企業と生活者懇談会
2019年7月5日 奈良
出席企業:大和ハウス工業
見学施設:総合技術研究所

「人・街・暮らしのより良い未来をつくるアスフカケツノ技術とは」

7月5日、大和ハウス工業の総合技術研究所(奈良県奈良市)で「企業と生活者懇談会」を開催し、社会広聴会員17名が参加しました。はじめに、大和ハウスグループが事業を展開する3つの分野①ハウジング分野、②ビジネス分野、③ライフ分野について説明を受けた後、総合技術研究所を見学。安全・快適を実現するテクノロジーや未来を見据えて研究を進めている領域についての理解を深め、最後に質疑懇談を行いました。
大和ハウス工業からは、総合技術研究所の広沢建二副所長、大槻卓也新領域技術研究部長、広報企画室の大友雅弘広報グループ上席主任、松木さやか東京広報グループ主任が出席しました。

大和ハウス工業からの説明

■大和ハウスグループの歴史■
 大和ハウスグループの歴史は、1955年に創業者の石橋信夫が“建築の工業化”という理念のもと、大和ハウス工業を創業し「パイプハウス」を発売したことに始まります。パイプハウスとは、大型台風で多くの住宅が倒壊したとき、強風にも折れない稲や竹をヒントに開発されたスチールパイプを活用した仮設建物で、骨組みや壁などの部品を工場で大量に生産できることと、現場で簡単に組み立てられることが特徴で、国鉄で採用されたのをきっかけに官公庁を中心に倉庫や事務所など日本全国に普及し、高度経済成長を支えました。
 その後、戦後のベビーブームの際には“3時間で建つ勉強小屋”としてプレハブ住宅の原点「ミゼットハウス」を発売。住宅不足が問題となった際には民間初のデベロッパーとして大規模団地を開発するとともに住宅ローンの先駆けとなるサービスを提供。人々の生活が豊かになるのに合わせてリゾート事業に本格参入。このようにして、時代の変化の中で常に先の先を読みながら、社会が必要としている商品やサービスを次々と創出し、事業の道を切り拓いていきました。
 現在では、グループ全体で従業員数は約6万8500名、売上高は約4兆1000億円。「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、住宅を中核に多岐にわたる事業を展開しています。

■3つの事業分野■
 大和ハウスグループの主な事業分野は、①ハウジング分野、②ビジネス分野、③ライフ分野の3種類に分類することができます。 
①ハウジング分野
 戸建住宅・賃貸住宅の建築やマンションの販売・管理、インテリア提案や仲介事業など、住まいに関わる様々な事業を展開しています。これまでに累計で約180万戸の住宅を販売してきました。長年にわたる住まいへの知恵とノウハウ、そして経験に培われた最新技術を駆使し、高耐震・高耐久・省エネの家づくり・街づくりを推進しています。また、近年では空き家問題への対策の1つとして、既存住宅を購入し、リノベーションあるいはリフォーム後に再販する住宅ストック事業「Liveness(リブネス)」にも注力しています。
②ビジネス分野
 商業施設や物流施設、医療・介護施設などの建築や管理・運営、建物の屋上・壁面などの総合緑化、会員制のカーシェアリング事業、太陽光・風力・水力による発電事業、公民連携により社会課題の解決を目指すPPP事業など、お客さまのニーズに合わせた幅広いソリューションを提供しています。
③ライフ分野
 “心まで豊かな暮らし”をモットーに、ホテル事業やゴルフ場を運営するとともに「スポーツクラブNAS」を全国に展開しています。その他にも、ホームセンター「ロイヤルホームセンター」や介護付有料老人ホーム「もみの樹」「ネオ・サミット」、クレジットカード「ダイワセゾンカードHeart One(ハートワン)」なども手掛けており、快適でゆとりある毎日を過ごせるよう、暮らしのあらゆるシーンのお手伝いを目指しています。 

見学の様子

■総合技術研究所の概要■
 総合技術研究所は、約3万平方メートルの広大な敷地に広がる研究施設で、様々な分野の研究者が、これからの社会課題を解決していくための“ア・ス・フ・カ・ケ・ツ・ノ”技術をキーワードとして、日々、研究開発に取り組んでいます。
ア:安全・安心
 天災・人災に対して安全を確保することや住まう人にとっての安心を提供できることを主眼としています。これまでの成果として震度7クラスの地震エネルギーに繰り返し耐えられる耐震技術「Σデバイス」などが挙げられます。
ス:スピード・ストック
 建築の工業化のパイオニアとして、時代を先取りして対応することにより、良質なストックの末永い活用を目指しています。これまでの成果として狭小空間点検ロボット「moogle(モーグル)」などが挙げられます。
フ:福祉
 少子高齢化の進む中、全ての人に対する繊細な配慮を追求し、ユニバーサルデザインに美しさの観点を加えた「フレンドリーデザイン」を提唱しています。これまでの成果として靴の着脱をサポートする「スライドベンチ付きシューズボックス」などが挙げられます。
カ:環境
 自然エネルギーの利用や省エネルギー・緑化の推進、資源循環などにより、次世代にわたって心豊かに生きることのできる社会の実現を目指しています。これまでの成果としてPM2.5や二酸化窒素などの大気汚染物質を浄化できる「大気浄化壁面緑化システム」などが挙げられます。
ケ:健康
 心と体の健康について、従来からの建築学的な観点に医学的なアプローチも加えて研究開発を進めています。これまでの成果として在宅しながら日々の健康チェックが可能な「インテリジェンストイレ」などが挙げられます。
ツ:通信
 長年培ってきた建築技術や生活提案と通信技術を組み合わせることによって、新しい価値の創造を図っています。これまでの成果として家庭のエネルギー使用状況を把握し、空調や玄関ドアなどを集中コントロールできる「D-HEMS3」などが挙げられます。
ノ:農業
 農産物の生産現場における合理化・工業化により、食料の安定供給を図るとともに、食生活の安全性も追求します。これまでの成果として安全・安心な良質の野菜を簡単に栽培するための植物栽培ユニット「agri-cube(アグリキューブ)」が挙げられます。

■技術の歴史や原点を知る「D’ミュージアム」■
 参加者はまず、世界中の環境共生住宅や大和ハウス工業における技術の発展の歴史を知ることができる「D’ミュージアム」を見学しました。
 世界中の様々な住宅を実物や模型で展示しているエリアでは、人々がそれぞれの気候風土に適応するため様々な工夫を凝らしながら環境と共生してきた歴史について学びました。例えば、モンゴルでは遊牧民たちが年間を通して家畜の餌である自然の草を求めて移動を続けます。そこで、天井や壁が折りたためるため軽量かつコンパクトで移動が容易な円柱ドーム型のテント式住居「パオ」が生み出されました。
 大和ハウス工業の創業から今日に至るまでの研究開発の記録をたどることができるエリアでは、“建築の工業化”を実現した「パイプハウス」やプレハブ住宅の原点「ミゼットハウス」などについての実物展示を見ることができます。同社が社会の直面している課題を解決するため、技術面でどのような進化を遂げるとともにどのような商品を世に送り出してきたのかについて理解を深めました。

■現在・未来と対話する「テクノギャラリー」■
 続いて、総合技術研究所のこれまでの開発成果や思い描く未来の技術を見て、触れて、知ることができる「テクノギャラリー」を見学しました。テクノギャラリーにはテーマの異なる3つのゾーンがあります。
ビジネスゾーン
 事業施設や商業施設の地震対策技術と環境配慮技術を紹介
ハウジングゾーン
 大和ハウス工業の住まいの技術を実物大の空間展示や部材の展示で紹介
メッセージゾーン
 社会課題の解決に向けたこれからの人・街・暮らしに求められる技術を紹介するとともに研究員の抱くより良い未来への想いを発信

 各ゾーンの展示物を通して、微生物を用いた土壌の浄化技術や開口部の広さおよび天井の高さによる住み心地の違い、自然エネルギーを活用する街づくりなど、幅広い観点から、住まいに関する最新技術および未来のアイデアの一端に触れて、様々な刺激を受けました。

■“建築の工業化”に懸けた「夢」とその軌跡■
 次に、大和ハウス工業の創業者である石橋信夫の軌跡をたどることができる「石橋信夫記念館」を見学しました。
 実際の肉声と映像による講義の再現や直筆の手帳といったゆかりの品々を通して、“建築の工業化”を旗印に掲げ、プレハブ住宅の先駆者として日本社会の発展に大きく貢献した石橋信夫の激動の人生とその「夢」について思いを馳せました。

■安全・快適を実現するテクノロジーを体感■
 最後に、大和ハウス工業が提供する賃貸住宅の性能を体感できる一般公開していない賃貸住宅オーナーさま向けの施設「D-roomプラザ館」を見学しました。
 「体験館」では、セキュリティ賃貸住宅の防犯性をはじめ、遮音性、耐震性などの基本性能を体験することができました。例えば、遮音性能体験では、界床および界壁の遮音性能について、外部から大音量を出力可能な装置を用いることで、従来の製品と新製品とを比較しながら体感することができました。参加者は、たとえ同じ音量であっても界床および界壁の遮音性能によって聞こえ方が大きく異なるということに驚きを隠せない様子でした。
 「テクノロジー館」では、基礎や構造、外壁などに施された、住宅が完成してからでは分からない技術性能を確認することができました。実物大やそれよりも大きい展示物を見たり触ったりすることで、安全・快適を実現するための細部まで配慮されたテクノロジーを体感しました。

大和ハウス工業への質問と回答

社会広聴会員:
地震や台風といった自然災害への対策について。
大和ハウス工業:
 今年(2019年)の4月に「災害に備える家」を発売しました。太陽光発電システムとエネファームという燃料電池と家庭用リチウムイオン蓄電池という3つの電池を備えていて、停電があった際、雨天であっても約10日間は電力供給および暖房・給湯を確保できるようになっています。
 

社会広聴会員:
品質とコストとのバランスについて。
大和ハウス工業:
安心かつ快適に住んでいただくため高品質な住環境を提供することは重要ですが、お客さまに購入していただけなければ意味がないため、常にコストダウンを意識しながら研究開発に取り組んでいます。例えば、同業他社と比較して、「同じ性能であればより低コストに」「同じ価格であればより高性能に」ということを指標の1つとして、品質向上とコストダウンの両立を目指しています。
 

社会広聴会員:
環境への取り組みについて。
大和ハウス工業:
 全社的な取り組みとして4つの重点テーマ「気候変動の緩和と適応」「自然環境との調和」「資源保護」「化学物質による汚染の防止」をコアとした環境長期ビジョン“Challenge ZERO 2055”を掲げています。具体的には、徹底した省エネ対策の推進と再生可能エネルギーの活用や緑あふれる街づくりによる緑のノー・ネット・ロス、住宅・建築物の長寿命化と廃棄物のゼロエミッションなどを目指して取り組んでいます。
 

社会広聴会員:
農業の取り組みについて。
大和ハウス工業:
植物の栽培に必要なシステムをパッケージ化した駐車場1台分のスペースに簡単に設置できる植物栽培ユニット「agri-cube」を開発し、農業の工業化を目指していますが、単に工業化するだけではなく、福祉の観点も加えて、高齢者や障がい者が快適に働ける場としてレストランや商業施設、介護施設などあらゆる施設に提供できないか検討しています。

 

参加者の感想から

●社会課題を解決するという創業の精神を伝承するためのハード(施設)もソフト(社員研修)も整い機能していることに感銘を受けました。
●これからも自然エネルギーの導入といった先進的な取り組みにより一層力を入れて、エネルギーの地産地消が可能な災害に強い街づくりを推し進めてほしいです。
●大和ハウス工業といえば高品質な住宅を提供しているメーカーというイメージがありましたが、今回参加してみて、改めて品質・安全性への信頼が確認できました。
●地震や台風などが多く災害大国である日本において、高品質な住宅を低コストで供給することは大変な努力を要しますが、このような努力が世界の住環境についても好影響を及ぼすものと思います。

大和ハウス工業ご担当者より

 このたびは、当社総合技術研究所の見学にご参加いただき、ありがとうございました。当日は長時間にわたる内容でしたが、見学中の皆さまの真剣な姿勢や活発な質問がとても印象的でした。質疑懇談では貴重なご意見をいただき、感謝しております。
 当社では、「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、今後も社会課題と向き合い、解決に貢献しながら人が心豊かに生きる社会の実現を目指していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。 

お問い合わせ先
経済広報センター 国内広報部
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館19階
TEL 03-6741-0021 FAX 03-6741-0022
pagetop