自然の共生を目指して■
 かつて「再開発」は「環境破壊」であるといわれることがありましたが、森ビルは、自然との共生を目指した都市づくりに取り組んでいます。
 六本木ヒルズは、ヴァーティカルガーデンシティ構想を具現化した設計となっており、細分化した土地をまとめて建物を高層化することによって生み出した地上に緑地を設けています。それと同時に建物の屋上にも庭園を設置するなどして、さらなる緑化を進めています。都市の緑化はヒートアイランド現象の緩和にも貢献していて、六本木ヒルズ周辺の温熱画像(サーモマップ)を見ると、緑化された六本木ヒルズが周辺に比べ、日中で5~15℃表面温度が低くなっていることが分かります。
 見学を行った六本木ヒルズけやき坂コンプレックスの屋上庭園には、四季を彩る様々な植物とともに日本の農風景を再現した水田や菜園も設置されています。ここでは田植えや稲刈りなどの伝統的な稲作文化の体験ができる機会を地域の方々や子どもたちに提供しています。

■経済と文化の両立と融合を果たす「文化都心」■
 森ビルは、経済的な視点に偏りがちだった従来の都市開発の在り方を見つめ直し、文化的な魅力や豊かな環境も備えることを都市づくりの重要なミッションの1つに掲げています。
 六本木ヒルズでは、「文化都心」の象徴として、美術館や展望台、会員制クラブ、アカデミー・フォーラム施設からなる複合文化施設「森アーツセンター」をメインタワーの最上層に配置しています。気軽に一流の文化や芸術に接することができる環境や、異なる価値観や背景を持つ旬な人々が交流し協働する機会を設けることで、都市の“磁力”を高め、世界の人々をひきつけたいとの考えからです。
 また、敷地内の各所にも多種多様なパブリックアートが展開されています。六本木ヒルズを東京の文化の中心地にしようというアイデアの一環としてスタートしたもので、20人以上の世界的アーティストやデザイナーが制作したカラフルなアートワークやデザイン作品が街に彩りを添え、来街者に楽しい散策を提供しています。
 江戸時代の大名屋敷の名残を今に伝える日本庭園「毛利庭園」には、六本木ヒルズと森美術館の10周年を記念して制作された「Kin no Kokoro」という名前のパブリックアートがあります。これは見る位置や距離によってハートやメビウスの輪など見え方が変わるもので、参加者は、毛利庭園を散策しながら、江戸時代から続く歴史的な風景と先鋭的なアートワークが織り成す創造的な文化都心の景観を楽しみました。

森ビルへの質問と回答

社会広聴会員:
港区だけではなく東京という都市全体の“磁力”を高めるような取り組みを行っていますか。
森ビル:
世界の都市総合力ランキングなどから東京はロンドンやパリ、ニューヨークと比較して、文化・交流の側面が弱みとなっていることが分かっています。例えば森ビルは昨年(2018年6月)、東京・お台場エリアに世界に類のないミュージアムをつくりました。デジタルアートを手掛けるチームラボとのコラボレーションによって誕生した「森ビルデジタルアートミュージアム:エプソンチームラボボーダレス」です。1万平方メートルという巨大な空間に境界のないアート作品を展示しています。開業からわずか1年で来場者数は200万人を突破する勢いです。約3割が海外からのお客様となり、すでに東京の強い磁力となっています。
 

社会広聴会員:
森ビルが考える「文化」とはどのようなものでしょうか。
日本通運:
一言で表現することは難しいですが、それに触れることで心が豊かになったり、新しい刺激を受けたりするような体験を提供するモノやコトを「文化」と捉えています。東京を世界の人を引き付ける都市にするためには文化の要素は欠かせません。森ビルは、都市の中に文化施設を組み込み、またそれぞれのエリアの歴史や特性に合わせたイベントを開催することで、豊かな都市生活を提供しています。例えば、海外の方々が多く訪れる六本木ヒルズでは、盆踊りやお木曳きなどの開催を通じて日本の伝統文化を伝えています。

参加者の感想から

●森ビルが、都市づくりにおいて、徹底した安全対策や緑化を進める環境への取り組みなど、あらゆる角度から東京の“磁力”向上について追求している姿勢が素晴らしいと思いました。「人が幸せになる都市づくり」を考えている企業と思え、好感度が上がりました。

●建物を高層化することで緑も増えて災害にも強い都市になるということに意外性を感じましたが、六本木ヒルズを実際に歩いて見学し、納得できました。

●六本木ヒルズ内の電力供給を都市ガスによる自家発電で賄っていることに驚きました。その後の東日本大震災、今後起こり得る災害を思うと、先見の明と英断に感服し頼もしく思いました。

●六本木ヒルズの完成までに地元の住民と長年協議を重ねてきたとの紹介がありましたが、見学を通して確かにその雰囲気が漂ってきました。オフィス、レジデンス、商業空間、アートを一堂に融合させ、そして継続させることは森ビルならではの業だと感動しました。

森ビルご担当者より

 当社の広報室は、都市に対するビジョンを明確に示しながら、社会と誠実に対話を積み重ねていく広報活動に取り組んでいます。今回のようなface to faceのコミュニケーションによる懇談会は私たちにとっても大変貴重な機会となりました。これからも私たちが創り、育んでいる街の魅力を一人でも多くの方に知っていただけるよう、積極的な広報活動を展開していきます!このたびは、ありがとうございました。

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
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